ボクたちが愛した、想い出のレトロゲームたち

80年代後期のアダルトソフト事情~永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記~

永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記

 連載「ボクたちが愛した、想い出のレトロパソコン・ゲームたち」の番外編として、この記事では総合科学出版から発売されている「永久保存版 レジェンドパソコンゲーム80年代記」(著:佐々木 潤・レトロPCゲーム愛好会)の一部記事を抜粋し、紹介しよう。

 今回取り上げるページは、“80年代後期のアダルトソフト事情”だ。なお、書籍版では画像はモノクロだが、諸事情により本記事では一部カラーや別の写真を掲載している。


80年代後期のアダルトソフト事情


パソコンゲーム史に名を刻むエロゲーメーカーの誕生と“エロ”表現を試行錯誤し始める80年代後半!


 1988年、フェアリーテールはデビューから2年と経たないうちにラインナップを充実させていく。CG集にキー連打追いかけっこ式のミニゲームを組み入れた『セーラー服美少女図鑑』やCG集『東京女子高生セーラー服入門』で活躍したほか、七並べやポンジャンの勝負で女の子をひんむく『あっぷる・くらぶ』で脱衣ゲームの波にも乗った。

 しかし、1988年に着目すべき作品は『リップスティック・アドベンチャー』だろう。CG集『リップスティック』の絵を再利用し、企画とシナリオを蛭田昌人氏が手掛け、探偵サスペンス・アドベンチャーに仕上げた。蛭田氏はこれ以降、数々の名作でゲームデザイナー兼シナリオライターの花形の座を掴んでいく。そして、元号が平成になった1989年。フェアリーテールにいた蛭田氏や阿比留濤浩氏(原画)、金尾淳氏(プログラマー)らが親会社のキララからあるブランドを独立、会社化した。かのエルフである。

 エルフは会社化してほどなく、早くも傑作を作り出す。ファンタジー・ロールプレイングゲーム『ドラゴンナイト』第1作だ。美女だらけの国を舞台に、好色な青年冒険者が魔物の巣窟と化したタワー型ダンジョンを攻略し、途中で女の子のエッチな姿を拝見する内容。阿比留濤浩氏が描くむちむちした女体デザインはほかにない色気をアピールした。

『リップスティック・アドベンチャー』は、コマンド選択で移動して物語を進めるアドベンチャー。富豪の財宝盗難事件を軸にした探偵ドラマが描かれる。展開は一本道だが、途中で特定のアイテムを確保しないとゲームオーバーに。
『ドラゴンナイト』は、階層構造のダンジョンを巡回して攻略する3DRPGの合い間に、さまざまなイベントシーンを挟んだ作品。ゲームとしては『ウィザードリィ』にならった作りになっている。のちに、PCエンジンにも移植された。

 同じ1989年、エルフが東京でデビューするのと近い時期、奈良では「アリスソフト」ブランドが発足。ブランド元のチャンピオンソフトも含めれば1980年代前半に由来を持つ(そしていまだ(2016年時)現役!)わけだから、現在の我々にとって老舗中の老舗である。

 そのアリスソフトも、デビュー直後に看板作を世に送り出した。外道で性欲まみれ、だが憎めない冒険者ランスを主人公にしたファンタジー・アドベンチャーゲーム兼ロールプレイングゲーム『Rance - 光を求めて-』だ。ここから続編や外伝が出続け、2013年には初代のリメイクも出た。リメイク時の宣伝文句は「父親が遊んだかもしれないエロゲー」……まさに老舗の面目躍如だ。

 さらに、と何度もいわなければならないこの1989年、ジャストとキララが合同でブランド「カクテル・ソフト」を立ち上げ、『きゃんきゃんバニー』でデビューする。F&Cの「C」の誕生だ。

 「きゃんバニ」は空から落ちてきたバニーさんに案内されて恋人作りに挑む恋愛アドベンチャーゲームで、これまたどしどしシリーズ化。とくに4作目のナビ役、女神スワティは熱く支持され、メーカーの看板娘になった。

 これで「東のエルフ、西のアリスソフト」と称えられる両巨頭が揃い、フェアリーテール関係を含めた御三家のような勢力図が整った。だが、そこに1つの事件が大きな影を落とした。東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件である。犯人は世間から「おたく」的人間像を見出され、当時の映画・アニメなどでマニア向けホラー分野やポルノに風当たりが強まった。ロリコンブームと密接な関係を持つアダルトソフトもまたしかり。

 エロゲー史に残るメーカーの登場と、社会史に残る事件からくる表現危機。光と影を一緒に抱え込み、1990年代が幕開ける。

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