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【最新自作計画 第74回】高冷却・高性能・コンパクトの三拍子!水冷を活用した小型ゲームPC

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

合計価格 240,000円前後 ※実売価格は2022年9月上旬時点のもの。昨今の情勢から、調査時点以降の製品入荷時に実売価格が大きく変動する可能性があることをあらかじめご了承ください。

今回のコンセプト

小型ケースでも拡張性には妥協せず

大型ビデオカードや簡易水冷型CPUクーラーに対応する、拡張性に優れたMini-ITX対応PCケースが増えている。そうしたモデルがオススメ

ゲームPC向けの高性能GPUに注目

GeForce RTX 3070 Tiを搭載したアッパーミドルクラスのビデオカードは、性能と発熱のバランスに優れており、小型ゲームPCにはぴったり

見た目はMini-ITXらしいキューブタイプケースだ。しかし内部には28cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーや、アッパーミドルクラスのCPU、ビデオカードが詰め込まれており、強力なゲーミングPCに仕上がった

 格闘ゲームやFPS/TPSなど対戦ゲームを中心に、PCゲームが大きな盛り上がりを見せている。そうしたPCゲームを快適にプレイするには、高性能なCPUやビデオカードを組み合わせ、きちんと冷却できる環境を整えなければならない。必然的に拡張性と冷却性能に優れた大型PCケースを利用する必要があったのだが、最近はもう一つ違う選択肢が登場していることに注目したい。

 と言うのも最近、大型のビデオカードや24 ~ 28cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーを搭載できるコンパクトなMini-ITX対応PCケースが最近増えてきている。発熱の大きな高性能CPUやビデオカードを組み込んでも、しっかり冷却できる時代が来ているのだ。「水冷特化型」とでも呼ぶべき、こうした拡張性と冷却性能に優れる小型PCケースをベースに、強力なゲームPCを作ってみよう。

簡易水冷型CPUクーラーと電源ユニットがセットの小型ケース

 今回のキーパーツは、Cooler MasterのMini-ITX対応PCケース「NR200P MAX」だ。同社の「NR200P」をベースに、28cmクラスラジエータを組み合わせた簡易水冷型CPUクーラーと、850WのSFX対応電源ユニットを内蔵するモデルとなる。

Cooler Master Technology NR200P MAX
28cmクラスラジエータの簡易水冷型CPUクーラーと、80PLUS Gold認証の850W電源ユニットが組み込み済みのMini-ITXケース。ほとんどのケーブルは整理済みで作業しやすい

 大型簡易水冷型CPUクーラーのおかげで高性能CPUもしっかり冷却でき、3スロット厚で長さ33.6cmまでのビデオカードに対応するため、強力なゲームPCが作れる。実売価格は少々高めだが、こうした高性能なパーツが取り付け済みなことに加え、内部のケーブル配線がほぼ最適化されて組み込みがしやすいことを考えれば、むしろ安い。

天板一杯に28cmクラスのラジエータが組み込まれている
前面近くに組み込まれているSFX対応電源ユニット。ケーブルはフルプラグインだ

 ビデオカードはGeForce RTX 3070 Tiを搭載する玄人志向の「GALAKURO GAMINGGG-RTX3070Ti-E8GB/DF」、CPUにはIntelの「Core i7-12700KF」を組み合わせる。

玄人志向 GG-RTX3070Ti-E8GB/DF
GeForce RTX 3070 TiをGPUとして搭載するビデオカード。2基のファンを備えるビデオカードクーラーを搭載し、冷却性能に優れる

あらかじめ各種ケーブルは整理済みパーツの組み込みはかなりラク

 コンパクトなキューブタイプケースなので、内部は狭い。しかしラジエータやファン、電源ユニットは組み込み済みで、各種ケーブルもあらかじめ整理済みだ。ケーブルの長さは一般的なMini-ITXマザーボードに合わせて調整されているため、組み込み作業は非常に楽だった。こうした工夫はNZXTの「H1」などのベアボーンPCに近いモデルではよくあることだが、本当に便利だ。

 水冷ラジエータから延びる冷媒用のホースは長めで、天板から前面パネルに沿って下に流されている。さらに電源ユニットと底面の隙間を通してマザーボードまで、ゆったりと引き回されており、ムリに力がかかっているところはない。一部のMini-ITX用PCケースでは、内部の構造物に合わせてホースを強引に引き回す必要があり、故障や破損の危険性を感じることも多いのだが、NR200P MAXではそうした心配がない。

これは左側板を外したときの状況。ビデオカードは付属のライザーケーブルを利用し、垂直方向に設置する
拡張スロットまわりのパネルだけ外れるようになっており、このようにスイングした状態でビデオカードだけを着脱できる
簡易水冷型CPUクーラーのファンケーブルは、右側面から簡単に整理しておこう

底面は着脱可能ケーブル整理が楽

 底面は、背面にある固定ネジを外すだけで簡単に着脱できる構造だ。ここからは、電源ユニットのケーブルやピンヘッダケーブル、簡易水冷型CPUクーラーのホースが見える。手を入れて作業するだけのスペースも十分に確保されており、それぞれのケーブルが干渉しないようにまとめて整理していくのも容易だ。またビデオカードとマザーボードを、付属のライザーケーブルを利用して接続するときもここから作業する。

電源ユニットの下部には、面ファスナーとスリットがあり、これを使って各ケーブルをまとめていく

重量級ゲームも問題なく動作、強化ガラスの側板だと温度は上昇

 Core i7-12700KFとGeForce RTX 3070 Tiという組み合わせであり、3D描画性能は十分に高い。フルHD解像度やWQHD解像度のディスプレイなら、今はやりのハイリフレッシュレートディスプレイと組み合わせても快適なプレイが楽しめるはずだ。

 実際に「ウォッチドッグス:レギオン」と「ファークライ6」をインストールし、グラフィックスをもっとも高い設定にしてベンチマークテストを実行したところ、最低フレームレートでも60fpsを超えた。これらのタイトルは比較的描画負荷が高いことを考えると、多くのゲームが高画質かつ高フレームレートで快適にプレイできるだろう。

ユービーアイソフトの「ウォッチドッグス:レギオン」の解像度をフルHD、描画設定を「超高」にしたときの最低fpsは65、最高fpsは126
同社の「ファークライ6」で解像度はフルHD、描画設定を「最高」にした場合、最低fpsは110、最高fpsは147だった

 また実際にいくつかの状況を設定し、温度を計測した結果が次のグラフである。簡易水冷型CPUクーラーは、天板から排気する方向で設置されているため、メッシュ構造の左側面や底面から吸気を行なう。

 PCゲームプレイ時を想定した3DMarkのStressTestでは、CPU温度は84℃だった。28cmクラスの簡易水冷型CPUクーラーとしてはちょっと高めではあるが、問題がある数値ではない。GPU温度は77℃で、内部が狭く空気のとおりが悪い状態であることを考えれば、なかなかなか優秀。不安を感じる温度ではないし、十分安定している。

 ちなみにNR200P MAXには強化ガラス製の側板が付属しており、左側板をこれに変更できる。ハデなデザインやLEDを搭載するビデオカードと組み合わせた場合に交換すると効果的だ。この強化ガラス製の側板に変更した場合の温度も計測したところ、3DMark時や高負荷時の温度は、メッシュパネルと比べると高めになった。とはいえこちらも危険な温度に達するわけでもないので、好みに合わせて変更するのもよいだろう。

左側板は、標準で組み込まれているメッシュタイプ(左)のほか、内部がよく見える強化ガラスタイプ(右)も付属している

制作後記

 内部が狭い上、組み込んだパーツでぎっしりという、冷却を考えるとあまりよくない条件が揃ったケースではあるが、CPU温度やGPU温度は不安を感じない数値だ。実際にPCゲームをプレイしていても描画性能は十分に高く、ゲームPCとしての完成度はかなり高い。デザインもシンプルなので、リビングの大画面テレビに接続してPCゲームを楽しむのもよいだろう。

【検証環境】
室温26.7℃
アイドル時OS起動10分後の値
動画再生時解像度1,920×1,080ドットの動画ファイルを1時間再生したときの最大値
高負荷時3DMarkのStressTest(Time Spy)を実行したときの最大値
温度使用したソフトはHWMonitor 1.46で、CPU はTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesのGPUの値

[TEXT:竹内亮介]

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