PCパーツ名勝負数え歌

Intel APOを使えば13/12世代Coreも無料でゲームのフレームレートが伸びる!? だったら使わない手はないでしょ!!

【第6戦】Core i9-13900K/12900KでIntel Application Optimizationを試す text by 芹澤 正芳

 ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第5戦は、Intelの第14世代Coreのうち上位モデルだけで利用可能だった最適化機能「APO」(Application Optimization)が2023年3月から第13/12世代Coreにも拡大! さらには対応ゲームも増加! ということで、Core i9-14900K/13900K/12900Kと3世代のCPUを用意し、APOと勝負を挑みたいと思う。APOは無料で対応ゲームのフレームレートをアップさせられる機能。その効果が確かなら、使ってみたいと思う人も多いハズだ。今回は導入方法も合わせて解説していこう。さて、勝負の行方はどうなるか?

Core i9-14900K/13900K/12900Kと3世代の上位CPUを用意してAPOの効果を確かめる

第13/12世代CoreでAPOを使うにはマザーの対応が必要

まずは、「APO」についておさらいしておこう。Intelでは第12世代CoreからPコアとEコアを組み合わせたハイブリッド・アーキテクチャーを採用しているが、コアの使い方をより最適化したのが「APO」だ。具体的には、対応ゲームにおいて処理をパフォーマンス重視のPコアに集中させることで、フレームレートを向上させる。

APOは発表当初、第14世代Coreの上位CPUだけで使えるスペシャルな機能として紹介された。これが第13/12世代にも広がった
画面はメトロ エクソダスの例。APOを無効の状態ではPコアとEコアに処理が分散しているのが分かる
APOを有効にすると性能の高いPコアに処理が集中するように。これでフレームレートの向上を狙うという仕組だ

 APOは当初、第14世代のCore i9-14900K/KF、Core i7-14700K/KFだけで利用でき、対応ゲームは、

  • メトロ エクソダス
  • レインボーシックス シージ

だけと限定的で、正直使いどころが微妙すぎた。しかし時間が経ち、2024年5月中旬の原稿執筆時点では以下のタイトルが追加されている。

  • ファイナルファンタジーXIV
  • Red Dead Redemption 2
  • World of Tanks
  • Dreams Three Kingdoms 2 (PRC)
  • F1 22
  • Guardians of the Galaxy
  • Serious Sam 4 (VLK)
  • Strange Brigade (VLK)
  • ウォッチドッグス レギオ
  • World War Z
  • Dirt 5
  • World of Warcraft

 さらに、APOの要件も拡充され、対応CPUが第12世代Core以降のデスクトップおよびモバイルのi9/i7/i5とかなり広くなった。ただし、Intelが検証済みとするCPUは、Core i9-14900KS/K/KF/HX、Core i7-14700K/KF/HXだけ。それ以外のCPUをAPOに対応させるかは、マザーボードやPCメーカーに委ねられている。

 また、原稿執筆段階ではAPOを有効化させるにはPコアが6基以上必要としている。Intelでは“現時点では”としているので、今後Pコアが6基以下のCPUにも対応が広がる可能性はありそうだ。対応ゲームの増加と合わせて期待したいところだ。

 それではまずは使い方を見てみよう。本稿では“自作PCにおける第13/12世代CoreでAPOを使う方法”を紹介していく。一番大事なのは、マザーボードが対応UEFIを出していること。各メーカーとも対応を進めているので、手持ちのマザーボードが対応しているかをまずチェック。APOを使うための基本的な流れは以下のとおりだ。対応OSはWindows 11だけという点も気を付けたい。

  1. 第13/12世代CoreでAPOを使うことができるUEFIバージョンの適用
  2. UEFIでIntel Dynamic Tuning Technologyを有効化
  3. Windows 11上でIntel Dynamic Tuning Technology(DTT)ドライバーをインストール
  4. Microsoft StoreからIntel Application Optimizationアプリをインストール
  5. Intel Application OptimizationアプリでAPOを有効化

 参考としてCPUにCore i9-13900K、マザーボードにASRockのZ790 Nova WiFiを使った場合の有効化手順を紹介しよう。

まず、バージョン4.13以降のUEFIをASRockのWebサイトからダウンロード。展開を行って、そのファイルをUSBメモリに保存する
そのUSBメモリをマザーボードに装着し、UEFIメニューに入り「Instant Flash」機能を実行
UEFIのバージョンアップを実行する。実行中は電源をOFFしないように注意
再起動後、OC Tweaker→CPU Configurationのメニューに「Intel Dynamic Tuning Technology」の項目が追加されるので「Enabled」にして保存
UEFIメニューで「Auto Auto Driver Installer」が有効になっていれば、自動的にAuto Driver Installerアプリが起動するので「はい」をクリック
Intel Dynamic Tuning Technology driverにチェックが入っていることを確認して「更新」をクリック
Microsoft StoreからIntel Application Optimizationアプリを入手する
Intel Application Optimizationアプリを起動し、「Enabled」を選択。「Advance Mode」にチェックを入れる。これでAPOが有効化される。対応ゲーム別に有効、無効を選ぶことも可能だ

 ポイントはApplication Optimizationアプリの設定だ。第14世代Coreでは、Advance Modeにチェックを入れなくてもAPOは利用できるが、第13/12世代Coreではチェックを入れないとAPOが有効にならない。ちなみに、IntelではAdvance Modeではパフォーマンスが低下する可能性があるとしている。その辺りも含めて、検証結果に注目してほしい。

Core i9-14900K/13900K/12900Kで対応ゲーム3本勝負!

 さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。CPUのパワーリミットは、Core i9-14900K/13900KはPL1=PL2=253W、Core i9-12900KはPL1=PL2=241Wとした。

【検証環境】
CPUIntel Core i9-14900K(24コア32スレッド)、
Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、
Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボードASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
メモリMicron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5
(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカードNVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition
システムSSDWestern Digital WD_BLACK SN850 NVMe
WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラーCorsair iCUE H150i RGB PRO XT
(簡易水冷、36cmクラス)
電源Super Flower LEADEX V G130X 1000W
(1,000W、80PLUS Gold)
OSWindows 11 Pro(23H2)

 今回は対応ゲームから、メトロ エクソダス、F1 22、ウォッチドッグス レギオンを用意した。それぞれゲーム内のベンチマーク機能を利用してフレームレートを測定した。フルHD、WQHD、4Kでの平均値を掲載する。

メトロ エクソダスの測定結果

 メトロ エクソダスは初期からAPOに対応するタイトルだけあって、どのCPUでもWQHDまでは確かな効果を確認できた。フルHDでは、20~30%もフレームレートがアップ。導入する価値は十分アリと言ってよいだろう。4Kがほとんど変わらないのは、GeForce RTX 4080 SUPERを持ってしてもGPUの性能限界にぶつかり、CPU性能の影響が出にくくなっているためだ。

F1 22の測定結果

 その一方で、F1 22はCore i9-14900KではWQHDまでフレームレートの向上を確認できるが、Core i9-13900K/12900Kでははっきりとした効果は見られなかった。12900KのフルHDではフレームレートが低下したほどだ。Intelの「パフォーマンスが低下する可能性がある」という事例に当てはまるタイトルと言える。

ウォッチドッグス レギオンの測定結果

 ウォッチドッグス レギオンは、どのCPUでもWQHDまでフレームレートの向上を確認できた。ただ、フルHDで見るとCore i9-14900Kは約13%アップなのに対して、13900Kは約6%のアップ、12900Kは約8%のアップと効果は弱かった。APOは、現段階では第14世代Coreでもっとも効果を発揮する機能という認識でよさそうだ。

上位CPUをより輝かせる機能! 対応タイトル増加を期待

 UEFIのアップデートが必要というハードルはあるものの、Pコアを6基以上備える第13/12世代CoreのCPUを使っている人が、無料でゲームのフレームレートを向上させられる機能として魅力があるのは間違いない。

 プレイするゲームが対応していれば、試す価値は十分ある。上位CPUをより輝かせるグレイトな存在という点で、武藤敬司の名タッグパートナーだったころの馳浩を思い浮かべた筆者なのであった。APOは対応タイトルがもっと増えれば、より輝く機能になるハズだ。