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映像変換は複雑で要注意! HDMI信号をUSB Type-C化できる「HDMI to USB Type-C変換」ケーブルを試す

接続方法や用途によって選ぶべき変換アイテムに違いあり text by 石川 ひさよし

HDMI to USB Type-C変換ケーブル。変換ケーブルの類の中でもかなり特殊な構造です

 変換アダプターや変換ケーブルは、「いざというときにあって助かる」アイテムです。中でも近年使う機会が増えたのが「USB Type-C to HDMI変換」ケーブルでしょう。ノートPCを出先のモニターや会議室のプロジェクターに接続するとき、あるいはスマホや携帯ゲーム機をテレビに接続するときなど、すでに使っているという人も結構いるのではないでしょうか。

 しかし、今回紹介したいのはこれの逆向き、「HDMI to USB Type-C変換」です。「USB Type-C to HDMI変換」を逆向きに挿せばイケるんじゃないの? いいえ、違います。逆挿しはできないのです。また、通常店舗で購入できることはまずないでしょう。オンラインショップで探してやっと見つかる類の商品です。しかも4,000円前後と、変換ケーブル/アダプターの類の中では高価な部類です。

 そんなニッチと言えばニッチな製品ですが、知らないで用意しようとすると、逆向きに挿しても使えない、という点に引っかかって失敗することが十分にあり得ます。今回は、そんなHDMI to USB Type-C「変換」の仕組みや注意点を整理しつつ、このニッチなアイテムによって何が快適になるかを説明していきましょう。

巷で増えてきたType-C入力対応表示デバイスにいかに対応するかを考える

 まず、「HDMI to USB Type-C変換」って何に使うのか、という点から。

 現在、映像入力端子はAV機器全般ではHDMIが主流。PCだとDisplayPortが多数派で、これにHDMI、そしてUSB Type-Cが加わります。ノートPCやモバイル端末ではUSB Type-C“出力”が普及していますが、同時にUSB Type-C“入力”も増えました。たとえば、AR/VRグラス、液晶ペンタブレット、モバイルモニターといったサイズに制限のあるデバイスに多く、据え置きタイプの液晶モニターにも搭載例が見られます。

USB Type-C入力対応機器自体は着々と増えつつあります

 これらの表示デバイスは、USB Type-Cしか映像出力端子を備えていないモバイルノートPC、携帯型ゲーム機、スマートフォンやタブレットを接続して使うのがメインです。ただし、VRグラスや液晶ペンタブレットなどは、作業内容的に利用する環境に高いパフォーマンスも求められるので、高性能デスクトップPCにつなぎたいというニーズがあります。

 ただ、USB Type-C“出力”に対応している高性能デスクトップPC(ビデオカードなど外部GPUを使用するPC)はだいぶ希少。ビデオカードとThunderbolt 4/5を組み合わせるという方法もありますが、PC構成がかなり限られコストもかかる場合がほとんどです(詳細は割愛しますが、拡張カードと対応マザーボードの組み合わせが必要になるなど)。

 であれば、「HDMI to USB Type-C変換」で代替できるなら、手軽でコストも抑えられるメリットがあるのでは? と考えたのがそもそもの発端でした。しかし、これがなかなか一筋縄ではいかないもので……。

映像端子としてもっとも普及しているHDMI。HDMI-HDMI接続で問題なく使える環境が一番無難ではあります

HDMIとDisplayPortは信号の扱い方が違う

 一旦、映像信号の変換について説明しておきましょう。USB Type-Cで扱える映像信号はDisplayPort Alternate Mode(以降、Alt Mode)です。実質DisplayPortなので、ここではDisplayPortとして扱います。もう一つはもっとも普及しているHDMIです。

 HDMIとDisplayPortは、端子形状がそもそも違いますが、それ以外にも信号の扱いが異なっています。HDMIは映像や音声などの信号を伝送・逐次処理しています。ベルトコンベアー上をひっきりなしに映像信号や音声信号といった“荷物”が流れていくイメージです。一方、DisplayPortは映像や音声をパケットとして分割・伝送します。“小分けにまとめた荷物”をベルトコンベアーで送って処理していくイメージです。仕組み上の優劣はひとまず置いておきますが、このような根本的な違いがあるため、単純に信号線をつなぎ変えれば変換できる、というものではないのです。

 ただ、信号の仕様的に「DisplayPort→HDMI」方向の変換はそこまで難易度が高くありません。そのため、DisplayPort to HDMI変換ケーブル/アダプターは比較的メジャーで入手性がよく、価格もそれほど高くありません。ただし、あくまでも接続は、DisplayPort出力端子からHDMI入力端子への「単方向」であり、逆向きでの使用はできません。なお、外部からの変換ケーブル/アダプターへの電力供給も不要です(=パッシブ方式)

DisplayPort to HDMI変換アダプターはこのような形。DisplayPort出力に接続し、モニターのHDMI出力へと映像を出力する「単方向」のアダプターです

 一方で、「HDMI→DisplayPort」方向の変換は事情がまったく異なります。実際の製品を見ると分かりやすいのですが、前述のDisplayPort to HDMI変換はアダプターの片方がDisplayPort、もう片方がHDMIというごく単純なものです。ところが、HDMI to DisplayPort変換では、HDMI端子側から電力供給用のUSB Type-A端子が延びています。内部に変換処理のためのチップが搭載されており、この変換チップが電力を必要とするためです(=アクティブ方式)。

HDMI to DisplayPort変換アダプターには電源としてUSB Type-Aも用意されています。単方向、アクティブ方式のケーブルです

 また「USB Type-C to HDMI変換」は、前述のとおり実質的に「DisplayPort to HDMI変換」です。使用する際の信号の流れは単方向ですが、変換チップは不要なのでパッシブで使用できます。なお、かなり希少なものの、HDMIとDisplayPortの「双方向」変換が可能なアクティブの製品も存在します。

USB Type-C to HDMI変換ケーブルはDisplayPort to HDMI変換のように両端が端子のみ。パッシブ方式・単方向のケーブルになります

HDMIからDP Alt Modeに変換さらにデータも電力もOKなType-Cフル機能

 少々前置きが長くなりましたが、本題の「HDMI to USB Type-C変換」です。形状としては、変換ケーブル型やボックス形状のアダプターが一般的です。また、この種の映像変換では対応するHDMIバージョン、解像度、リフレッシュレートの違いがあるので、必要としている仕様をクリアしているかのチェックは必須です。

 では、今回用意したHDMI to USB Type-C変換ケーブル(BOIOT BOJP-HDC8002)の外観を見てみましょう。この製品はモニター側がUSB Type-C、PC側にはHDMIのほかにUSB Type-AとType-Cが生えています。計四つの端子を持つ構造です。順を追って見ていきましょう。

Amazon.co.jpで入手したHDMI to USB Type-C変換ケーブル。左上USB Type-Cがモニター接続用、右下PC側はHDMI(奥)のほか、USB Type-A、USB Type-C端子も生えています

 「HDMI to USB Type-C変換」は、実質「HDMI to DisplayPort変換」なので、信号変換チップの動作に電力供給が必要です。USB Type-A端子はこの電力供給のために使います。

PCに接続する側のHDMI端子から枝分かれして延びているUSB Type-A端子。PCのUSBポートに接続し、変換処理の電源供給と、必要な場合はデータ通信も行います

 この製品のUSB Type-Aは、電力供給に加えてデータ通信にも対応しているのが特徴的です。AR/VRグラスや液晶ペンタブレット、タッチ対応のモバイルモニターでは、映像信号のやり取りに加えてデータ通信が必要となるので、こうした機器を接続する場合は必須の機能です。

電力も供給できるので、モバイルモニターに挿すのはこのUSB Type-C 1本だけです。もしもUSBハブ搭載モニターなら、キーボード、マウスやUSBメモリなどを挿せるかもしれません

 今回の「HDMI to USB Type-C変換」ケーブルの特徴として、もう1本のUSB Type-C端子があります。このUSB Type-CはUSB充電器に接続して、表示デバイス側に電力を供給するのに使用します。これがあるかないかで主に液晶ペンタブレット、モバイルモニターでの使い勝手が変わってきます。

PC側のUSB Type-Cの端子にはカミナリマーク。USB充電器に挿して、表示デバイス側に電源を供給できます

 ただし、供給できる電力量は製品次第です。このケーブルについては、USB PD対応の表記はなく、中文交じりで5V/2Aとあったので、おそらくAR/VRグラスのような消費電力の大きくないデバイス、あるいは小型のモバイルモニターをターゲットにしているものと思われます。実際、18.5型モバイルモニターで使ってみると、やや暗めの表示になりました。

 筆者はこのほかに、USB PD 60W対応の「HDMI to USB Type-C変換」ケーブル(廃番)も所有しているのですが、こちらでは23.8型モバイルモニターと組み合わせても問題なく表示できました。表示側デバイスに合わせてUSB PD対応などを選んでおくと安心でしょう。

実際に接続してみるとこのような配線です。電力供給が5V/2Aだと、モバイルモニターもギリギリという印象です。写真は明るく調整していますが、通常よりも若干暗めの表示になっていました

 調べてみると、USB PD 20Wの製品もあるなど、似たような形、似たような機能の製品でも、それぞれ異なるようです。このあたりは、モニター側の使い勝手、ケーブルの整理なども考慮しつつ、ご自身の環境に合うものを見極めていきましょう。

 また、実際に使っているとHDMI端子部分がかなり熱を帯びる点には注意が必要です。USB 5V電源とはいえ変換チップがそれなりに発熱し、加えて表示デバイス側に供給するためのUSB電源部分も熱を持つためだと思われます。この熱が原因と思われる不調も若干生じることがありました。特にデスクトップPCの場合、映像端子はPCの背面にあるものなので、壁との距離が近いと放熱が追い付かなくなるかもしれません。スペースを空ける、風を当てるといったことも検討するとよいでしょう。

コストに見合うかどうかは人それぞれモバイルモニターのプチストレス解消は◎

 現在筆者の環境では、残念ながら廃番となってしまったUSB PD 60W対応の「HDMI to USB Type-C変換」ケーブルが、ベンチマーク台の検証環境とモバイルモニターとの接続で活躍中です(新たに入手したほうは予備としてストック)。いずれにしても、ケーブルを1本にまとめられたので、設置や片付けは以前より手早くなり、作業テーブル上での移動も制約が少なくなりました。ケーブル2本のときと比べて、よりモバイルモニターらしく使えていると思います。

ケーブル1本ならモニターの移動もラクラク快適に

 ただし、メジャーな変換ケーブルの2、3倍の価格、実売4,000円前後はするため、コストに見合うかどうかの評価は分かれるところです。変換ケーブルとしては高価ですが、PCパーツ(周辺機器)としては比較的安価で快適に、プチストレス解消になるのではないでしょうか。最近はニッチな「変換」ケーブル/アダプターの入手も、オンラインショップによって手軽になってきました。日々の不便を解消できる変換ケーブル、あなたもこの沼に足を踏み入れてみませんか?