パワレポ連動企画

実ゲーム検証でRyzen 9 7950X3Dが異次元の強さを見せる!【CPU定点観測所 第5回】

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

検証数大幅減の理由

「箱から出して6Hz」をウリにした第13世代Coreの“数量限定モデル”(2023年3月時点でまだ普通に買えるが)。36cmの水冷クーラー“ごとき”ではフルロード時CPU温度が一瞬で100℃に到達する暴れ馬。よくも悪くも使い手を選ぶ。

 本連載は現行+旧世代CPUの主なものを横並びで比較するという企画でスタートしたが、今回は検証数を大幅に減らさざるを得なかった。OS/UEFI/ドライバなどの変化によりデータの統合が困難になったためだ。

 ただ機材と時間の都合からThreadripperや旧世代CPUは旧データを転用している点はご容赦いただきたい。

 CINEBENCH R23での見どころは「Core i9-13900KS」と「Ryzen 9 7950X3D」の対比だが、TDPを抑えた7950X3Dは7950Xを下回る一方で、高クロック動作の13900KSは辛うじて13900Kを上回った。

 もう一つの見どころはTDPを抑えた廉価版だが、10コアのCore i5-13400に対し、6コアのRyzen 5 7600が迫っている。

Ryzen 9 7950X3Dが異次元の強さを見せる

 続いては実ゲームによる検証。ゲームの設定は解像度フルHD、最低画質で検証した。

 まず「オーバーウォッチ 2」は2023年冬号のデータから全体にフレームレートが大幅に下落(これが再計測した理由)。Ryzen 5 7600XやRyzen 7 7700Xは順位を大きく下げた。その一方で3D V-Cacheを搭載したRyzen 9 7950X3Dは異次元の強さを発揮。コア数が同じ7950Xと比較すると大容量3次キャッシュとゲームの相性のよさが分かる。

 一方「F1 22」は逆に2023年冬号からフレームレートを延ばすCPUも出現。こちらも7950X3Dが最速だが、Core i9-13900K/KSやCore i7-13700Kが安定した強さを発揮している。ただ内部設計の古いCore i5の下位モデルはフレームレートが伸び悩むようだ。

Zen 4世代の3D V-Cache搭載Ryzenはゲームにおいて文句なく速い。CCD2基構成の弱点を回避するためのセットアップが若干めんどうだが、それを乗り越える価値はある。

クリエイティブ系ではCore i9-13900KやRyzen 9 7950Xが安定の強さ

 ここではクリエイティブ系処理を用いて検証する。

 まず「Photoshop」および「LightroomClassic」を使い実際の写真編集フローで運用した際の処理時間やレスポンスを数値化する「UL Procyon」のスコア比較(左グラフ)だが、CINEBENCHで猛威を奮っていたThreadripper系が下位に転落。その一方でCore i9-13900KS/13900KやRyzen 9 7950Xがトップ3を独占。

 しかし大容量の3次キャッシュを備えた7950X3Dは7950Xと同じ16コアだが、スコア的にはCore i7-13700Kより下となった。3D V-Cacheはゲーム以外の用途ではメリットを見いだすことが難しい(=費用対効果は悪い)ことを示している。

 もう一つ動画エンコードは「HandBrake」を利用し、4K/60fps動画をフルHD/30fpsに変換しつつx264(CPU)でエンコードする時間を計測した。

 ここではThreadripperが再び上位に食い込んでいるが、CINEBENCHほど並列度が高くないためCore i9-13900KやRyzen 9 7950Xとほとんど変わらない。また7950X3Dはコア数が同じ7950Xより順位が下だが、これはCINEBENCHでマルチスレッド性能に差が出ているのと同じ理由だ。

ワットパフォーマンスはRyzen 7000シリーズが強い

 最後に検証するのはシステム全体の消費電力と、ワットパフォーマンス比較だ。まず消費電力グラフの“高負荷時”とは、前ページのHandBrakeエンコード中に観測された“安定値”を比較している。計測においてCPUのパワー制限まわりはUEFI設定のデフォルトのままとしているため、Intel系CPUはMTP無制限状態での運用となっている。

 ワットパフォーマンス比較はHandBrakeテストで得られたエンコードのフレームレートと高負荷時消費電力を利用し、100Wあたりの処理効率を算出。Ryzen 9 7950X3Dはエンコード速度が今一つだったが消費電力が下がったことでワットパフォーマンスで最強に輝いた。またIntelはCore i7よりi5のほうが優秀など、興味深いデータも得られた。

DDR4も利用可能な設計やEコア4基追加によるマルチスレッド性能、PコアEコアの使い分け(Intel Thread Director)の巧みさといった点で、低価格CPUの注目製品はCore i5-13400とした。
【検証環境】
<LGA1700>マザーボードASUSTeK ROG MAXIMUS Z790 HERO(Intel Z790、DDR5)
<LGA1151>マザーボードASUSTeK Z170-A(Intel Z170)
<Socket sWRX8>マザーボードASRock WRX80 Creator(AMD WRX80)
<Socket AM5>マザーボードASUSTeK ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI(AMD X670)
<共通>メモリG.Skill Trident Z5 NEO F5-6000J3038F16GX2-TZ5N(PC5-48000 DDR5SDRAM 16GB×2 ※各CPUの定格で動作)、サンマックス SMD4-U64G46MF-32AAR(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×8 ※Ryzen ThreadripperPROの定格で動作)、メモリ:G.Skill Trident Z RGB F4-3200C16D-32GTZRX(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2 ※Core i7-6700Kの定格で動作)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3080 Founders Edition
システムSSDCorsair CSSD-F1000GBMP600[M.2(PCI Express 4.0x4)、1TB]
データSSDSilicon Power SP002TBP34A80M28[M.2(PCI Express 3.0 x4)、2TB]
電源Super Flower LEADEX TITANIUM 1000W(1,000W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro(22H2)
オーバーウォッチ 2マップ“Eichenwalde”におけるBotマッチを観戦した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測
F1 22内蔵ベンチマーク(モナコ&ウェット設定)再生中のフレームレートを「CapFrameX」で計測、※Intel系マザーボードのパワーリミットはすべて無制限に設定
HandBrake4K@60fps動画(約3分)をプリセットの“Super HQ 1080p30 Surround”でMP4/MKV形式に書き出すのに要した時間
アイドル時OS起動10分後の安定値
HandBrake時HandBrake実行中の安定値
電力計ラトックシステム RS-WFWATTCH1

[TEXT:加藤勝明]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年春号」の記事をまるごと掲載しています。

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