PCパーツ名勝負数え歌
ゲームインストール用に4TBのQLC SSDはいいぞ!用途しだいでは低価格&大容量はやっぱり正義だ!!
【第14戦】SanDisk WD Blue SN5000 NVMe SSDをゲーミング用途で使ってみる text by 芹澤 正芳
2025年6月5日 09:00
ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第14戦は4TBのQLC SSDはゲームインストール用にどうなのか探っていきたい。近年のゲームは100GB以上の容量を要求するゲームもめずらしくなく、複数のタイトルをインストールしておきたい人にとっては2TBのSSDでもアッという間に埋まってしまい、できれば4TBを導入したいと考えているはず。筆者もその1人だ。
そこで、今回は4TBのSSDでも低価格のサンディスク「WD Blue SN5000 NVMe SSD」に注目。この製品は500GB/1TB/2TB/4TBをランナップするが、2TBまで3D TLC NAND、4TBだけが3D QLC NANDとなっており、4TBモデルの容量単価はかなり魅力的な水準。これを例として、“ゲーム用のSSDとして有効かどうか”を検討していこうと思う。
QLCは安価な一方でSLCキャッシュが切れたときの速度が遅く、耐久性もTLCに劣ると言われているが実際はどうなのか。「やれるのか、本当にお前」という飛龍革命におけるアントニオ猪木の気分なのである。
QLCながら高い耐久性と速度
WD Blue SN5000 NVMe SSDのスペックを紹介しておこう。インターフェースはPCI Express 4.0 x4(Gen 4)で容量は500GB/1TB/2TB/4TBの4種類。QLCの4TBが速度、耐久性ともトップだ。保証期間も全容量で5年と変わりなく、スペック上からはQLCの不利は見られない。
容量 | 500GB | 1TB | 2TB | 4TB |
型番 | S500G4B0E | WDS100T4B0E | WDS200T4B0E | WDS400T4B0E |
インターフェース | PCI-E 4.0 x4 | PCI-E 4.0 x4 | PCI-E 4.0 x4 | PCI-E 4.0 x4 |
NAND フラッシュメモリ | 3D TLC NAND | 3D TLC NAND | 3D TLC NAND | 3D QLC NAND |
DRAM | なし | なし | なし | なし |
シーケンシャル リード | 5,000MB/s | 5,150MB/s | 5,150MB/s | 5,500MB/s |
シーケンシャル ライト | 4,000MB/s | 4,900MB/s | 4,850MB/s | 5,000MB/s |
総書き込み容量 (TBW) | 300TB | 600TB | 900TB | 1,200TB |
保証期間 | 5年 | 5年 | 5年 | 5年 |
実売価格 | 8,000円前後 | 10,000円前後 | 20,000円前後 | 40,000円前後 |
※PCI-E 4.0=PCI Express 4.0
DRAMレス仕様で4TBながらNANDはわずか2チップ。1チップあたり2TBなので、おそらく第8世代BiCS FLASHの1Tbit QLC製品と見られる。1Tbitのチップを一つのパッケージ内に16段積層することで、1パッケージで2TBの容量を実現している。
CPU直結とチップセット経由どっちがよい?
さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下のとおりだ。マザーボードのMAG Z890 TOMAHAWK WIFIはCPU直結のM.2スロットが2基、チップセット経由のM.2スロットが2基という構成だ。システム用のSSDとは別に増設する場合は、チップセット経由のM.2スロットを使うことが多いと思うが、CPU直結と性能差が出るのか気になるところ。そのため、今回は定番のテストについては両方で実行している。ヒートシンクはマザーボード付属ものを利用した。テストはバラック状態で行っている。
CPU | Intel Core Ultra 9 285K(24コア24スレッド) |
マザーボード | MSI MAG Z890 TOMAHAWK WIFI (Intel Z890) |
ビデオカード | Gainward GeForce RTX 5060 Ti Python III (NVIDIA GeForce RTX 5060 Ti) |
メモリ | CORSAIR Vengeance DDR5 CMK32GX5M2B6400C36 (PC5-51200 DDR5 SDRAM 16GB×2) |
システムSSD | Micron Crucial T500 CT2000T500SSD8JP(PCI Express 4.0 x4、2TB) |
CPUクーラー | CORSAIR NAUTILUS 360 RS (簡易水冷、36cmクラス) |
電源 | Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1 (1,000W、80PLUS Gold) |
OS | Windows 11 Pro(24H2) |
まずは、データ転送速度を測る「CrystalDiskMark」から。

計測結果はほぼ公称スペックどおりとなったが、CPU直結のほうがランダムアクセスは高速。チップセットを経由しない分、レスポンスがよくなっていると見られる。
続いて、ゲームの起動やロード、録画しながらのプレイなどゲーム関連のさまざまな処理をシミュレートする3DMarkのStorage Benchmarkを実行する。スコア2,500以上が高速モデルの目安だ。同じくゲーム系として「ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー ベンチマーク」のローディングタイムも測定する。


3DMark Storage Benchmarkは約6.7%、CPU直結のほうがスコアが高かった。FF14のローディングタイムは0.026秒だけチップセット経由のほうが高速だったが、これは誤差の範疇だろう。
ここまでのテストではWD Blue SN5000がPCI Express 4.0 x4接続のSSDということもあって、CPU直結のほうがベターではあるが、チップセット経由でも影響は小さい。もしSSDがPCI Express 5.0 x4対応の場合は、同じく5.0 x4に対応するCPU直結のM.2スロットではないと、その速度は活かせないので結果は大きく変わる。言うまでもないが、4.0 x4のM.2スロットではインターフェースの限界にぶつかってしまうからだ。
では、ゲームの圧縮データをCPUを経由せずにGPU上のビデオメモリ上で展開することでロード時間を短縮する「DirectStorage」での影響はどうだろうか。
DirectStorageは、FORSPOKEN、ラチェット&クランク パラレル・トラブル、モンスターハンターワイルズ、グランド・セフト・オートV エンハンスト版などが対応している。ここでは、3DMarkのDirectStorageテストと、グランド・セフト・オートV エンハンスト版のロード時間でテストを行った。グランド・セフト・オートV エンハンスト版は、ミッションのリプレイが開始されるまでの時間を3回測定したときの平均を掲載している。


DirectStorageが無効から有効になるとデータ転送は約2.5倍も高速化される。CPU直結のほうが0.12GB/sだけ高速だった。ほとんど変わらないと言ってよいだろう。グランド・セフト・オートVも0.06秒とほぼ誤差の結果だ。どちらのM.2スロットに装着してもDirectStorageの速度は十分活かせると言ってよいだろう。
気になる連続使用時の速度と温度、大量ファイルのコピーにかかる時間をチェック
続いて、連続書き込み時の速度と温度の推移をチェックしたい。TxBENCHを使って10分間連続でシーケンシャルライトを行ったときの速度と温度をモニタリングアプリの「HWiNFO Pro」で追ったときの値だ。速度推移については空き容量が100%の初期状態と2TBを使用した状態の2パターンで測定。温度推移は空き容量が100%の状態のみ測定している。ヒートシンクはマザーボード付属のものを利用。ここでのテストはチップセット経由のM.2スロットに装着している。

速度推移を見ると、空き容量が100%の初期状態は約857GBものSLCキャッシュを確認できた。大容量ファイルをコピーしてもキャッシュ切れを起こすことは少ないだろう。また、キャッシュ切れ後も平均503.6MB/sと強烈に遅いわけではないのがポイントだ。QLCだが、ある程度の速度は確保されている。2TB使用状態だとさすがにSLCキャッシュ容量は少なくなるが、それでも約327GBもあった。SLCキャッシュの容量が大きいところは、さすが4TBと言える。

温度に関しては、計測ログ中の「Drive Temperature」と「Drive Temperature 3」がNAND、もっとも高い「Drive Temperature 2」がコントローラーと見られる。コントローラーの温度は85℃を超えるシーンもあるが、熱からSSDを保護するために一時的に性能を落とすサーマルスロットリングは起きていない。マザーボードのヒートシンクで問題なく運用が可能と言ってよいだろう。
1TBのSSDが容量限界に達したので4TBのSSDを導入し、そこにゲームのデータを丸ごとコピーしたいという用途はあり得るだろう。ということで、1TB(13ゲーム/34,556ファイル)のデータをコピーするのにかかった時間を測定した。
コピー元がボトルネックにならないようにPCI Express 5.0 x4対応でシーケンシャルリード12,400MB/sのCrucial T700(2TB版)をCPU直結のM.2スロットに装着。そこからチップセット経由のM.2スロットに装着したWD Blue SN5000へとコピーを行っている。これも空き容量が100%の初期状態と2TB使用した状態の2パターンで測定している。

初期状態ではSLCキャッシュ容量が大きいので11分21秒で完了できた。それでも1TBだと途中でキャッシュ切れを起こすので、超高速というわけではないが、それなりの速度は出ている印象だ。2TB使用状態になるとSLCキャッシュ容量がかなり少なくなるのは前述のテストで証明されている。そこにさらに1TBもコピーするとさすがに31分16秒かかった(SLCキャッシュの範囲ならいなら超高速だが……)。このあたりは、一気にコピーを行わないなどうまく運用でカバーするのがよいだろう。
QLCでも4TBなら実用面の問題なし!
QLCにあまりよくない印象を持っている人もいるかもしれないが、4TBの大容量となるWD Blue SN5000なら耐久性も高く、SLCキャッシュも大容量なので速度低下の場面に遭遇することも少ない。もし、SLCキャッシュが切れても極端には遅くならないのもよいところ。キャッシュ切れが起きると強烈に遅くなるQLC SSDもあるからだ。速度も十分、DirectStorageも問題なく利用できる。
SSDの増設や換装で大容量データをコピーする場合、SLCキャッシュ切れで時間がかかるケースはあるものはたしかにある。しかし、基本的にはその手の作業は、一度きり、あるいはごくたまに生じるものであり、一旦作業を終えてしまえばそうそう滅多に行うことはない。それにゲームはデータの読み込みが中心なので、SLCキャッシュの容量がプレイに影響することはほとんどない。
大容量化が進むゲームにおいては、そこそこ高速で低価格・大容量であるほうが圧倒的に重要で効果的。つまるところ、WD Blue SN5000の4TBモデルのようなQLCで大容量・低価格なモデルは、ゲーム用の大容量SSDとして十分オススメできる1枚と言ってよいだろう。かつて橋本 真也は“破壊なくして創造はなし”と言ったが、SSDは“容量なくしてゲームはなし”なのである。