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常用OC解説イベントをMSIが実施、オーバークロッカーがコツを紹介

電圧調整で動作温度を低下、水冷ビデオカードの性能も披露 text by 清水 貴裕

 11月14日、ツクモパソコン本店の4Fにて「自宅で常用できるオーバークロック講座」が開催された。

 筆者(清水 貴裕)がMSI製のマザーやビデオカードでOCする際のポイントや、常用OCテクニックを解説してきたので、その時の様子をお届けしたいと思う。

 当日の様子は同店のYoutubeアカウントにアップロードされているので、気になる人はチェックしてみてほしい。

CPUのTurbo Boost時の定格電圧を調べ微調整、適正電圧で静音化

 第1セッションではMSIのOC向けZ170マザーである「Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION」を使って、常用OC設定の解説を行った。

筆者(左)と司会進行役の株式会社アスクの深江氏(右)
「Z170A XPOWER GAMING TITANIUM EDITION」
当日のセットアップ。

 まず最初に行ったのは、電圧設定のスタートラインに関する解説。OCする上で基準となる、CPUの定格電圧である“VID”のチェック方法を解説した。

 MSI製マザーボードは、標準ではTurbo Boostがかかってない定格クロック時のVID「Stock VID」を表示する仕様なので、OCを行う時はTurbo Boost時のTurbo VIDを知る必要がある。

MSIマザーはハードウェアモニタ欄が見やすいので簡単にVIDをチェック出来る。

 方法は簡単で、Core i7-6700Kを例にすると、Turbo Boost時の定格「CPU倍率42倍」に設定して再起動するだけ。すると、マザーボード側で自動的に電圧が調整され、ハードウェアモニタ欄にTurbo VIDが表示されるようになる。この値がOC時の基準電圧になる「Turbo VID」だ。

 Skylake世代では、CPUコアとリングバスに掛かる電圧が1つのラインに統合されている。そのため、CPUの定格電圧はHaswellやDevil's Canyon世代よりも高く、その分発熱も多い。発熱を減らすためには、基準とする「Turbo VID」の値から電圧を下げていく手法がとても有効だ。

 イベント時に使用したCPUは、定格状態ではCPU電圧が1.34V掛かっており、OCCT実行中には81℃までCPU温度が上昇。この状態からCPU電圧を1.27Vに設定するとCPU温度は71℃まで低下した。電圧は無闇に下げると不安定になるため注意が必要だが、その効果が確認できるだろう。

 なお、安定性を確保しつつダウンボルテージする手法は「大作PCゲームを快適に、性能100%超かつ暴走させない常用OCテクニック」という記事内で解説しているので、気になる人はこちらをチェックしてみてほしい。

マルチメーターで計測したところ、定格状態でCPU電圧が1.34V掛かっていた。
OCCTを実行中。CPU温度はHWMonitor読みで81℃に達している。
事前テスト時のCPU温度。ダウンボルテージの恩恵で75℃までCPU温度が低下している。

 第1セッションの後半では殻割済みのCPUとの比較も実施。CPU内部のTIMは、熱伝導率82.0W/m・Kを誇る“Cool Laboratory Liquid Pro”に変更し、冷却性能を紹介した。

 CPU電圧は1.27VのままCPUクロックを4.5Hzに設定してOCCTを実行すると、CPU温度は60℃を超える位までしか上昇せず、Liquid Proの高性能さを再確認。イベント中なので長時間の負荷テストが出来なかったが、定格電圧の値が近い殻を割っていないCPUと比較して10℃以上温度が下がったので、来場者の反応も上々だった。

不敵な笑みを浮かべて殻割り済みCPUを取り出す筆者
殻割済みのCPU。

3種のVGAを比較!常用OCに適したVGAとは?実は同社製では一番冷える「GTX 980Ti SEA HAWK」

 後半のセッションでは、3種類のGeForce GTX 980 Tiの比較を行った。用意したのは、リファレンスデザインのカード、「GTX 980Ti LIGHTNING」、「GTX 980Ti SEA HAWK」の3枚で、OC耐性だけでなく冷却力や静音性も比較。

 誰もがLIGHTNINGが一番だと予想していたが、予想に反してSEA HAWKが奮闘。LIGHTNINGと同じコアクロック1,450MHz、メモリクロック1,850MHzという常用OC設定をクリアしつつもGPU温度はLIGHTNINGよりも18℃も低い46℃までしか上昇しないという高性能っぷり。参考までに、リファレンスデザインのカードは定格クロックの状態で81℃に達しており、別次元の冷却能力だということがわかる。

今回のダークホース的存在なSEA HAWK。リファレンス基板ながら、徹底的なチューニングでLIGHTNINGに肉薄。
「GTX 980Ti LIGHTNING」の常用OC設定でのベンチマーク後の画面。
「GTX 980Ti SEA HAWK」の常用OC設定でのベンチマーク後の画面。

 温度が低いという事は、GPU Boostの効きが安定するのでOCしやすい上に、ファンの回転数が低くなるので静音性も優れている。パフォーマンスと静音性の両立が求められる常用OCにおいては、よく冷えるクーラーを搭載したオリジナルモデルが最適な選択肢といえる。

会場にはMSI製ビデオカードやマザーボードの展示機も
MSIのパーツが組み込まれたMOD PC「初音ミクPC」もここでお披露目
こっそり持って帰りたいほど欲しくなった「GTX 980Ti LIGHTNING」

[撮影協力:ツクモパソコン本店]