借りてみたらこうだった!

エルダー・スクロールズ・オンラインを快適に遊ぶための高コスパPCを考えてみた

手軽にハイファンタジーの世界を満喫できる“筆者イチオシ構成”を紹介 text by 加藤勝明

 DMMによって国内サーバがオープンした注目のMMORPG『エルダー・スクロールズ・オンライン』こと“ESO”。前々回のレビューでは最速GPUを使い没入感最強のディスプレイ環境を模索し、前回のレビューではCore i3の内蔵GPUやAMD Aシリーズ等でも画質を抑えれば十分楽しめるパフォーマンスが出ることを示した。

 PCゲームはハードに金をかけるほどに快適(その多くは自己満足だったりもするが)になる。だがゲームのためにハイエンドPCを揃えられる人は少数派だ。最強でなくても良いから、程々の画質で快適に遊べるPCでいいや、と考える人も多いはず。

 そこでレビュー第3回目では、ESOの世界を快適に遊ぶ、コスパのよいPCの構成というものをちょっと考えてみた。ターゲットはフルHD+高画質+60fpsとしたい。

GTX 750 Tiで思いのほか快適に遊べる「ESO」GTX 950はフルHD/最高画質で平均60fpsがターゲットに

 構成を模索する最初の足がかりになるのは前々回のレビューで少し紹介した「Core i3-6100&GeForce GTX 750 Ti」という構成。CPUは推奨環境にちょっと届かない(4コアCPUのところが物理2コア)ものの、遊ぶには十分なフレームレートが出た。

Core i3-6100とGeForce GTX 750 Ti(OC版)の組み合わせで遊んでみたら、高設定ならほぼ60fps以上を維持、最高画質設定だと負荷が高いシーンで時々50fps近くまで下がるといった具合だった。
ESOプレイ中(画質設定:最高/解像度:フルHD)のCore i3-6700K(左)とCore i3-6100(右)のCPU占有率。論理コア数が8基あっても、ほぼ1コアにしか負荷が集中しないため、Core i3でも十分カバーできる印象だ。

 ESOはCPUのコア数が多くてもあまり活用しないことが前回判明したので、CPUよりもビデオカードのグレードに一考の余地がありそうだ。

 安価なCore i3-6100をベースに、GeForce GTX 950やGeForce GTX 960にグレードアップしたらどう変化するかという点をまずは確認してみたい。フルHD+最高画質だとGeForce GTX 750 Tiではややパワー不足と感じるが、上位GPUではどうだろうか?

テストに使用したビデオカード
GeForce GTX 750 Tiカードの代表としてMSI製の「N750TI TF 2GD/OC」を使用した。このクラスとしてはかなり大型のクーラーを搭載したモデルだ。
GeForce GTX 950はPalit製の「GeForce GTX 950 StormX Dual」を使用した。残念ながら現在この製品は流通していないが、GeForce GTX 950は他社製なら補助電源なしモデルを含め様々な選択肢がある。
GeForce GTX 960はMSI製「GTX 960 GAMING 2G」。GeForce GTX 10シリーズに置き換えが進んでいることもあり、市場では急速に姿を消しつつあるが、実売2万円台のビデオカードとしては非常に優秀な存在といえる。

 テストは「Fraps」を使い、一定のコースを移動した時のフレームレートを計測する。ESOの解像度は1,920×1,080ドット、画質はプリセットの“最高”に水面反射を“高”にした一番重い設定、加えてプリセット“高”に水面反射を“低(デフォルトはオフ)”にした設定でも試した。ちなみに今回のテストはESOのフレームレート上限は解除していない(フレームレート上限解除に関しては前々回記事を参照のこと)。

 MMORPGは常にゲーム内に居るプレイヤーの人数などが変化するため、テスト条件を全く同じに揃えることはできないが、ビデオカードごとの傾向が見えてくればしめたもの。なるべく近い条件になるよう計測したテスト結果が以下のグラフだ。

ESOをプリセット“最高”(最高画質設定)+水面反射を“高”にした時のフレームレート

 グラフが示す通り、最高画質設定だとGTX 900シリーズとGTX 700シリーズの力の差がハッキリとしてくるが、最低フレームレートがどのGPUでも45fps近辺になっている点に注目。

 GPU側のメモリバスあたりがボトルネックになっていそうだが、これを越えようとすると3万円台中後半のGeForce GTX 970やGeForce GTX 1060(6GB版)が射程に入ってくる。そして先日VRAM3GB版のGeForce GTX 1060が3万円台前半で登場したばかり。これらのビデオカードを買えばさすがに快適だろうが、コストを抑えつつ遊ぶなら、もうワンランク下の価格帯のカードを使いたいところだ。

 ESOの画質優先プレイにターゲットを絞るなら、60fpsキープは妥協することになるが、GeForce GTX 950の安めのモデルで遊ぶのが一番コスパが良さそうだ。

プリセット“最高”+水面反射を“高”にした際のスクリーンショット
GeForce GTX 750 Tiでテストした際の様子。ESOでは移動時にフレームレートがガッと堕ちることが多い。次に画面に表示するオブジェを準備するための処理等がボトルネックになっているようだ。
GeForce GTX 950でテストした際の様子。フレームレートの平均値や最大値はGeForce GTX 750 Tiよりもだいぶ高い。
GeForce GTX 960でテストした際の様子。思いのほかGeForce GTX 950との性能差は大きくない。

 なお、画質を1ランク下げると、どのGPUでも60fpsのキープはぐっと簡単になり、GeForce GTX 750 Tiでもフレームレートがしっかり稼げる。

 プリセット"高"のデフォルトでは水面反射がオフになるのが寂しいので、ここでは水面反射を“低”設定にしたが、それでも大きくフレームレートは落ちない(テスト時はちゃんと水辺も移動コースに含めている)。

ESOをプリセット“高”(高画質設定)+水面反射を“低”にした際のフレームレート

 テストの結果から、高画質設定でもGeForce GTX 960とGeForce GTX 950ではほとんど差がでないことがわかる。平均fpsではGeForce GTX 750 TiよりもGeForce GTX 950の方が10fps以上高いことから、負荷が高いシーンの描画に余裕を持たせたい人ならGeForce GTX 950が良さそうだ。だいたい60fps近辺でフレームレートが安定すれば問題ないといった具合であれば、GeForce GTX 750 TiのOC版ビデオカードがよいだろう。

プリセット“高”+水面反射を“低”にした際のスクリーンショット
GeForce GTX 750 Tiでテストした際の様子。高画質設定であれば60fpsで十分に遊べる。
GeForce GTX 950でテストした際の様子。描画性能的にはGeForce GTX 750 Tiよりも1ランク上のゆとりがある感じだ。
GeForce GTX 960でテストした際の様子。この画質設定でもGeForce GTX 950との性能差はあまり出なかった。

導入コストを抑えつつ「ESO」を遊ぶならCore i3+GTX 750 Tiがお勧め

 という訳で、コスパを重視しつつ、ESOを快適に遊ぶためのPCパーツの選び方を改めて紹介しよう。

Core i3-6100。現行のCPUであれば、2コア/4スレッドかつ高クロックのモデルがコスパは高い。
MSI N750Ti TF 2GD5/OC。ESOを高画質設定で遊ぶならGeForce GTX 750 Tiあたりが性能とコストのバランスが良い。
Kingston SHSS37A/240G。容量単価が安価な2.5インチSATAで、240GB以上のモデルがお勧めだ。
Crucial BLS2K8G4D240FSA。テストに使用したメモリはDDR4-2400 8GB×2枚セットだが、ESOを遊ぶだけなら4GB以上のメモリが確保できれば問題ない。

 まずはCPUから。テストした限りでは、Core i3-6100がコストパフォーマンス重視という点では悪くないチョイスになるはずだ。

 ESOで要求される性能は圧倒的にGPU>CPUなので、Core i3の安いモデルに落ち着いた。なお、今回のコンセプトからは外れるが、性能最優先でGeForce GTX 10シリーズなどの上位モデルを使用するのであれば、GPUの性能を発揮させるためにCPUも上位モデルを選んだ方が良いだろう。

 続いてビデオカードだが、GeForce GTX 750 Ti(MSI N750Ti TF 2GD5/OC)を高コスパ品としたい。

 最高画質は負荷がかなり高いようで、移動時や、煙や雨といったエフェクトが入るとフレームレートの落ち込みが顕著にみられる。コスパを優先しつつ60fpsキープさせるのはなかなか難しい。完全にねじ伏せるにはハイエンド寄りの構成でもどうか……といった印象だ。

 だが、画質“高”設定で遊ぶなら、描画負荷は軽減され、GeForce GTX 750 Tiあたりが一番コスパが良いといった印象になる。60fpsをターゲットに遊ぶには困らないパフォーマンスを発揮してくれるはずだ。

 なお、ESOはVRAM 2GB以上のビデオカードが推奨されているので、必ずメモリが2GB以上搭載されているモデルを選んで欲しい。

 性能面での検証は行わなかったが、MMORPGを遊ぶならゲームインストールディスクはSSDを使用したいところ。

 ゲームに限らず、HDDなどと比較するとロード時間が短縮されたり、レスポンスが改善されたりと快適だ。また、ESOのインストールに必要な容量は85GB以上と非常に大きいため、後々のアップデートなども考慮すると容量240GB以上のモデルを選びたい。

 SSDは、NVMe対応のM.2 SSDやPCI Expressカード型SSDも増えてきたが、容量あたりのコスパで見ると2.5インチのSATA SSDが圧倒的に優位。2.5インチのSSDは廉価モデルも比較的安定した性能を発揮してくれるので、価格重視でバリューモデルを選択したり、こだわってゲーミングモデルを選ぶというのも良いだろう。

 その他のパーツは好みや見た目で選んでも問題ないはずだ。メモリに関しては4GB以上が推奨となっているので、それ以上の容量を搭載すべきだが、ほかはユーザーの好みで選んでもゲーム性能的には問題はないはずだ。

実際にCore i3+GTX 750 Ti環境でプレイ、推奨環境は実はかなり高コスパ構成

 実際に今回お勧めとしたCore i3+GeForce GTX 750 Ti環境でプレイしてみたが、高画質設定と最高画質設定を比べると確かにテクスチャーの精細感の違いは感じるものの、高画質設定はフレームレートが60fps以上で安定する。プレイしている限りでは、画質よりもフレームレートを優先した方が快適な印象を受けた。

 ESOの公式ページでは「CPU:2.3GHz以上の4コア、GPU:GeForce GTX 750またはRadeon HD 7850以上(VRAM 2GB)」という構成が推奨環境とされているが、これはESOを遊ぶ上でかなり高コスパな構成だったりする。今回筆者がお勧めとしているCore i3-6100(3.7GHz 2コア/4スレッド)+GeForce GTX 750 Ti(VRAM 2GB)もこれに近い構成なので、意図はしなかったものの、ある意味公式の推奨環境が本当に推奨であることを証明するようなかたちになった。

 ESOはPCハードへの負担も少なく、程々のスペックがあれば快適に遊べる点も魅力のゲーム。最新PCパーツを使えば、ESO世界へ飛び込むのは驚くほど簡単なのだ。

[制作協力:DMM GAMES]