パワレポ連動企画
AM5環境も安くなった!14万円台で作る『そこそこ』ゲーミングPC【最新自作計画 第76回】
DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!
2024年1月10日 09:05
今回のコンセプト
A620マザーで作る低価格ゲーミングPC
A620搭載の低価格なマザーボードや、最近大きく値下がりしたDDR5メモリを組み合わせ、最新Ryzenを使ったゲームPCを作ろう
フルHD解像度なら問題ないゲーム性能
最新ビデオカードはまだまだ高いので、1世代古いGeForce RTX 3060(GDDR6 12GB版)カードを利用。フルHD解像度なら十分な性能を発揮する
AMDがRyzen 7000シリーズから利用する「AM5」プラットフォームは、数世代にわたって長く利用できるように設計されている。適宜パーツをアップグレードしながらPCを使い続けたいコストパフォーマンス重視のユーザーにとっては、利便性の高いプラットフォームになる「はずだった」。ところが登場当初はDDR5メモリの価格がまだ高く、肝心のAM5対応マザーも非常に高価だったこともあり、そういったユーザーの目に魅力的なものとして映らなかった。
そうした状況を覆す可能性を秘めるのが、先日発売された「AMD A620」を搭載するAM5マザーだ。実売価格が安い上、最近はDDR5メモリの価格が下がったこともあり、全体的なコストを大きく下げられる。そこで今回は、こうした激安AM5マザーをベースにした手頃なゲーミングPCを作ってみよう。
激安のAMD A620マザーにRTX 3060カードを組み合わせる
今回の構成のキモとも言えるマザーボードは、MSIの「PRO A620M-E」だ。AMD A620をチップセットとして採用しており、「AMDB650」や「AMD X670」を搭載したAM5マザーボードと比べると圧倒的に安い。その代わりビデオカード用のPCI ExpressスロットやM.2スロットはPCI Express 4.0までの対応となるが、長く使うとしても現実的には問題になりにくいだろう。今回はこのマザーボードに、Ryzen 7000シリーズの中堅モデル「Ryzen 5 7600X」を組み合わせた。DDR5メモリの価格も、登場当初と比べるとかなり下がっており、今回のようなテーマでもコスト面で問題になりにくい。
ビデオカードはGeForce RTX 3060をGPUとして搭載するPalitの「GeForce RTX 3060 Dual」。旧世代モデルということで最近はいい感じに値下がりしており、ビデオメモリも12GB搭載しているため、選びやすい。
内部は広く組み込みはしやすい アドレサブルLEDは点灯しない
microATXケースだが奥行きが43.2cm、高さも39.3cmもあり、内部はかなり広い。またメインパーツを組み込むエリアには構造物が何もないため、パーツの組み込み作業はラクだった。パーツの構成もシンプルなので、スピーディに作業できる。
将来的に簡易水冷型CPUクーラーを前面に付けたくなったり、メンテナンスで前面の防塵フィルタを清掃する場合には、前面パネルを外す必要がある。とはいえ前面パネルの下部に手をかけて、グッと力を入れて引っ張るだけでよいので簡単だ。また前面パネルにはポート用のケーブルなどは付いていないので、比較的気軽に作業できる。
ちなみに今回のマザーボードには、アドレサブルLEDを制御するコネクタがないため、前面と背面に装備するファンのアドレサブルLEDは光らない。ここはマザーの価格差が出ているところだ。
CPBを無効にすればCPU温度は下がる 最新ゲームでは設定の調整が必要か
AMD A620とほかのチップセットの大きな違いとして、「オーバークロックに対応しない」というものがある。そのため、AM5対応CPUを利用する上で悩ましかった「高過ぎるCPU温度」の問題も解決かと思ったが、意外とそうでもない。CPUをフルに活用するCINEBENCH R23中の最高温度は95℃に達し、動作クロックも一瞬だが5.42GHzまで達する。トラブルが起きるわけではないので気にしなければよいだけだが、それでもUEFIをよく確認してみると、かろうじて Core Performance Boost(以降CPB)の設定があった。これを無効にしたところ定格状態で動作し、CPU温度はかなり低下した。ただCPBを無効にすると、3DMarkのFire StrikeやTime SpyのScoreも2 ~ 3%低下した。PCゲームのフレームレートにも影響は出るかもしれないので、自己判断で利用したい。
実際のPCゲームである「レインボーシックス シージ」のベンチマークテストを実行したところ、比較的描画負荷が低めのゲームということもあって、4K解像度でもスムーズな描画が楽しめるようだ。「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」では、フルHD解像度なら[最高品質]でも[快適]判定で、平均フレームレートも約152fpsに達する。4K解像度の場合には約51fpsまで低下して[やや快適]判定となった。
「サイバーパンク2077」は、描画負荷がかなり高いPCゲームだ。実際に今回のスペックだと、フルHD解像度でも最低fpsが37までカクつく場面があり、実際に画面を見ていても見苦しい場面はあった。もちろん4K解像度ではまったくプレイにならない状態だ。レイトレーシングをOFFにすることで、フルHD解像度ならプレイに支障が出ないレベルにまで改善する。
制作後記
削ってもよいところ、削るべきではないところをきちんと吟味すれば、14万円台でも十分に「遊べる」ゲームPCは作れる。AM5プラットフォームのマザーボードなので、現行のRyzen7000シリーズだけではなく、次の世代のRyzenシリーズにもアップグレードして使い続けていくことが可能だ。
室温 | 24.1℃ |
レインボーシックス シージ | 画質“最高”に設定 |
ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク | グラフィックス設定“最高品質”に設定 |
サイバーパンク2077 | 画質“レイトレーシング:ウルトラ”に設定 |
アイドル時 | OS起動10分後の値 |
CINEBENCH時 | CINEBENCH R23実行時の最大値 |
3DMark時 | 3DMarkのStressTest(Time Spy)を実行したときの最大値 |
各部の温度 | 使用したソフトはHWMonitor 1.50で、CPUはTemperaturesのPackage、GPUはTemperaturesのGPUの値、各ゲームのFPSやScoreはすべてCPB有効時 |
[TEXT:竹内亮介]
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