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実際に“本格水冷”PCを作ってみよう!そろそろ始めてみる?“本格水冷"の世界 その2

DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!

 自作PCを組み立てていると必ず目にする“水冷”という言葉。“簡易水冷”CPUクーラーはだいぶ一般的になりましたが、“簡易”ではない水冷とはいったい何でしょうか。そう、それが“本格水冷”です!

実際に“本格水冷”PCを作ってみよう!

準備編 必要な水冷パーツと工具類を用意する

使うパーツはこちら!
EK Water Blocksのものを中心に本格水冷のパーツを一通り用意。CPU用水冷ブロック~ラジエータ~タンク/ポンプをつなぐシンプルな水路を目指し、36cmラジエータと3連ファンでしっかり冷やします

 それでは組み立てに挑戦してみましょう。まず必要なパーツ、工具を紹介していきます。今回はシンプルな「CPUのみを冷却する水路」を作るので、水冷ブロックはCPU用のみを用意しました(ほかのパーツを冷やしたい場合はそれぞれ必要です)。ラジエータは扱いやすさと冷却力のバランスがよい36cmのものを使います。ケース内部にラジエータを取り付けるので、事前に取り付け可能なサイズの確認が必要です。

チューブを切るための工具類。
写真右のパイプカッターはまっすぐきれいに切りやすいのでオススメ

 ポンプとリザーバータンクは一体型のものを選びました。ATXケースで作る場合は一体型が便利です。特定のPCケース用に、フロント部分などに取り付けられる水路一体型のリザーバータンクもあります。

チューブを曲げ加工するための道具。
写真左のヒートガンでハードチューブを加熱し、写真中央のベンディングキットを使ってきれいに曲げる。
右はチューブに入れて軸にするシリコンチューブ

 フィッティングは、各パーツのINとOUT用に2個ずつ、計6個使用します。チューブの種類や太さにより、使用するフィッティングが異なるので、適合するものを用意するように注意しましょう。

カットしたチューブなどの洗浄や液漏れ確認のための消耗品/道具の準備も必要

 今回はPET素材のハードチューブを使用します。チューブは、カットしたり熱して曲げたりといった加工を施すので、チューブをカットするパイプカッター、チューブを熱するためのヒートガン、熱したチューブがつぶれないようにするシリコンチューブ、きれいに曲げるためのベンディングキットなども用意。そのほか、仕上げのための工具や無水アルコール、チューブの曲げ加工後に熱を冷やすために水なども必要です。ハードチューブ使用の本格水冷は完成後がカッコいいですが、必要な工具が多くなります。

メーカー製の本格水冷“キット”も登場
簡易水冷クーラーで知られるCorsairの本格水冷キット。水路を一通り作るためのパーツと、チューブを切ったり曲げたりする工具も揃っているので、あとは一般的な道具や消耗品を準備すればOK !

 パーツを自由に組み合わせて好みのシステムを作れるのが本格水冷の魅力とは言え、必要なものを自力で揃えるのは難しいもの。そんなときにはEK Water BlocksやCorsair、Thermaltakeなどの本格水冷“キット”を使ってみるのも手です。必要なパーツはすべて揃っているのはもちろん、最低限必要な工具まで含まれているものもあるので初心者に最適。

実践編 いざ本番!本格水冷をセッティングする

1、CPU&水冷ブロックの取り付け

 水冷ブロックの取り付けは一般的なクーラーとほとんど変わりません。CPUをマザーボードに取り付け、水冷ブロックのバックプレートをマザーのネジ穴に合わせてセット。CPUにグリスを塗ってから、水冷ブロックのCPU接触面の保護フィルムをはがしてCPUに乗せます。最後に水冷ブロックをしっかりとネジで固定します。

マザーボードにCPUを取り付ける。この工程は通常のPC自作とまったく同じ
水冷ブロックをCPUに取り付ける。熱を伝えるためのシリコングリス塗布を忘れずに
水冷ブロックを固定。固定方法は普通のCPUクーラーと大きくは変わらず、今回はバックプレートを介してネジ止めだった

2、各種水冷パーツを組み立てる

 水冷ブロックを取り付けたマザーボードをPCケースに固定し、ラジエータをPCケースに取り付けます。ラジエータは、PCケースの天板側または前面に取り付けます。ラジエータに取り付けるファンは風がラジエータに当たる向きにします。リザーバータンク&ポンプはアダプタを使って固定します(今回はラジエータに一旦固定してからケース内へ)。タンク&ポンプ取り付け専用アダプタはメーカーによっていくつかあります。取り付ける場所によって選びましょう。

リザーバータンク/ポンプは、専用パーツを使ってラジエータに取り付けた。PCケースに直接固定できる場合もある
ラジエータは前面に配置。吸気方向にファンも固定している。ラジエータに固定したタンク/ポンプはこの位置に鎮座

3、パイプのルートを決め、フィッティングを固定

 水冷ブロック、ラジエータ、リザーバーポンプの位置が決まったら、それに合わせ水路を引き回すルートを決めます。今回のルートの基本は、「タンク&ポンプのOUTからCPUの水冷ブロックのINへ」、「水冷ブロックのOUTからラジエータへ」、「ラジエータからタンク&ポンプのINへ」という本格水冷としてはシンプルなものです。プランが決まったら、それぞれのIN/OUTの口にフィッティングをしっかり取り付けます。この取り付けが緩いと水漏れが起きますのでご注意を!

チューブのルートを試行錯誤しつつ、フィッティングを各パーツに取り付ける。Oリングを傷付けないように注意
おおまかなチューブのルートはこんな計画に。チューブの曲げ加工の回数もこのときにおおよそ考えておく

4、チューブを加工してセットする

 最大の山場、チューブの取り付けを行ないます。今回はハードチューブを使うので、位置を合わせるためにチューブを、1回ないし2回曲げていきます。

チューブにシリコン製の芯を通す。結構硬くて通しにくいこともあるのでグイグイがんばる
チューブに熱を加えて柔らかくしていく。回しながら均一に熱を加えていこう
90°に曲げたいときはガイドを使うときれいに曲げられる。慌てず徐々になじませる

 まずは曲げる位置を決めたら、軸となるシリコンチューブをハードチューブの中に入れ、曲げる部分とその周辺をヒートガンで、ハードチューブを回転させながら温めていきます。軟らかくなったらベンディングキットを使い曲げ、少し冷まして硬くなってきたら、水に浸けてしっかり冷やし固定。熱し過ぎると気泡ができたり破れたりするので要注意。

チューブをパイプカッターにセットし、カッターをくるくる回してカットする
チューブの断面をカッターナイフや専用トリマーで整形。ささくれがないようにきれいに!
整え終わったところ。ささくれがあると、フィッティング内部のOリングを痛めやすい

 曲げた後は適切な長さにカットします(場合によってはカットしてから曲げます)。パイプカッターでカットしたら、断面がフィッティング内のOリングを傷付けないようにカッターやリーマーで整えます。

加工が終わったら末端をアルコールできれいにする。
人間の皮脂汚れが、チューブが抜けたり水が漏れたりする原因になることも

 加工が終わったら先端を無水エタノールで抜脂し、フィッティングに挿し込みフタで固定。これを各チューブ分行ないます。

加工が終わったチューブを挿し込む。このときもOリングを傷付けないように注意!
フィッテイングの固定具を締め込んでチューブをしっかり固定する

5、水漏れテストを行ない、冷却水を充填

 水路が完成したら水漏れのチェックを行ないます。精製水を使って実際に水漏れがないかどうかをチェックするのが基本ですが、最近は水路に空気を入れて加圧、圧力計で空気の漏れがないかどうかをチェックするリークテスターを使う方法も用いられます。漏れがないことが確認できたら、冷却水をタンク&ポンプに入れます。テスターでチェック済みですが、念のため水漏れの最終チェックとして、ポンプの電源だけONにして冷却水の循環テストをしましょう(別の電源ユニットをポンプに接続するのが簡単です)。冷却水が循環しだすとタンク内の冷却水が減るので随時補充。水路の気泡も抜けていきます。冷却水が十分にたまり、気泡が抜けたら作業は完了です!

専用工具で加圧して漏れチェック。加圧後に圧が下がる場合、どこかに漏れが生じている
漏れがないことが確認出来たら冷却水を充填。今回は漏斗を使ってタンクに入れた
ポンプを動かして循環テスト。循環を進めるごとに徐々に冷却水を足し入れて適量に
完成!

本格水冷の強い味方 本格水冷パーツメーカー&パーツ取扱店

EK Water Blocks

 スロベニアに本社を構えるEK Water Blocksは、2000年代初頭から独自の水冷パーツを展開する、本格水冷関連製品の代表的なベンダーだ。本格水冷を構築するために必要な水冷ブロックやラジエータ、ポンプ/タンク、ファン、チューブから、組み立てや工作に必要な工具類、消耗品などまで、ラインナップは多岐に渡る。特定のパーツに特化してチューンされた製品も多数あり、たとえば大手メーカー製のビデオカード用に作られた水冷ブロックや、スペースの限られたPCに組み込むためのスペシャルな設計のリザーバータンク&ポンプなどまである。

専用パーツや便利グッズを展開
パーツから工具、各種消耗品まで本格水冷に関するさまざまなアイテムを揃えるEKWB

 オリオスペックのほか、実店舗や通販で購入できる場所も増加中。日本公式サイトも開設された。

ビデオカード用の水冷ブロック。一般的な空冷ビデオカードを分解して取り付けて水冷化する
超大型のラジエータのような強力なパーツだけでなく、水冷パーツを固定するためのアダプタなどの便利パーツも豊富だ

オリオスペック

 静音やオーディオなど、こだわりの強いPCに強いオリオスペックは、水冷パーツ分野にも強いショップとして本格水冷ファンによく知られている。EKWBをはじめとする各種本格水冷向けパーツやセットモデルなど、取り付けアダプタやアクセサリ類まで、豊富な取り扱い製品が魅力。

本企画の撮影時にも急きょ必要になったパーツを仕入れに行った、東京・秋葉原の店舗。
通販サイトも本格水冷パーツが充実している

 都内近郊のユーザーとしてはアキバの店舗が心強いが、通販サイトでも各種パーツが購入できるのがありがたい。

100円ショップやホームセンターも有効活用
100円ショップで購入できる小物で、作業の手間がちょっと軽くなる場合も
精度の高い工具類やプロユースにも耐える便利道具はホームセンターなどにいろいろ並んでいる

 水冷パーツや工具は専門店で揃えるのが吉だが、熱したチューブを冷やす水を入れるたらい、冷却水の充填に便利な道具やキッチンペーパーなどは100円ショップやホームセンターで入手可能。工作の助けになるような小物を探してみるといいかも!?

[TEXT:森田健介 協力:UNT2works]

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