借りてみたらこうだった!

REEVENのハイエンドCPUクーラー「OKEANOS」をテスト

負荷時はリテールクーラーよりも20度以上冷える性能を発揮

「REEVEN OKEANOS」

 REEVENと言えば以前、液体窒素を使用した極冷用カップ「EXTREME COOLING CUP」をリリースしたことでも知られるクーリングパーツの専業メーカーだ。今回は、REEVENの空冷CPUクーラーのなかでもフラグシップと言える「OKEANOS」をお借りすることができた。

 「OKEANOS」は発売前のモデルで、日本での発売は8月予定となっている。

細部の意匠にもこだわりを見せる「カッコイイ」ハイエンド空冷CPUクーラー

径の異なる2つのファンと、2柱のヒートシンクから成る大型CPUクーラー

 OKEANOSは、サイドフロータイプの製品で、14cm径と12cm角の2つのファンを搭載する製品だ。他の多くのハイエンド空冷CPUクーラーと同様に、ベース部分からヒートパイプによってツインタワーデザインのヒートシンクに熱を導いている。

 特に目を惹くのはヒートシンク部分の意匠だ。エアフローを考慮した複雑な形状はもちろんだが、トップ部分にREEVENロゴが打ち抜かれており、デザイン上のアクセントになっている。また、ファンは同社のコーポレイトカラーである黄色のブレードで、こちらも見た目のインパクトが大きい。

ヒートシンクはかなりの大きさで、正面から見た面積は12cm角ファンよりも大きい。フィンはおよそ2mm間隔の密度だ。全面、複雑な凹凸が設けられている。
ハイエンドとミドルレンジとの違いはこの大きさにある。右は同社のHANS。12cm角ファン1基のモデルで、ヒートシンクもミドルレンジにしてはやや大き目だ。しかし、体積ではOKEANOSの方が断然大きく、これが冷却性能に現れてくる。

 14cm径と12cm角のファンは、どちらも厚みは25mm、固定穴は12cm角用だ。14cm径ファンは300~1,700rpm、12cm角ファンは300~1,800rpmで、PWM制御に対応する。ファンを固定するためのバネは計6つ同梱されており、あと1つファンを追加することもできる。

 そしてともに4ピンPWMに対応しているが、ファン回転数を変更する静音化アダプタケーブル「Speed Switch Adaptor」(SSA)が付属する。こちらにはそれぞれ14cm径用と12cm角用というシールが貼られているほか、コネクタの色も変えているなど、心配りが嬉しい。SSAを挟めば、14cm径側が1100rpmに、12cm角側が1200rpmへと切り替わり、主に静音化に効果を発揮すると言う。

左が14cm径ファン(12cm角ファン用固定穴に対応)、右が12cm角ファン。14cm径側は最大1,700rpm、12cm角側は最大1,800rpmで回転数がやや異なる。また、回転数を変更するためのアダプタケーブル「SSA」も付属する。
ヒートパイプは6本。左の写真で見て中央の2本が8mm径、左右の4本が6mm径。
ヒートシンクに対しバランスよく熱を伝えるレイアウト。
ベース部分の拡大。上に置いたポールの鏡像のとおり、わずかに中央が盛り上がっているようだがほぼ平滑と言える。

 ヒートパイプは左右に6本ずつ装備している。片側6本のうち中央の2本は極太の8mm径でヒートシンクの中央に近い部分に、残る4本は6mm径で左右に2本ずつヒートシンクの外側に引き込んでいる。CPUと接触するベース部分でも特に中心寄りの温度が高くなるので、理にかなった設計と言え、トレンドを踏んだものでもある。

 ベース部分は、ヒートパイプを挟む構造だ。他の多くのハイエンド空冷CPUクーラーも同様だが、ヒートパイプをCPUに対しダイレクトに接触させる構造はあえて採用していない。表面は鏡面加工が施されており、平滑度はまずまず。中央部分ややや盛り上がっている印象だが、ほんのわずかだ。CPU側のヒートスプレッダも平滑というわけではなく、とくに昨今はTIMにグリスを用いているためにやや凹んでいることが多いので、フィッティングとしては問題無いだろう。

左から、LGA115x用、LGA2011用、AMD CPU用の固定金具の構造。固定方法は、CPUクーラー本体がプラスネジ、やぐらは六角のナットを使用しているが、冒頭の付属品写真のとおり専用のミニ工具が付属する。
AMD CPU用の場合、プレートの端をネジで挟む構造。しかし、バックプレート部分が頑丈なため、これでもガッチリ固定できる。
バックプレートの穴とポールの根本は真円ではなく凹凸が設けられており、これを合わせることでネジ固定時の空転が防げる。
MSIのMicro ATXマザーボード「Z97M GAMING」に装着した際のイメージ。CPUソケットに近い側のメモリにファンが被さるため、背の高いヒートシンクのメモリモジュールは使用できない。PCI Expressビデオカードは数ミリのクリアランスでギリギリ挿せるといったところ。

 リテンションは、裏面にバックプレートを用い、表面にはやぐらを組む構造だ。クーラー本体は別のプレートで固定する。まずバックプレートは、LGA775/1150/1155/1156/1366/2011およびSocket AM2/AM3/AM3+/FM1/FM2と、多くのソケット形式をサポートする。各ソケットに対しては、バックプレートに設けられた穴に対し、ポールを挿す位置を変更することで対応する。

 ここでもちょっとユニークな点があり、それぞれの穴には切り欠きが設けられており、ポールにはこれに対応する出っ張りが設けられている。これを合わせて装着すれば、後にネジ固定する際の空転が防げるほか、多少の効果であるがポールが抜けにくくなっている。なお、LGA2011に対しては、標準リテンションのネジ穴に別のパーツを組み合わせることで対応するため、バックプレートは使用しない。

 実際にLGA1150マザーボードに装着してみると、その大きさが良く分かる。外側のファンはメモリソケット上となるが、一般的な高さのメモリであれば干渉せず利用可能だ。PCI Expressビデオカードとのクリアランスもギリギリといったところ。


リテールクーラーと比べ一般的な高負荷で10℃以上、超高負荷では20℃以上冷える!

 実際にLGA1150マザーボードを用いて冷却性能を検証してみた。検証時の室温は25℃。CPUにはCore i7-4790Kを用いた。また、ベア状態だが、ケースファンを想定したファン1基をチップセット付近に配置し計測した。

 まずアイドル時の温度に関してはどれも横並びで31~33℃という結果になった。OKEANOSの標準構成時が33℃と最も高かったが、これは静音性とのトレードオフと見られる。リテールクーラーよりも1つファンが増えることになるが、静音性では最も静かで、30dBから計測できる騒音計を用いた状況でファン面から30cmで計測した場合で計測不可能なほど静かだった。なお、SSA使用時の方が冷えているが、こちらは31.5dBだったので標準構成よりは若干大きな値ということになる。とはいえ動作音はまったく気にならないレベルだ。

 PCMark 8と3DMarkは、どちらも実運用時に近い状況を再現する目的で計測した。OKEANOSは、標準構成時もSSA使用時もどちらも56℃前後となり、12cm各ファンシングル構成の同社HANSや、リテールクーラーよりもかなり冷える。また、SSA使用時も極端に冷却性能が悪くなるわけではなく、およそこのくらいの"一般的な高負荷"に合わせてチューニングされているようだ。

 OCCTのCPUテストはこのなかで最も負荷の高いテストになる。リテールクーラーの場合、すぐに設定上限温度に達しエラーを返すほどで、リテールクーラーの値はその上限温度となる86℃で止まっている。対して、ほかのクーラーは15分間のテストを問題なく完走した。とくにOKEANOSはSSA使用時で66℃、標準構成ではさらに低い62℃と、好成績を収めた。先のPCMark 8/3DMarkでは標準構成とSSA使用時がほぼ同じ程度の冷却性能だったが、OCCTのように高負荷となると、より高回転でファンを回せる標準構成時の方が冷却面で優位に立つ。ただし、SSA使用時側もこの程度の温度に抑えられていれば問題ない。

 OCCTテスト時の動作音は、リテールクーラーが40.7dBとかなり耳につくレベルであるのに対し、OKEANOSが標準構成で37.2dB、SSSA使用時が33.8dBと静かだ。特にSSA使用時は回転数が固定となるため、アイドル時とさほど変わらない30dB台前半で推移する。回転数が切り替わることによるノイズの変化が無いため、これはかなり快適だ。


OKEANOSのポイントは優れたレベルで両立された冷却性能と静音性のバランス

 このように、OKEANOSは優れた冷却性能と同時に、静音性の面でも良い値を出している。おそらく、同製品に最も注目しているのはOC目的の方だろう。高負荷時の温度という面では、十分な余裕を生み出してくれる性能で、そのマージンをOCに割り当てることが可能になるだろう。

 ただし、どちらかと言えば「常識の範囲内に抑えている」のがこの製品だ。例えば12cm角ファン側を14cm径に交換してみたり、さらに14cm径×3連構成にしたりと、静音性を割り切ればまだまだ冷やせそうだ。

 一方で、定格で運用したいという方にも十分なメリットがある。とくにSSAを使用すれば、CPUクーラーからのノイズをほとんど気にならないレベルまで抑えることができる。また、SSAを用いても通常の用途における高負荷であればまったく問題なく冷却できるという点も見逃せない。このようにちょうどいいバランスで調整されていることもあって、本来のパフォーマンスを落とすことになるといった不安が全くなく、積極的に利用できそうだ。