最新自作計画

期待のミドルレンジクーラー「サイズ MUGEN6 BLACK EDITION」、漆黒のボディとデュアルファンで最新CPUもしっかり冷却!!

【新装第2回/通算第80回】精悍なルックスや刷新されたファンも魅力 text by 竹内 亮介

 サイズのミドルレンジ空冷型CPUクーラー「MUGEN6」は、2006年に初代モデルが発売された「MUGEN」シリーズの最新モデルだ。対応環境の更新やファンの強化を図るリビジョンアップを経ながら約8年間販売されてきた超ロングセラー「MUGEN5」の後継となる。

 昨今、5,000円以上1万円未満のミドルレンジ空冷クーラーは競争が激しく、“最新自作計画”に向けたパーツ選定が気になるジャンル。旧モデルとの違い、ライバルとの性能面や組みやすさでの比較など、さまざまな面から期待の新モデルを検証してみた。

つや消しブラックの精悍なデザインを採用

 MUGEN6はシングルファンの通常モデルに加え、デュアルファンでつや消しブラックのヒートシンクを採用する「BLACK EDITION」をラインナップ。今回は後者を借用して各種テストを行った。実売価格はMUGEN6が6,000円前後、MUGEN6 BLACK EDITIONが7,000円前後。前述の通り激戦区の価格設定だが、PCパーツショップの店頭では、デュアルファンで1万円を大きく下回ってきているMUGEN6 BLACK EDITIONの反響が大きいそうだ。

デュアルファンの「MUGEN6 BLACK EDITION」とシングルファンの「MUGEN6」。BLACK EDITIONの精悍なデザインが際立つ

 MUGEN6は、6本のヒートパイプに多数のフィンを組み合わせたヒートシンクと、12cm角ファンで構成される。MUGENシリーズでは伝統的な構成で、ミドルレンジの空冷型CPUクーラーのスタンダードでもある。BLACK EDITIONではさらに12cm角ファンが1基追加され、その名の通り、製品全体がシックな黒色に仕上げられている。

 対応するCPUは、Intel向けがLGA1150/1151/1155/1156/1200/1700/2011/2011-V3/2066。AMD向けがSocket AM4/AM5で、最新世代のCPUでも問題なく利用できる。またMUGEN5と比べると、IntelのLGA775、そしてAMDのSocket AM3+までが非サポートになっている(LGA775はMUGEN5 Rev.Cからすでにサポート外)。

【MUGEN6 BLACK EDITIONの主なスペック】
タイプ空冷型サイドフロー
対応CPUソケットLGA1150/1151/1155/1200/1700/2011/2011-V3/2066
Socket AM4/AM5
ファン12cm角(350~2000rpm、PWM対応)
サイズ(W×D×H)132×132×154mm(付属ファンとクリップ含む)
重量1,197g(付属ファンとクリップ含む)

 外観はずいぶんと現代的になった印象。MUGEN5では6本のヒートパイプの先端が天板に突き出ているのに対し、MUGEN6では天板がブラックカバーで覆われたフラットなデザインになっている(ノーマル版はシルバーカバー)。最近のCPUクーラーではイルミネーションやルックスにこだわった製品が増えたことを踏まえた設計だろう。ずいぶんすっきりとしたイメージになった。

左がMUGEN6 BLACK EDITION、右がMUGEN5の天板部分。MUGEN6 BLACK EDITIONはフラットになっている

 ヒートシンクの天板と底面の距離を実際に計測してみると、MUGEN5が実測値で10.3cm、MUGEN6は11.4cm。ヒートシンク自体のサイズは、MUGEN5と比べて大きな違いはないようにも見えるが、MUGEN6に付属の12cm角ファンを付けてみると、ヒートシンクのファンに向かい合う部分(ファンの風を受ける面)がやや広くなっている。

 MUGEN5では、12cm角ファンを付けると一番風量が大きいファン外周部の風が一部フィンにあたりにくい状態になってしまうため、ちょっともったいないなとは思っていた。しかしMUGEN6ではフィン全体に12cm角ファンの風が行き渡り、冷却性能によい影響があることが予想される。

MUGEN6 BLACK EDITIONではヒートシンクの上部から下部までファンがしっかりと重なる構造
MUGEN5ではファンの上部と下部が若干ヒートシンクからはみ出し、わずかではあるがフィンに当たっていない状態

 MUGEN6はヒートシンク天板部分のデザイン変更で若干背が高くなったようにも見えるかもしれいが、実際の高さはMUGEN5が15.45cmであるのに対してMUGEN6では15.4cmとほとんど変わらず。ミドルレンジの高性能な空冷型CPUクーラーとしては高さは抑え気味で、一般的なミドルタワーケースであれば問題なく利用できるはずだ。

 付属の12cm角ファンは、CPUクーラー用に特化された静圧重視とする新設計フレームのものを採用。回転数はスペック上では350(±200)~ 2,000(±10%)rpmで、今回の検証環境だと、アイドル時や負荷の低い状況では400~500rpmで落ち着いており、ほぼ無音状態だった。またフル回転状態になっても、軸のブレによる異音や共振音を感じることはなく、2,000rpmのファンとしてはそれほどうるささを感じない。

付属のファン。固定穴の周囲には制振ラバーが貼られている
ベースプレートは銅製で、ヒートパイプとCPUが直接タッチしない構造

MUGEN5と比べると着実に冷却性能が向上

 リテンションキットは、Intel用は付属のバックプレート、AMD用でもマザーボード付属のバックプレートを利用し、しっかり固定できる。実際設置してしまえばガッチリ固定され、緩んだりズレたりすることはない。バックプレート式を採用するCPUクーラーとしては標準的なリテンション方式を採用しており、マニュアルを一度読めば、スムーズに取り付けられるだろう。

IntelのCoreシリーズで利用するリテンション部品。ピン部分はLGA1700とLGA1200/115x用で移動して利用する
AM4/5用のリテンション部品。マウンティングプレートは、Socket AM3に対応する穴がないシンプルなものに変わった
取り付け方法の基本はMUGEN5とほぼ同様。写真のようにマウンティングプレートで土台を組み、そこにヒートシンクを固定する

 MUGEN6 BLACK EDITIONに付属する2基のファンは、ヒートシンクを挟み込むように設置する。ただバックパネルに近いほうのファンは、マザーボードのヒートシンクやデザインカバーの上に乗り上げてしまう可能性もある。MUGEN6 BLACK EDITIONを利用する場合、ファンの取り付け位置を若干ずらすことも想定して、取り付けられるCPUクーラーの高さが16cm程度のPCケースを使うと先々まで安心できそうだ。

今回の検証用マザーボードに取り付けたところ。メモリへの干渉はない
MUGEN 6 BLACK EDITIONでは、バックパネルに近いファンがマザーボードのカバーに若干乗り上げてしまった

 CPU温度の検証は、Ryzen 9 7900Xをベースにしたシステムで行った。比較対象は前世代のMUGEN5(リビジョンは最終モデルの1個前のRev.B)と、MUGEN6 BLACK EDITIONのファンを吹き付け1基にした状態だ。後者はMUGEN6の構成を想定している。またマザーボードの標準設定に加え、PPTを140Wに制限したときの温度変化もチェックしている。

【検証環境】
CPUAMD Ryzen 9 7900X(12コア24スレッド)
マザーボードASUS ROG STRIX B650-A GAMING WIFI(AMD B650)
メモリCFD販売 W5U4800CM-16GS(PC5-38400 DDR5 SDRAM 16GB×2)
SSDWestern Digital WD_Black SN850 NVMe
WDS100T1X0E-00AFY0[M.2(PCI Express 4.0 x4)、1TB]
電源ユニットCorsair RM750e(750W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro
室温21.7℃

 グラフ中の“アイドル時”の温度はOS起動時から10分間の平均、“高負荷時”の温度はCinebench R23を実行している約10分間の推移をOCCT 12.1.14でモニターし、CPU(Tctl/Tdie)の最高値をそれぞれ記録、比較している。

CPU温度の計測結果(マザーボード標準設定で計測)

 標準設定での結果はどれも90℃を超えていたが、その中でもMUGEN6 BLACK EDITIONの強さが光る。またCPU温度だけを見れば数℃の違いでしかないようにも思えるが、温度計測で利用したOCCTのモニター画面で確認できるCPUへの供給電力(CPU Package Power)を見ると、さらに違いが見えてくる。

 MUGEN6 BLACK EDITIONとファン1基の状態では、最初に180Wまで上がった後、テスト中は170~175Wで推移していた。しかしMUGEN5だと、最初は180W前後まで上がるのは同じだが、徐々に下げて160~165W前後で推移する。

OCCTのモニタリング画面(1枚目がMUGEN6 BLACK EDITION、2枚目がMUGEN5 Rev.Bのもの)。ここでは「CPU Package Power」に注目。この画面のグラフでは若干分かりにくいが(グラフで数値まで把握しきれないので、テスト中には数値の変化を注視している)、MUGEN5のほうが下方向へのスパイクが大きく、大きく下がる頻度も多いことは見て取れる。なお、画面に表示されている各項の平均値にはテスト終了後のアイドル中のデータも含まれている点には注意

 Ryzenシリーズでは、冷却状態に合わせて自動で供給電力や動作クロックを自動で制御/調整する機能がある。こうしたことを考えると、冷却性の高いMUGEN6 BLACK EDITIONは冷却性能が十分なので、今回のテストではより高い電力を供給できた挙動を示した、と考えられる。

 また、PPTを140Wに制限したときの結果が下のグラフ。先ほどのテストとは異なり供給電力の上限を一定にしているため、同じ消費電力に達した際の最高温度が分かる。つまりこのテストではCPUクーラーの冷却性能の違いがより見やすいのだ。

 MUGEN5と比較すると、ノーマルのMUGEN6と同様のシングルファン時で3℃、デュアルファン時では5℃も低下。モデルチェンジによる冷却性能の向上と、ファン追加によるパワーアップがそれぞれ確認できる結果と言えるだろう。

CPU温度の計測結果(PPT=140W設定で計測)

 なお、MUGEN6のファンの回転数が最大2,000rpmなのに対し、比較対象のMUGEN5 Rev.Bは最大1,200pmとかなり異なる。そこで、MUGEN6の付属ファンをMUGEN5に取り付けてテストを行ってみたところ(マザーの設定は標準状態)、MUGEN6のファン1基搭載時と同等の結果になった。

ファンの違いによるCPU温度の差(マザーボード標準設定で計測)

デュアルファンモデルとしてはかなり安く、冷却性能も高い

 最近は、空冷型CPUクーラーもかなり高くなってきた。ツインタワーやデュアルファンの製品だと、1万円前後や1万円を超えるモデルも少なくない。そうした状況にあって、大型のヒートシンクとデュアルファンの組み合わせで7,000円前後というMUGEN 6 BLACK EDITIONの買い得感は非常に高い。

 また、シングルファンで十分、ということになると、MUGEN5 Rev.Cの流通末期の実売価格とMUGEN6のシングルファンモデルの現在の実売価格はほぼ同水準で、いずれも6,000円前後。価格上昇が続く最近のPCパーツ界においてはちょっと珍しい代替わりかもしれない。

 もちろん安いだけではない。MUGEN5シリーズは、アッパーミドルクラスの冷却性能を持つ強力なCPUクーラーとして有名だった。そんな前モデルから着実に上回るテスト結果を示した本機は、冷却性能も十分に高いと言ってよい。

 「魅せるPC」も人気の最近の自作PCにおいては、発光機能のないシンプルなデザインを地味でちょっと物足りないと感じる人もいるかもしれないが、ヒートパイプの末端をカバーで隠し、全体をオールブラックでスッキリと仕上げたあたりは「こういう精悍なカッコよさもあり」とプラスに評価したい。価格と性能のバランスに優れるCPUクーラーの一つとして、本機も長く広く愛される製品になるのではないだろうか。