パワレポ連動企画

同一メーカー&GPUの別製品って何が違うの?ビデオカード対決

DOS/V POWER REPORT 2022年夏号の記事を丸ごと掲載!

 ビデオカードは同GPUで別グレードの複数製品があるのが当たり前。差があるのは外観、クロック、冷却システム?性能は?それでは対決だ!!

同じGPUでもデザインも価格も違うビデオカードがある

 ビデオカードメーカーは同じGPUで複数のグレードを用意していることが多い。メーカーによって設計思想は多少異なるが、基本的にはブーストクロック、冷却システム、ドレスアップで分けられている。

 上位グレードでは、同じGPUでも出荷時点からブーストクロックが大きくOCされており、それを冷却するために、上位モデルほど大型のヒートシンクや強力なファンを搭載する傾向にある。また、上位グレードのOCモデルはSNS映えや“エモさ”も求められるので、LEDやデザインもハデになる。

 中位グレードは高い性能を維持しながら装飾を抑えてコスパも意識というパターンが多い。ハデさよりも質実剛健な作りを求める人向けだ。

 そして、下位グレードの多くは定格クロックで冷却ファンもシンプルとし低コスト追求が基本。シンプルな設計なので上位モデルよりコンパクト、というパターンもよくある。

 今回は、ZOTACのRTX 3080搭載モデルから、上位のAMP Holoと普及モデルのTrintyというブーストクロックが異なる二つのグレードを用意した。何が異なるのかじっくり対決させていきたい。

冷却システムの構造は大きな差はなし

 ここでは、TrinityとAMP Holoのハードウェア的な違いに迫っていこう。ブーストクロックも消費電力もAMP Holoのほうが上なので、基板の設計から異なっていると予想していたが、意外にも基板は同一のものだった。メモリはMicron製のGDDR6Xが10枚。合計10GBなので1枚1GBだろう。電源回路は全部で19フェーズと強力だ。GeForce RTX3080 Founders Editionが18フェーズなので、OC動作に対する強化と思われる。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity OC LHRの構造
基板をはじめ、剛性を強化し、冷却を補助するバックプレートと金属フレーム、大型ヒートシンクに9cm径の3連ファンで構成される
バックプレートにもLEDが内蔵されており、基板に接続するためのケーブルがある。基板よりもヒートシンクが大きい。Trinityは外装の高さが低めで補助電源が挿しやすい

 どちらもバックプレートに加えて、補強用の金属フレームが装着されており、高い剛性を確保。バックプレートはメモリ部分にサーマルパッドを貼り付けてあるなど、冷却強化に役割も持っている。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 AMP Holo LHRの構造
基板や、金属フレーム、ヒートシンク、ファンのサイズや数はTrinityとまったく同じ。大きく異なるのは、バックプレートの形状とLEDの配置、HoloBlackデザインによって高さがあること
外装の美しさはAMP Holoの最大の魅力だが、補助電源コネクタがヘコんだ位置にあるため、ケーブルは若干挿しにくい
基板の長さを上回る長さを持つ巨大なヒートシンク。7本のヒートパイプが組み込まれており、GPUやビデオメモリの熱を効率よく逃がしている

 さらに、ヒートシンクや冷却ファンも見える範囲ではほぼ同一。ヒートシンクは7本の銅製ヒートパイプを持ち、たっぷりと厚みも確保された重量級。ファンはそれぞれ9cm径で11枚のブレードで構成される。左と中央、右の二つに分けて個別に回転数制御が可能なのが特徴だ。AMP Holoのほうが大きく見えるのは、HoloBlackデザインの外装パーツの分だけ高さがあるためだ。

「スペシャルグレード」を用意するメーカーも
メーカーによっては“特別仕様”と言えるグレードを用意している。ZOTACでは、AMP Extreme Holoシリーズだ。選別されたOCに強いGPUと強化された電源回路など、性能を追求したスペシャル版だ。
また、最近では簡易水冷クーラー搭載のビデオカードを投入するメーカーもある。

動作条件を近付けて2製品をベンチ結果で比較

 最後に、グレードの違いで性能がどう異なるのかチェックしてみよう。仕様上のブーストクロックはTrinityが1,725MHz、AMP Holoが1,770MHzだ。なお、ほぼ同一のヒートシンクやファンながら、ファン制御の初期設定は、Trinityが約75℃で回転数が約65%にアップするのに対し、AMP Holoが約78℃で回転数が約65%にアップするというもので、上位グレードのほうが回転数の上昇がマイルドだ。ファンの動作条件を近付けて、ブーストクロックの安定性と温度の変化を重点的にチェックするため、今回は回転数は両機とも100%に固定してテストを実行した。

 まずは、実ゲームのプレイ中にGPUクロックやGPU温度がどのように推移するか、サイバーパンク2077を20分プレイして確かめてみた。ブーストクロックはAMP Holoはおおむね1,905MHzで推移し、1,920Hzまでそれなりに上昇。Trinityはおおむね1,890Hz付近で推移し、時折1,905MHzまで上がるという動きだった。GPU温度に関しては、ファン100%駆動なのでどちらも十分に低い値になっているが、AMP Holoが最大58.3℃、Trinityが57.1℃とクロックの分だけ若干差が付ている。フレームレート計測でもAMP Holoがわずかずつだが上回っており、クロックの差がゲームにも現われている。

価格で選ぶか、見た目を重視するか

 今回ピックアップした製品は基板やクーラーの基本設計が同じということもあり、冷却面での差は感じられなかったが、ブーストクロックの差はゲームでも観測できた。両機の価格差は1万5,000円程度だったことを考えると、価格の安さを取るか、デザイン面に魅力を感じるか、という視点で選んでもよいかもしれない。

他社製品だと2ファンと3ファンという差が付いたものも。この場合は冷却能力にかなりの違いが出そうだ。
【検証環境】
CPU:Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG Z690 CARBON WIFI(Intel Z690)
メモリCorsair DOMINATOR PLATINUM RGB DDR5 CMT32GX5M2B5200C38(PC5-41600 DDR5 SDRAM 16GB×2※PC5-38400で動作)
SSDWestern Digital WD_BLACK SN850 WDS200T1X0E[M.2(PCI Express 4.0 x4)、2TB]
CPUクーラーCorsair iCUE H115i RGB PRO XT(簡易水冷、28cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
レインボーシックス シージゲーム内のベンチマーク機能で測定
レインボーシック エクストラクションゲーム内のベンチマーク機能で測定
サイバーパンク2077ゲーム内のベンチマーク機能で測定

[TEXT:芹澤正芳]

最新号「DOS/V POWER REPORT 2022年秋号は絶賛発売中!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2022年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、現在発売中の最新号「DOS/V POWER REPORT 2022年秋号」では、Ryzen 7000シリーズを徹底検証。さらに「PC自作の“新常識”」「ミニPCファーストインプレッション」「そろそろ始めてみる!?“本格水冷”の世界」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!