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AM5環境も安くなった!14万円台で作る『そこそこ』ゲーミングPC【最新自作計画 第76回】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

合計価格 143,800円前後 ※実売価格は6月上旬時点のもの。昨今の情勢から、調査時点以降の製品入荷時に実売価格が大きく変動する可能性があることをあらかじめご了承ください。

今回のコンセプト

A620マザーで作る低価格ゲーミングPC

A620搭載の低価格なマザーボードや、最近大きく値下がりしたDDR5メモリを組み合わせ、最新Ryzenを使ったゲームPCを作ろう

フルHD解像度なら問題ないゲーム性能

最新ビデオカードはまだまだ高いので、1世代古いGeForce RTX 3060(GDDR6 12GB版)カードを利用。フルHD解像度なら十分な性能を発揮する

Ryzen 7000シリーズの6コアモデル「Ryzen 5 7600X」とGeForce RTX3060搭載カードを組み合わせたゲーミングPCだ。PCケースは標準で12cm角ファンを3基備えており、より高性能なビデオカードを利用したくなっても大丈夫

 AMDがRyzen 7000シリーズから利用する「AM5」プラットフォームは、数世代にわたって長く利用できるように設計されている。適宜パーツをアップグレードしながらPCを使い続けたいコストパフォーマンス重視のユーザーにとっては、利便性の高いプラットフォームになる「はずだった」。ところが登場当初はDDR5メモリの価格がまだ高く、肝心のAM5対応マザーも非常に高価だったこともあり、そういったユーザーの目に魅力的なものとして映らなかった。

 そうした状況を覆す可能性を秘めるのが、先日発売された「AMD A620」を搭載するAM5マザーだ。実売価格が安い上、最近はDDR5メモリの価格が下がったこともあり、全体的なコストを大きく下げられる。そこで今回は、こうした激安AM5マザーをベースにした手頃なゲーミングPCを作ってみよう。

激安のAMD A620マザーにRTX 3060カードを組み合わせる

 今回の構成のキモとも言えるマザーボードは、MSIの「PRO A620M-E」だ。AMD A620をチップセットとして採用しており、「AMDB650」や「AMD X670」を搭載したAM5マザーボードと比べると圧倒的に安い。その代わりビデオカード用のPCI ExpressスロットやM.2スロットはPCI Express 4.0までの対応となるが、長く使うとしても現実的には問題になりにくいだろう。今回はこのマザーボードに、Ryzen 7000シリーズの中堅モデル「Ryzen 5 7600X」を組み合わせた。DDR5メモリの価格も、登場当初と比べるとかなり下がっており、今回のようなテーマでもコスト面で問題になりにくい。

Micro-Star International PRO A620M-E
チップセットにAMD A620を採用しており、従来のAM5対応マザーボードと比べると圧倒的に安い。ビデオカードやM.2対応SSDはPCI Express 4.0対応モデルまで
CPUソケットまわりにあるVRMには、ヒートシンクが取り付けられていない

 ビデオカードはGeForce RTX 3060をGPUとして搭載するPalitの「GeForce RTX 3060 Dual」。旧世代モデルということで最近はいい感じに値下がりしており、ビデオメモリも12GB搭載しているため、選びやすい。

Palit Microsystems GeForce RTX 3060 Dual
GeForce RTX 3060をGPUとして採用するビデオカード。2基のファンを搭載するほか、負荷が低いときはファンを停止する機能もある

内部は広く組み込みはしやすい アドレサブルLEDは点灯しない

 microATXケースだが奥行きが43.2cm、高さも39.3cmもあり、内部はかなり広い。またメインパーツを組み込むエリアには構造物が何もないため、パーツの組み込み作業はラクだった。パーツの構成もシンプルなので、スピーディに作業できる。

 将来的に簡易水冷型CPUクーラーを前面に付けたくなったり、メンテナンスで前面の防塵フィルタを清掃する場合には、前面パネルを外す必要がある。とはいえ前面パネルの下部に手をかけて、グッと力を入れて引っ張るだけでよいので簡単だ。また前面パネルにはポート用のケーブルなどは付いていないので、比較的気軽に作業できる。

前面パネルは下部に力を入れて引っ張るとカンタンに外せるため、防塵フィルタは清掃しやすい
前面下部のカバーを開けると5インチベイにアクセスできる。標準だと小物入れになっており、ネジや工具を入れておくと便利

 ちなみに今回のマザーボードには、アドレサブルLEDを制御するコネクタがないため、前面と背面に装備するファンのアドレサブルLEDは光らない。ここはマザーの価格差が出ているところだ。

3基の12cm角ファンの電源ケーブルは、デイジーチェーンでつなげて一つのファンコネクタに接続する

2系統に分けてケーブルを整理しよう

 マザーボードベース裏面には前面近くに大きくへこんだ部分があり、太いATX24ピンメイン電源ケーブルやPCI Express補助電源ケーブルは、こちらでまとめるとよいだろう。ちょうどよい場所に結束バンドで固定するためのフックがあるので活用したい。

 各種ピンヘッダケーブルやファンの電源ケーブルなどは、中央にある面ファスナーを使って流れを作ると、キレイにまとめて整理できる。

ケーブルの流れを二つ作り、面ファスナーとケーブルタイを使ってしっかりまとめる

CPBを無効にすればCPU温度は下がる 最新ゲームでは設定の調整が必要か

 AMD A620とほかのチップセットの大きな違いとして、「オーバークロックに対応しない」というものがある。そのため、AM5対応CPUを利用する上で悩ましかった「高過ぎるCPU温度」の問題も解決かと思ったが、意外とそうでもない。CPUをフルに活用するCINEBENCH R23中の最高温度は95℃に達し、動作クロックも一瞬だが5.42GHzまで達する。トラブルが起きるわけではないので気にしなければよいだけだが、それでもUEFIをよく確認してみると、かろうじて Core Performance Boost(以降CPB)の設定があった。これを無効にしたところ定格状態で動作し、CPU温度はかなり低下した。ただCPBを無効にすると、3DMarkのFire StrikeやTime SpyのScoreも2 ~ 3%低下した。PCゲームのフレームレートにも影響は出るかもしれないので、自己判断で利用したい。

 実際のPCゲームである「レインボーシックス シージ」のベンチマークテストを実行したところ、比較的描画負荷が低めのゲームということもあって、4K解像度でもスムーズな描画が楽しめるようだ。「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」では、フルHD解像度なら[最高品質]でも[快適]判定で、平均フレームレートも約152fpsに達する。4K解像度の場合には約51fpsまで低下して[やや快適]判定となった。

 「サイバーパンク2077」は、描画負荷がかなり高いPCゲームだ。実際に今回のスペックだと、フルHD解像度でも最低fpsが37までカクつく場面があり、実際に画面を見ていても見苦しい場面はあった。もちろん4K解像度ではまったくプレイにならない状態だ。レイトレーシングをOFFにすることで、フルHD解像度ならプレイに支障が出ないレベルにまで改善する。

今回のPCケースでは最大で長さ36.5cmまでのビデオカードに対応するため、より大型で高性能なビデオカードを使いたくなっても大丈夫

制作後記

 削ってもよいところ、削るべきではないところをきちんと吟味すれば、14万円台でも十分に「遊べる」ゲームPCは作れる。AM5プラットフォームのマザーボードなので、現行のRyzen7000シリーズだけではなく、次の世代のRyzenシリーズにもアップグレードして使い続けていくことが可能だ。

【検証環境】
室温24.1℃
レインボーシックス シージ画質“最高”に設定
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマークグラフィックス設定“最高品質”に設定
サイバーパンク2077画質“レイトレーシング:ウルトラ”に設定
アイドル時OS起動10分後の値
CINEBENCH時CINEBENCH R23実行時の最大値
3DMark時3DMarkのStressTest(Time Spy)を実行したときの最大値
各部の温度使用したソフトはHWMonitor 1.50で、CPUはTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesのGPUの値、各ゲームのFPSやScoreはすべてCPB有効時

[TEXT:竹内亮介]

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