借りてみたらこうだった!

東芝製NANDを採用したOCZのハイエンドSSD「Vector 180」をテスト

電源瞬断時にデータを保護する「PFM+」機能を搭載

 OCZ Technologyからハイエンド向けSSD「Vector 180」がリリースされた。

 Vector 180は「Vector 150」の後継モデルとなる製品。NANDチップを東芝A19nm MLCに変更し、新たに960GBモデルを追加することで、現行世代のハイエンドSSDにふさわしい製品に仕上がっている。

 今回は、480GBモデルの「VTR180-25SAT3-480G」をお借りし、パフォーマンスを調べてみた。


搭載NANDは東芝19nmからA19nmに進化、電源瞬断に対する保護機能も搭載

 OCZと言えば、現在、東芝傘下のSSDブランドになっている。

 東芝の買収から1年以上が過ぎたが、東芝のSSD部門の動向が聞こえてこないため、実のところまだ東芝ブランドSSDとの住み分けがそこまでハッキリしていない。ただし、ひとつ言えることは、OCZは引き続きハイエンドSSDに強いブランドであることだ。

 さて、まずはVector 180のスペックを確認しておこう。

Vector 180Vector 150
容量ラインナップ120/240/480/960GB120/240/480GB
コントローラチップBarefoot 3 M00Barefoot 3 M00
NANDチップ東芝A19nm MLC東芝19nm MLC
最大リード速度550MB/s550MB/s
最大ライト速度530MB/s530MB/s
ランダムリードIOPS100,000100,000
ランダムライトIOPS95,00095,000
耐久性50GB/日50GB/日

 搭載コントローラは前モデルVector 150と同じくIndilinxの「Barefoot 3 M00」。リード/ライト性能なども旧モデルと同じ数値に揃えられていることがわかる。新旧ほぼ同仕様ではあるが、Vector 180はNANDチップが1世代新しくなっているので、性能面での若干の差異はあるかもしれない。

 外装は従来の同社ハイエンドSSD同様、肉厚の金属板を用いた構造で、高い放熱効果が期待できる。

 厚みはスリムな7mmタイプ。なお、9.5mm厚への変換プレートなどは付属しないが、3.5インチ用ベイに装着するためのトレイが付属している。

外装は表裏ともに金属製。コントローラチップには熱伝導シートが貼られていた。
基板表面
基板裏面
コントローラチップはBarefoot 3 M00。
NANDチップは東芝製「TH58TEG8DDKBA8C」。480GBモデルの場合は表裏計16チップ実装。
キャッシュメモリは東芝のライバルとも言えるMicron製。4Gbチップ2枚で8Gb(1GB)の実装となり、もう1チップぶんのパターンもある。
PFM+に関連しそうな電源回路部分。左端に大きめのチョーク、そして金+オレンジのコンデンサ、何らかの役割を担っていると見られるIC、そして小さなチョークが並んでいる。

 Vector 180には、電力マネジメント機能「PFM+」(Power Failure Management Plus)が追加されている。これは、停電や、PCの電力が瞬断するような際に、コンデンサの電力を利用してデータを保護する機能だ。

 もちろん、どんな状況下でも保護できるというわけではなく、キャッシュメモリ内に収まるデータサイズに限られるとは思うが、こうした機能もありとなしでは安心感が大きく異なるだろう。

 また、Vector 180は新しいOCZの管理ユーティリティ「OCZ SSD Guru」に対応している。以前から「OCZ Toolbox」という名の管理ユーティリティが提供されていたが、SSD Guruは機能が大幅に強化された。

 具体的には、SMARTデータの参照、手動TRIM、セキュアイレース、ファームウェアのアップデートのほか、新機能としてヘルスチェック、インターフェースチェック、ファームウェア更新チェックのほか、SSDチューニング機能などが追加されている。また、OSのチューニング機能も今後追加予定とのことだ。

 SSDのチューニングは、手動による強制Trimと、オーバープロビジョニングの設定が行える。ここで言うオーバープロビジョニングは、SSDの耐久性を高めるいわゆる余剰容量のことではなく、製品の容量からさらに一定容量を書き換え操作用に追加確保する機能とされており、耐久性とともにパフォーマンスにも効果があるとされている。今回試した480GBモデルの場合、最大134GBが確保できた。

UIが大幅に変更され、機能も充実した新ユーティリティ「SSD Guru」。
Trimボタンを押せば、手動操作でのTrim実行が可能。ステータスは左下に表示される。
オーバープロビジョニング(Over Provisioning)は480GBモデルで最大134GBの確保が可能。


ランダムアクセス性能重視のセッティング、RAID 0の速度も試してみた

 コントローラチップのBarefoot 3 M00の性格を捉えるため、まず「AS SSD Benchmark」のCompression Benchmarkを計測してみた。

 結果は、リード・ライトともにほぼフラットなグラフである。つまり、転送に特殊なデータ圧縮等を利用しているフシは見当たらない。

AS SSD BenchmarkのCompression-Benchmark

 ストレージの定番ベンチマークであるCrystalDiskMark v3.0.3では、データサイズを50MB~4GBまで各段階でテストしてみた。スコアのグラフはきれいなもので、ブレも少ない。

 シーケンシャルリードは最大488.9MB/s、シーケンシャルライトは最大493.1MB/sといった具合。4K-QD32ではリードが最大389.5MB/s、ライトが最大367.3MB/sとなった。

CrystalDiskMark
データサイズ50MB
データサイズ1GB
データサイズ4GB

 インターフェースの性能が素直に現れる「ATTO Disk Benchmark」では、リードが最大555.383MB/s、ライトが最大531.555MB/sとなった。

 ほぼフルスピードとなるのはデータブロックサイズが64KB以降となるが、4KB~32KBのように小さな場合でも十分早く、とくに4K時で250MB/s以上の転送が出来ており、さすがハイエンドSSDと言える結果だ。

ATTO Disk Benchmarkのトータルレングス1GB時のスコア

 IOPSの値だが、AS SSD Benchmarkの4K-64ThrdのIOPS表示では、リードが92,593、ライトが78,286となった。CrystalDiskMark v3.0.3では4K-QD32時のリードで最大95,224.9、ライトで最大89,643.8だ。

 メーカー公称のIOPSがリード100,000・ライト95,000なので、実測値は比較的公称値に近い値と言える。

AS SSD BenchmarkのIOPS表記スコア
CrystalDiskMarkの4Kおよび4K-QD32のIOPS

 さて、今回は2台のVector 180 480GBモデルが入手できたので、Intel Z97チップセット機能を用いたRAID 0でのテストも実施してみた。

 なお、RAIDのストライプサイズは128Kに設定している。先立って標準の16Kで試してみたのだが、サイズが小さくなるとシーケンシャルの速度が伸びないので、Vector 180を使用する場合はそこそこ大きい値に設定した方が良さそうだ。

 SSDにもよるが、速度はストライプサイズの設定によって変化するので、こだわるのであれば、最高の性能を引き出せる値を探してみて欲しい。

RAID 0(ストライプサイズ128K)時のCrystalDiskMarkのスコア

 肝心のパフォーマンスだが、まずCrystalDiskMarkの結果から。

 シーケンシャルリードが1106MB/sで、同ライトが931MB/sとなった。512Kのリードは677.4MB/s、ライトは882.4MB/sと、こちらも比較的高速だ。

 また、4K-QD32では、リードが513MB/s、ライトが632MB/sとなった。4K-QD32では、とくにリードがこれまで筆者が試したSSD RAIDのなかでは比較的高速であるように感じた。

RAID 0(ストライプサイズ128K)時のATTO Disk Benchmarkスコア

 ATTO Disk Benchmarkでは、リードが最大で1,111.776MB/s、ライトが最大1,056.881MB/sという値だった。とくにリードは8K以上でコンスタンスに1GB/s以上をたたき出している。

 一方のライトは多少バラつきがでているが、特定のデータブロックサイズに弱いというわけではないようで、複数回テストするとその都度落ち込む場所が変わる。まあ、完璧なグラフを描くSSDやSSD RAIDはまず滅多にないので、気にするほどではないだろう。

……ということで、Vector 180はRAID 0で1GB/s超を狙えるSSDとしてまとめたい。また、4K-QD32リードがなかなか好成績だったので、実環境でも高速さを体感できそうだ。


512K以下のアクセス性能や耐久性の高さがVector 180のポイント

パッケージ写真

 OCZ Vector 180は、アンダー512Kのパフォーマンスに優れる特性を示した。

 6Gbps SATAインターフェース自体がSSDの帯域としては不足気味になりつつある現在、競われるのはシーケンシャルリード・ライトよりも、512K以下のデータブロックサイズにおけるパフォーマンスや、あるいは耐久性といったところにシフトしてきている。

 実際、PCのデータの多くは非シーケンシャルで、ブロックサイズも細かなものが中心。512Kや4Kのパフォーマンスの高さは、実環境でのパフォーマンスの高さと言える。そして、ここがメインストリーム向けSSDとハイエンド向けSSDが差別化されているポイントであり、Vector 180の価値が発揮される部分でもあるのだ。

 ちなみに、Verctor 180は240GBモデル以上であれば、シーケンシャルの速度はシリーズの最大値を発揮する。当然、予算があれば大容量のモデルをお勧めするが、システム用として大容量を求めない場合や、最初からRAID 0狙いであれば、240GBモデルの「VTR180-25SAT3-240G」を選択するのもアリだ。