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ビデオカード換装をきっかけに温度急上昇!!旧世代自作PCの冷却を強化せよ!【性能アップのカギは冷却にあり!冷却最前線⑫】

DOS/V POWER REPORT 2023年夏号の記事を丸ごと掲載!

ビデオカード換装をきっかけに温度急上昇!!旧世代自作PCの冷却を強化せよ!

 ビデオカードをエントリーからハイエンドモデルに換装したらPCケースの内部温度が大きくアップしてしまった、というのはよくある話だ。ファンの制御?追加?どの方法が効果的なのかテストしていく。とくに密閉度が高かったり、前面にファンのないPCケースを使っている人は対策は急務。ハイエンドGPUの熱は強烈なのだ。

ハイエンドGPUに換装で温度が高止まり!

ビデオカード換装前の状態。Ryzen 9 5900XとGeForce GTX 1650の組み合わせ。NZXTのH500iは密閉度の高いケースだが、この構成ならCPU温度もとくに高くならなかった
ビデオカードをZOTACの「ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity OC LHR」に変更。ケース内部の温度が高くなり、CPUの冷却にも影響が出るようになってしまった
NZXTのH500iは標準状態だと前面にファンがなく、吸気不足によって内部の温度が高くなったと考えられる。ハイエンドGPUが出す熱の大きさを実感する部分だ

 2023年もPCゲームは盛り上がっている。ディアブロⅣにストリートファイター6、そしてARMORED COREの新作も控えている。これを機会にビデオカードの強化を考えている人もいるだろう。しかし、気を付けたいのはハイエンドのビデオカードは発熱がすごいということ。ここでは、エントリーのGeForce GTX 1650からハイエンドのGeForce RTX 3080に換装したところ、ゲーム性能は4倍以上アップしたが、CPUやチップセットなどPCケース内部の温度が大きく上昇してしまった例を取り上げる。大型のビデオカードは冷却システムも強力なので、GPU自体は冷えるが、その熱をケース内からうまく逃がさなければ、ほかの箇所の温度が上がってしまう。手軽な方法からファンの追加まで複数の冷却強化手段を試していく。

ビデオカードのファン制御で冷却力を強化

「FireStorm」アプリの左側にある「ADVANCED」をクリックするとドラッグで温度別のファン回転数を調整できる。ここでは50℃で回転がスタート、60℃で50%、70℃で100%に回転数がアップするプロファイルを作った。早めに回転数を上げて冷却を強化する狙いだ

 まずは、手軽な手段を試してみよう。ZOTAC製ビデオカードを制御できる「FireStorm」アプリを使って、ファンの回転数をアップさせよう、というものだ。基本的には温度が高くなるほど、ファンの回転数が上がるように自動で制御されているが、オリジナルのファン制御プリセットを作ることも可能。70℃でファンの回転数が100%まで上がるように設定したが、GPU温度は下がったものの、GPUが出す熱自体が減るわけではないため、CPU温度はほぼ変わらず。動作音がアップするわりには効果は薄かった。

天板ファンを前面に移動させてエアフローを変化

標準の状態では、背面と天板に12cm角ファンを1基ずつ装着。両方とも排気なので、吸気強化を狙って天板のファンを前面に移動させてみる

 今回使用したPCケースのH500iは、標準で12cm角ファンが背面と天板に排気向きで取り付けられている。天板のファンを前面に移動させれば、吸気力がアップしてCPUやビデオカードが冷えるのではと考えた。

前面上部に設置だとCPUの温度が下がり、下部だとGPUの温度が下がる。非常に分かりやすい結果が出た。両方を冷やすのは1基では難しい

 CPUクーラーに風が当たりやすい上部、ビデオカードを冷やしやすい下部のそれぞれに設置したパターンを試した。設置した直線上にあるパーツは確かに冷えるようになったが、ファン1基ではそれが限界。CPUとGPUの両方の冷却力を強化することはできなかった。PCケース内部をより冷やすには吸気力アップが一番の課題と言える。

前面に2基ファン追加でCPUもGPUも冷やす!

 前面にファンを設置して吸気を強化することが効果的なのは前ページの結果から明らかだ。となれば、ここでは予算は必要だが、前面に2基のファンを追加するという、王道的な冷却強化手段を試したい。

ADATAとNidecの協業で生まれた静圧の高さが特徴の12cm角ファン。単体のほか、2個、3個パックもあり、ファンの増設に使いやすい

 選んだのは、ADATAのVENTO PRO 120 PWMだ。12cm角ファンで、かつて大ヒットしたNidecの「Gentle Typhoon」の設計を受け継いでおり、高い静圧と風量が特徴。単体に加え、2個、3個パックもあり、電源コネクタを連結できるデイジーチェーンに対応している点も選択した理由だ。

2基のファンを前面から吸気する向きで設置。これでCPUとGPUの両方に風が当たるため、両パーツとも温度低下が期待できる
ファンの電源コネクタを連結させるデイジーチェーンに対応し、複数のファンを取り付ける場合でもケーブルを取り回しやすいのもポイント
NZXTのH500iは右側面にファンのコントローラが搭載されており、標準で搭載されているファンも含めて一括で管理できるのが便利
コントローラに接続したファンは「CAM」アプリで制御可能。今回はSilentとPerformanceの両設定で温度をチェックした

 PCケースのH500iは、ファンコントローラが搭載されており、標準搭載の背面と天板のファンも含め「CAM」アプリで一括制御できる。静音重視の「Silent」設定と冷却重視の「Performance」設定の両方を試したが、測定したすべての箇所の温度が下がったのは後者だ。ただ、騒音は大きくなる。SilentでもCPUとチップセット温度はしっかり下がっており、十分“効果アリ”と言えるだろう。冷却力と動作音はトレードオフの関係にある。そのバランスを追求するなら、CAMアプリで独自のプリセットを作るのもアリだ。

14/12cm角ケースファンカタログ

正面だけではなく側面に2本のLEDラインがあり、鮮やかさを重視するなら注目。前モデルからファンブレードが大きくなり冷却力も向上。
ほかのパーツと干渉しにくいのが強みの薄型仕様ながら、8個のアドレサブルRGBも内蔵。流体軸受け採用で静音性と耐久性にも優れる。
ケーブル不要、スライドインで連結できる作りで、複数ファンでも設置しやすい人気モデル。三つのファン速度モードがあるのも特徴だ。
価格は高めだが、高い風量を持ちながら動作音は静かという文句の付けようがない完成度で12cm角ファンの定番になっている。
両面が光るのが最大の特徴。14cm角ファンなので風量も84.75cfmと大きい。NZXTのCAMアプリでの制御に対応する。
定番ファン「KAZE」シリーズの薄型モデル。厚さ15mmなので小型ケースにも組み込みやすい。ネジ穴には衝撃吸収ラバーパッドを採用。
【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 5900X(12コア24スレッド)
マザーボードMSI MPG X570 GAMING EDGE WIF(I AMD X570)
メモリCorsair Vengeance RGB PRO CMW32GX4M2Z3600C18(PC4-28800 DDR4 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードASUSTeK GTX1650-O4G-LP-BRK(NVIDIA GeForce GTX 1650)、ZOTAC GAMING GeForce RTX 3080 Trinity OC LHR(NVIDIA GeForce RTX 3080)
システムSSDWestern Digital WD Blue SN550 NVMe SSD WDS100T2B0C[M.2(PCI Express 3.0 x4)、1TB]
CPUクーラーサイズ 虎徹 MarkⅡ(12cm角、サイドフロー)
電源玄人志向 KRPW-PA1200W/92+(1,200W、80PLUS Platinum)
OSWindows 11 Pro
各部の温度3DMark StressTest(TimeSpy)を20回ループさせたときの最大値

[TEXT:芹澤正芳]

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 今回は、DOS/V POWER REPORT「2023年夏号」の記事をまるごと掲載しています。

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