パワレポ連動企画

閑話休題、キャンピングカーを移動オフィスとして使う【高橋敏也の改造バカ一台 その259】

DOS/V POWER REPORT 2023年春号の記事を丸ごと掲載!

 世の中、第3次キャンプブームらしいのだ。「新型コロナの影響で密を避けつつレジャーを楽しもうとした結果なのだろう」とか思ってしまうが、実はその新型コロナ禍以前からキャンプを中心としたアウトドアレジャーは盛り上がっていたらしい。もちろん新型コロナの影響という話も聞く。

 さて、そんな私がこの第3次キャンプブームで注目しているのがキャンピングカーだ。おもしろいことにこちらも「第3次キャンピングカーブーム」などと言われているらしく、実際にキャンピングカーの売り上げは右肩上がりらしい。あれこれ調べてみると、これがまあおもしろいこと。

 移動するワンルームマンション(シャワートイレ付き)と呼べそうな大きく豪華なものから、軽自動車をベースにしてさまざまな装備を搭載するコンパクトないわゆる軽キャンまで。価格もマンションクラスから普通のクルマと同レベルの予算で購入できるものまで幅広い。私のおっさん感覚だとキャンピングカーというのは「趣味人が乗る特殊なクルマ」とか「大きくて走る場所も停まる場所も選ぶクルマ」となるのだが、どうやらそうでもないらしい。

 ここで「キャンピングカーとは何ぞや」という話をしてしまうと、いくらページがあっても足りないので割愛するが、そんなこんなでキャンピングカーを実際に使ってみたくなり、近場を探したら……はい、1台出てきました! このジャンルにしては比較的コンパクトだがキャンピングカーの基本は押さえているヤツがありました。とりあえず強奪に近い形でそのキャンピングカーを週末だけ借りることができたので、早速旅行に……行くわけもなく、PCを持ち込んでみた。

 そう、目指すは「超快適、移動可能なパーソナルオフィス by キャンピングカー」である。

サイズは「高さ」を除き普通……に見えない!

 たまたま利用することができたそのキャンピングカーは、日産のNV200バネットがベースなのだという。車検証を見ると長さが441cm、幅が169cmと書いてある。だが実際にそれを見ると、明らかにデカい! その原因はただ一つ、高さが異様に高いのである。先に数値を言っておくと高さ236cmだそうな。

 もうそびえ立つなんだかの山ぐらいに高い! しかし、実際に運転してみると車体の動きはごく普通のクルマ、さらにNV200はエンジン搭載位置なども普通なので「高さ」を除けば普通に使える。高さで困るのは立体駐車場などだが、今回は気にしない。

これが改造バカの新しい仕事場だよ!
日産のNV200バネットをベースにしたいわゆる「バンコン」キャンピングカー。幅と長さは普通乗用車、ただし高さが……
単純に言ってしまうとNV200のルーフ(屋根)をぶった切って、そこにFRP製のオリジナルルーフを載せている。そうすることで車内の高さを稼いでいるわけだ
幅と長さは普通なのに、どうしても普通サイズに見えない。でも運転すると普通、ごく普通のクルマ

 さてこのキャンピングカー、後部のシートアレンジを変更することで、5人乗車が可能になるドライブモード、大人二人が就寝できるベッドモード、そして大人2 ~ 4人がくつろげるダイネットモードに切り換えることが可能だ。

 PCを車内に持ち込んで仕事をするとなると、ベッドモードでノートPCを使うという手もあるだろうが、やはりダイネットモードでデスクトップPCの利用だろう。クルマの中でパワフルなビデオカードを内蔵したデスクトップPCを好きに使える、いやこれはゲーム、もとい仕事がはかどること間違いなし! と言うかだ、本当にデスクトップPCを持ち込めるのか……と思った時期が私にもありました。

しっかり居住空間しています
シートを起こしたり倒したりしてベッドモードにする。後ろから見るとこんな感じ。ギャレー(右側の作り付け家具)がある部分は若干狭くなっているが、大人二人が寝られるスペースを確保
これが本命のダイネットモード。「ダイネット」というのはダイニングキッチンのようなスペースを指している。リビング+小さなキッチンというイメージか
後ろから見ると雰囲気がよく分かる。小さなリビングといった感じだ。狭く見えるが大人2、3人は十分くつろげる。着脱可能なテーブルのサイズは60×45cm。ノートPCで作業するなら十分だし、モニタを置いて作業することもできるスペースだ

 結論から言うとRTX 2070 SUPERを搭載したそこそこ高性能なデスクトップPCと24型モニタを車内に持ち込んで、ごくごく普通、いや実に快適に作業ができました!ストレスゼロ! でございました。その後、車内のスペースに合わせてコンパクトPCや、15.6型のモバイルモニタも持ち込んでみたがまったく問題なし! 車内のテーブルがそう大きくないためキーボードとマウスには工夫が必要だが、テンキーレスキーボードなどを持ち込めばそれも解決。

 車内にはLED照明が用意されているので明るいし、ダイネットモードのシートアレンジはゆったり座ってPC作業することが可能だ。大きな換気扇があって換気はバッチリだし、冷蔵庫や水道まで完備している。PC作業に疲れたなとか思ったら、そのままドライブに出かけることも(注:PCと仕事もついてくるが)、状況が許せばだがそのまま車内で寝ることもできる。いや、これってもしかして天国? そんなキャンピングカーとPCの組み合わせを実現するのが「電気と通信」なのだ。

この辺りは実用+ロマン
おっさんがキレイに写り込んだピカピカのシンク。給排水それぞれ12リットルのタンクがつながっている。歯磨きや手洗いには使えそうだ
取り出し口は小さいが、14リットルの容量を確保した冷蔵庫。ドリンクや保冷が必要な食材を入れておくのに使える
オリジナルルーフ部分には小さな収納、天井にはオリジナルのLED照明やキャンピングカーならではの換気扇が取り付けられている

電源をどう確保するか?

 車内でPCを普通に使うなら、まず何より電源を確保しなくてはならない。クルマのアクセサリーソケット(昔はシガーソケットとも言ったが)からDC12Vを確保してそれをインバータで変換、180Wかそれ以上の電源を確保するという手はあるだろう。だが普通のクルマの場合、それはエンジンがかかっていることが前提なのである。

 短い時間ならそれもアリだろうが、基本的にクルマを停めたらアイドリングストップが基本である。なのでキャンピングカーをオフィス代わりにするなら、エンジンを停めても利用できる電源を確保しなくてはならない。

 幸いなことにキャンピングカーというのは基本的に「サブバッテリ」を搭載している。これはエンジンを停めても車内で電気を利用できるようにするためのもので、基本的にはクルマ用とは別のバッテリを搭載して、それにインバータをかませてAC電源を確保するのだ。今回試乗したキャンピングカーも定番の12V 105Ahのディープサイクルバッテリ(鉛蓄電池タイプがよく使われている)と1,500Wの正弦波インバータを搭載し、車内でAC100Vが使えるようになっていた。

自作PC使うなら電源まわりが重要よね
キャンピングカー独自の電源システムを管理するコンソール。インバータや照明のスイッチなどがズラリと並ぶ。インバータでサブバッテリからAC電源を使えるし、外部からAC電源を供給することも可能だ
さらにサブバッテリから電源が供給されたUSBポート、アクセサリーソケットがある。USBはとくに重宝する
車内後部向かって左のマット下にサブバッテリのシステムが入っている。一番奥にあるのがディープサイクルバッテリ

 PCとサブバッテリシステムを組み合わせて使う際に重要なのが、インバータが正弦波に対応しているかどうかだ。擬似正弦波や矩形波だとPCの動作に影響する可能性があるので要注意。

ネットワークをどう確保するか?

 電源が確保できたら次はネットワークである。車内からインターネットへどう接続するか?もちろんスマホのデザリングなどでデータ量的に足りればいいのだが、頻繁に接続する場合はいわゆる「ギガ」が気になってくるかもしれない。そんなときの対応策としておもしろいものを見付けた。それがギガ付きのリチャージブルWi-Fiルーターだ。私が購入したものは使用期限1年で100GBのデータ通信量が付属して約25,000円だった。

 製品によって異なるだろうが私が選んだものはマルチキャリア対応(ドコモ、au、ソフトバンク)で、状況に応じて適したキャリアに接続してくれる。100GBもあれば、かなりの時間PCを接続して利用できるし、モバイルルーターがセットになっているのですぐに使い始められる(契約不要、開通手続きのみで使用開始)。

100GBのデータ通信込み、キャリア契約不要で開通手続きを行なえばすぐ利用できる。100GBのデータ通信は有効期間が1年なので要注意

 仮に100GBを使い切った場合は、追加でギガを購入できるようになっている。たまにキャンピングカーの中でPC仕事をしますという話なら、逆に1年で100GBを消費できるのか心配になるほどだ。あとはキャリアの電波がない山奥とかに行ってしまうと、これはもう使いようがないのであきらめるしかない。

 ほかにもやや特殊ではあるが、私の場合は車内にパイオニアのカーWi-Fi(パイオニア車載用Wi-Fiルーター カロッツェリア DCTWR100D)を導入している。本体はネット通販価格で22,000円前後、通信料金は1年で税込み13,200円(2023年3月現在)、LTEのデータ通信が使い放題というのだ。

パイオニア 車載用Wi-Fiルーターカロッツェリア DCT-WR100D。docomo in Car Connectで使い放題だが、基本的にはエンジンがかかった状態(走行状態)で使用するものだ

 「使い放題ならこれでいいじゃん!」とか決めつけないように。実はこれ「docomo in Car Connect」という契約にもとづいていて、基本的にはクルマが走っているとき、エンジンがかかっているときにのみ通信できるのである(細かい条件があるので気になる人は調べてみてほしい)。これを私はネットの音楽サービスと組み合わせて使っている。

キャンピングカーは移動オフィスとして活用可能!

 まずPCの設置。写真を見てもお分かりのとおり、キャンピングカーとしてはさほど広くない車内だがデスクトップPCでも普通に設置して利用することができる。それをコンパクトPCにすれば車内はもっと広々とするし、さらにノートPCの持ち込みとなればもう自由自在と言っていいだろう。私が借りたキャンピングカーのテーブルはサイズが縦横60× 45cmだったが、24型のモニタを持ち込んでも問題なかった。

自作PCを持ち込む→つなぐ→使えてしまった!
早速ミドルタワー本体ケース、24型モニタを運び入れ、サブバッテリの電源で起動してみる。1,500Wのインバータでバッチリ動作した。PCは撮影のためここに置いたが、出入りでジャマになるので車両後部に置くべきだろう
サブバッテリのインバータをONにして、PCとモニタの電源をコンソールから確保。ちなみにCore i7-8086KとRTX2070SUPER搭載PCだが、普通に使っているときの消費電力は200W以下
「普通に使えてるじゃん!」とおっさん大満足。着座の体勢も悪くない。結構快適なんじゃないでしょうか!
24型モニタ、テンキーレスキーボード、そしてマウス。ムリなくテーブルの上に置くことができる。重量も問題なし。使えるじゃん! いいじゃん!キャンピングカー買おうぜ!(この後、値段を調べて沈黙するおっさん)

 「クルマだと外から中が見えてプライバシーが気になる」という人もいるだろう。とくに夜間、車内で照明を付けていると、確かに外から丸見えになる。だがキャンピングカーの多くは、カーテンあるいは目隠しシェードを装備している。それを使えば外から覗かれる心配はないのだ。

小型ベアボーンも試してみる
PC本体はコンパクトなベアボーン、ASRockのDeskMiniに入れ換えてみた。テーブルの上に置けるので導線のジャマにならず、PCとしてのスペックもパワフルなので超快適。
(しまった!このDeskMini、OSを入れてなかった!の巻)
モニタを15.6型に交換してみたら、スペースに余裕ができてさらに快適になった
モバイルモニタを移動し、Fire TV Stickを接続してくつろぎモードに突入のおっさん。ネットがつながってれば、何でもできるぞ

 キャンピングカー車内の環境はと言うと、何もしなければ真夏真冬は厳しいことになる。停まっているときはエンジンを切るということを前提とすると、クルマの基本機能以外の暖房冷房を確保する必要があるだろう。まあキャンピングカーの場合は「FFヒーター」というエンジンが停まっていても使える暖房を装備していたり、独立したシステムのクーラーを装備している場合も多いのだが(春秋は換気だけですごせるかも)。

 今回の「キャンピングカーを移動オフィスに」というアイディア、何も新しいものではない。コロナ禍で在宅ワークが広がる中、キャンピングカーのオーナーたちはすぐさま自らの愛車を仕事場としたのである。また「ゆっくり仕事ができる場所が欲しい」ということで、新たにキャンピングカーを購入した人たちも存外多かったりするのだ。

サブバッテリだけでもよかったのだが、やっぱり登場させたい私物のポタ電、EcoFlowのDELTA 2。
携帯用の電気湯沸かしをDELTA 2に接続してコーヒー用のお湯を沸かす。小さくても電力消費が大きいので、サブバッテリとポタ電で役割分担をするという考えもアリ
ほぼやり切った感で、ガチにコーヒーを飲んでいるおっさん。このままどこかに旅へ出ようか……

 ゆっくり落ち着いてPCを使った仕事ができ、疲れたらすぐにくつろげる。眠くなったらベッドモードにして寝てもいいし、コーヒーを淹れて気分転換してもいい。その気になったら車内から見える風景がよい場所へ移動し、そこで仕事をしてもいいのである。

 キャンピングカーはいわゆる個室のワーキングスペースであり、レンタルスペースより自由で快適な場所として十分成り立つ存在だと感じた。が、値段が……。分かる!確かにキャンピングカーは高い!大きさや置き場所が……いや、それは車種を選べばなんとかなる!嫁さんの目が……そこはあなた「家族で車中泊に行けるよ!旅行し放題だよ!」とかうまく説得しなさいよ! 目指せキャンピングカーで夢のパーソナルオフィス!

改造バカ式移動作業場完成!
UEFIの設定だって全国津々浦々、いろんな場所でできる! ちなみに今回のキャンピングカー活用プランを某編集担当氏に話したら、全国どこからでも生配信できるじゃないですか、とのありがた過ぎるお言葉が……

[TEXT:高橋敏也]

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