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タフで信頼できるHDD「IronWolf」、HDD買い替えなら高耐久/高速モデル

24時間365日稼働もOKな耐久性、CMR/7,200rpmでデータ転送も最速クラス text by 坂本はじめ

 近年では、データの保存先としてクラウドストレージを利用することも増えてきたが、ファイルサイズの大きなデータを大量に所有するユーザーにとって、クラウドストレージの維持コストと速度は依然として厳しいものがあり、大容量と安定した速度を低コストで実現できるHDDは重要なデバイスだ。

 そんなHDDは機械部品であるため、摩耗によって故障が生じる消耗品でもある。記憶容量や速度の不足といった買い替え理由がなかったとしても、数年に一度は買い替えることになるパーツであり、そろそろ買い替えを検討しているというユーザーもおられるのではないだろうか。

 そこで今回は、データ保存用HDDの更新を考えているユーザー向けに、SeagateのNAS用HDD「IronWolf」をデータ用HDDとして使うという選択肢を紹介する。なお、1月16日までIronWolf/IronWolf Proを一部店舗で購入すると1,000円分のポイントがもらえるキャンペーンが実施されているので、耐久性や信頼性に優れたHDDの購入を検討しているユーザーは、IronWolfシリーズの特性を本稿でチェックしてもらいたい。

NAS用途以外にも高耐久HDDとして使える「IronWolf」全モデル「CMR」方式採用で速度も優れたHDD

SeagateのNAS専用HDD「IronWolf」。

 SeagateのIronWolfと言えば、NAS向けに設計されたHDDやSSDのブランドとして知られており、IronWolf HDDシリーズの製品パッケージには「NAS専用ハードディスクドライブ」との一文もある。

 実際、24時間365日の連続稼働はもちろん、RAIDでの利用を想定した専用ファームウェア「AgileArray」や、NASメーカーとの連携で高度にHDDの健全性を保つ「IronWolf Health Management(IHM)」などの独自機能を備え、RVセンサーを搭載することで振動による悪影響を抑えるなど、NASでの利用に最適なHDDのひとつであることは間違いない。

NAS向けに設計されたIronWolfは、製品パッケージにも「NAS専用」と記述がある。
IronWolfは耐久性や信頼性を重視して設計されており、最大8ベイまでのNASでの利用に適している。

 とはいえ、IronWolfブランドのHDDがNASでしか使えないという訳ではない。NAS側での対応が必要なIHMのような機能は利用できなくても、シンプルに耐久性と信頼性に優れたHDDとしてPCでも利用することができる。デスクトップPCであれば、SSDにデータ保管用のHDDを組み合わせて使用しているユーザーも多いと思うが、そうした用途にも安全でパフォーマンスが高いHDDとして使用できる。

 2021年12月現在、IronWolfブランドには最大16TBまでの記憶容量を備えたHDDが用意されている。いずれのHDDも記憶方式に従来の「CMR」を採用しており、容量を重視する「SMR」方式よりも安定したデータ転送速度を実現している。先述した24時間365日の連続稼働のほか、年間作業負荷180TB、MTBF100万時間など、耐久性と信頼性に関わる指標が優れたものであることは、PCでの利用でも魅力的な要素だ。

 今回、PCのデータ用HDDとして使ってみるのは、IronWolfの12TBモデル「ST12000VN0008」だ。

 6Gbps SATAに対応する3.5インチHDDであり、回転数7,200rpmで210MB/sの転送速度を実現。多数のプラッタ(ディスク)を内蔵して大容量を実現するために、HDDの筐体内部にはヘリウムが充填されている。実売価格は税込み3万円前後で、12TBの大容量HDDの中では安価に入手できる製品だ。

IronWolfの12TBモデル「ST12000VN0008」。空気よりも優れた特性を持つヘリウムを充填したHDDだ。
HDD内部にヘリウムを封入するため、筐体の側面は摩擦攪拌接合によって密閉されている。

 また、IronWolfをデスクトップPCで使った際の適正を計るための比較対象として、デスクトップ向けHDDブランドBarraCudaの6TBモデル「ST6000DM003」も用意した。

 記録方式に「SMR」を採用しており、回転数5,400rpmで185MB/sの転送速度を実現する。コストパフォーマンスを重視したモデルであり、税込みで1万円前後で購入できる価格の安さが魅力の製品だ。

BarraCudaの6TBモデル「ST6000DM003」。税込み1万円前後で購入できるデスクトップ向けHDD。
記録方式にSMRを採用することで容量単価を抑えている。ヘリウム充填モデルではないので、筐体は密閉されていない。

大容量モデルはHDD最速クラス、IronWolfのパフォーマンスデータ転送速度をデスクトップ向けHDDと比較してみた

 ここからは、PCのデータ用HDDとして使用することを想定したベンチマークテストを通して、IronWolfの性能を確認していく。テストのために用意したのはCore i5-12600Kを搭載したIntel Z690環境で、主な機材は以下の通り。

リードは270MB/s超え、CrystalDiskMarkで速度を計測

 まずは定番のストレージベンチマークテスト「CrystalDiskMark」で、IronWolfとBarraCudaのパフォーマンスを比較してみた。

 CrystalDiskMarkでは、IronWolfがシーケンシャルアクセスで270MB/s前後のリード/ライト性能を発揮しており、これはBarraCudaが記録した190MB/s前後という数値を大きく上回るものだ。

IronWolf (12TB)の結果。
BarraCuda(6TB)の結果。

データをたくさん入れる人ほど恩恵があるIronWolf、HD Tune Proで速度をテスト

 続いて紹介するのは「HD Tune Pro 5.75」の実行結果だ。HDDはその構造上、ディスク外周部から内周部に向かうにつれて速度が低下していく。このベンチマークはその外周部から内周部までの速度の変化を確認するものだ。

 IronWolfは最外周部で約265MB/sを記録し、50%である6TBが埋まった状態でも200MB/s以上、最内周部でも120MB/sを超える速度を保っている。

 これに対してBarraCudaは、最外周部でリード180MB/s・ライト165MB/sだった速度が、50%(3TB)が埋まった状態でリード140MB/s・ライト120MB/sまで低下し、最内周部では100MB/sを下回っている。

 最外周部と最内周部で大きな速度差が生じる点は同じだが、最高速度と最低速度はいずれもIronWolfの方が高速だ。また、6TB使用時点で100MB/sを下回るBarraCudaに対し、IronWolfは200MB/s以上の速度を維持していることからも分かるように、HDDは容量を使い切らないようにした方がよりよい速度で使うことができる。

▼HD Tune Pro「リード速度の変化」
IronWolf (12TB)のリード速度。
BarraCuda(6TB)のリード速度。
▼HD Tune Pro「ライト速度の変化」
IronWolf (12TB)のライト速度。
BarraCuda(6TB)のライト速度。

大容量の動画を扱う人にも実は向いているIronWolf、動画ファイルの転送テスト

 最後に紹介するのは、合計50GiBの動画ファイル(10GiB×5ファイル)を転送するのにかかった時間の比較だ。HDDからシステム用SSDにコポーする「読み出し」と、システム用のSSDからHDDにコピーする「書き込み」の2パターンで、データ転送にかかった時間を比較した。

 HDDからの読み出しにかかった時間は、IronWolfが「3分22秒」で、BarraCudaは「4分57秒」だった。データ転送レートはそれぞれ266.0MB/sと181.0MB/sで、IronWolfが1.5倍近い速度で読み出しを完了している。

 一方、HDDへの書き込みにかかった時間は、IronWolfが「3分15秒」で、BarraCudaは「6分16秒」。データ転送レートはそれぞれ「275.6MB/s」と「143.1MB/s」で、IronWolfの書き込み速度はBarraCudaの1.9倍以上に達している。

デスクトップ向けHDDよりタフで信頼性の高い「IronWolf」厳しい条件を想定して設計されたタフなHDDは製品保証も充実

 NAS向けに設計されたIronWolfは、耐久性と信頼性に優れたHDDであるということは序盤で紹介したが、デスクトップ向けHDDであるBarraCudaと比べた場合、具体的にどのような点で優れているのかを改めて紹介しよう。

 まず、IronWolfは製品保証期間が「3年間」に設定されており、これはBarraCudaの「2年間」よりも1年長いものだ。ちなみに、IronWolfの上位モデルであるIronWolf Proには「5年間」の保証期間が設定されている。

 保証期間=製品寿命ではないが、消耗部品であるHDDの保証期間は「この期間では壊れないという」という想定のもと設定されたものであり、長期間である方が耐久性に優れた製品であるというのは想像に難くないだろう。だが、ここで真に重要なのは保証期間の長さではなく、「保証期間内にどういう使い方をする」と想定されているのかだ。

 例えば、24時間365日の連続稼働に対応するIronWolfの年間通電時間は「8,760時間」だが、デスクトップ向けであるBarraCudaは「2,400時間」となっている。つまり、保証期間内に通電すると想定されている時間は、IronWolfが「26,280時間」であるのに対し、BarraCudaは「4,800時間」であり、5倍以上もの違いがあるわけだ。

 同じように、超過すると耐久性や信頼性に影響を及ぼすとされている指標「年間作業負荷率」は、IronWolfが「180TB」で、BarraCudaは「55TB」となっている。これに保証期間を掛けると、IronWolfは「540TB」、BarraCudaは「110TB」で、約4.9倍という大きな差になる。

 他にも、IronWolfでは100万時間と公表されている信頼性の指標「MTBF(平均故障間隔)」が、BarraCudaでは非公開であるなど、スペック上から読み取れる数値だけでもIronWolfの方が、はるかに厳しい基準で耐久性や信頼性を保証していることが分かる。こうしたタフな設計は、実際の運用でもより長期にわたってHDDを使用できる可能性を高めるものであり、信頼できるデータ用HDDを求めるユーザーも恩恵を得られるだろう。

 なお、耐久性や信頼性の面ではIronWolfが優れるが、BarraCudaが悪いHDDというわけではない。HDDは用途に合わせたシリーズが用意されており、適材適所で使用するのが望ましい。IronWolfのような堅牢性が必要ない用途であったり、一時的なデータ置き場などであれば、BarraCudaがコストパフォーマンスに優れベストな選択肢になるシーンもある。大事なデータを保管する場所としてはIronWolfがおすすめだが、自分の利用シーンに合わせHDDを選ぶのが良いだろう。

万が一の事態に備える“転ばぬ先の杖”となるデータ復旧サービス 「Rescue」保証期間の3年間中に1回無料で利用可能

IronWolfは無料のデータ復旧サービス 「Rescue」が利用できる。

 IronWolfやIronWolf ProシリーズのHDDには、Seagate独自のデータ復旧サービス 「Rescue」が利用できる権利が付与されいている。

 他にも、監視カメラ向けの「Skyhawk」や一部のSSD製品などに付与されているサービスだが、デスクトップ向けのBarraCudaには付与されておらず、付加価値の高いモデルに用意されているかたちだ。

 データ復旧サービス「Rescue」は、故障によってデータへのアクセスが不可能になったHDDからデータの復旧を試みるサービスで、通常であれば数万円から数十万円という高額な費用が必要なデータ復旧サービスが、購入後3年間に1度限りではあるものの、無料で利用できるという破格のサービスだ。

 使わないにこしたことの無いサービスではあるが、万が一の際に95%のデータ復旧率を誇るというSeagateのデータ復旧サービスを無料で利用できるのは、転ばぬ先の杖として非常に心強い。より具体的なサービス内容については以前の記事で紹介しているので、そちらで確認してもらいたい。

データ用HDDとしてもタフで信頼できるIronWolfよりよいHDDを使って大切なデータを消失から守ろう

 NAS専用HDDともされるIronWolfだが、デスクトップPCで単体利用した場合でも何ら不具合はなく、むしろ一般的なデスクトップ用HDDを凌ぐ速度を実現しており、より快適に使えるHDDだった。10TBを超える記憶容量をHDDに求めるなら、IronWolfは耐久性や信頼性はもちろん、費用対効果の面でも有力な選択肢だ。

 高耐久で信頼性の高いHDDを導入したからと言って、故障しないわけではないし、バックアップによるデータ保護が不要になるという訳でもない。それでも、「Rescue」という転ばぬ先の杖まで備わったIronWolfの導入は、保存したデータを失うリスクをより遠ざけることができるだろう。

 冒頭でも紹介したが、IronWolf/IronWolf Proの購入者を対象に、1000円分のえらべるPayがもらえるキャンペーンが現在実施されている(詳細はキャンペーンサイト参照のこと)。

 対象となるのは、2021年11月26日(金)~2022年1月16日(日)にSeagateのNAS用HDDをソフマップ、ツクモ、ドスパラ、NTT-X、パソコン工房、ビックカメラの各店で購入したユーザーで、ECサイトでの購入も対象。HDDの対象モデルは、IronWolfが1TB/2TB/3TB/4TB /6TB /8TB/10TB/12TB、IronWolf Proが4TB/6TB/8TB/10TB/12TB/14TB/16TB/18TBで、スマホ決済サービスのポイントを自由に選べるギフト「えらべるPay」が1,000ポイント分もらえる。購入予定のあるユーザーはぜひ活用してもらいたい。