ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち
90年代からのパソコンゲーム事情~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~
2023年11月28日 07:05
連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。
今回取り上げるページは、“90年代からのパソコンゲーム事情”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。
90年代からのパソコンゲーム事情
8bit機から16bit機への移行が始まり、ゲームも美少女アドベンチャーが主流になる90年代
90年代に入ると、これまで勢いのあった8bit機は軒並み蚊帳の外に置かれ、PC-8800シリーズですらゲームが発売されないようになっていく。変わって、PC-9800シリーズがゲームマシンとして君臨することになる。
その一因となったのが、90年に発売されたPC-9801Dシリーズだろう。従来機種は、デスクトップ型でFM音源を搭載していたのは3.5インチモデルのみだったが、Dシリーズ以降は原則すべての機種にFM音源を搭載するようになった。これにより、当時は3.5インチFDよりも安価な5インチFDが使え、さらに音楽も奏でられるPC-9800シリーズが市場に登場。ホビーユースとしてPC-9800シリーズを使いたいというユーザを受け止めた。
このあたりからPC-9800シリーズ向けのゲームが増え始め、市場はNECが寡占することとなる。そして残った部分を、御三家の2社である富士通のFM TOWNSシリーズとシャープのX68000シリーズがわけ合っていた。特にX68000シリーズは、初代機に『グラディウス』が付属していたこと、アーケードからの移植がハイレベルで行われていたこともあり、コアなユーザー層から絶大な支持を集めていた。90年前後には価格のこなれたモデルも登場し、若干ながらシェアを広げるものの、その勢いが続かなかったのが惜しまれる。
こうして徐々にPC-9800シリーズがゲームハードとして定着するなか、リリースされるソフトは少しずつ大容量化の道をたどっていく。フロッピーディスク2枚組、3枚組程度だったものが5枚、6枚と増えていき、なかには十数枚のものもあった。こうなるとプレイ時の抜き差しだけでも面倒になってしまう。そこで活躍したのが、外部記憶装置・HDDだった。まだまだ高かったものの、接続すれば容量40MBであればフロッピーディスク約30枚以上が一度に保存できるので、大容量のゲームを快適にプレイするには必須のデバイスとなっていく。
これですべてが解決したかと思われたが、ここには大きな壁があった。枚数の少ないゲームであれば、フロッピーディスクをドライブに挿入してリセットボタンを押せば始められるが、大量にあるフロッピーディスクをHDDへコピーするには、それ相応の知識が必要になる。これにより、ゲームは従来以上に敷居が高くなってしまい、RPGなどが充実してきたコンシューマゲーム機へと軸足を移す人も出てくるようになる。
ソフトハウスも、例えばコナミがPC-8800シリーズでは未完のままだった『スナッチャー』をPCエンジンで発売するなど、少しずつコンシューマ機への移行が進む。こうして一般的なゲームは少しずつパソコンからフェードアウトしていき、変わって台頭してきたのが美少女ゲーム(俗にいう18禁ゲーム)だ。
PC-8800シリーズで発売されていたときは640×200ドット・8色という解像度だったものが、対象機種がPC-9800シリーズになることで640×400ドット・16色と引き上げられ表現力が増したことも、数を増やした一因だろう。毎週、大量の作品が発売され、なかには大ヒットを飛ばすタイトルも現れる。すると、ますます美少女ゲームが増えていき、気づけば市場は7割以上が美少女ゲームで占められることとなっていく。この流れは、今現在(2016年)も変わってはいない。
こうして振り返ってみると、90年代前半は8bit機から16bit機への移行期であり、美少女ゲームが台頭してくる時期だったことがわかる。この後、MS-Windows3.1を経てWindows95の時代を迎え、長らく続いたPC-9800シリーズの1人勝ちも終わってしまう。
80年代のように、さまざまなメーカーがばらばらな規格でマイコン・パソコンを販売していた時代と比べると、どうしてもつまらなく映ってしまうのは、なにも筆者だけではないだろう。
便利になった代わりになにかを失った感じがするのが、パソコンゲームを取り巻く90年代なのかもしれない。