パワレポ連動企画

SSD対決!意外ともつれる製品&世代間比較 Gen 4 vs Gen 3 SSD

DOS/V POWER REPORT 2022年夏号の記事を丸ごと掲載!

 安価なPCI-E 4.0 SSDと、旧上位クラスのPCI-E 3.0 SSD、現状購入するならどちらがよいのか。現在のSSDの特徴を踏まえつつ、ベンチマークから探った。

SSDの性能は何で決まる?

その1 インターフェース
SSDはNANDメモリのバスの速度とコントローラのNANDメモリチャンネル数を掛けた以上の速度は出せない。Gen 4はGen 3の倍の帯域を実現しており、これを活かすにはそれなりのバス速度が必要になる

 SSDの最大性能を決める要素として近年重要性を増しているのが、NANDメモリのバス速度である。SSDの理論上の最大速度は「NANDメモリのバス速度×コントローラのNANDメモリ接続チャンネル数」で決まるからだ。実際に第1世代のPCI Express 4.0(以下Gen 4) SSDは、NANDメモリのバス速度がGen 4を活かし切るほど速くなかった。現在のエントリー向けGen 4 SSDも同様の理由で最大5,000MB/s前後にとどまっている。

最新製品ほどNANDバス速度が速い
コントローラは、NANDメモリとの接続チャンネルを複数備える。通常、ハイエンドクラスが8チャンネル、エントリークラスが4チャンネルで構成され、対応速度は新しいコントローラほど速い

 次にSSDの実性能を決める上で重要なのが、NANDメモリのシリコンダイの総数と素の速度である。NANDメモリには複数のシリコンダイが積層されていて、SSDはこのシリコンダイに並列アクセスすることで速度を高めている。同じ世代であれば記憶容量が多いNANDメモリほど多くのシリコンダイを積層しているため、性能的に有利になる。

その3 NANDの世代
NANDメモリは世代によってシリコンダイあたりの容量が異なるほか、速度やレイテンシも違う。基本的には最新世代のほうが性能が高い。現在の最新世代の主流は512Gbitまたは1Tbitだ

 一方でシリコンダイあたりの容量も増えており、最新世代は「512Gbit」と「1Tbit」だが、1世代前はそれぞれ半分の「256Gbit」と「512Gbit」が主流だった。つまり、SSDの容量が同じなら、旧世代のNANDメモリを搭載したものはシリコンダイを2倍積層していて、並列アクセス数では有利になる。

 ただし、NANDメモリは、最新世代のほうが素の速度が速く、レイテンシも低い。このため、SLCキャッシュが枯渇した後の書き込み速度は、並列アクセス数で上回る旧世代のほうが速いケースがある半面、同一コントローラでも体感性能は最新世代のほうが高いというケースもある。

今回検証した製品

CFD販売 PG3NF2
第1世代のGen 4対応コントローラと最新世代のNANDメモリを組み合わせた製品。コントローラはPhisonのE16 、NANDメモリはキオクシア製の112層の最新NANDメモリ、BiCS5を採用している。
CFD販売 PG3VND
Phison製の第1世代Gen 4対応コントローラ「E16」とWestern Digital製の96層のBiCS4を採用。初期のGen 4 SSDの中ではもっともスタンダードな組み合わせを採用した代表的な製品でもある。
Western Digital WD_BLACK SN770 NVMe
DRAMレス設計でありながらハイエンドと同等クラスの体感性能を実現し大ヒット中のGen 4 SSD。コスパも非常に高く、1TB版はGen3対応製品よりは若干高いが、Gen 4対応製品の中では最安クラスだ。
Micron Technology Crucial P5
Micronの初となる自社開発のコントローラと96層世代の自社製造のNANDメモリを採用した製品。Gen 3製品の中ではトップクラスの性能だ。SLCキャッシュは実測値で260GBを超える。
Samsung Electronics SSD 970 EVO Plus
Gen 3 SSDが主流の時代の大定番製品のリフレッシュモデル。縦型パッケージになった新モデルは、最新世代のNANDメモリへとマイナーチェンジされている。これによって、体感性能などがアップ。
Solidigm 670p
IntelからスピンアウトしたSolidigm製、144層の最新世代のQLC NANDメモリを採用し、耐久性やSLCキャッシュ枯渇後の速度が大幅アップしている。またGen 4製品並みに体感性能が高い点も特長だ。

シーケンシャルとランダム速度をチェック

 ここでは、CrystalDiskMarkの結果から、安価なGen 4対応SSDとGen 3対応SSDの最大速度の違いを確認しておく。なお、Gen 4対応SSDについては、あえてGen 3接続で利用した場合の速度も計測している。また、一部の製品については、1TBモデルと2TBモデルの両方を計測した。

 まずは、最大速度だが、当然ながらGen 4対応SSDをGen 4接続で利用した場合の速度がもっとも速く、Gen 3対応製品に最大1.8GB/sもの差を付けた。今回テストしたGen4対応製品は、すべて5,000MB/s前後の最大読み出し速度を記録し、最大書き込み速度もWD_BLACK SN770は5,000MB/sに迫り、CFD販売の2製品も4,000MB/sオーバーだった。一方で、Gen 4対応製品をGen 3接続で利用すると、当然だが最大速度がGen 3の上限によって制限され、Gen 3対応製品とほぼ同じ速度になった。

 なお、最大速度では670pの結果に注目しておきたい。この製品は、1TBと2TBのモデルを計測しているが、2TBモデルのほうが240MB/sほど最大書き込み速度が速い。これは、この製品が1TbitのNANDメモリを採用しているためで、1TBモデルは8並列、2TBモデルは16並列という並列アクセス数の違いに起因している。

 4KB Q1T1のランダム性能は、最新世代のNANDメモリを採用した製品が、旧世代のNANDメモリを採用した製品よりも読み出しが速いという傾向が出ている。今回テストした製品中では、WD_BLACK SN770、SSD970 EVO Plus、670pの3製品がこれに該当し、SN770の2TBを除いて90MB/s前後の読み出し速度を記録している。

 なお、CFD販売のPG3NF2も最新世代のNANDメモリを採用しているが、4KB Q1T1のランダム読み出し性能の結果は、同じコントローラで前世代のNANDメモリを採用するPG3VNDより若干遅めと振るわなかった。この原因は不明だが、ファームウェアの最適化が進んでいない可能性がある。

※メーカー非公開。テスト結果にもとづく推測による

Gen 3しか使えない環境ではどうなる?

 第10世代C o r eシリーズなど、少し前のプラットフォームではGen3対応のM.2スロットしか利用できなかった。こうした環境でGen 4のSSDを利用すると、どの程度の性能が得られるか、今回はG e n 4対応のスロットをGen3接続に設定した結果についても合わせて掲載している。

体感性能をチェック

 Gen 4 SSDを対応環境で利用するとGen 3 SSDよりも最大速度が速いのは当然だ。では、体感性能はどうなのか。ここではストレージの体感性能を数値化するPCMark 10 Full System Drive Benchmarkと3D Mark Storage Benchmarkの結果から性能を比較した。

 結果から述べると、Gen 3 SSDはかなり善戦した。とくに最新世代のNANDメモリを採用するSSD 970 EVO Plusと670pの2製品は、世代が進んだことによるNANDメモリの高速化の恩恵を最大限活かしていると言ってよい。たとえば、PCMark 10の結果は、Gen 4接続/ Gen 3接続のいずれにおいてもWD_BLACK SN770がトップだった。しかし、Gen 3接続時の比較に限るなら、その差はグッと縮まる。また、CFD販売の第1世代Gen 4対応製品、PG3NF2とPG3VNDとの比較では、Gen 4接続/ Gen 3接続のどちらにおいてもSSD 970 EVO Plusと670pのほうが高いスコアをマークした。

※メーカー非公開。テスト結果にもとづく推測による

 3DMarkの結果も似た傾向だが、こちらはもっと接戦になっている。Gen 3接続時のWD_BLACK SN770の1TBと670pの2TBの差はわずか100程度でしかない。また、2TBの記憶容量同士の比較であれば、 SSD 970 EVO Plusの2TBと、WD_BLACK SN770の2TBはほぼ同等のスコアで、670pの2TBのスコアはその上を行っている。SSD 970 EVO Plusと670p、WD_BLACK SN770の3製品をGen 3環境でゲーム目的に利用するなら、その差はほとんどないと言えるだろう。

 さらに、注目しておきたいのは、前述の3製品の1TBモデルと2TBモデルの性能差だ。SSD 970 EVO Plusと670pの2製品は、記憶容量が大きい2TBのほうが並列アクセス数が多いことから体感性能も高くなっている。逆に、WD_BLACK SN770の2TBモデルは、記憶容量が2倍に増えたことでランダムアクセス性能が低下。その結果、体感性能が落ちたと推測される。

※メーカー非公開。テスト結果にもとづく推測による

SLCキャッシュとDRAMバッファの効果を確認

 SSDの高速化の手法として有名なSLCキャッシュやDRAMバッファ。SLCキャッシュは、TLCやQLCのNANDメモリの一部またはほぼ全量をSLCとして利用し、書き込み性能を高める技術である。また、エントリークラスのSSDにおいて増加中なのが、DRAMを省くことでコストダウンを図り、HMB(Host Memory Buffer)によってランダムアクセス性能の低減を図った製品である。ここでは、SLCキャッシュやDRAM搭載の有無によるSSDの性能差の検証結果を見ていこう。

 最初にSLCキャッシュについてだが、SLCキャッシュに利用する容量は、同一メーカーの製品でもブランドごとに容量が異なることもある。今回テストした製品でも容量はバラけており、もっとも割り当て容量が多かったのがWD_BLACK SN770だった。この製品は、搭載NANDメモリのほぼ全量をSLCキャッシュに割り当てる仕様だ。逆に容量がダントツに少なかったのは、PG3NF2の18.4GBとPG3NVDの27.8GBである。

※メーカー非公開。テスト結果にもとづく推測による

 SLCキャッシュの枯渇後の書き込み速度はかなり大きな違いが出た。なかでも注目したいのは、WD_BLACK SN770の速度だ。WD_BLACK SN770は最新世代のNANDメモリを採用したGen 4製品であるため、トップクラスの速度になりそうなものだがそうはなっていない。この原因は、SLCキャッシュを大きく取ったことによる代償だ。

 SLCキャッシュを搭載NANDメモリのほぼ全量まで割り当てると、実容量が本来の容量の3分の1(TLCの場合)や4分の1(QLCの場合)になってしまう。このため、SLCキャッシュが枯渇すると次のデータを書き込むためにSSDは内部でSLCキャッシュからTLCにデータを移し、空けた領域を消去。消去済みの領域にまたデータを移して空けた領域を……という作業を繰り返す必要が出てくる。しかし、NANDメモリの消去は、書き込みよりも長い時間を必要とする。つまり、WD_BLACK SN770は、消去を繰り返しながら書き込んでいるため、速度が大幅に低下しているというわけだ。

 一方でSLCキャッシュの容量が少ないSSD 970 EVO PlusやCFD販売のPG3NF2、PG3VNDは、十分な未使用領域が残っているため、消去を行ないながら書き込みの発生頻度を抑えることができる。なお、670pはQLCのNANDメモリを採用。QLCはTLCに比べてはるかに書き込み速度が遅いため、SLCキャッシュ枯渇後の速度ももっとも遅くなっている。

最新世代の3D NANDメモリを搭載
WD _BLACK SN770 NVMeが搭載するのは自社製の112層3D NAND、最新世代のBiCS5だ。ハイエンドモデル並みの体感性能がウリ

 次にDRAM搭載の有無による性能差を見ていく。テスト内容は、データのアクセス範囲を1GBから徐々に広げた場合のランダムリード速度(4KB QD32)の比較だ。SSD搭載のDRAMの用途は、書き込みデータのキャッシュというイメージがあるが、実際はNANDメモリのどこにデータを記録したかを記すアドレス変換テーブルのキャッシュだ。その容量はSSDの記憶容量の1,000分の1が目安で、1TBのSSDであればおよそ1GBのDRAMが必要になる。今回のテスト結果はこの役割ときれいにリンクした。

 1TB/2TBともに記憶容量の1,000分の1の容量のDRAMを搭載するSSD 970 EVO PlusとPG3VNDは、全域で速度が落ちない。しかし、DRAMの搭載容量が256MBの670pは、1TB/2TBともに128GBを超えた辺りから徐々に速度が低下。原因は、DRAMの搭載容量が十分でなく、SSDの記憶容量全体をカバーし切れなかったから。

 同様にDRAMレスでHMBを採用したWD_BLACK SN770も64GBを超えた辺りから速度が低下した。HMBで確保されるメモリ容量はWindowsの場合、「64MB」で固定されている。結果を見る限り、HMBによって利用できる現状のメモリ容量では、1TB以下の記憶容量がもっとも効果が高いと推測できる。2TBのSSDで高いランダム性能を求めるなら記憶容量の1000分の1のDRAMを搭載した製品を購入することをお勧めしたい。

1TBモデルの性能はSN770がダントツ

 基本的には、用途と予算にあった製品選びが肝要だが、1TBであれば、WD_BLACK SN770の性能が抜けている。Gen 3の製品よりも若干コスト高にはなるが、予算が許すならこの製品で問題はないだろう。ただし、2TBならWD_BLACK SN770よりも安価に購入でき、性能も十分高いSSD 970 EVO Plusもかなり魅力的。容量を重視するならこの製品も検討したい。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-11600K(6コア12スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX Z590-F GAMING WIF(I Intel Z590)
メモリKLEVV BOLT KD4AGU880-32A160U(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
システムSSDSolid State Storage Technology Plextor M9Pe(G) PX-512M9PeG[M.2(PCI Express 3.0 x4)、512GB]
OSWindows 11 Pro
SLCキャッシュの計測方法TxBENCHで記憶容量いっぱいになるまでシーケンシャルライトを行ない、速度が低下した地点までの書き込み量をSLCキャッシュの容量として掲載。また、SLCキャッシュ枯渇後の速度は、速度が低下してから書き込みを終了するまでの平均書き込み速度を掲載している

[TEXT:北川達也]

最新号「DOS/V POWER REPORT 2022年秋号は絶賛発売中!

 今回は、DOS/V POWER REPORT「2022年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

 なお、現在発売中の最新号「DOS/V POWER REPORT 2022年秋号」では、Ryzen 7000シリーズを徹底検証。さらに「PC自作の“新常識”」「ミニPCファーストインプレッション」「そろそろ始めてみる!?“本格水冷”の世界」など、内容盛り沢山!是非ご覧ください!