パワレポ連動企画
美しくも深い、PC自作界の“沼”へようこそ!そろそろ始めてみる?“本格水冷"の世界
DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!
2023年5月24日 12:05
“本格水冷”ってどこが“簡易水冷”と違うの?
“本格水冷”の特徴
- 基本的な冷却の仕組は簡易水冷と同様です
- 水冷を構築するためのパーツは個別に揃えます
- パーツ構成やレイアウトの自由度が段違いです
- 工作の技術が必要になる場合もかなりあります
- 難易度は構成やレイアウトしだいで大きく変化
“本格水冷”とは、クーラーの部品や水路などを自分で構築する冷却システムの総称です。本格水冷では、PCパーツの熱を吸い上げる水冷ブロック、冷却水を循環させるためのポンプ、冷却水を冷ますラジエータ、それらを接続させるためのチューブなどを自分で揃えて組み立てます。
一般的な簡易水冷クーラーで冷却するのはCPUのみですが、本格水冷の場合は、CPUだけでなくビデオカード、SSDやメモリ、VRMなども冷却できます。簡易水冷より大きなラジエータを使ったり、ハードチューブを活かしたきれいな水路のマシンを作ったり、コンパクトでもハイエンドのマシンにするためにパーツを巧みに配置した構成にしたり、冬場の寒い外気でラジエータを冷却してOCに挑戦したり、と活用法はさまざま。自分の好みや環境、必要な冷却力に合わせて、ほぼ無限のパーツ構成が考えらえるなど、圧倒的な自由度の高さが本格水冷のよいところなのです。普通の自作PCでは組み立てがもの足りない、自分だけのPCにしたい、そんな人には本格水冷がお勧めです。
ただし、もちろんリスクがないわけではありません。作りが甘ければ水漏れを起こしてパーツを壊してしまう恐れもありますし、水冷ブロック取り付け時にメーカー/代理店保証がなくなる場合もあります。ハードルは低くありませんが今回の記事で「よしやってみるか!」と思ってもらえれば幸いです。
ここまでできる! 本格水冷の作例を見てみよう
チューブを巧みに配置した水路にCPU以外のパーツも冷やす水冷ブロック群、着色した冷却水とLEDを組み合わせたライティングなど、「デザインのスゴさ」にもこだわりぬいた本格水冷を活用した自作PCは、一般的な自作PCとは一線を画すルックスになる。まずは、本格水冷をフル活用したベテランユーザーの作例を見てみよう。いずれも圧巻のクオリティだ!!
作例① MOMA GARAGE 門馬ファビオさん
Mod PC作者としても知られる門馬ファビオさん。各所で多数の作品を発表していますが、今回はASUSTeKの大型PCケース、ROG Strix Heliosをベースに「アメリカン・ホットロッド(=クラシックなアメ車をベースにスペシャルな改造を加えたスーパーカスタムカー)をイメージした」という本格水冷PCを紹介します。「車のフロントガーニッシュをイメージしたグリルデザイン、エンジンを表現した電源まわり、エキゾチックに見える配管や塗装にもこだわった」とのことで、本格水冷をMod PCに組み込んだ大掛かりな作品です。
ポンプの配置が今回のPCの工夫ポイントの一つとのことで、EK Water Blocksの小型リザーバータンク&ポンプをリアファン部分にスッキリとマウントし、スペースの悩みを解消したそうです。
今回の作例の主なスペック
PCの仕様 | |
---|---|
CPU | Intel Core i9-12900K |
マザーボード | ASUSTeK ROG MAXIMUS Z690 EXTREME GLACIAL |
メモリ | G.Skill F5-6000J3040G32GX2-TZ5RK |
ビデオカード | ASUSTeK TURBO-RTX3090-24G |
SSD | Solid State Strage Plextor M10P |
PCケース | ASUSTeK ROG Strix Helios GX601 |
電源ユニット | ASUSTeK ROG-THOR-1200P |
ケーブル | カスタムケーブル(ケーブルMod) |
冷却パーツ(いずれもEK Water Blocks製) | |
---|---|
ファン | EK-Vardar X3M 120ER D-RGB |
ラジエータ | EK-CoolStream SE 360(Slim Triple) |
リザーバータンク | EK-Quantum Volume FLT 360 D-RGB、EK-Quantum Reflection Uni 140 D5 PWM D-RGB DDCポンプEK-Loop DDC 4.2 PWM Motor |
クーラント | EK-CryoFuel Blood Red |
ファン | EK-Vardar X3M 120ER D-RGB |
そのほか | 同社製フィッティング、ネジほか |
作例② サークル「UNT2works」Kinoさん
大型作例の次は、ぎゅっとコンパクトなミニPC作例。UNT2worksのKinoさんの手によるASRock DeskMini X300をベースとした本格水冷マシンです。大型PCケースをベースにした作例の多い中、コンパクトに収めることを突き詰めた作品に仕上がっています。
DeskMiniをベースにしたとは言うものの、ケースにも大胆に加工が施されており、そのイメージは一新。限られたスペースに水路をめぐらせるための難易度の高いチューブの曲げ加工、自ら設計したリザーバーやMOSFET用ブロックなど、構造の緻密さと完成品のカッコよさは、小型PCながら大迫力。
今回の作例の主なスペック
PCの仕様 | |
---|---|
ベアボーンPC | ASRock DeskMini X300 |
CPU | AMD Ryzen 7 PRO 4750G |
冷却パーツ | |
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CPUブロック | EK Water Blocks EK-Velocity D-RGB -AMD Nickel + Plexi |
MOSFETブロック | 自作 |
ラジエータ | Black Ice Nemesis LS 120 & Noctua NF-A12x25 PWM |
リザーバー | 自作 |
ポンプ | EK Water Blocks EKWB EK-XTOP SPC-60 PWM(※ポンプのみ利用) |
作例③ 銀@Atelier銀さん
テーマは「シンプルに美しく」だと言う、優しいイメージの1台。白系のパーツに木目のアクセントを添えた自然な雰囲気にこだわった本格水冷PCです。チューブの配置がなるべくシンプルに見えるよう、視界に入りにくい部分で細かく位置調整。マットシルバーのフィッティングで主張を抑えつつ、水路部分の光沢や反射が目立つような組み合わせでクリアパーツの透明感を出すようにしているとのこと。
今回の作例の主なスペック | |
---|---|
CPU | AMD Ryzen 5 5600X |
マザーボード | GIGA-BYTE B550 VISION D |
ビデオカード | MSI Radeon RX 6800 XT GAMING X TRIO 16G |
CPUブロック | EK Water Blocks EK-Quantum Velocity D-RGB - Nickel+Frosted Plexi |
GPUブロック | Alphacool Eisblock Aurora Acryl GPX-A Radeon RX 6800/6800XT Gaming X Trio with Backplate |
ラジエータ | Corsair Hydro X White |
リザーバーポンプ | EK Water Blocks EK-Quantum Kinetic TBE 160 DDC |
フィッティング | EK Water Blocks EK-Quantum Torque Satin Titanium |
チューブ | PETG 14mmハードチューブ |
作例④ 雪下製作所さん
ソフトチューブで水路を組んだ雪下製作所さんが初めて作ったという本格水冷PC。目標は「利便性と見た目の両立」とのことで、5インチベイも活用してさまざまな種類のメディアに対応できるようにドライブを内蔵。5インチベイと2台の36cmラジエータを同居させるため、パーツ選びや干渉の回避に苦労されたとか。また、5インチベイの存在感を抑え、モダンな見た目となるよう工夫しているそうです。
今回の作例の主なスペック | |
---|---|
CPU | Intel Core i9-11900K |
マザーボード | ASRock Z490 AQUA |
ビデオカード | ZOTAC GAMING GeForce RTX 3060 Twin Edge OC |
ラジエータ | EK Water Blocks EK-Quantum Surface S360 Black+Alphacool NexXxos HPE-45 Full Copper 360mm Radiator |
リザーバーポンプ | EK Water Blocks EK-Quantum Kinetic TBE 300 D5 PWM D-RGB Acetal |
フィッティング | EK Water Blocks EK-Quantum Line |
チューブ | Tygon 1/2 ソフトチューブ |
ファン | Noctua NF-F12 industrialPPC-3000 PWM×5、Noctua NF-A14 industrialPPC-3000 PWM×1、CRYORIG QF120 Performance×3 |
[TEXT:森田健介 協力:UNT2works]
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