パワレポ連動企画

美しくも深い、PC自作界の“沼”へようこそ!そろそろ始めてみる?“本格水冷"の世界

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

 自作PCを組み立てていると必ず目にする“水冷”という言葉。“簡易水冷”CPUクーラーはだいぶ一般的になりましたが、“簡易”ではない水冷とはいったい何でしょうか。そう、それが“本格水冷”です!

“本格水冷”ってどこが“簡易水冷”と違うの?

“本格水冷”の特徴

  • 基本的な冷却の仕組は簡易水冷と同様です
  • 水冷を構築するためのパーツは個別に揃えます
  • パーツ構成やレイアウトの自由度が段違いです
  • 工作の技術が必要になる場合もかなりあります
  • 難易度は構成やレイアウトしだいで大きく変化

 “本格水冷”とは、クーラーの部品や水路などを自分で構築する冷却システムの総称です。本格水冷では、PCパーツの熱を吸い上げる水冷ブロック、冷却水を循環させるためのポンプ、冷却水を冷ますラジエータ、それらを接続させるためのチューブなどを自分で揃えて組み立てます。

完成後のカッコよさ、満足感が圧倒的!!

 一般的な簡易水冷クーラーで冷却するのはCPUのみですが、本格水冷の場合は、CPUだけでなくビデオカード、SSDやメモリ、VRMなども冷却できます。簡易水冷より大きなラジエータを使ったり、ハードチューブを活かしたきれいな水路のマシンを作ったり、コンパクトでもハイエンドのマシンにするためにパーツを巧みに配置した構成にしたり、冬場の寒い外気でラジエータを冷却してOCに挑戦したり、と活用法はさまざま。自分の好みや環境、必要な冷却力に合わせて、ほぼ無限のパーツ構成が考えらえるなど、圧倒的な自由度の高さが本格水冷のよいところなのです。普通の自作PCでは組み立てがもの足りない、自分だけのPCにしたい、そんな人には本格水冷がお勧めです。

すべての水冷パーツが一体になっているのが簡易水冷クーラー。扱いやすさは本格水冷を大きく上回るが、ビジュアル面の改良、水冷システム構築や拡張性の自由度はほとんどない

 ただし、もちろんリスクがないわけではありません。作りが甘ければ水漏れを起こしてパーツを壊してしまう恐れもありますし、水冷ブロック取り付け時にメーカー/代理店保証がなくなる場合もあります。ハードルは低くありませんが今回の記事で「よしやってみるか!」と思ってもらえれば幸いです。

ここまでできる! 本格水冷の作例を見てみよう

 チューブを巧みに配置した水路にCPU以外のパーツも冷やす水冷ブロック群、着色した冷却水とLEDを組み合わせたライティングなど、「デザインのスゴさ」にもこだわりぬいた本格水冷を活用した自作PCは、一般的な自作PCとは一線を画すルックスになる。まずは、本格水冷をフル活用したベテランユーザーの作例を見てみよう。いずれも圧巻のクオリティだ!!

作例① MOMA GARAGE 門馬ファビオさん

 Mod PC作者としても知られる門馬ファビオさん。各所で多数の作品を発表していますが、今回はASUSTeKの大型PCケース、ROG Strix Heliosをベースに「アメリカン・ホットロッド(=クラシックなアメ車をベースにスペシャルな改造を加えたスーパーカスタムカー)をイメージした」という本格水冷PCを紹介します。「車のフロントガーニッシュをイメージしたグリルデザイン、エンジンを表現した電源まわり、エキゾチックに見える配管や塗装にもこだわった」とのことで、本格水冷をMod PCに組み込んだ大掛かりな作品です。

この作例では各種水冷パーツからファンまでEK製品で統一。LED発光やROGのロゴなども含めたトータル演出が美しい
背面イラストのドラゴンはマシンの強さを、娘は強暴なドラゴン(PC)を操る人をイメージしているとのこと

 ポンプの配置が今回のPCの工夫ポイントの一つとのことで、EK Water Blocksの小型リザーバータンク&ポンプをリアファン部分にスッキリとマウントし、スペースの悩みを解消したそうです。

今回の作例の主なスペック

PCの仕様
CPUIntel Core i9-12900K
マザーボードASUSTeK ROG MAXIMUS Z690 EXTREME GLACIAL
メモリG.Skill F5-6000J3040G32GX2-TZ5RK
ビデオカードASUSTeK TURBO-RTX3090-24G
SSDSolid State Strage Plextor M10P
PCケースASUSTeK ROG Strix Helios GX601
電源ユニットASUSTeK ROG-THOR-1200P
ケーブルカスタムケーブル(ケーブルMod)
冷却パーツ(いずれもEK Water Blocks製)
ファンEK-Vardar X3M 120ER D-RGB
ラジエータEK-CoolStream SE 360(Slim Triple)
リザーバータンクEK-Quantum Volume FLT 360 D-RGB、EK-Quantum Reflection Uni 140 D5 PWM D-RGB DDCポンプEK-Loop DDC 4.2 PWM Motor
クーラントEK-CryoFuel Blood Red
ファンEK-Vardar X3M 120ER D-RGB
そのほか同社製フィッティング、ネジほか
作者自己紹介
本格水冷を含めた自作PC組み立て代行の専門ショップを群馬県にて経営。県内の企業やイベント向けのPCの納入、PC用ワンオフパーツの制作を手掛ける

作例② サークル「UNT2works」Kinoさん

DeskMiniをベースに新造された1辺17cmのキューブケースに収められた超小型PC。
このサイズに複数の水冷ブロックを含む水路が組み込まれている

 大型作例の次は、ぎゅっとコンパクトなミニPC作例。UNT2worksのKinoさんの手によるASRock DeskMini X300をベースとした本格水冷マシンです。大型PCケースをベースにした作例の多い中、コンパクトに収めることを突き詰めた作品に仕上がっています。

CPUとMOSFETを水冷する。狭い空間にジャストで収まるように加工されたチューブの配置が美しい……

 DeskMiniをベースにしたとは言うものの、ケースにも大胆に加工が施されており、そのイメージは一新。限られたスペースに水路をめぐらせるための難易度の高いチューブの曲げ加工、自ら設計したリザーバーやMOSFET用ブロックなど、構造の緻密さと完成品のカッコよさは、小型PCながら大迫力。

このサイズにパーツを収めるため、MOSFET用水冷ブロックと超小型のリザーバータンクはなんと自作。冷却効果も抜群とのこと

今回の作例の主なスペック

PCの仕様
ベアボーンPCASRock DeskMini X300
CPUAMD Ryzen 7 PRO 4750G
冷却パーツ
CPUブロックEK Water Blocks EK-Velocity D-RGB -AMD Nickel + Plexi
MOSFETブロック自作
ラジエータBlack Ice Nemesis LS 120 & Noctua NF-A12x25 PWM
リザーバー自作
ポンプEK Water Blocks EKWB EK-XTOP SPC-60 PWM(※ポンプのみ利用)
作者自己紹介
2012年よりコミケに参加し水冷PC読本を頒布。DeskMeetの水冷化を画策中ですが、なかなか手ごわいです(編集部注:写真は献本いただいた実物。濃密!)

作例③ 銀@Atelier銀さん

 テーマは「シンプルに美しく」だと言う、優しいイメージの1台。白系のパーツに木目のアクセントを添えた自然な雰囲気にこだわった本格水冷PCです。チューブの配置がなるべくシンプルに見えるよう、視界に入りにくい部分で細かく位置調整。マットシルバーのフィッティングで主張を抑えつつ、水路部分の光沢や反射が目立つような組み合わせでクリアパーツの透明感を出すようにしているとのこと。

透明感のあるパーツと、白いパーツを巧みに組み合わせた内部。
微調整がしやすいロータリーフィッティングで配管の手間を軽減
目立つ位置のCPU ~ビデオカードのチューブはチューブ曲げで仕上げの美しさを重視
今回の作例の主なスペック
CPUAMD Ryzen 5 5600X
マザーボードGIGA-BYTE B550 VISION D
ビデオカードMSI Radeon RX 6800 XT GAMING X TRIO 16G
CPUブロックEK Water Blocks EK-Quantum Velocity D-RGB - Nickel+Frosted Plexi
GPUブロックAlphacool Eisblock Aurora Acryl GPX-A Radeon RX 6800/6800XT Gaming X Trio with Backplate
ラジエータCorsair Hydro X White
リザーバーポンプEK Water Blocks EK-Quantum Kinetic TBE 160 DDC
フィッティングEK Water Blocks EK-Quantum Torque Satin Titanium
チューブPETG 14mmハードチューブ
作者自己紹介
本格水冷PCをこよなく愛するPC Modder。メーカーのデモPC制作などの活動を行なっており、直近ではAntecの「CANNON」を用いたデモ機を作成(オリオスペックにて展示も)

作例④ 雪下製作所さん

 ソフトチューブで水路を組んだ雪下製作所さんが初めて作ったという本格水冷PC。目標は「利便性と見た目の両立」とのことで、5インチベイも活用してさまざまな種類のメディアに対応できるようにドライブを内蔵。5インチベイと2台の36cmラジエータを同居させるため、パーツ選びや干渉の回避に苦労されたとか。また、5インチベイの存在感を抑え、モダンな見た目となるよう工夫しているそうです。

木材をアクセントに用いて、落ち着いた雰囲気の仕上げに。木材部分には「インテリア照明をイメージ」したLEDテープが仕込まれている
フロントパネル部分にはPC98形式対応の3.5インチFDDを搭載。水冷以外のこだわりも深い!
今回の作例の主なスペック
CPUIntel Core i9-11900K
マザーボードASRock Z490 AQUA
ビデオカードZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC
ラジエータEK Water Blocks EK-Quantum Surface S360 Black+Alphacool NexXxos HPE-45 Full Copper 360mm Radiator
リザーバーポンプEK Water Blocks EK-Quantum Kinetic TBE 300 D5 PWM D-RGB Acetal
フィッティングEK Water Blocks EK-Quantum Line
チューブTygon 1/2 ソフトチューブ
ファンNoctua NF-F12 industrialPPC-3000 PWM×5、Noctua NF-A14 industrialPPC-3000 PWM×1、CRYORIG QF120 Performance×3
作者自己紹介
「使いやすくて綺麗なパソコン」を目標に自作P Cをしている自作歴2年目の初心者。最近の作例は光学ドライブ内蔵にチューンしたDeskMini

[TEXT:森田健介 協力:UNT2works]

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