パワレポ連動企画
実際に“本格水冷”PCを作ってみよう!そろそろ始めてみる?“本格水冷"の世界 その2
DOS/V POWER REPORT 2022年秋号の記事を丸ごと掲載!
2023年5月29日 00:00
実際に“本格水冷”PCを作ってみよう!
準備編 必要な水冷パーツと工具類を用意する
それでは組み立てに挑戦してみましょう。まず必要なパーツ、工具を紹介していきます。今回はシンプルな「CPUのみを冷却する水路」を作るので、水冷ブロックはCPU用のみを用意しました(ほかのパーツを冷やしたい場合はそれぞれ必要です)。ラジエータは扱いやすさと冷却力のバランスがよい36cmのものを使います。ケース内部にラジエータを取り付けるので、事前に取り付け可能なサイズの確認が必要です。
ポンプとリザーバータンクは一体型のものを選びました。ATXケースで作る場合は一体型が便利です。特定のPCケース用に、フロント部分などに取り付けられる水路一体型のリザーバータンクもあります。
フィッティングは、各パーツのINとOUT用に2個ずつ、計6個使用します。チューブの種類や太さにより、使用するフィッティングが異なるので、適合するものを用意するように注意しましょう。
今回はPET素材のハードチューブを使用します。チューブは、カットしたり熱して曲げたりといった加工を施すので、チューブをカットするパイプカッター、チューブを熱するためのヒートガン、熱したチューブがつぶれないようにするシリコンチューブ、きれいに曲げるためのベンディングキットなども用意。そのほか、仕上げのための工具や無水アルコール、チューブの曲げ加工後に熱を冷やすために水なども必要です。ハードチューブ使用の本格水冷は完成後がカッコいいですが、必要な工具が多くなります。
パーツを自由に組み合わせて好みのシステムを作れるのが本格水冷の魅力とは言え、必要なものを自力で揃えるのは難しいもの。そんなときにはEK Water BlocksやCorsair、Thermaltakeなどの本格水冷“キット”を使ってみるのも手です。必要なパーツはすべて揃っているのはもちろん、最低限必要な工具まで含まれているものもあるので初心者に最適。
実践編 いざ本番!本格水冷をセッティングする
1、CPU&水冷ブロックの取り付け
水冷ブロックの取り付けは一般的なクーラーとほとんど変わりません。CPUをマザーボードに取り付け、水冷ブロックのバックプレートをマザーのネジ穴に合わせてセット。CPUにグリスを塗ってから、水冷ブロックのCPU接触面の保護フィルムをはがしてCPUに乗せます。最後に水冷ブロックをしっかりとネジで固定します。
2、各種水冷パーツを組み立てる
水冷ブロックを取り付けたマザーボードをPCケースに固定し、ラジエータをPCケースに取り付けます。ラジエータは、PCケースの天板側または前面に取り付けます。ラジエータに取り付けるファンは風がラジエータに当たる向きにします。リザーバータンク&ポンプはアダプタを使って固定します(今回はラジエータに一旦固定してからケース内へ)。タンク&ポンプ取り付け専用アダプタはメーカーによっていくつかあります。取り付ける場所によって選びましょう。
3、パイプのルートを決め、フィッティングを固定
水冷ブロック、ラジエータ、リザーバーポンプの位置が決まったら、それに合わせ水路を引き回すルートを決めます。今回のルートの基本は、「タンク&ポンプのOUTからCPUの水冷ブロックのINへ」、「水冷ブロックのOUTからラジエータへ」、「ラジエータからタンク&ポンプのINへ」という本格水冷としてはシンプルなものです。プランが決まったら、それぞれのIN/OUTの口にフィッティングをしっかり取り付けます。この取り付けが緩いと水漏れが起きますのでご注意を!
4、チューブを加工してセットする
最大の山場、チューブの取り付けを行ないます。今回はハードチューブを使うので、位置を合わせるためにチューブを、1回ないし2回曲げていきます。
まずは曲げる位置を決めたら、軸となるシリコンチューブをハードチューブの中に入れ、曲げる部分とその周辺をヒートガンで、ハードチューブを回転させながら温めていきます。軟らかくなったらベンディングキットを使い曲げ、少し冷まして硬くなってきたら、水に浸けてしっかり冷やし固定。熱し過ぎると気泡ができたり破れたりするので要注意。
曲げた後は適切な長さにカットします(場合によってはカットしてから曲げます)。パイプカッターでカットしたら、断面がフィッティング内のOリングを傷付けないようにカッターやリーマーで整えます。
加工が終わったら先端を無水エタノールで抜脂し、フィッティングに挿し込みフタで固定。これを各チューブ分行ないます。
5、水漏れテストを行ない、冷却水を充填
水路が完成したら水漏れのチェックを行ないます。精製水を使って実際に水漏れがないかどうかをチェックするのが基本ですが、最近は水路に空気を入れて加圧、圧力計で空気の漏れがないかどうかをチェックするリークテスターを使う方法も用いられます。漏れがないことが確認できたら、冷却水をタンク&ポンプに入れます。テスターでチェック済みですが、念のため水漏れの最終チェックとして、ポンプの電源だけONにして冷却水の循環テストをしましょう(別の電源ユニットをポンプに接続するのが簡単です)。冷却水が循環しだすとタンク内の冷却水が減るので随時補充。水路の気泡も抜けていきます。冷却水が十分にたまり、気泡が抜けたら作業は完了です!
本格水冷の強い味方 本格水冷パーツメーカー&パーツ取扱店
EK Water Blocks
スロベニアに本社を構えるEK Water Blocksは、2000年代初頭から独自の水冷パーツを展開する、本格水冷関連製品の代表的なベンダーだ。本格水冷を構築するために必要な水冷ブロックやラジエータ、ポンプ/タンク、ファン、チューブから、組み立てや工作に必要な工具類、消耗品などまで、ラインナップは多岐に渡る。特定のパーツに特化してチューンされた製品も多数あり、たとえば大手メーカー製のビデオカード用に作られた水冷ブロックや、スペースの限られたPCに組み込むためのスペシャルな設計のリザーバータンク&ポンプなどまである。
オリオスペックのほか、実店舗や通販で購入できる場所も増加中。日本公式サイトも開設された。
オリオスペック
静音やオーディオなど、こだわりの強いPCに強いオリオスペックは、水冷パーツ分野にも強いショップとして本格水冷ファンによく知られている。EKWBをはじめとする各種本格水冷向けパーツやセットモデルなど、取り付けアダプタやアクセサリ類まで、豊富な取り扱い製品が魅力。
都内近郊のユーザーとしてはアキバの店舗が心強いが、通販サイトでも各種パーツが購入できるのがありがたい。
水冷パーツや工具は専門店で揃えるのが吉だが、熱したチューブを冷やす水を入れるたらい、冷却水の充填に便利な道具やキッチンペーパーなどは100円ショップやホームセンターで入手可能。工作の助けになるような小物を探してみるといいかも!?
[TEXT:森田健介 協力:UNT2works]
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