夏のイチオシ!PCパーツ特集

先にヤラれるのは人間かHDDか。40℃に迫る室温でHDDをシバいて温度推移を追ってみた

最新のNAS用HDDはヤワじゃない! Seagate「IronWolf」で酷暑の負荷テスト!! text by 石川ひさよし

 暑い暑い2022年8月某日。昨今の情勢から「電気代の高騰」や「節電要請」なんてことも話題になっている今夏だが、PC DIYファンにとっては酷暑も電力事情もなかなか痛いところ。“熱”という点に着目してみれば、CPUやビデオカード、超高速タイプのSSDあたりが当然気になるところだが、「HDDは熱に弱いぞ」というイメージをお持ちの方もいるのではないだろうか。

 実際のところ、そう感じる方の多くが、1990年代、2000年代のHDDが熱により壊れた記憶を引きずっているのだと思われる。確かにあの頃のHDDは、回転数も高く消費電力も今より大きかったので、なかなかの熱源になっていたが、今現在のHDDはどうなのか。最近、HDDの温度計測をあまり試した記憶もないので、盛夏の今、テストとしては過酷な条件ではあるが「時として日常での利用シーンでも起こりえる」シチュエーションを設定して、温度計測テストを実施してみた。

 今回の企画では、NASに内蔵したHDDの温度推移と、PCに内蔵したHDDの温度推移をそれぞれ計測する。ただし、フツーにテストをしても今時のHDDでは驚くような温度の変化は見られないだろう。そこで、「夏の日差しがガッツリ当たる部屋で気温がとくに高くなる午後にテスト」、「PCとNASを設置した部屋のエアコンはテスト開始2時間前から完全OFF」という条件を課すことにした。

 一見ムチャな話にも見えるが、エアコンを切って外出している最中に、「PCの自動バックアップやアップデートが走った」、「時間のかかるファイル処理をセットしたのにエアコンを消して外出してしまった」、「リモートで自宅のストレージにアクセスしなければならなかった」といったことは、油断も含んではいるが十分に起こりえる。ましてや昨今の電力事情を考えるとなおのことだ。

 そんなテストのために用意したHDDだが、Seagate Technologyの「IronWolf」の4TBモデル(ST4000VN008)を2台用意した。NAS向けHDDの代表的モデルである。

HDDはSeagateのIronWolfを2台用意した。NAS環境、PC環境ともにRAID 1を構築してテストを実施している


NAS編――筐体のサイズ感はHDD的にはシビアだが空冷の構造は効率的

 まずはIronWolfの主用途であるNASに組み込んで検証した。NASはPCと比べて筐体サイズが小さい。デスクトップPCの場合、ミドルタワーケースとSFF(スモールフォームファクター)ケースでは後者のほうが冷却にシビアである、ということはよく知られているが、コンパクトな個人向けNASもサイズ感的には同様の傾向だ。ただし、小さな筐体に複数台のHDDを内蔵することを主目的にデザインされているだけあって、HDDベイに直接風を送り込める位置にファンを置くレイアウトが一般的で、エアフローは十分に考慮されている。筐体の小ささとエアフローのバランスや、室温の影響は実際のところどうだろうか。

 テスト当日は空模様がややすぐれず、気温は33℃。直射日光が差し込むテスト部屋だが日差しが若干弱めだったこともあり、室温は33→34℃の推移だった。エアコンは付けておらず、扇風機の類もすべて止めていたので、室内のエアフローはほぼなしという状態だ。

テストに使用したNASはQNAP「TS-233」。2ベイタイプの個人・家庭向け製品だ。ケースを開いてベイにアクセスし、マウンタを介してHDDを組み込む。2台のHDDの両方にファンの風が直接当たる構造

 テスト機材だが、NAS本体は、QNAPの個人向け製品で2ベイタイプの「TS-233」を使用し、2台のIronWolfでRAID 1を構築して、全容量を単一のボリュームとして確保。別のPCからこのNAS上に作った共有フォルダに接続し、これをネットワークドライブとしてマウントし、このネットワークドライブに対して「CrystalDiskMark 8」でベンチマークテストを行なうことで均一な負荷をかけている。RAID 1となっているので、内蔵した2台のHDDにはおおむね均等に負荷がかかる状態だ。

 なお、テストに使用したCrystalDiskMark 8だが、デフォルトでのテストサイズは1GiB、テスト回数は5回となっているが、負荷がかかる時間を長く取るために、テストサイズは64GiB、テスト回数は9回とした。1GbEの帯域限界があるため、1回の実行にかかる時間(=負荷がかかる時間)は約30分間。各セット間に10分のアイドルを設け、計3回テストを実行している。HDD温度については、NASのユーティリティ上で計測している。

TS-233のストレージ/スナップショットの管理画面。画面上イラストのベイをクリックすると、取り付けてあるHDDの健康状態が画面下部のディスク情報の欄に表示される。NASがIronWolfが内蔵されていることを認識すると、IronWolfのロゴが表示される。さらに、「IronWolf Health Management」も利用可能で、[ヘルス]をクリックすると別ウィンドウがポップアップ(画面右。この画面はテスト実行中のもの)。IronWolf Health Managementによる診断を実行することができる(スケジュール実行も可能)

 テストに使用しているIronWolfには、対応NASのOSと連係し、HDDの状態を監視し、健全性を守るための保守機能「IronWolf Health Management(IHM)」が搭載されており、今回使ったNASはIHMに対応している。今回の一連のテストでは、CrystalDiskMarkによる負荷テストが1回終わるたびにIHMのヘルステストを手動で実行し、エラーの有無も確認している。

 では結果を見てみよう。NASのテストは負荷テスト前後に確認した数値を下表にまとめた。

【NASでの負荷テストの推移】
時間経過状況室温HDD_1
温度
HDD_2
温度
CPU温度システム
温度
0秒負荷テスト1回目開始時33℃32℃32℃44℃35℃
30分負荷テスト1回目終了
→ヘルステスト終了時
33℃41℃39℃44℃38℃
40分2回目開始時34℃41℃40℃46℃38℃
70分負荷テスト2回目終了
→ヘルステスト終了時
34℃43℃41℃48℃39℃
80分3回目開始時34℃43℃41℃45℃39℃
110分負荷テスト3回目終了
→ヘルステスト終了時
34℃44℃42℃46℃39℃
120分10分放置後34℃43℃42℃46℃39℃

 HDD温度は開始時32℃。1回目のテストの終了後にHDD_1が41℃まで上昇し、その後はテスト実施ごとにじりじりと上昇。110分後にはHDD_1の温度が44℃に達した(PCでのテストについては後述するが、PC内蔵時よりも温度上昇が大きい)。なお、システム温度(おそらく基板上のセンサー温度)が開始時35℃、最大39℃で4℃の上昇となっていた。

 また、各テストの間に10分のアイドルを設けているが、この間でのHDD温度にはほとんど変化が見られなかった(3回目のテスト後のみ1℃下がっていた)。負荷テスト中もインターバル中もファンの回転数に大きな変動はなかったので、これはNASのファン回転数制御のしきい値に達していなかったのかもしれない。IHMによるヘルステストは3回とも問題なく終了しており、その意味でも、HDDの動作温度として40℃台は問題ないと見てよさそうだ。


PC編――最近のPCケースだと、HDDは熱しにくく冷めにくい!?

 次にPCでのテスト結果を見てみよう。HDDは引き続きIronWolfを2台使用し、Intel Rapid Storage Technologyを利用してRAID 1を構築した。

テスト環境のPC。メッシュを多用した冷却重視タイプのPCケース、Fractal DesignのMeshify 2 Compactをベースとした――が、室温が圧倒的に高かったため、その長所は発揮し切れなかっただろう。密閉型ケースだったらどうなっていたのやら……

 PCで日常利用するHDDとしては、Seagateの場合は「BarraCuda」を利用するのが一般的ではあるが、SSDが広く普及し大容量化が進む昨今、あえてHDDをPCに搭載するなら万全の態勢で臨みたいという人も少なくない。そんな場合には、より高性能・高信頼のNAS向けHDDをRAID 1で使うのも大いにアリだ(今回はNASでのテストも実施することになっていたのでIronWolfを採用した、というところもあるが)。

 テストに使用したPCのHDD以外の検証機のスペックは以下のとおり。

【検証環境】
CPUIntel Core i5-12400(6コア12スレッド)
メモリDDR4-3200 16GB
(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB×2)
マザーボードASUSTeK TUF GAMING Z690-PLUS WIFI D4(Intel Z690)
CPUクーラーサイズ KOTETSU Mark II Rev.B
システムSSDM.2 SSD 1TB(PCI Express 3.0 x4)
※マザーボード標準ヒートシンク使用
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 3060 Ti Founders Edition
電源Cooler Master V850 Gold V2(White Edition)(80PLUS Gold、850W)
ケースFractal Design Meshify 2 Compact Clear Tempered Glass
OSWindows 11 Pro

 PCでの検証当日は期待どおり(!?)の猛暑日で、室外の気温は35~36℃、室温はスタート時36℃で、4回目のテスト時は実に38℃に達していた。CPUクーラー、ビデオカード、電源ユニットにファンが取り付けられているほか、PCケースには14cm角ファンと12cm角ファンを前後に1基ずつ搭載している状態と、自作PCのケース内エアフローとしては標準的かつ(通常であれば)必要十分なものだ。

シャドーベイに固定した2台のHDD。ベイとベイの間の隙間は狭め。今回はCPU/GPU/SSDのエアフローを確保する標準的な位置にケースファンを吸気向きで取り付けたが、最下部にケースファンを取り付けなければHDDに直接外気を送り込むのは難しい

 NASと同様に、HDD(2台構成のRAID 1)にはCrystalDiskMark 8で負荷をかける。設定も同じくテストサイズは64GiB、テスト回数は9回とした。1回のテスト時間は14分程度となり、テスト終了後5分のアイドル状態を設けつつ4セット行ない、計測時間は全体で75分となった。

 まずはHDDを含め、PC各部の温度グラフをご覧いただこう。なお、温度や転送レートの記録にはHWInfoを利用したが、RAIDを組んだ際に記録されるHDDの温度が1台分のみだったため、温度推移は1台分のみの値となる。

PC各部の温度推移。積極的にファンで冷やせるCPUとGPUは、テスト中のみ温度が上昇(CPU)、および全体を通しておおむね横ばい(GPU)なのに対し、ケース内エアフロー頼みのHDDとSSDはじりじりと上がり続けていていた

 42℃で開始したHDD温度は1セット終了時で+2℃の44℃、2セット終了時で45℃(直後に46℃)、3セット終了時で47℃に上昇し、それ以降は47℃で安定した。開始から終了までの温度変化は5℃。意外と温度は上がらなかった。そしてIronWolfの仕様では稼働時のサポート最大温度が65℃なので十分な余裕があった。

 そのほか各部を見てみると、M.2 SSD(マザーボードのヒートシンクを装着)はHDDと似たような温度推移を見せた。また、ビデオカード(GPU)はCrystalDiskMarkの実行ではほぼ負荷ゼロだが地味に温度が上昇していたが、これはケース内温度がじわじわと上がった結果によるものと思われる(ケース内の温度上昇は+2℃程度と見られる)。CPU温度は激しく上下しているが、CrystalDiskMark実行時には10℃程度急上昇するものの、インターバル間におおむねもとの温度に戻るという傾向だった。ヒートシンクにファンで直接風を当て、かつその熱気を即PCケース外に排気するエアフローになっているのが奏功しているのだろう。

 HDD温度は高めに出ていたものの温度の変化自体は思ったよりも小さい、という状況ではあったが、HDDの性能に影響はあっただろうか。転送速度のログを取ったのが次のグラフだ。

HDDの転送レートの推移。繰り返し負荷をかけてHDDの温度がじりじりと上がっても、40℃台では変調はみじんも見られない

 こちらのグラフのとおり、4セットのテストのグラフの形はほとんど変化がない。シーケンシャルリードではおおむね194MB/s、シーケンシャルライトでは191MB/sで推移している。つまり、40℃台ではHDDの性能にもなんら影響がないということだ。

 今回の検証では、室温が38℃前後、HDD自体の温度が50℃に近付く状態でも性能に影響は出なかったので、ひとまずは「時として日常での利用シーンでも起こりえる」シチュエーションにも耐えうると考えられそうだ。ただし、もう一つ気付いた点もある。テストが完了した後、CPUやビデオカードの温度はすみやかに下がっていくが、今回の検証環境ではHDDの温度がかなり長時間下がらないままだったことだ(今回は詳しく計測していないがSSDも同様だった)。4回目のテスト終了時のHDD温度は47℃だが、その後5分経過(アイドル状態を維持)しても47℃のまま。その後はようやく下降に転じ、テスト後30分経過で44℃まで下がるという状態だった。これについて考察しておこう。

 今回使用したPCケースのファン構成は先に説明したとおりだが、HDDやSSDには、CPUやビデオカードのように直接風を当てて冷やすファンはない。また、CPUクーラーのファン、電源ファン、ビデオカードのファンはどれも対象のパーツの温度で回転数を制御されているが、ケースファンはCPU温度によって制御されていた。各ファンはそれぞれ各部の温度が下がると個別に回転数を落としていくわけだが、CPU温度と連動するケースファンは、ケース内の温度やHDD/SSDの温度が高い状態であってもCPUの温度に応じて回転数を落としてしまう、というわけだ。

PCの側面。左側面(表面)はケーブルをきれいに整理すると非常にすっきりする。HDDは右側面(裏面)からアクセスする構造で、ケース最下部、電源の横にシャドーベイが収納されている。また、ケースファンの制御のトリガーはCPU温度(デフォルト設定)となっていた

 今回、テストは70分強(+経過観察時間)としたが、たとえばフルバックアップのようなTBサイズのデータコピーなどで長時間連続して稼働し続ける場合には、さらにHDD温度が上昇する可能性も十分にある(SSDも似た状況になるだろう)。そう考えると、PCケース前面側に、HDD/SSDの付近に効率よく外部から取り込んだ風を直接当てられるような位置にケースファンを追加したほうがより安心だろう。また、そのファンは定回転のものを組み合わせたり、可能ならマザーボードのファン回転数制御でHDD温度など直接冷やしたいパーツの温度を監視する設定にしたりできればさらに安心だ。

 ただ、最近の比較的コンパクトなサイズ感のATXタワーケースの場合、HDD用のシャドーベイ付近のエアフローが確保しにくいレイアウトになっていたり、シャドーベイ周辺を余ったケーブルの退避・収納場所に使っていたり、といった可能性がある。PCでHDD RAIDを活用したい場合、HDDの負荷も高くなるような使い方をする場合には、HDD周辺の空間にゆとりがあり、直接風を送り込める位置にケースファンが取り付けられるものを選ぶと、万全のエアフローが確保できるようになるだろう。

 なお、エアコンOFFでのデータをご紹介したが、エアコンを付けていたらどうだろうか。エアコンON、室温26℃で計測した結果がこちらだ。

エアコン使用時のPC各部の温度推移。室温は26℃で安定、HDD温度は10℃程度低い
エアコン使用時の転送レートの推移。エアコン未使用時と差はない

 こちらは1セットのみだが、HDD温度は開始時34℃で終了時36℃、終了後10分経過(アイドル状態を維持)では36℃のままだったがさらに20分経過した時点で35℃に下がった。室温が低い場合も、HDD温度の上昇/下降の傾向は先のエアコンOFF時とあまり変わらず。負荷が下がった後にHDDの温度が下がるかどうかは、やはりファンの風が当たるか当たらないかのほうが重要であるように思える結果ではある(そもそもの温度が圧倒的に低いが)。

スペックを見ていくとこれだけ違う。デスクトップ向けHDDとNAS向けHDD

 今回のテストでは、高過ぎる室温下におけるNASやPCに内蔵したHDDの温度は即刻製品の耐久性に害があるレベルにはならなかったものの、ミドルタワーケースのPCと比べるとNASのほうが高温になりやすい、ということが分かった。IronWolfはNAS向けのHDDで、NASでの運用というPC内蔵よりもシビアな環境・運用が想定された設計。その辺りをスペックシートと照らし合わせながら見てみよう。

NAS向けの「IronWolf」と一般的なPC向けの「BarraCuda」。PC内蔵用としてはコスパに優れたBarraCudaでも十分だが、より安定・安全・安心を追求するなら、PC内蔵用としてもIronWolfは有効だ

 冒頭にも述べたように、SeagateはデスクトップPC向けにBarraCuda、NAS向けにIronWolfと、用途別に異なる製品をラインナップしている。もちろん同じ容量でもスペックが異なる。

【4TBモデルでの比較】
IronWolfBarraCuda
対応ドライブベイ1~8ベイ
RVセンサー搭載
ロード/アンロード・サイクル600,000300,000
通電時間8,760時間2,400時間
作業負荷率制限年180TB年55TB
平均故障間隔1,000,000時間記載なし
製品保証期間3年2年

 よく知られるハードウェアの違いとしては「RVセンサー」の搭載/非搭載が挙げられるだろう。これは振動を感知し、ヘッドの動きに補正をかけるものだ。NAS用HDDにRVセンサーが搭載されているのには理由がある。NASはもちろん1ベイや2ベイといった一般的なPCと同じ程度のものもあるが、それ以上、4ベイ、8ベイ、12ベイ以上といったようにより多くのHDDを搭載できるものもある。回転するディスク(プラッタ)が詰まった物体(HDD)が、さらに何台も密に搭載されれば、個々のHDDに起因するわずかな振動も、全体として累積・増幅される可能性が高い。このような環境では、RVセンサーによる振動補正機能が各HDDに備えられていれば安心感が高い。

 そのほかにも重要なスペック上の違いがあるのでピックアップしていこう。まずは年間通電時間に注目していただきたい。年間、何時間通電するのかというものだ。デスクトップ向けのBarraCudaは2,400時間だが、NAS向けのIronWolfは8,760時間だ。これを1日に直すと前者は7時間、後者は24時間。NAS向けHDDは年中、電源を落とさない運用を想定している。

 ちなみに、NAS用のIronWolfには平均故障間隔(MTBF)という仕様も公開されている(BarraCudaのスペックシートにはない)。こちらは100万時間だ。また、製品保証期間にも違いがあり、デスクトップ向けのBarraCudaが2年間、NAS向けのIronWolfは3年間とより長い。そして今回のテーマだった稼働時のサポート温度も異なる。デスクトップ向けのBarraCudaは60℃、NAS向けのIronWolfは70℃だ。IronWolfのほうが熱に対する耐性も高いということになる。

 また、160を超える品質テストが行われているというSeagateのHDDだが、製品のテストは75℃という非常に高い温度下で行なわれているとのことだ(Seagateの品質テストについてはこちらを参照)。日本の木造家屋、酷暑日&エアコンなしという条件をはるかに超える温度でのテストをクリアしているということも考えると、温度的なマージンはまだまだあると見れるだろう。

HDDはそこまで温度にシビアではない……がHDD用ファンを設置するとモアベター

 PCのケース内温度、エアフローはPCごと、パーツ構成ごと、ファン回転数制御ごとに異なるため、今回はあくまで一例だ。まあ、HDD温度が40℃くらいならなんら問題なかったということのご報告としたい。ちなみにIronWolf ST4000VN008は5,900rpmモデル。筆者が熱が原因の一端だった可能性があるHDD故障で思い出すのは10,000rpmモデルの時代やUltra SCSI時代だ。その頃からするとHDDの回転数は下がっており、省電力にもなっている。PCパーツ全体で見れば、CPUやGPUなどの熱量のほうがよほどシビアである。

 ただ、検証終了後もなかなか温度が下がらないということも分かった。これはHDDだけでなくSSDにも言えることだが、ストレージを長時間稼働させる用途ではストレージ用のファンを用意することも考慮に入れたい。データのコピーやバックアップは当然だが、ゲームを数時間ぶっ通しで遊ぶという場合もデータの読み出しを随時行なうので、それなりに負荷はかかる。とくに重要・大切なデータを預かるパーツであるHDDは、もし仮に故障などで内容がブッ飛んでしまったら、取り返しの付かないトラブルになりかねない。HDDの温度上昇は思っていたよりは緩やかでも、できるだけ温度のストレスはかけずにできるだけ長く健康でいられるよう配慮するのがよいのではないだろうか。

 とはいえ、繰り返しになるが、20年前に比べたらHDD自体の発熱はかなり抑えられているし、酷暑のエアコンなし部屋で1時間程度の読み書き負荷をかけた程度ではびくともしない頑丈さも備えている。神経質になり過ぎることはないが、酷暑・残暑はまだまだありそうなので、気に留めておいても損はないはずだ。

[制作協力:Seagate Technology]