プロダクトレビュー・ショーケース
SSD基本パフォーマンス一斉比較――“最新”“定番”10種類のSSDを集めて性能比較!
テスト結果を順次蓄積、掲載製品は今後どんどん増やしていきます!! text by 芹澤 正芳
2025年10月6日 00:00
OSやアプリのインストールやデータ保存に欠かせないSSD。みなさんは何を基準にSSDを選びますか。動画編集など大容量データを扱う人ならとにかく速度を重視するだろうし、アプリの利用ならレスポンスの良さが気になるだろう。ゲームを大量にインストールしたい人にとっては容量単価が基準になるかもしれない。
そこで、今回からSSDの性能を一斉比較する連載をスタートする。初回掲載製品はM.2 NVMe SSDを中心に10モデルだ。今後、入手した製品を順次追加し、テスト結果を一望できる数を増やしていく予定だ。
最新ハイエンドから、旧世代の定番まで広くテスト
まずは、SSDの現状、そしてテストに使用したSSDをチェックしよう。
現在SSDは、M.2形状が主流。接続インターフェースとしては、10,000MB/s以上のデータ転送速度を実現するPCI Express 5.0 x4接続と7,500MB/s前後で頭打ちになるPCI Express 4.0 x4接続のタイプがほとんど。より遅いPCI Express 3.0 x4接続やSerial ATA接続のSSDも存在しているが、その数は少ない。速度は遅いが、市場の在庫状況によっては5.0 x4/4.0 x4のモデルよりも価格が高いケースもあるほどだ。
また、ランダム性能の引き上げに有効なDRAMを搭載し、速度、レスポンス性能ともに優れる“ハイエンドクラス”と、DRAMレスでコストを抑えた“エントリークラス”に分けられる。各製品を簡単に表現するときに、たとえば「PCIe 5.0のハイエンド」や「PCIe 4.0のエントリー」などと呼ぶことが多い。
今回は5.0 x4接続を4製品、4.0 x4接続を5製品、旧世代の比較用としてSerial ATA接続の1製品、合計10製品を用意した。容量はすべて2TBで統一している。最新モデルからちょっと前の定番ハイエンド、エントリーなどバラエティに富んだ内容だ。
製品名 | PCIe 接続 | NAND | DRAM | シーケンシャル リード/ライト(MB/s) | 実売価格 (9月下旬) |
Micron Crucial T710 | 5.0 x4 | TLC | 搭載 | 14,500/13,800 | 42,000円前後 |
Micron Crucial P510 | 5.0 x4 | TLC | なし | 10,000/8,700 | 31,000円前後 |
Nextorage Gシリーズ HE | 5.0 x4 | TLC | なし | 10,300/8,600 | 29,000円前後 |
MSI SPATIUM M560 | 5.0 x4 | 非公開 | なし | 10,300/8,700 | 31,000円前後 |
Micron Crucial T500 | 4.0 x4 | TLC | 搭載 | 7,400/7,000 | 20,000円前後 |
Micron Crucial P3 Plus | 4.0 x4 | 非公開 | なし | 5,000/4,200 | 19,000円前後 |
Nextorage Gシリーズ LE | 4.0 x4 | TLC | なし | 7,400/6,400 | 23,000円前後 |
Nextorage NEM-PAB | 4.0 x4 | TLC | 搭載 | 7,400/6,400 | 29,000円前後 |
SanDisk WD_BLACK SN850X | 4.0 x4 | TLC | 搭載 | 7,300/6,300 | 23,000円前後 |
Micron Crucial MX500 | (SATA) | TLC | 搭載 | 560/510 | 25,000円前後 |
今回の注目株は、現役最速クラスと言えるCrucial T710だろう。公称スペックだけでも突出しているのは分かる。そして、近年ではDRAMレスの性能が上がっているため、PCIe 5.0 x4でDRAMレスのCrucial P510やGシリーズ HEなどとの性能差や、PCIe 4.0 x4の定番ハイエンドであるCrucial T500やWD_BLACK SN850XとDRAMレス製品との性能差が、それぞれどの程度あるのかも気になるところだ。
なお、価格は2025年9月下旬のもの。SSDは値上がりすることもあるので、参考として見てほしい。
検証環境は以下の通りだ。システムSSDはチップセット経由のM.2スロット(4.0 x4)に搭載。検証するSSDについてはCPU直結で5.0 x4対応のM.2スロットに装着し、ヒートシンクはマザーボード付属のものを利用した。ただし、Nextorage NEM-PABはヒートシンク搭載モデルなので例外としてマザーボードのヒートシンクは使用していない。
なお、バラック状態でテストを行っているため、PCケースに組み込んだ状態よりエアフローは弱い環境と言える。
CPU | AMD Ryzen 7 9800X3D (8コア16スレッド) |
マザーボード | ROG CROSSHAIR X870E HERO (AMD X870E) |
メモリ | G.SKILL TRIDENT Z5 neo RGB F5-6000J2836G16GX2-TZ5NRW (PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
ビデオカード | MSI GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC |
システムSSD | Micron Crucial T700 CT2000T700SSD3JP (PCI Express 5.0 x4、2TB) |
CPUクーラー | Corsair NAUTILUS 360 RS (簡易水冷、36cmクラス) |
電源 | Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(24H2) |
データ転送速度を測る「CrystalDiskMark」
まずはストレージのデータ転送速度を測るベンチマークの超定番「CrystalDiskMark 9.0.1」を実行しよう。連続してデータを読み書きするシーケンシャルリード、ライト(Q8T1)とOSやアプリのレスポンスに直結しやすいランダムリード、ライト(Q1T1)を掲載する。
シーケンシャル性能は、カタログスペックどおりCrucial T710が圧勝だ。Silicon Motion SM2508コントローラーとMicronの276層第9世代3D TLC NANDの組み合わせは非常に優秀と言ってよいだろう。なお、Crucial P510、Gシリーズ HE、SPATIUM M560はすべてコントローラーにPhison PS5031-E31Tを採用していることもあって似た性能になっている。
4.0 x4ではCrucial T500がシーケンシャル、ランダムとも優秀だ。4.0 x4の製品としては比較的新しいだけに、最適化が進んでいると見られる。Gシリーズ LEはDRAMレスながらかなり高い速度を発揮した。
アプリをシミュレートする「PCMark 10-Full System Drive Benchmark」
ここからは、Office系、クリエイティブ系、ゲーム系などさまざまなアプリの動作をシミュレートするPCMark 10のFull System Drive Benchmarkを試そう。アプリに対するレスポンスのよさを確認できるテストだ。
ここでもCrucial T710が唯一の4,000超えを達成。アプリのレスポンスにおいても現役トップクラスであることを証明した。そのほか、5.0 x4はやはり似たスコアだ。4.0 x4ではCrucial T500が5.0 x4のDRAMレスに迫っており、優秀さを見せている。Serial ATAのSSDの中ではトップクラスの性能を持つCrucial MX500といえど、そのスコアはわずか844と時代の流れを感じさせる結果となった。
ゲームに関するさまざまな処理を行う「3DMark-Storage Benchmark」
次はゲームの起動やロード、データのコピー、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを実行しよう。総合スコアに加えて、個別の結果からゲームのロード時間を抜粋したものも掲載する。
Crucial T710が強いのは当然として、ここまで似たスコアだった5.0 x4のDRAMレス3製品に差が付き、Gシリーズ HEが優秀な結果を見せた。4.0 x4ではゲーミング向けのWD_BLACK SN850Xがトップスコアを獲得。ベテランもベテランの製品だが、さすがの実力だ。
その一方で、ゲームロードに絞るとCrucial T500がWD_BLACK SN850Xを上回る速度だ。PCMark 10同様にアプリに対するレスポンスのよさを見せた。Crucial P3 Plusは今回最安値だが、登場から3年以上が経過した製品であることもあって性能は控えめだ。
連続書き込み時の温度をチェック
ここではTxBENCHを使い5分間連続で書き込みを実行した際の温度を「HWiNFO Pro」で測定した。書き込み実行前の温度をアイドル時とし、5分間書き込んだときの平均と最大の温度を掲載する。
Crucial T710が高性能だけに温度もトップだ。しかし、高温による破損を防ぐために性能を抑えるサーマルスロットリングの発生は確認できなかった。マザーボードのヒートシンクで問題なく運用が可能と言ってよいだろう。5.0 x4ではCrucial P510の温度が非常に低い。連続書き込み時に比較的すぐにSLCキャッシュ切れを起こして速度が落ち、これにより温度も下がる、という挙動を繰り返すためだ。4.0 x4ではCrucial T500がハイエンドながら温度が低めで運用しやすい。
SLCキャッシュの挙動
ちなみに5分間の連続書き込みと合わせてSLCキャッシュ容量と、キャッシュが切れた後の平均速度も計測した。あくまでHWiNFO Proで追った値なので参考として見てほしい。
接続 | 製品名 | SLCキャッシュ容量 | 速度低下後平均 |
PCIe Gen 5 | Micron Crucial T710 | 約380GB | 4,043.0MB/s |
Micron Crucial P510 | 約70GB | 2,039.6MB/s | |
Nextorage Gシリーズ HE | 約421GB | 2,133MB/s | |
MSI SPATIUM M560 | 約422GB | 2,144.5MB/s | |
PCIe Gen 4 | Micron Crucial T500 | 約711GB | 667.1MB/s |
Micron Crucial P3 Plus | 約531GB | 162.6MB/s | |
Nextorage Gシリーズ LE | 約55GB | 1,440.0MB/s | |
Nextorage NEM-PAB | 約53GB | 1,447.4MB/s | |
SanDisk WD_BLACK SN850X | 約570GB | 1,593.4MB/s | |
SATA | Micron Crucial MX500 | - | 468.4MB/s |
ここは製品によって挙動が大きく異なる面白い部分だ。Crucial P510、Gシリーズ LE、NEM-PABは連続書き込みを行うと比較的すぐにSLCキャッシュが切れるが、その後もある程度の速度を維持しているため、それほど不満を感じることはないだろう。Crucial T500はキャッシュ容量は大きいが、切れた後の速度はそこそこ遅くなってしまう。Crucial P3 Plusは特に速度低下が激しい。その点、WD_BLACK SN850Xは大容量キャッシュを確保し、かつ切れた後もかなり高速。挙動としては今なお優秀だ。
価格とのバランスが優秀なのは現時点ではまだPCIe 4.0世代5.0世代もコスパと扱いやすさの向上が進行中
ここまでが10製品のベンチマーク結果だ。今回はMicronとNextorageが中心となったが、今後は幅広いメーカーの製品をテストしていく予定だ。
今回の製品でバランスのよさが光ったのはMicron Crucial T500だ。4.0 x4の製品としてトップクラスの性能を持ちながら手に取りやすい価格となっている。上位モデルでは、Crucial T710がやはり魅力的。現役トップクラスの性能を考えれば、少々値は張るものの、ピーク性能を追求するならそこまで高価とも言えないのではないだろうか。