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「変なPC」勢揃い?ラジオPCにレゴPC、植木鉢…
「夏の思い出PC」は変なPCばかりだった

text by 林 佑樹

 2014年9月20日、「DIYパーツ夏の自由研究」という謎な名前のイベントがツクモパソコン本店で行なわれた。

 これはDIYパーツメーカーなどが集い、テーマである「夏の思い出」を満たしたPCばかりが展示するというもの。端的にいえば「見た目は色モノPCだが、ちゃんと使える。普通の自作PCにはすっかり慣れきってしまい、よりチャレンジブルな自作PCの提案する」といったスタンスのゆるふわなイベントだ。

 参加したのはAMD、GIGABYTE、MSI、ASUS、そして高橋敏也氏とつくる女。ではさっそく変なPCを見ていこう。

トランジスタラジオ型PC作:MSI

普通に製品化してもウケそうなPCである
背面にもちゃんとインターフェイスが増設されている
トランジスタラジオ型PCのスペック

 1981年に登場したSONYのトランジスタラジオ「ICF-9740」をケースにしたPC。

 ICF-9740はロングランになっており、2000年あたりまで生産されていたもの(筆者の記憶の範囲だと)で、見た目はとても昭和だ。作者の友人からDDR2メモリと交換で入手したそうで、スピーカーはSONY製ではなくなっていたり、背面にはTAIWAN REPUBLIC OF CHINAの文字があったりと、ビンテージものである。

 制作にあたり、まず困ったのは電源を入れる場所だったそうだ。AMDが協賛しているため、Kabiniで考えていたそうだが、24PINコネクタの取り回しが面倒すぎるため、マザーボードをMSI H81TIに変更し、ACアダプター駆動としている。さらにAM/FM切替ボタンが電源スイッチだったり、ボリュームダイヤルで音量調整ができるようにしているなど、使い勝手もしっかりと考慮。

 PCのサウンドは、もちろんICF-9740のスピーカーから再生される。

ノイズを拾っていたため、ドライバートランスも組み込み整音している
スピーカーから音が出ないトラブルの報告も。原因はRealtek HDオーディオマネージャーの「フロントパネルジャック検出」をオフにしていなかったこと
スイッチやランプなどは別途市販製品で対応している

LEGOブロックPC作:GIGABYTE

GIGABYTEのLEGOブロックPC
天板部だけ見るとただのLEGO
マザーボード格納部もLEGOで作られているのがポイント。ベースプレートは600mm×600mm

 冒頭の「トランジスタラジオ型PC」で、ほどよく感覚がマヒしたところで登場したのがGIGABYTEによるLEGOブロックPCだ。

 「子供のころは、持っているLEGOが少なくて作れるものにも限界があった……でも、いまはオトナ。オトナ買いできるんです!」と、完成したのがLEGOブロックPC。

 LEGOブロックのパーツで作られたケースにマザーボードが格納され、天板は情景セットで風景を演出。電源などはGIGABYTE展示用オリジナルケースで対応しているが、強烈なインパクトを受けるとともに、PCと思えない雰囲気がステキである。当然ながら、制作にはLEGO組み立てのほうが長く、600mm×600mmのベースプレートに広がる大自然は圧巻だ。どこかで展示してほしい。

CPUはA10 7850Kでファンレス仕様
しかし、天板部だけ撮るとPCではないなぁ(苦笑)
気になるコストも公開された。大人買いしたLEGOのコストは20000円

植木鉢PC作:ASUS

夏休みといえば、アサガオの観測! ということで、こんなPCが誕生

 ASUSはなぜかモバイルもできる植木鉢PCを披露。

 ケースは植木鉢F型10号で、アクリル板を曲げてマザーボードを斜めに設置することで、植木鉢内への格納に成功している。アクリル板をベースとしたボード形状は「<」のようになっており、上部にマザーボードを設置、その裏面にバッテリーとSSDを取り付けるという形で、省スペース化を実現している。

 ポイントとしては、Wi-Fi用アンテナは支柱9号に合わせて伸びており、アサガオに紛れているため、とても自然な感じに仕上がっていた。運搬は、ときおり電車の中で見かけることもあるように、袋に入れてそのまま手で運んできたとのこと。

植木鉢F型10号にPCが格納されている
アサガオに紛れているのはWi-Fiアンテナ
植木鉢F型10号の底部をくり抜いてインターフェイスを用意している。突貫作業だったため、けっこう荒くてごめんなさいとのこと
スペックは写真の通り
バッテリーはinG TL160K(16000mAh)で、2時間30分ほどの動作を確認しているという

ライブステージPC作:AMD

ライブステージPC
LEDを内蔵しており、ちゃんと点滅する
ケースはTrinityのデモ時に使用したものを流用。ファンレスを目指すも、うまくCPUクーラーが入らなかったため、ファンレスは断念している

 AMDは井戸川氏が当日の発表直前まで作っていたライブステージPCを展示していた。

 これはアニメ視聴に最適な「Fluid motion」のアピールも兼ねており、BGV専用機としての提案だ。

 ただそのままでは面白くないので、ライブステージのようにしてみたという。Raspberry Pi互換LCDも取り寄せ、キレイに埋め込んで、カンペキなライブステージを目指そうとしたが、早朝の作業中にTHE クラッシュ!してしまい、On-Lap 1002で代替している。LEDライトが点滅したり、外部スピーカーもライブ感溢れる場所にあるなど、今後のデモでもしれっと置かれていそうだ。ちなみにCPUクーラー部分はファンレス仕様。「LEDの排熱処理を考慮して、ケースファンは取り付けた」(井戸川氏)とか。

なにかとトラブルや苦労はすべて「自作PCならではの醍醐味!!」でまとめていた。実際のところ、そうだが(笑)
ライブ会場っぽくDisplayも埋め込もうとRaspberry Pi互換LCDを取り寄せたという
2014年9月19日午前4時57分、つまりイベント前日の早朝に問題は起きた
いわゆる、THE クラッシュ!である

「夏の思い出 海水浴マシン」ビキニパンツバージョン作:高橋敏也

「夏の思い出 海水浴マシン」ビキニパンツバージョン。単体であるとやたらと目立つビジュアルだが、上記のように色モノ祭りなので、とても自然に馴染んでいた
インターフェイス部もしっかりカットされ、使い勝手が確保されている
エントツ排気仕様になっている点もポイント

 夏といえば海。変なPCばかりの中に馴染んでいたのは、ビキニパンツPCだ。

 これは「改造バカ」こと高橋敏也氏が制作、展示したPCで、透明のマネキンを使用し、その中にCore i7-5820Kやらマザーボード、電源などを収納。さらにエントツ排気も実現と、見た目は色モノだがちゃんと使えるPCである。

 高橋敏也氏は、本イベント時北海道へ取材に出ていたが、展示されていたパネルには、micro ATXのマザーボードを選び、ストレージもM.2にするなどのポイントが記載されていた。またマネキンは、水着や下着のディスプレイに使用されるもの。材質であるPETGは粘りと強度があり、カットに苦戦したそうだ。内部におけるパーツのホールドは、両面テープやテグス、ホットボンドなどを駆使したとのこと。

日記として展示されていたパネルその1
日記として展示されていたパネルその2
日記として展示されていたパネルその3
つくる女で作成されたランドセルPCの展示も
こちらもつくる女製スパゲティPC

第2回も開催決定!一般参加もOKにテーマは「昭和」?で、2015年初頭開催

座談会の様子。フツーにPCの話をしているだけのゆるふわ空間だった

 各社の発表のあとは座談会。

 たまたま様子を見に来たCFD販売の人もなぜか登壇し、次回のネタを考える展開に。候補はいくつか上がったが、ファンの年齢層が高いこともあり、テーマは「昭和」となった。

 今回はメーカーのみだったが、第2回はでは一般からの参加も考え、希望者にはプレゼンの時間も用意される見通しだ。もちろん、なにもサポートはされないので、「気軽に参加」とはなかなかいかないが、平素から余っているパーツで変なPCを作っている人であれば、みんなに見てもらうチャンスになるだろう。

 このイベント自体、「新製品がない時期でもPCで楽しんでほしい」というメーカーの狙いもあるそうで、実際、ACアダプター駆動やファンレス、省スペース化をしやすくなったことで、昔より自作PCで「遊べる」幅が広がったこともあるようだ。第2回ではもっと奇抜なPCが登場しそうな予感だが、ファンもメディアも巻き込んだイベントに成長してくれそうな雰囲気である。