パワレポ連動企画
【Haswell Refresh徹底紹介(3)】Coreシリーズ主要モデルを一斉ベンチマーク
~Haswell Refreshはどう違う?~
(2014/6/2 12:05)
自作PC専門誌「DOS/V POWER REPORT」の最新7月号の特集記事、「Haswell Refresh&Intel 9シリーズマザーボードを攻略せよ!」をまるごと掲載する当企画の3回目は、Coreシリーズの主要モデルをベンチマークテストする。
テストは新旧Haswellの動作周波数を同クロックに固定して行い、スペックに表れていない違いなどがあるかを検証する。
なお、この特集が掲載されているDOS/V POWER REPORT 7月号は現在発売中。7月号の内容は、約40ページにわたる今特集のほか、Windows 8.1 Updateの改良点や旧OSからのアップデートの解説、自作ユーザーのかゆいところに手が届く「逸品ケーブル図鑑」、髙橋敏也の改造バカ一台などが掲載。また、PC自作Q&A事典 2014とGIGABYTE POWER REPORTが付録として付いてくるなど、盛り沢山だ。
- DOS/V POWER REPORT 2014年7月号 Special Edition -
Coreシリーズ主要モデル一斉ベンチマーク
ここでは、Haswell Refreshには旧モデルと比較して、スペックに現われていない違いはあるのか、また、どのくらいの性能差があるのかをベンチマークテストで検証していく。
動作周波数を固定して新旧Haswellを比較
スペックシートを見る限り、Haswell RefreshとHaswellの違いは分からない。HaswellRefreshのほうがCPUコアの動作周波数が高い傾向にあるというだけである。GPUコアの周波数が違うモデルもあるが、それは、単にモデルごとの差別化として変えられているように見える。というわけで、両者の間には本当に動作周波数以外の違いがないのか、重箱の隅をつついてみよう。今回は、それぞれの最上位モデルであるCore i7-4790とCore
i7-4770Kを用意した。そのまま比較するだけでなく、動作周波数を3.5GHzで統一、Turbo Boost 2.0をOFFにして比較してみた。動作周波数を固定すれば、性能差が動作周波数だけで付いているのか否かが分かるはずだ。
まず、CPU-ZとGPU-ZでCPUコア/ GPUコアの詳細情報を確認してみる。やはり両者に根本的な違いはないようだ。動作電圧は4790のほうが少し高いが、近年のCPUは個体ごとに駆動電圧情報(VID)が調整されるので、その範囲内だろう。
さて、テストの結果を順に見ていこう。CINEBENCH R15は、CPUの性能の傾向がスコアに反映されやすいテストだ。CPU(シングルコア)は、あえて1スレッドのみでレンダリングを行なう。このスコアは各CPUのシングルスレッド性能の目安となるが、動作周波数の差がスコアに直結している。一方のCPUはマルチスレッドでレンダリングを行なう内容だ。定格動作時の4790は4770Kより、CPUで4.5%、CPU(シングルコア)で4.6%高いスコアとなっている。3.5GHz固定時はほぼ同じスコアだ。
続く、Sandra 2014-プロセッサの性能は、CPUコアの整数演算(Dhrystone)と浮動小数点演算(Whetstone)の処理性能を見るテストだ。定格動作時で比較すると、各スコア4790のほうが2、3%程度よい。3.5GHz固定時は、若干4770Kのほうがよいスコアになっている。よいと言っても、その差はごくごくわずかで測定誤差と判断してよいだろう。定格時の2、3%の差は、100MHzの動作周波数の差として妥当と言える。
Sandra2014-マルチメデイアの性能は、SSE/AVX命令を使ったSIMD演算の処理性能を見るテストだ。定格時はどの項目もやはり2、3%程度4790のほうがよいスコアだが、3.5GHz固定時はどちらもほぼ同じスコアだ。
Sandra 2014-暗号処理は、文字どおり暗号化/復号化の処理性能を見るテストだ。暗号化処理命令の演算性能のほか、メモリアクセス性能もかなり影響することが分かっている。どちらもAESではなぜか定格のほうがスコアが少し落ちているが、3.5GHz固定時のスコアはほぼ同じだ。
Sandra 2014-キャッシュとメモリーの結果もやはり3.5GHz固定時は両者の間に差は見られない。定格動作同士では、1次キャッシュのカバー範囲内から2次キャッシュのカバー範囲内まで、4790のほうが3%前後よいスコアだ。なお、1次キャッシュのカバー範囲内(32KB×4=128KB)は数値が大きいのでグラフで差がはっきり見えるが、割合で言えば傾向は大きく変わらない。
以上のように、CPUコアもキャッシュアクセスもメモリアクセスも、動作周波数を統一した場合には、新旧Haswellの間に差は見られない。
3.5GHz固定状態で、両者の消費電力も測定したが、4770Kがアイドル時47W、高負荷時(CINEBENCH中の最大)92Wであったのに対し、4790はアイドル時49W、高負荷時96Wと、4790のほうが若干高かった。おそらく違いは個体差によるものと思うが、少なくとも電力効率面でメリットはない。
これらのことから、Haswell RefreshとHaswellの性能差は動作周波数のみで付いていると見て問題ないだろう。半導体製造上の効率化なども行なわれていないようだ。
Core i7/i5/i3の新旧最上位6モデルを比較
続いて、Core i7だけでなく、Core i5とCore i3の新旧最上位モデルを用意した。動作周波数からだいたいは推測できてしまうが、それぞれの新旧の性能差、ブランド間の差を具体的に確認してみよう。
まず、CINEBENCH R15のスコアを見てみる。新旧モデルの差を各項目平均で見ると、Core i7が4.5%、Core i5が2.5%、Core i3で3%だった。シングルスレッドとマルチスレッドで傾向の差は見られなかった。一方、コア数/同時処理スレッド数による影響は大きく出ており、Core i7-4790はCore i5-4690より37%、Core i3-4360より109%、Core i5-4690はCore i3-4360より52%高いスコアを示した。
Sandra 2014のスコアを見よう。新旧モデルを各項目平均で見ると、新モデルはCorei7が2.6%、Core i5が2.5%、Core i3で3.1%よい。また、整数演算でCore i7-4790はCorei5-4690と大きく変わらないが、浮動小数点演算では50%程度よい。これはHTによる同時スレッド数の多さが効いている。Core i3-4360の整数演算のスコアはCore i5-4690の半分程度だが、浮動小数点演算では3/4弱にとどまる。ここはリアル4コアによる4スレッド同時実行と、2コア+HTによる4スレッド同時実行による差が強く現われている。
PCMark 8は、実際のアプリケーションを使ってPCで行なうさまざまな作業をシミュレートしてスコアを出す。ここでは家庭向けPCを想定した「Home」を実行した。結果はご覧のとおり、新旧CPUの差はごくわずか。システム全体の性能を計測する目的のテストであるためさまざまな要素が含まれており、CPUの周波数が100MHz程度上昇しただけではこのような結果になるのも仕方がないだろう。それでも詳細スコアを見ると、Writing(テキスト編集)やPhoto Editing(写真編集)、Video Chat encording v2(ビデオチャット配信用エンコード)といった処理では差が付いている。新モデルをその3項目平均で見ると、Core i7が2.3%、Core i5が2.3%、Core i3で1.9%よいスコアだった。また、Photo Editing、Video Chat encording v2ではCPUブランドによる差が大きいことも分かる。
最後に3DMarkで3D性能を見てみよう。GraphicsはGPUコアの描画性能、Physicsは主にCPUコアの演算性能が影響する。Core i7は、GPUコアの最高クロックが新旧で異なり、4770Kが1,250MHz、4790が1,200MHzと前者のほうが動作周波数が高く、それがGraphicsでの3.1%のスコア差となって現われており、総合スコアも4770Kのほうがよくなっている。新旧でGPU動作周波数の違いがないCore i5も逆転しているが、差はわずかでしかなく、誤差の範囲内と言えるだろう。新モデルをPhysicsで見た場合は、Core i7が1.5%、Core i5が2.1%、Core i3が2.7%よいスコアを出している。
各ブランドの新旧最上位モデルの差をいちいちパーセンテージで出したのは、同じ100MHzの差でも、もともとの動作周波数が比較的低いCore i3のほうが、その効果が大きいのではないかという推測をしていたからだ。しかしながら、はっきりした傾向はなく、測定誤差に埋もれてしまうような程度でしかなかった。結果として、現状CPUを購入する際には、Haswell RefreshかHaswellであるかはあまり意識せず、純粋に動作周波数などのスペックとコストを天秤にかけて選べばよいだろう。
まとめ
●Refreshしたのは名前だけ
●性能は動作周波数などのスペックを反映
●DIY市場の活性化が主目的か
新旧Haswellの間には、性能的にも電力効率的にも違いはないと言ってよいだろう。わざわざ新しい開発コードネームを用意し、ハデな展開をした理由は不明だが、Intel 9シリーズチップセットを投入する機会に、DIY市場を盛り上げたいという意図があると思われる。
実際、選択肢が増え活性化につながっているので歓迎したいが、行き過ぎてしまうとユーザーを混乱させるだけに終わってしまう。今後GPUのような安易なリネーム商法に走ることがないよう願いたい。
【検証環境】
マザーボード:ASUSTeK Z97-DELUXE(NFC & WLC)(Intel Z97)、メモリ:サンマックス・テクノロジーズ SMD-16G28CVLP-16K-Q(PC3-12800 DDR3 SDRAM 4GB×4 ※2枚のみ使用)、SSD:OCZ Storage Solutions Vector 150(Serial ATA 3.0、MLC、240GB)、電源:Enermax REVOLUTION87+ ERV750AWT-G(750W、80PLUS Gold)、OS:Windows 8.1 Pro 64bit 版、アイドル時:OS起動10分後の値、高負荷時:CINEBENCH R15実行時の最大値、電力計:Electronic Educational Devices Watts Up? PRO
[Text by 鈴木雅暢]
【DOS/V POWER REPORT 7月号は5月29日発売】
★第1特集「Haswell Refresh&Intel 9シリーズマザーボードを攻略せよ!」はもちろん、第2特集「Windows 8.1 Updateの正しい出会い方」や髙橋敏也の改造バカ一台など、多数の記事を掲載
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