ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

80年代後期のパソコン事情Part2~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“80年代後期のパソコン事情Part2”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


80年代後期のパソコン事情Part2


大作RPGが豊作だった80年代後期


 87年は、何かと話題に上る日本テレネットの『女神転生」や、海外で大ヒットを飛ばした『ウルティマIV』、人間の思考の裏をかいたマップがクセモノだった『ゼリアード』など、ロールプレイングゲームが豊作な年でもあった。

 しかし、なんといっても日本ファルコムの『イース』『ソーサリアン』、そしてT&E SOFTの『ハイドライド3』が、この年のメインディッシュだったことは間違いない。『イース』は優しさで、『ソーサリアン』は拡張性、『ハイドライド3』はシリーズ完結編という方向で、それぞれが話題を呼び、大ヒットを飛ばすこととなった。

 その翌88年には、前年末に発売された『ソーサリアン』の追加シナリオディスクが登場する。本編を所有していれば、追加シナリオディスクを購入するだけで新たな物語が遊べるというシステムで、ファルコムからは3作品15シナリオがリリースされている。のちにソフトベンダーTAKERUなどでも追加シナリオが発売され、『ソーサリアン』は息の長い作品となった。

追加シナリオというかたちでパッケージを購入すれば、新たな物語でプレイできるというのが新鮮だった『ソーサリアン』。基本システムは同じだが、シナリオが創意工夫されていたこともあり、飽きずにプレイできた。

 『イース』の続編となる『イースII』もこの年発売される。“イース”という国を舞台とした物語が完結するこの作品は、前作にも増してBGMが美しくなった。また、オープニングのアニメーションで登場するヒロイン・リリアが振り返るシーンに“やられる”人が多数現れ、のちに「ミス・リリアコンテスト」が開かれるほどユーザの心を捕らえている。難易度も低く抑えられたことにより誰もが気軽にプレイでき、エンディングまでの物語を映画や本を読むような感じで堪能できる作品に仕上がっていた。

 同年、「ハイドライド」シリーズを完結させたT&E SOFTは、新作としてアドベンチャーゲーム『サイオブレード』を発売している。恒星間有人探査機セプテミウス2に救命艇で乗り込み事故の原因を調査する宇宙編と、探査機のメインコンピュータ・ラクーンの主設計者であるシュルツ博士を救出する地上編にわかれており、全シーンにアニメーション効果を導入した意欲作だった。

 また、「メタルギア」シリーズで当時一躍有名になった小島秀夫氏が監督を務めた作品『スナッチャー』も、この年の登場となる。初出広告には“サイケデリック・アドベンチャー”と掲載されたが、のちに“サイバーパンク・アドベンチャー”に変更されたり、発売が当初は88年2月と告知されるも11月まで延びるなど、紆余曲折も多かった。

 惜しいことに、PC-88シリーズ対応版は当初予定の全5章のうち2章分しか収録されていない。それでも、サウンドボードII に対応したBGMや、随所にプレイヤーを飽きさせない工夫が盛り込まれているなど、完成度は非常に高い。

 とはいえ、『サイオブレード』も『スナッチャー』もRPGタイトルほどは話題にならず、アドベンチャーというジャンルが斜陽を迎えたことを端的に表していたのかもしれない。

フロッピー5枚組という大作だった『サイオブレード』。全シーンにアニメーション処理を盛り込んだことがウリで、SF的な2つのストーリーが同時に展開されていく。メロディモジュールと呼ばれる装置が同梱され、ボタンを押すと音楽が流れてくる。実質、ゲームを解くうえで必要なハードウェアプロテクトだった。
雑誌『POPCOM』にて連載を持っていた落語家・三遊亭圓丈氏がシナリオを担当し、池亀治氏がプログラムを手がけた『サバッシュ』。この手のものにはハズレが多いなか、比較的完成度が高かった。BGMも印象的で、いまだに耳に残っている。

 88年には、『イース』の曲などを手がけた古代祐三氏が手がけた作品『ザ・スキーム』がリリースされ、その美しいBGMに注目が集まった。ゲーム中には内蔵音源用、サウンドボードII用とハードに合わせた曲が奏でられたほか、それら楽曲を収録したサントラCDがソフトよりも売れたという逸話もあるとかないとか。

 この年にはほかにも『アルゴー』でデビューした呉ソフトウェア工房の第2弾タイトルで、チビキャラがゴチャゴチャ動き廻る『シルバーゴースト』のほか、雑誌『コンプティーク』にて好評連載された『ロードス島戦記』をベースとしたゲーム『ロードス島戦記~灰色の魔女~』がハミングバードソフトから登場した。

 さらに、雑誌『POPCOM』にて連載コラムを持っていた落語家の三遊亭圓丈氏がシナリオを手がけた『サバッシュ』なども発売され、ゲームジャンルはよりRPG色が濃くなっていく。なお、この『サバッシュ』は、圓丈氏によると2万本が売れたとのこと。また、仕事が8割方終わった時点で喧嘩して降りてしまい、名前を外してほしいと頼んだという過去を当人がWebで語っている。

時代は少しずつ8bit機から16bit機へ移行する

 80年代最後となる1989年。これまでパソコンゲームの中心となってきたPC-88シリーズが、少しずつ勢いを失ってくる。前年には、PC-9800シリーズでしか遊べないタイトルが出ているが、その傾向は89年から顕著になっていく。なかにはPC-9800シリーズで最初に発売し、そのスケールダウン版をPC-8800シリーズにて登場させるという作品も現れた。

 ときには、前編はPC-8800シリーズでプレイできたが、後編は開発されなかったためPC-9800シリーズを入手しなければならないというソフトも……

 これらの原因は、1つは8bitマシンでは荷が重い処理をさせるゲームが増えたこと、もう1つは各種容量問題などが絡み合ってのことだ。それまでビジネス向けパソコンとして普及してきたPC-9800シリーズが、翌90年に発売されたPC-9801DAなどのDシリーズにてサウンドボードを標準搭載し、ホビー色を強めたことも大きい。

 こうして一時代を築いてきたPC-8800シリーズも次第に作品が減っていく。1990年にはPC-9800シリーズへのバトンタッチが進み、PC-8800シリーズは最終機種となったPC-8801MCを出荷して余生を送ることとなる。

 89年にPC-9800シリーズ向けとして目立ったタイトルは、16bit機らしい処理をさせる『大戦略3』や『遊撃王』など。翌年以降はメインメモリとフロッピーディスク1枚の容量の多さ、さらにはPC-8800シリーズよりも高い解像度などが理由で、PC-9800シリーズへユーザーが推移するのに歩調を合わせるかのように更に多くのソフトハウスが移行していった。

 この年、前年大ヒット作をリリースしていた日本ファルコムからは、『ワンダラーズ・フロム・イース』『スタートレーダー』という2作品が登場する。

 どちらもPC-8800シリーズとしては非常によくできたアクションまたはシューティングゲームではあったが、88年ほどの盛り上がりを見せることはなかった。ちなみに、1988年に発売された『ハイドライド3』に続き、“日本3大RPG”といわれた「夢幻の心臓」シリーズ最終作『夢幻の心臓III』が、この89年に発売され、完結となっている。

 この時点で残っているのは、「ドラゴンスレイヤー」シリーズだけとなった。

当時のPC-8800シリーズ向けに作られたシューティングとしては、高いレベルの完成度を見せた『スタートレーダー』。とはいえ、日本ファルコムはRPGやアドベンチャーをリリースし続けてきたソフトハウスだっただけに、これには戸惑ったファンも多かった。
リバーヒルソフトの『BURAI』は、PC-8800シリーズ向けには上巻しか発売されなかったため、そこでパソコンから離れてしまった人は後の展開が不明になっている。
一部の画像は、書籍版とは異なるものを掲載している場合がございます。