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直近のビデオカード販売シェアはRadeonが45%に、AMDが新製品解説イベントを開催

マザーボード/ビデオカード主要メーカーが集結、AMDの50周年記念ケーキも text by 関根慎一

AMD 佐藤美明氏(右)は当日配られたノベルティの「自作魂」前掛けを装着して登場、イベントのMCは鈴木咲さん(左)がつとめた
会場のLIFORK秋葉原II
会場ではAMD関連製品の展示も行われた
多くのユーザーで賑わうイベント会場
イベント用に用意されたオリジナル構成のPCでモンスターハンターワイルズ ベンチマークがデモされていた

 AMDは16日、製品紹介イベント「春の新製品発売イベント~チームAMD 大集合スペシャル~」を開催した。会場はLIFORK秋葉原II(千代田区外神田3-13-2 秋葉原TMOビル)。

 14日に発売したばかりのCPU「Ryzen 9 9950X3D」と「Ryzen 9 9900X3D、およびGPU「Radeon RX 9000」シリーズを紹介/解説するイベント。トークセッションの登壇者は、AMDはコーハン氏と佐藤美明氏、ASRockは原口有司氏、ASUSは市川彰吾氏、GIGABYTEは川村直裕氏、MSIは中島悠太氏、PowerColorはFiona氏、Sapphireは代理店ASK 中島波氏が担当。MCは鈴木咲さんがつとめた。

 会場では、各メーカーのX870E/X870/B850チップセット搭載マザーボードやRadeon搭載ビデオカードのほか、Ryzen + Radeon構成のBTO PCの展示なども行われていた。

ASRockの製品
ASUSの製品
GIGABYTEの製品
MSIの製品
SapphireとPowerColorの製品
G-TuneのゲーミングPC
GalleriaのゲーミングPC
Level∞のゲーミングPC
G-GEARのゲーミングPC

 AMDのセッションでは、AMD本社のプロダクトチームからCPU/GPUの両方を担当するコーハン氏が登壇。Ryzen 9 9950X3D/9900X3DならびにRadeon 9070/9070XT/9070XT OCの特徴や性能について説明し、これを踏まえて「2025年はPCゲーミングの分野で非常に大きな変化が訪れる年になるだろう」と話した。

AMD プロダクトチームのコーハン氏
第2世代V-Cache搭載で冷却性能を向上した
特定のゲームタイトルに対してコア処理の最適化を図っている
CPUだけを交換してもOSの再インストールを必要としなくなった
特定のゲームタイトルでコア処理が最適化されていないケースに対処する

 他社との主な差別化要因としては第2世代3D V-Cacheの搭載を挙げ、冷却性能の高さをアピール。ここではゲーミング用途に向いたチップセット内蔵機能の新要素として「Application Compatibility Database」と「Provisioning Packages Service」について紹介した。

 新機能の「Application Compatibility Database」では、複数コアに処理が散る問題に対処する。特定のゲームタイトルに対してコア処理の最適化を図っており、イベントでは「Deus Ex: Mankind Divided」や「Farcry 6」などの数タイトルについて対応することが紹介された。

 「Provisioning Packages Service」は、特定のアプリケーションのワークロードに対して適切なコア数を特定し、動作を最適化する機能。CPU交換時にプロビジョニングパッケージを切り替えることでOSの再インストールが不要になるアップデートが適用された。

 CPUのゲーム性能に関しては、旧世代「7950X3D」およびインテルの「Core Ultra 285K」との比較が示されたほか、下位モデル「9800X3D」との比較結果も公開。PhotoshopやBlenderなどクリエイター向けアプリの性能についても旧世代モデルを上回る性能を発揮するとした。

Ryzen 9 9950X3Dのパフォーマンス紹介
Ryzen 9 7950X3Dとの比較
Core Ultra 9 285Kとの比較
Ryzen 7 9800X3Dとの比較
クリエイティブアプリ使用時の性能比較
Ryzen 9 9900X3Dのパフォーマンス紹介
Ryzen 9 7900X3Dとの比較
Core Ultra 9 285Kとの比較
クリエイティブアプリ使用時の比較
7950X3D、9900X3D、9950X3Dとの比較

 Radeonの説明ではまず、ゲーマーがビデオカードに求めている要素として「買いやすい価格」「4Kなど高解像度への対応」「レイトレーシングを含む高性能」「アップグレードしても同じ電源が使えること」の4つに言及した。RX9070リーズで採用している新アーキテクチャのRDNA4についてはレイトレーシング性能とAI性能、HDMI 2.1bやDisplayPort 2.1aへのサポートについても共通の特徴として紹介した。

ゲーマーがRadeonに求めているもの
レイトレーシング性能やAI性能を向上

 Radeon RX7900 GREとの比較では4Kおよび1440p設定時とレイトレーシング設定時の性能を提示。ここでは「純粋なラスタライゼーションの結果であり、スケーリングやフレーム生成を行なっていないデータ」であることを強調しており、「競合他社と違いこうしたデータを出すことを恐れていません」と自信をのぞかせた。

 GeForce RTX 5070 TiとRadeon RX 9070 XTとの比較ではタイトルによってばらつきはあるものの、その差異は±15%以内に収まってほぼ同等であることを示した。そのうえで、価格面での競争力がある点をアピールしている。ドライバ関連機能としては、フレーム生成機能の「Fluid Motion Frames 2.1」や「HYPR-RX」についても言及しており、今後はより動きの激しいシーンでの動作を改善するとしている。

Radeon RX 7900 GREとRadeon RX 9070の比較
GeForce RTX 5070 Tiとの比較
HYPR-RXのデモ

PCパーツメーカーがAMD関連製品を解説、イチオシ製品をアピール

 AMDのセッションのあとは各メーカーが自社製品をアピール、推していきたい製品を解説していた。記事ではポイントとなる部分を簡単に紹介しよう。

ASRock

 ASRockはマザーボードとビデオカードの上位モデル「Taichi」シリーズの特徴について解説した。とりわけビデオカードについてはOC性能の高さをアピールしており、これに新型のヒートシンクやファン、相変化サーマルパッドの採用を併せて、OC性能と冷却性能の両立を図ったとしている。

 また、12V-2x6pinパワーコネクタの採用についても言及。大きな電流を流す上では8pin×3よりもレイテンシが低く電力効率面で有利なほか、スペースを占有しないことからエアフローが確保しやすいなどの理由を挙げた。

原口有司氏
Taichiの設計方針
OC耐性の高さをアピール
新設計のファンでエアフローの効果を向上
熱伝達と耐久性を高めたサーマルパット
Taichiでは高信頼性コンポーネントを採用している

ASUS

 ASUSは「TUF Gaming」ブランドのRadeon RX 9070/9070XT/9070XTをアピール。MIL規格準拠の部品を使用していることやPCB基板のコーティングを一新したこと、GPUとヒートスプレッダの間に相変化素材サーマルパッドを用いることで、性能の最適化と長寿命化を図っている点を強調した。また主要な機能は現行世代のGeForceとほぼ同じであるとのぶっちゃけトークも飛び出した。

市川彰吾氏
TUF GamingのビデオカードにはMILスペックのコンポーネントを搭載
一定温度で融解する相変化素材サーマルパッドを採用
PCBのコーティングを一新
ASUSのPRIMEシリーズ
パーツの購入でAdobe CCを利用できるプログラム。ユーザーに知られておらず利用率が低いという

GIGABYTE

 GIGABYTEはAORUSシリーズのマザーボードとビデオカードを中心に紹介。自動OC機能「AI Snatch」をはじめとしたAI関連機能や、AIを活用した基板設計についても解説した。

 マザーボード側では簡易着脱機構の「WIFI EZ-Plug」や「PCIe EZ-Latch Plus」などのDIY支援機構を紹介した。ビデオカード側は「サーバーグレードの熱伝導性ゲル」を使用したほか、クーラーにブレード形状を改善して風圧と風量の増加を図った「ホークファン」を採用し、冷却と静音性能の両面で強化を図っているという。

川村直裕氏
AI機能を中心としたAORUSの特徴
AI機能とAIアシストによる製品設計方針
GIGABYTEのRadeonラインナップは3機種
ファンのブレード形状を改良することで低ノイズ化と風量増加を図っている
自動製造化により、熱伝導性ゲルを最適に塗布することが可能に

MSI

 MSIはX870E/X870/B850チップセットを搭載したMEG/MPG/MAG/PROシリーズのマザーボードについて解説した。ここでは特にM.2ストレージをスロット式に着脱できる拡張カードオプション「M.2 XPANDER-Z SLIDER GEN5」を紹介。1スロット占有で空冷ファンも付属しており、簡単にSSDを交換できる点が売り。

 最上位マザーボードのMEG X870E GODLIKEは20万円を超える非常に高価なマザーボードだが、2024年末の投入以来品薄が続いており、好調な売れ行きであると報告。フラッグシップであることもあって一度に入荷する数は少ないが継続的な供給を行なうとも明言しており、ほしい場合は入荷のタイミングを把握して狙ってほしいと話した。

中島悠太氏
MSIのマザーボードラインナップ
拡張スロットのブラケット側からM.2 SSDを挿入できるM.2 XPANDER-Z SLIDER GEN5
カートリッジのようにM.2 SSDを挿入できる
M.2 SSD Gen 5を最大4基まで増設できる
背面に端子を集めたEZ LINK

PowerColor

 PowerColorは上位機種の「Red Devil」と「Hellhound」を紹介。Red DevilはPowerColorブランドのフラッグシップで、相変化サーマルパッドやデュアルボールベアリングを採用した冷却性能の高さをアピール。Hellhoundについてはホワイトモデルを用意しており、両機種とも外観デザインに力を入れているとした。

Fiona氏
PowerColorの歴史
フラッグシップ「Red Devil」ではGPUモチーフのメタルキーキャップが付属
相変化サーマルパッドを採用
ホワイトモデルも用意されている「Hellhound」
中央のファンのみ逆回転としている

Sapphire

 Sapphireが販売するRadeon RX 9070シリーズは「NITRO+」「PURE」「PULSE」の3機種。特に最上位機種のNITRO+はメンテナンス性に配慮した「クイックコネクトファン」、コネクタを背面のバックプレート内部に配置した裏配線、高性能なサーマルグリス、高耐熱性PCBコートの採用などによって、高い安定性と耐久性を実現したと説明している。またクーラーには新設計のAeroCurveファンブレードを採用して風量を増しており、冷却性能の高さにも言及していた。

中島波氏
SapphireのRadeonラインナップ
フラッグシップのNITRO+
高性能なサーマルグリスを採用
高Tg厚銅基板によって耐熱性を高めた
ファンの風量と静圧が向上

インフルエンサーを招いてのトークセッションや関係者座談会も

 インフルエンサー枠で参加したgradeon氏とシュラララ!!氏はRyzen 9 9950X3D/9900X3Dの第一印象について言及。両名ともまだしっかりと試せる段階にはないものの、ゲーム性能については心配していないという。シュラララ!!氏は手元に「Ryzen 9 9950X」があるので比較動画を出してみたいと話した。gradeon氏は動画編集用途での活用を視野に、マルチコア性能に期待を寄せた。Ryzen 9 7950X3Dとの差に注目したいという。

gradeon氏(左)とシュラララ!!氏(右)
コストパフォーマンスを評価。さらなる上位機種を求める声が上がる

 シュラララ!!氏はRyzenの改善点について問われると、「個人的に(凹凸のある)ヒートスプレッダの形が……」と言葉を濁した。これについては佐藤氏も「AM5が続く限りは今のままだと思う」と申し訳無さそうに述べ、一般的には一度取り付けたら再度装着しないことが前提にあると説明した。一方で良いところとしては、温度が低く抑えられるところを上げている。

 gradeon氏はクリエイティブ用途での性能についてRyzenは拡張性の面でライバルに一歩譲ると指摘。現行のX870ではUSB4ポートを搭載した点を評価しつつも、一方でビデオカード用のPCIeとUSB4でCPUのレーンを使い切ってしまうことから、マザーボードのレーンを増やすか、CPUにUSB4のコントローラをつけることで、より面白いマザーボードも出てくるのではないかと提案した。

 Radeon RX 9070シリーズの魅力についての問いに、gradeon氏はOCによって遊べる幅が広い点で「Radeon RX 9070が触っていて面白いGPU」だと評価している。また「GeForce RTX 3090」からの乗り換え需要に応えるGPUであるとも述べ、自身で購入した「PowerColor Red Devil Radeon RX 9070 XT」をOCして使っている話を披露した。

 シュラララ!!氏は「価格の割に性能が高い」とRadeon RX 9070を評価。発売したばかりの「モンスターハンターワイルズ」についてはWQHDで余裕を持って遊べることに加え、設定を工夫すれば4Kでも遊べるとの検証結果を話した。

 Radeonへの要望としては、gradeon氏が「ダイのサイズを4倍にして上位機種を出してほしい」とリクエスト。会場からは大きな拍手が巻き起こった。佐藤氏も「これだけいいものができたら実はいけるんじゃないか?」とまんざらでもない様子だった。シュラララ!!氏はAFMF2とFSR4のさらなる改善を求めていた。

座談会では供給の問題と現在市場の事情についての裏話が語られた

 最後のセッションでは登壇者全員が集合して座談会を実施。フリートークではおなじみとなった感もあるAMD側のパーツ供給問題に話題が及ぶと「すべての問題は在庫があれば解決するでしょう?」との声が上がった。佐藤氏は「AMDはグラフィックが売れることに慣れていなくて……」と言い訳をしつつも「(直近の販売シェアでは)おかげさまでビデオカードのシェアが45%を超えた」とコメント。これに対して「まだ野党だ」と指摘を受け、過去にない売れ行きを前に、今後のさらなるシェア拡大に発破をかけられる形になった。

 今年の市場特有の事情もあるという。例年2月頃は売れ行きが減退するが、今年はコロナ禍の時期にPCを購入した層の買い替えサイクルにかかっており、また注目作モンスターハンターワイルズの発売、Windows 10のサポート終了など多くの例外的な要因が重なって「特異点」との呼び声もあった。ただ佐藤氏によると、日本ではAMD製品が売れているので新製品の投入量は増える傾向にあるとしている。

最後に、AMDコンシューマ&コンポーネント営業本部長の土子秀人氏が来場者に謝意を表明した
50周年記念のケーキも披露された(規定により来場者には振る舞われなかった)

 イベントの最後ではAMDコンシューマ&コンポーネント営業本部長の土子秀人氏が登壇。

 「我々の冬の時代は本当に長かったと思います。やっと春が来て、これから夏になり、秋が来て、もしかしたらまた冬が来るかもしれませんが(笑)、また必ず春は来ますし、これからもまだ新しい製品を出し続けていますので、今後とも是非よろしくお願いいたします」と、AMD創業50周年を迎えた祝辞を述べた。

【AMD 春の新製品発売イベント -チームAMD 大集合 -】