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Seagateから世界最速クラスのPCIe 4.0対応SSD「FireCuda 530」に4TBモデルが登場!書き込み性能は現役トップ!!

ゲームやクリエイティブユース向けに最適化した最速SSDを徹底検証 text by 北川 達也

FireCudaブランドの最上位SSD「FireCuda 530」シリーズ。記憶容量500GB、1TB、2TB、4TBの合計4モデル構成

 老舗ストレージメーカー、Seagateが同社のPCI Express 4.0対応NVMe SSDとしては2世代目となる「FireCuda 530」シリーズを投入した。PCゲーミングや映像編集での利用を想定したハイパフォーマンスモデルで、現在のコンシューマ向けSSDの中において世界最速クラスのピーク性能を誇るだけでなく、クリエイターなどが扱う動画などの大きなデータを高速かつ快適に利用するための独自のとがったチューニングがなされている点が注目ポイントだ。さらに、2021年9月にNVMe SSDとしては最大容量クラスの4TBモデルが存在するのもポイント。今回はそのサンプルを入手することができた。ここでは、4TBモデルを中心に、性能や使い勝手を検証結果から詳細にレポートする。

現役世代最強クラスのスペックを実現

 FireCuda 530シリーズは、500GB、1TB、2TB、4TBの4種類の記憶容量のモデルで展開される同社の第2世代PCI Express 4.0対応SSDである。第1世代のFireCuda 520シリーズと比較してさまざまな改良が施されており、搭載コントローラとNAND型フラッシュメモリはすべて最新のものへと一新。FireCuda 530では、Phison製の最新コントローラ「PS5018-E18」と最新世代の176層3D TLC NAND型フラッシュメモリを採用している。

500GB/1TBは片面実装で設計されているが、2/4TBモデルでは両面実装となっている。PS5への搭載など、ヒートシンクを利用するときは両面用のものを用意したい
4TBモデルの基板。バッファメモリはDDR4 DRAM。容量は非公開だが、記憶容量の1,000分の1の容量、つまり500GBモデルなら512MB、1TBモデルなら1GB、2TBモデルなら2GB、4TBモデルなら4GBが一般的
コントローラにはSeagateのオリジナル型番が印刷されているが、中身はTSMCの12nmプロセスで製造されたPhisonの8チャンネルのコントローラ「PS5018-E18」。arm Cortex R5を3コア搭載
最新の176層3D TLC NAND型フラッシュメモリ。1TB/2TBモデルではシリコンダイあたり512Gbit、4TBモデルではシリコンダイあたり1TbitのNAND型フラッシュメモリが利用されているものと思われる

 これによって性能が大幅に向上しており、第1世代のFireCuda 520シリーズは、最大読み出し速度5,000MB/s、書き込み速度が4,400MB/sだったが、FireCuda 530シリーズでは、PCI Express 4.0の帯域をほぼ使い切る公称最大読み出し速度7,300MB/s(1TB/2TB/4TBモデル)、書き込み速度は6,900MB/s(2TB/4TBモデル)を実現。この速度は、現在のコンシューマ向け製品の中では現役最速の性能を誇っている。1TBモデルの公称最大書き込み速度も6,000MB/sと高速で、同容量のNVMe SSD中では、現役トップクラスの性能だ。

 FireCuda530シリーズは、耐久性も申し分ない。4TBモデルで5,100TBW、2TBモデルで2,550TBW、1TBモデルで1,275TBW、500GBモデルで640TBWという高い耐久性を備えている。さらに、もしものときに備えるデータ復旧サービス「Rescueデータ復旧サービス」が付帯している。このサービスは、3年間のうち1回、無償でデータ復旧サービスを受けることができるサービスだ。

【FireCuda 530の主なスペック】
型番ZP4000GM30013ZP2000GM30013ZP1000GM30013ZP500GM30013
容量4TB2TB1TB500GB
インターフェースPCI Express 4.0 (x4)
プロトコルNVMe 1.4
コントローラPhison PS5018-E18
NAND型フラッシュMicron 3D TLC
フォームファクターM.2 2280-D2M.2 2280-D2M.2 2280-S2M.2 2280-S2
Sequential Read
(Max)
7,300MB/s7,300MB/s7,300MB/s7,000 MB/s
Sequential Write
(Max)
6,900MB/s6,900MB/s6,000MB/s3,000 MB/s
Random Read
(Max)
1,000K IOPS1,000K IOPS800K IOPS400K IOPS
Random Write
(Max)
1,000K IOPS1,000K IOPS1,000K IOPS700K IOPS
TBW5,1002,5501,275640
Rescue
データ復旧
サービス
3年
保証期間5年

リード/ライトともに実測6,900MB/sオーバーの速度は現役最速

 ここからは、実際の性能をチェックしていこう。FireCuda 530は、1TB、2TB、4TBの3種類のモデルを用意した。また、ベンチマークソフトには、最大速度を計測する「CrystalDiskMark 8.0.4」とアプリケーションの起動や操作などをシュミレートすることによってストレージの体感性能を計測する「PCMark 10 Full System Drive Benchmark」を使用したほか、「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマーク」のゲームロード時間を計測した。

 テスト環境は、以下にまとめておくが、SSDにはマザーボード付属のヒートシンクを装着し、バラック状態で行なっている。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-11600K(6コア12スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX Z590-F GAMING WIFI(Intel Z590)
メモリDDR4-3200 32GB
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 16GB×2)
システムSSDM.2 NVMe SSD(PCI Express 4.0 x4)、512GB
OSWindows 10 Pro 64bit版

 まずは、最大速度を確認できるCrystal Disk Markの結果から見ていく。シーケンシャルリード(SEQ1MQ8T1)は、テストした全モデル共通で7000MB/s弱、シーケンシャルライト(SEQ1MQ8T1)は、2TB/4TBモデルで7000MB/s弱、1TBモデルは約6100MB/sだった。この速度は、言うまでもなく、現在最速クラスの性能であり、とくに2TB/4TBモデルのシーケンシャルライト性能は、現役最速といっても間違いではない。加えて、1TBモデルのシーケンシャルライト(SEQ1MQ8T1)性能もすごい。1TBモデルで6000MB/s以上の速度を実現している製品は、実はほとんどないからだ。

Crystal Disk Markの計測結果

 なお、1TBモデルのシーケンシャルライト性能が2/4TBモデルと比較して劣っているのは、並列数の差である。FireCuda 530の2TBモデルは、512Gbit/ダイのNAND型フラッシュメモリを32基、4TBモデルでは1,024Gbit/ダイのNANDメモリを32基搭載し、32並列での動作を行なっているが、1TBモデルは512Gbit/ダイのNAND型フラッシュメモリを16枚基搭載となっており、16並列動作となる。このため、2/4TBモデルのシーケンシャルライト性能は、1TBモデルを上回っているのだ。同様に1TBモデルのランダムライト(Q32T1)の性能は、2/4TBモデルよりも約120MB/sほど低い。これも並列数の差からきていると推測される。

 また、2/4TBモデルのシーケンシャルライトはほぼ公称値どおりだが、シーケンシャルシードが公称値に届いていない。これはIntel環境でベンチマークを実行したからと推測される。これまでにさまざまなNVMe SSDのテストを行なったが、同様の傾向が見られている。AMD環境で実行すると異なる結果になる可能性があることを付記しておきたい。

 次に体感性能を計測するPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果だが、1TB/2TB/4TBの全モデルで3,200前後のスコアだった。このスコアは、非常に優秀で使用感も現役トップクラスのものだ。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの計測結果

 Adobe系アプリ、Office系アプリ、ゲームとして集計したPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの個別処理時間の詳細結果も、優れたものとなっているほか、ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレベンチマークのゲームロード時間についても、ほぼ横並びの結果となっている。FireCuda 530シリーズでは、記憶容量の違いによる使用感に大きな差は出ていない。

PCMark 10 Full System Drive Benchmark―Adobe系アプリの詳細結果
PCMark 10 Full System Drive Benchmark―Microsoft Officeの詳細結果
PCMark 10 Full System Drive Benchmark―ゲームの詳細結果
ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク―起動時間の計測結果

TLCダイレクトライトを活用し大容量データ向けにチューニング

 次にFireCuda 530の最大のトピックと言えるSLCキャッシュの挙動と独自のチューニングについて詳しく見ていこう。このテストでは、SLCキャッシュが枯渇するまでシーケンシャルライトを実施しただけでなく、同時にSSD単体の消費電力を計測することでSLCキャッシュのクリアをいつ行なっているか、SLCキャッシュが枯渇したときにどのような動作になるのかなどをつまびらかに検証した。

 詳しく調べてみると、非常に興味深い挙動が見られた。大きく四つのポイントがある。一つ目は、FireCuda 530のSLCキャッシュの最大容量は、記憶容量の90%ぐらいであること。二つ目が、SLCキャッシュ内のデータは基本的に保持したままで即時クリアを行なわないこと。三つ目が、連続書き込み時の最大書き込み容量に制限が付けられていること。四つ目は、連続書き込みを行なって最大容量に達した場合に、TLC領域へのダイレクトライトを行なっていると見られることだ。

消費電力と記録速度の推移

 まず、SLCキャッシュの最大容量が記憶容量の90%であることと、SLCキャッシュ内のデータを即時クリアを行なわないことを検証したのが、上のグラフである(注:テストの負荷が非常に高いため、サーマルスロットリングの影響を排除すべく、ここでは2TBモデルを使用した。基本的な挙動は4TBモデルも同様)。

 このグラフを見ると分かるが、2TBモデルに対して170GBのデータの記録→3分停止を繰り返すと、合計約570GBの容量を記録するまでは最大速度(SLCキャッシュへの書き込み)が維持されている。この容量は、TLC換算で約1,710GBに相当する。つまり、90%ぐらいを使っていることが分かる。

 一方で、消費電力について見ていくと、約570GBの容量を記録するまでは、書き込み終了と同時にすぐに消費電力が急降下する。これは、「SLCキャッシュからTLC領域へのデータ移行を行なっていない」ことを示している。また、SLCキャッシュが完全に枯渇した後は、書き込み終了後に約66秒間、高い消費電力を維持していることから、この間にSLCキャッシュからTLC領域へとデータを移動させていることが推察できる。

 ただし、TLC領域へのデータの移動は時間が短く、SLCキャッシュをすべてクリアするほどものではないのではないかと予想される。次の書き込みで約40GB強ほどSLCキャッシュに記録できていること見ると、SLC換算で40GB強、TLC換算で120GB強ほどデータを移動していると推測される。

シーケンシャルライト時の転送速度の推移(4TBモデル)
シーケンシャルライト時の転送速度の推移(2TBモデル)
シーケンシャルライト時の転送速度の推移(1TBモデル)

 次に連続書き込み時の最大書き込み容量に制限が付けられていることと、TLC領域へのダイレクトライトについて見てみよう。これを検証したのが、シーケンシャルライト時の転送速度の推移だ。4TBモデルは20分間、2/1TBモデルは10分間のシーケンシャルライトを実行し、書き込み速度をグラフ化した。

 4TBモデルと2TBモデルのグラフがとくに分かりやすいが、FireCuda 530シリーズでは、書き込み速度の低下が2回生じている。1度目の速度低下は、言うまでもなくSLCキャッシュを使い切ったタイミングだ。4GBモデルは約415GB、2TBモデルは約210GB、1TBモデルは約105GBで書き込み速度が低下している。

 前述した書き込み速度と消費電力の推移では、2TBモデルの場合、約570GBまでSLCキャッシュへの書き込みが行なえていたが、今回の連続書き込みでは、2TBモデルの場合、約210GBしか書き込めていない。つまり、2TBモデルの場合、約210GBでSLCキャッシュへの記録が一旦打ち切られると考えられる。これが、FireCuda 530の連続書き込み時のSLCキャシュの最大書き込み容量の制限である。

 次にSLCキャッシュへの書き込みが打ち切られてからの書き込みについてだが、これは、TLCキャッシュへのダイレクトライトと見られる。理由は、二つある。一つ目は、FireCuda 530に採用されている176層3D TLC NAND型フラッシュメモリのシリコンダイあたり書き込み速度が120MB/sぐらいであり、これを前提に32並列で書き込みを行なうと3,840MB/sの速度が得られることだ。この速度は、ほぼ今回の2TBモデルの書き込み(平均3,792.7MB/s)と符合する。

 もう一つが、2度めの書き込み速度が低下した地点の総記録容量が、TLC換算にすると搭載NAND型フラッシュメモリのほぼ全容量となることだ。以上の2点から、FireCuda 530は、連続書き込みをえんえんと行なうとSLCキャッシュへの書き込み→TLC領域へのダイレクトライト→SLCキャッシュからTLC領域へデータを移しながらのライトと書き込みが推移していくと推察できる。

大きなデータを日常的に扱う用途に最適!とがったチューニングが光る意欲作

 PCI Express 4.0対応SSDが、一般的になり、多くのメーカーから対応製品が登場してきているが、FireCuda 530シリーズは、その中でもかなりとがったチューニングが施されている製品と言える。Seagateが「クリエイターやPCゲーマー向けに最適化」とうたうことも納得の製品だ。

 なかでも2/4TBモデルの大容量モデルは、シーケンシャルライト性能が非常に高く、たとえば、4TBモデルでは、7,000MB/s近くの速度で400GB強も書き込みでき、速度が落ちても平均3,800MB/sの速度で合計3TB強もの領域を書き込みできる。4Kや8K動画などの容量の大きなデータを日常的に扱う用途には、とくに向いた製品と言えるのではないだろうか。また、SLCキャッシュを基本的に保持する仕様であるため、大容量のPCゲームでも多くの場合は、SLCキャッシュ内でやり取りできることも大きなメリットになるだろう。

 唯一欠点を挙げるとすれば、性能が高いため発熱も大きめな製品であることだ。なかでも2TB/4TBモデルは、32並列で動作するため1TBモデルよりも消費電力が高めで発熱も大きめとなり、基本的にヒートシンクの装着は必須だ。FireCuda 530は、85℃でサーマルスロットリングが発動するように設定されているので、ヒートシンクを装着しても80℃を超えるような温度上昇が頻繁に見られる場合は、必要に応じてより高性能なヒートシンクに交換することを強くオススメしたい。なお、日本国内では10月にヒートシンク搭載モデルも発売予定とのこと。ラインナップは通常版と同じく500MBから4TBまでの4モデルが用意されている。

「FireCuda 530」購入キャンペーン情報

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[制作協力:Seagate]