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30TB超えのHDDを実現するHAMR(熱アシスト磁気記録)をSeagateが解説、店頭イベントを実施

 Seagateの店頭イベント「HAMR技術説明会&ガラポン抽選会」が23日にTSUKUMO eX.3Fの特設会場で実施。

 イベントでは超大容量のHDDを実現するために開発された「HAMR(熱アシスト磁気記録)」がどのような技術なのか、日本シーゲイトのスタッフから解説されました。

日本シーゲイトの中澤篤史氏(左)と横山智弘氏(右)。
イベントのはじめには簡単にSeagateがどのような企業なのかの解説も。

 「HAMR」がどのような技術なのかを解説したのは日本シーゲイトの横山氏。HAMRはHDDプラッタの微細な領域を加熱してデータの記録を行う方式。HDDは磁気を利用してデータを記録しますが、微細化を進めるとデータを記録するドットが小さくなる分より多くのデータが記録できますが、狭くなるほど隣接するドット同士で影響しあいデータ化けが起きるリスクが高まります。

 データ化けを防ぎつつ微細化を進めるかたちでHDDは進化してきましたが、現在主流のPMR(垂直磁気記録)は限界に近いこともあり、大容量化を進めるには新しい技術が必要でした。ドッチピッチを狭めてもデータ化けが起きにくい素材は、データを書き込む際に磁気の状態を変化させることが難しい素材でもあるので、簡単にはデータを書き込めません。そうしたデータを書き込むことが難しい素材に対応するための技術が「HAMR」で、データを記録する際にレーザーで加熱することで、書き込みやすい状態にして情報を記録する方式になります。

 SeagateではHAMR方式の30TB HDD(CMR方式)「ST30TB00000」と32TB HDD(SMR)「ST32TB00000」を出荷しており、このHDDの世代に使用している同社の技術を「Mozaic 3+」と呼んでいます。数字の3+はプラッタあたりの容量を示しており、Seagate製HDDの最大プラッタ枚数は10枚なので、Mozaic 3+であれば30TB(SMR時は32TB)が最大容量となるとのこと。5TBプラッタまではロードマップが見えているとのことで、50TB HDDまでは開発の目途が立っているそうです。ちなみに、Mozaic 1、Mozaic 2に相当する技術を使ったHDDもプロトタイプはあったそうで、Mozaic 3+の世代から市販品になったとのことでした。

 Mozaic 3+で使用されているプラッタはガラスにプラチナ合金を塗布したものデータを読み書きするヘッドも微細化されたプラッタに対応できる最新の物もので、書き込み側のナノフォトニック・レーザーはもちろん、読み取り側には第7世代スピントロニック・リーダーが使われていたりと、この技術が使われたHDDはSeagateの先端技術の結晶といった印象。メカ好きな人であれば、容量以外のテクノロジー部分にも魅力を感じるのではないでしょうか。

 Mozaic 3+を採用したHDDは現在データセンター向けに出荷が行われているとのことで、国内のPCパーツショップなどではまだ販売されていません。一般ユーザー向けの販売の準備も鋭意進めているとのことなので、早く登場することを期待したいところです。現時点では、Mozaic 3+採用モデルはエンタープライズ向けのEXOSシリーズのみとなっていますが、将来的には、一般ユーザー向けにNAS向けのIron WolfシリーズでMozaic 3+採用のモデルが投入されるかもしれないとのことでした。

 HAMRの技術解説以外にも、HDDの選び方に関して日本シーゲイトの中環氏が解説。

 一日8時間程度の利用であれば、一般向けモデルのBrracudaシリーズがコストパフォーマンスに優れ、一日中使用するような用途などであればIronwolfシリーズがお勧めとのこと。HDDは使用時間や用途に合わせ設計や搭載機能が異なるため、利用環境に適したモデルを選ばないと故障の原因になることもあります。使用時間と用途に合わせHDDを選び、データを失わないために意識したいポイントが紹介されました。

 NASに搭載したり、上級ユーザーが普通に使う分には耐久性や保障の面でもIronwolfで十分な仕様となっていますが、映像制作などの業務用途で常にデータを書き込んだりするような環境であれば、Ironwolf Proが耐久性やパフォーマンスの面で適しているそうです。

 当日はSeagate製品を購入したユーザーを対象にしたガラポン抽選会も実施。ワイヤレスヘッドフォンやギフトカードなどが当選者にプレゼントされていました。

[取材協力:TSUKUMO eX.]