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エアフロー抜群の水冷対応小型ケース、「MESHROOM S」【竹内亮介のオレにPCケースを使わせろ!】

DOS/V POWER REPORT 2023年冬号の記事を丸ごと掲載!

Sunny Side Up Design MESHROOM S

全身フルメッシュエアフロー抜群の水冷対応小型ケース
Sunny Side Up Design MESHROOM S 実売価格:29,000円前後
ベイ:3.5インチシャドー( または2.5インチシャドー×2)×2、2.5インチシャドー×3●標準搭載ファン:なし●搭載可能ビデオカードの長さ:336mm●搭載可能CPUクーラーの高さ:74mm●搭載可能ラジエータの長さ:28cmクラスまで(前面、右側面)●本体サイズ(W×D×H):167×247×362mm●重量:3.2kg●そのほかのカラー:グリーン、グレイ、ブラック

 CPUやビデオカードの発熱が大きくなると、PCケースの冷却性能も重要になる。そのため最近のPCケースでは、吸排気をスムーズに行なえるメッシュ構造を採用するモデルが一段と注目されている。

 今回紹介するSunny Side Up Designの「MESHROOM S」もその一つで、その名のとおりメッシュ構造を各部に採用した製品だ。さらに、約15リットルというコンパクトなサイズながら、ATXマザーボードや長さ33.6cmのビデオカード、最大で28cmクラスの大型水冷ラジエータなど、さまざまな大型パーツに対応することが特徴となる。

 一般的なPCケースでは前面や天板にメッシュ構造を採用するが、MESHROOM Sではさらに両側板もメッシュ構造になっている。あらゆる面から外気を取り込み、内部のパーツを冷却できるのだ。また、水冷ラジエータやビデオカードが前面や側面に近い位置に組み込まれることもあり、温度が低い外気を利用しやすい。とくに簡易水冷型CPUクーラーのファンを吸気方向で設置すると、CPU温度はかなり低くなった。

ライザーケーブルや強化ガラスの側板を用意
MESHROOM Sでは、ビデオカードをライザーケーブル経由で利用する。標準ではMini-ITXマザー用のケーブルが付属するが、microATXマザーやATXマザー用のライザーケーブルも別売りで用意する。また強化ガラス製の側板もあり、組み込んだパーツを眺めて楽しみたいならオススメだ

 内部のエリアはマザーボードベースによって二つのエリアに分けられており、Mini-ITX対応パーツを利用する場合は左側面にマザーボードと電源ユニット、右側面に大型ビデオカードを組み込む構造となる。大きめのパーツで各種コネクタが隠れてしまうことは少なく、内部が狭い小型ケースとしてはかなり組み込みやすいと感じた。また内部構造を変更することで、4スロット分のスペースを利用する最新の高性能ビデオカードも利用できる。このサイズ感のPCケースで4スロットカードに対応するのは、今のところはこのMESHROOM Sくらいだ。

 またこのタイプの小型ケースに簡易水冷型CPUクーラーを組み込む場合、クーラントが循環するチューブを引き回すスペースが足りないため、ラジエータと接続している部分にムリなテンションがかかりやすい。しかしMESHROOM Sでは前面のスペースを利用してスムーズにチューブを引き回せるため、不安が少ないのも利点の一つだ。

天板の前面近くにフロントポートを備える。Type-C用のピンヘッダケーブルはUSB 10Gbpsに対応

 このように優れた構造を採用することで組みやすさや拡張性を高めたMESHROOM Sは、初心者が小型PCにチャレンジしたいときにもオススメできる優れたPCケースだ。

底面からディスプレイケーブルを引き出す必要があるため、コネクタ部分が90°曲がったHDMIケーブルが付属。DisplayPortを利用したい場合は別途用意が必要だ

内部はかなり狭く余裕はない ファンへのケーブル干渉を防ごう

ATX対応マザーボードでは制限も多い

拡張スロットにライザーケーブルを挿し、スロットを右側面に持っていく関係上、ほかの拡張スロットは利用できない状態になる
ATXマザーボードを組み込んで左側面から見ると、ほぼ全面がマザーボードで埋めつくされた状態になる

 このサイズ感でATXマザーボード対応であることに、興味を持っているユーザーも多いだろう。今回は短辺が24.4cmのATXマザーボードを組み込んでみたところ、ギチギチな状況ながらちゃんと固定できた。ただ、ビデオカードを利用するためのライザーケーブルを右側面に引き回すと、マザーボードの拡張スロットの大半が隠れてしまう。さらに水冷ラジエータもビデオカードと同じく右側面に配置しなければならないが、この二つを並べるのは物理的に非常に難しく、ラジエータは24cmクラスまで(天板側のクリアランスも2.5cm必要)、ビデオカードの高さは12.4cmまでに制限される。かなり厳しいので、個人的にはあまり現実的ではないと感じた。

各部品はほぼ取り外し可能、4スロットビデオカードも利用できる

 MESHROOM Sは、各部の構造物を簡単に着脱できるので、組み込み作業をしやすくなっている。最終的にはフレームを固定する支柱とマザーボードベースのみになり、どこからでも手を入れて組み込み作業ができるほどだ。大型のパーツの干渉を可能な限り避けるレイアウトになっていることもあり、組み込み作業の難易度は低い。またファンや水冷ラジエータ用のステイも着脱可能なので、狭いPCケース内部でラジエータやファンの取り付け作業をしなくてもよいことにも注目したい。

側板や天板、前面パネルなどの外装部分だけではなく、ファンマウンタのステイなど、組み込み時にジャマになる部品はほぼ取り外し可能

 実は内部のマザーボードベース自体も着脱で き、若干ながら左側面に向かってずらして設置することが可能。こうすることで右側面のビデオカード用スペースが広がり、4スロットタイプのビデオカードが利用できるようになる。

マザーボードベース自体を移動して、4スロットのビデオカードを組み込めるように内部構造を調整する機能もある

CPUとGPUの利用頻度に合わせて取り付け方向を選択しよう

 今回は28cmクラスのラジエータを備えるFractal Designの「Lumen S28」を前面に組み込み、各部の温度をチェックした。またこうした小型ケースでは、ラジエータに取り付けるファンの向きでCPU温度やGPU温度は大きく変わる。そこでファンの取り付け方向を変更したときの温度も計測した。

 CPU温度が低いのは、外気を直接取り込んでラジエータを冷却できる吸気方向だ。ただラジエータを通過した熱気が、ビデオカードの冷却に悪影響を与えていることも分かる。逆にビデオカードの温度が低いのは、排気方向で設置したときだ。側面や天板から外気を取り込むエアフローになるからだろう。こうした結果を踏まえると、ゲームPC目的なら排気方向のほうがオススメだ。そもそもPCゲームではCPU温度は上がりにくいため、ビデオカードの冷却を重視したい。

こんなPCを作りたい!

 4スロットサイズの高性能ビデオカードを組み込んで、圧倒的なパワーで最新PCゲームを楽しめる小型PCを作ってみたい。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12 コア24 スレッド)
マザーボードGIGA-BYTE B550I AORUS PRO AX(rev. 1.1)(AMD B550)
メモリCFD 販売 W4U3200CM-8G(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB × 2)
ビデオカードGIGA-BYTE GeForce RTX 3070 EAGLE OC 8G(NVIDIA GeForce RTX 3070)
SSDWestern Digital WD Black SN750 NVMe WDS500G3X0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、500GB]
電源ユニットCooler Master V SFX Gold 750W(750W、80PLUS Gold)
CPU クーラーFractal Design Lumen S28(簡易水冷型、14cm 角× 2)
室温23.4℃
アイドル時OS 起動10 分後の値
3DMark 時3DMark のStressTest(Time Spy)を実行したときの最大値
高負荷時OCCT 11.0.11 のPOWER SUPPLY テストを10 分間実行したときの最大値
Smart Fan 5 AutoStandard
各部の温度使用したソフトはHWMonitor 1.46 で、CPU はTemperatures のPackage、GPU はTemperatures のGPU の値

[TEXT:竹内亮介]

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