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もはや出力は電気ストーブ!ゲーミング電源はここまで来た!MSI「MEG Ai1300P PCIE5」【Power Supply Unit診断室】

DOS/V POWER REPORT 2023年冬号の記事を丸ごと掲載!

 Micro-Star International(以下MSI)と言えば、マザーボードやビデオカードメーカーとして名高いが、近年はこれらを支える電源も展開している。今回紹介する電源はATX 3.0に対応したモデル。

 PCI Express 5.0世代の補助電源端子として策定された12VHPWR(12Vハイパワー)コネクタにネイティブで対応している。ネイティブなので当然変換ケーブルは不要ですっきりまとまる。

 12VHPWRだが、従来のPCI Express 8ピンコネクタは一つのコネクタで150Wまで供給できていたが、ご存じのとおりハイエンドビデオカードではこれを二つ、三つ必要としていた。12VHPWRはこうした状況を改善するため、一つのコネクタで600Wまでの供給が可能になる。

Star International MEG Ai1300P PCIE5(実売価格:72,000円前後 12月上旬時点)
規格:ATX、定格出力:1,300W、ファン:12cm角(底面)、80PLUS認証:Platinum、ケーブル:フルプラグイン、電源コネクタ:ATX24ピン×1、ATX/EPS12V×2、Serial ATA×16、ペリフェラル×4、12VHPWR×1、PCI Express 6+2ピン×8、FDD×1、サイズ(W×D×H):150×160×86mm
Lineup
製品名出力奥行き80PLUS認証実売価格
MEG Ai1300P PCIE51,300W16cmPlatinum72,000円前後

変換アダプタ不要!!ネイティブ12VHPWコネクタで600Wを供給

もはや出力は電気ストーブ!ゲーミング電源はここまで来た!
+12Vは驚異の3桁突入で108.33A!ここから3.3/5Vを最大で25A(計130W)生成する計算だ。5Vスタンバイ電源も3Aまでと大きめに取ってある

 この電源の恩恵を主に受けるのは、450W以上でかつ12VHPWRコネクタを搭載したビデオカードを搭載するPCだ。事実上、NVIDIA GeForce RTX 4090/4080専用と言える。これまでPCI Express 8ピンコネクタを二つ、三つ使っていたところを12VHPWR一つで電力供給できるようになって配線がラクに、見た目もよくなる。

12VHPWRケーブルは2本ストレートと6+2ピン変換
12VHPWRケーブルは2本付属している。1本は両コネクタとも12VHPWR、もう1本は片方が6+2ピンの変換ケーブルとなっている。変換ケーブルは、Radeon RXシリーズなど従来のPCI Express補助電源を利用するビデオカード用として利用できる

 また、本製品は1,300Wという大出力のわりに奥行き16cmと非常にコンパクト。600~ 800Wクラス並みのサイズなので、電源周辺のパーツやベイなどを圧迫するようなこともない。ケーブルは12VHPWR用の2本が通常のスリーブ、ほかは個別スリーブ仕様で、引き回しがラクな上にケース内の金属部分に触れてもビニール皮膜を傷付けることがない。ケーブルコームも付属するので、魅せるPCにも一役買うだろう。

比較的長めで取り回しもラクラク FDDもサポートする全部入りもステキ!
ケーブルはスリーブタイプでケーブルコームも付属している。ATX24ピンは60cm、EPS12Vは70cm、PCI Express(12VHPWR含む)は60cmとなっている。なおSerial ATAは1段目が50cmで以降15cm間隔、計4コネクタ×4本。ペリフェラルも同様で5段目にFDDコネクタも付いている

 消費電力では、Platinum認証で1,300Wの本機がGold認証で1,000Wの製品と比較して認証グレードの違いを見せ付けた。また、準ファンレス機能も備えており、検証では高負荷時でもファンレス運転になった。ただし、ゲームなどを始めれば負荷に応じてファンで排熱する。内部の集積度が高いので、後述する専用アプリでファンを積極的に使うよう調整したほうがより安心感を高められるだろう。

アイドル時も高負荷時もさすがPlatinum認証の省電力 80PLUSの認証グレードが2ランク程度は変わらないとそこまで明確な差が出るものではないが、本機はGold認証の1,000Wと比較してアイドル時も高負荷時も省エネと言える結果が出た
なるべくファンは止める方向性 デフォルトは温度検知によりファンの回転、停止を行なう設定。回転を始めても音はほとんどしないので、本機の使い方を想定すればアプリから常時回転する設定に変更したほうが内部部品への負担も軽減できるだろう
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING PRO CARBON WIF(I AMD X570)
メモリKingston HyperX Savage DDR4 HX430C15SBK2/16(PC4-24000 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3090 Founders Edition
SSDSolid State Storage Technology Plextor M8Se(G)シリーズ PX-512M8SeG[M.2(PCI Express 3.0 x4)、240GB]
OSWindows 11 Pro
室温20℃
暗騒音34.8dB
アイドル時ベンチマーク終了10分後の値
高負荷時3DMarkを実行中の最大値
動作音測定距離ファンから約15cm
電力計Electronic Educational Devices Watts Up? PRO

しっかり高性能部品 放熱性バッチリ ノイズ対策も◎

1次側ノイズリダクション・整流回路。1,300Wという大出力なので680μF×2本という大容量。電源を切ってもしばらく残っているので分解するのがメチャ怖い(笑)……読者の皆さんはマネしないように。ニチコン製耐熱105℃だが奥行きが短い筐体なので熱源に囲まれている
2次側平滑回路。電解コンデンサは日本ケミコン製でおそらく耐熱105℃のハイグレードKZEシリーズ3,300μF電解×4。固体コンデンサはニチコン製×4。リプル抑制用のチョークが少し離れたところにあるのがめずらしい
12VHPWR用信号の回路。12VHPWRの4本の信号線は4本のON/OFFパターン。電源から最大出力150/300/450/600Wを返す信号線はGNDへプルダウン、電源にプルアップの組み合わせで出力を示す。
【藤山の注目ポイント】
電源をモニタリング&設定できるアプリが便利。電源内部の温度、3.3/5/12V出力の電圧変化、EPS12V、PCI Express、ATX24ピン系の出力率に加え、ファン回転数や電源の効率までリアルタイムのグラフとして表示できる。またCSVとしてログを残せるのでテストするのに最適だ。

ハイエンドのビデオカードに全振りした設計だが、ブレーカーには要注意

 ATX 3.0/PCIe5.0に対応した革新的電源。しかも1,300Wの大出力を奥行き16cmというコンパクト筐体で実現している。ただし、この野心的なスペックゆえに部品が高密度になってしまい、コンデンサと熱源の距離が近くなっているのが気がかりだ。メーカー保証10年ということで、コンデンサの寿命は担保されているはずだが、デフォルトではファンレス運転。付属のケーブルでマザーボードと接続し、専用のアプリからファンを積極的に使うように設定すればさらに安心だ。

PCI ExpressとEPS12Vにフォーカスビデオカード全振り設計!潔い!
基準電圧はPCI Expressが12.0V、ATX24ピンが11.9V、EPS12Vが11.9V付近。PCI Expressの安定性はとくによく、高負荷でも0.2Vの降下しか見られない。ハイエンドビデオカード用の設計だ。EPS12Vも0.4V程度の降下でとどまる。ATX24ピンはATX規格ギリギリの11.4Vまで0.5Vの降下を見せていた

 ハイエンドのビデオカードに全振りした設計になっており12V出力は計108A。PCI Expressの安定性もきわめてよい。ただしなぜかATXだけ0.5Vと大きな降下幅だった。リプルノイズも少し気になるが、革新的な電源はいつもノイズ対策が後回しになってしまうところがあり、これはいたしかたないところかもしれない。

規則的な波形が見られ交流成分が残っている
ノイズ自体は小さいのだが、一定のパターンが残っており交流成分が取りきれていない波形となった。とはいえ、革新的な電源にはよくあることで、動作への直接的な影響はない

 最後に一言添えるなら、壁コンセントに本機をつなげた際はディスプレイや家電などほかの機器は別系統に接続するのが吉。一般家庭のコンセントは1,500Wまでで、本製品の最大出力1,300Wまで使うと残り200W程度。ディスプレイ4枚の電源を同じコンセントから取るとフルパワー時にブレーカーが落ちる可能性が高いので要注意だ。

昔懐かしいマンデルブロ集合のような波形がっ!
長周期では短周期の小さな波形が重なりあって、短周期と同じ形の波形が大きく出ている印象。たぶん高調波(音で言うと倍音成分)のある周波数の整数倍の高い周波数が出ているという感じだ
【検証環境】
電圧計測方法三和電気計器 PC-20を3台使用し、各コネクタの電圧を計測
リプル計測方法Pico Technology PicoScope2204を使用しアイドル時に計測、そのほかは上記と同じ

診断票:消費電力450/600W時代のビデオカードに向けたハイエンド電源

 12VHPWR、そして従来のPCI Express 6+2ピンも十分な系統数があるのでエンスージアスト向けビデオカードに最適だ。本製品の高いPCI Expressの電圧の安定性も、ビデオカードの性能を引き出すという点で魅力だろう。価格は確かにネックだが、30万円のビデオカードを買おうという方ならこれも必要な装備と考えられるのでは。

[TEXT:藤山哲人]
[検証協力:長畑利博(アイティースリー)]

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