PCパーツ名勝負数え歌
予算8万円でしっかり遊べるゲーミングPCを自作できます!オトクで性能が出せるグレードと世代を見きわめるのだ!!
【第16戦】Core i3-14100FとRadeon RX 7600の組み合わせに注目 text by 芹澤 正芳
2025年9月22日 10:00
ウィー! どうも芹澤正芳です。「PCパーツ名勝負数え歌」の第16戦は“8万円以内のゲーミングPC自作”だ。ノーロープ有刺鉄線電流爆破デスマッチばりのムチャな条件のように思える。人気ゲームがしっかり遊べる性能を確保しようと思ったらなおさらだ。
しかし、お買い得なパーツをうまく組み合わせれば、意外にも性能も見た目も結構イケてるPCが作れる。予算とパーツ選びのギリギリの勝負をとくとご覧あれ。
激安ゲーミングPCの詳細と動く様子を動画でチェック!
CPU予算1.5万円、ビデオカード予算3.5万円で攻める
今回は、OSを含めない“予算8万円”でゲーミングPCプランを考え、実際に組み立てから実ゲームでの性能テストまで行っていく。予算を最も割り振るのはゲームプレイにおいて最重要パーツのビデオカードだが、それでも予算から考えると3万5,000円前後が限界だ。
その予算で性能が高いとなると、Radeon RX 7600だ。2023年の発売当初は4万5,000円前後だったが、現在は3万円台で購入できる製品が増えている。今回はその中から入手性の高いASRockの「Radeon RX 7600 Challenger 8GB OC」を選んだ。大型クーラーで静音性に優れているのがポイントだ。
CPUは1万5,000円前後に抑えたい。2025年8月中旬では6コア12スレッドのRyzen 5 5500、4コア8スレッドのCore i3-14100Fが候補になるが、今回は後者とした。Ryzen 5 5500は6コアでもキャッシュ量が少なく、PCI Expressのサポートは3.0まで。Core i3-14100FはPCI Express 5.0にも対応しているので、将来的なSSDなどの強化にも対応しやすいためだ。
末尾がF型番なので内蔵GPUを備えていないが、今回はビデオカードがあるので問題はない。CPUクーラーも付属しているので別途用意が不要なのも低価格自作向きだ。
マザーボードはPCI Express 5.0対応のx16スロットや4.0対応のM.2スロットを備えていることが多いB760チップセット搭載モデルから選びたいところだが、今回は予算を抑えるために、エントリークラスのH610チップセットを搭載したモデルを候補とし、microATXサイズのASRock「H610M-HVS/M.2 R2.0」をチョイスした。
H610チップセットで最安値クラスであること、安価なDDR4メモリ対応であること、入手性がよいことが決め手。Type-CコネクターやLED用のコネクターがないなど割り切った仕様だが、低価格自作において“安さ”は正義だ。
また、チップセット自体はPCI Express 3.0までの対応だが、CPU直結のPCI Expressスロットは4.0 x16に対応しているため、ビデオカードのパフォーマンスは十分引き出せる。一方、M.2スロットはPCI Express 3.0対応のみとなり、この点は価格とのトレードオフだ。
メモリは予算を切り詰めるならDDR4-2400の4GB×2枚セット……となるが、さすがにそれでは普段使い、ゲームプレイともちょっと不安だ。ここはCPUの仕様に合わせ、DDR4-3200で8GB×2枚セットのCFD販売「W4U3200CS-8G」を選択した。
ストレージはゲームをプレイするなら最低1TBは譲れない、そして取り付けの手間を考えるとM.2 SSDがよい、という理由からAGI「AGI1T0G43AI818」を選んだ。PCI Express 4.0 x4対応NVMe SSDの1TBモデルとしては最安値クラスだ。
電源ユニットはRadeon RX 7600 Challenger 8GB OCの推奨が550W以上なので、余裕を見て650Wで低価格のCOUGAR「ATLAS 650 CGR BA-650」、PCケースは、低価格だが側面ガラス仕様、前面上部と背面ファンにLED内蔵と見栄えもよいmicroATXサイズのZALMAN「T4 PLUS」をそれぞれチョイスした。
今回のプランをまとめたのが以下の表。価格は今回の購入価格だ。ギリギリ8万円以内に収まっている。
カテゴリー | メーカー名・製品名 | 実売価格 |
CPU | Intel Core i3-14100F (4コア8スレッド) | 12,970円 |
マザーボード | ASRock H610M-HVS/M.2 R2.0 (Intel H610、microATX) | 6,980円 |
メモリ | CFD販売 W4U3200CS-8G (DDR4-3200 8GB×2) | 5,580円 |
ビデオカード | ASRock Radeon RX 7600 Challenger 8GB OC | 35,950円 |
ストレージ | AGI AGI1T0G43AI818 (NVMe/PCI-E 4.0 x4、1TB) | 7,880円 |
CPUクーラー | CPU付属 | - |
PCケース | ZALMAN T4 PLUS (microATX) | 4,150円 |
電源ユニット | COUGAR ATLAS 650 CGR BA-650 (650W、80PLUS Bronze) | 5,980円 |
合計 | 79,505円 |
初心者でも組み立てやすいPCケース
プランが決まったところで組み立てに移ろう。PCケースの「T4 PLUS」は低価格だが、ビデオカードは最大320mm、CPUクーラーは全高157mm、簡易水冷クーラーは天板と前面は240mmクラスを搭載可能、ファンは最大7基まで設置できると高い拡張性が確保されている。それだけに内部には余裕があってパーツを組み込みやすく、天板側にもスペースが広くあるのでEPS12V電源コネクターも挿しやすい。
ただ、今回の構成で問題点があるとすれば、T4 PLUSの背面ファンはARGBのLEDが内蔵されているが、マザーボード側に対応コネクターがないこと。ファンコネクターはあるので冷却面に影響はないが、ファンのライティングを楽しみたいならARGB対応コネクターを備えたマザーボードを選びたい。
なお、T4 PLUSの前面上部にもLEDが内蔵されているがこちらはSerial ATAの電源コネクターからの電源供給で動作し、上部のボタンで発光色やパターンを切り換える形式なのでマザーボード側の対応は不要だ。そのため、今回の構成でも前面上部のLEDは楽しめる。
基本性能や温度、動作音をチェックする
ここからは、実際に動かして性能などをチェックしていこう。今回は、安価にまとめたパーツ構成ということを考慮して、CPUの動作はUEFIのデフォルト設定とした。
まずは、CGレンダリングでCPUパワーをシンプルに測定する「Cinebench 2024」とオフィスワークなど一般的な処理を中心に実行してPCの基本性能を測定する「PCMark 10」を試そう。
Cinebench 2024のスコアは、Multi Coreが495pts、Single Coreが107ptsで、Core i3-14100Fでは順当と言える結果。4コアのCPUということもあって安価なH610チップセットでも性能をしっかりと引き出せている。PCMark 10の結果はいずれも高い水準で、オフィスワークなど一般的な用途には十分快適と言える性能だ。
CPU/GPUの温度や動作音はどうだろうか。CPU/GPU温度は、Cinebench 2024(Multi Core)とサイバーパンク2077を10分間動作させたときの推移を「HWiNFO Pro」で測定した。動作音はPCケースの正面10cmと天板10cmの位置に騒音計を設定して測定している。



Cinebench 2024(Multi Core)はCPUだけに負荷がかかるテストなのでGPU温度は低いままだ。Core i3-14100Fは4コアだが動作クロックは最大4.7GHzとそこそこ高めなので、CPU温度は85℃を記録した。それでも問題のない温度だ。サイバーパンク2077はCPUとGPUの両方に大きな負荷がかかる。それでもCPUは平均75℃、GPUは平均68.5℃とまったく心配のいらない温度。PCケースのファンは背面に1基だけだが、冷却力にひとまず問題はないと言ってよいだろう。
動作音はCPUとGPUのファンが思いっきり回るサイバーパンク2077だと大きくなるが、それでもうるさいというほどではない。ただ、CPU付属のクーラーは回転数が多く、高めの風切り音がするので、それが気になる人はいるはず。CPUクーラーの増強は予算増も比較的軽めなのでチャレンジしやすい。本稿後半で試しているので、その効果は後ほどご覧いただきたい。
人気ゲーム6本でフルHD/WQHDでのフレームレートを確認
ここからは、一番重要なゲーム性能を6本のゲームでチェックしていこう。
まずは、定番FPSの「Apex Legends」と「オーバーウォッチ2」から。Apex Legendsは射撃訓練場の一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれCapFrameXで測定した。


アップスケーラーやフレーム生成を使っていない、いわゆるラスタライズ処理での結果だが、どちらのゲームもWQHDで平均100fpsを超えており、最高画質設定でも快適なプレイが可能だ。フルHDなら高フレームレートが出ており、144Hzなど高リフレッシュレートのゲーミングモニターも活かせる。
次は最大60fpsのゲームとして「ストリートファイター6」と「ELDEN RING NIGHTREIGN」を試そう。ストリートファイター6はCPU同士の対戦を実行した際のフレームレート、ELDEN RING NIGHTREIGNは円卓の一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれCapFrameXで測定した。


どちらのゲームも平均が上限の60fpsにほぼ到達している。このクラスの描画負荷で60fpsまでのゲームならWQHDかつ最高画質でも問題なくプレイが可能だ。8万円以下の予算でも侮れないゲーミング性能と言える。
では重量級のゲームではどうだろうか。「モンスターハンターワイルズ」と「サイバーパンク2077」をテストしてみよう。モンスターハンターワイルズはベースキャンプの一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレートをそれぞれCapFrameXで測定した。


モンスターハンターワイルズは画質プリセット「中」、サイバーパンク2077は最上プリセットの一つ下「レイトレーシング:ウルトラ」設定だ。どちらもFSRによるアップスケールおよびフレーム生成に対応していることもあって、フルHDならばかなり高いフレームレートが出ている。WQHDではサイバーパンク2077は平均60fpsに届かなかったが、モンスターハンターワイルズは平均85fpsと快適なプレイが可能だ。画質設定しだいで十分快適に遊べるようになると言えるだろう。
激安PCを“もうちょっと”パワーアップしてみるとこうなる
さて、8万円という非常に限られた予算でPCを組んだわけだが、実際には、もうちょっとお財布をやりくりすることができれば、各所のパーツのグレードを上げることも可能になる……かもしれない。ここからは、8万円PCをベースとしたプチ強化プランを紹介する。どこを強化するのが効果的かを検討する際の材料になるはずだ。
GeForce RTX 5060に変更するとフレームレートはどう変わる?
まずは、ビデオカードを5万円前後から購入できるGeForce RTX 5060に変更した場合、性能がどう変わるのかチェックしてみたい。用意したのは、MSIの「GeForce RTX 5060 8G VENTUS 2X OC」だ。
Apex Legends、モンスターハンターワイルズ、サイバーパンク2077で比較しよう。それぞれのベンチ条件は前述と同様だ。



ビデオカードの価格が1.4万円ほどアップするが、その甲斐あって性能はワンランク上だ。ラスタライズ処理となるApex Legendsでは1.2倍ほどフレームレートが高く、モンスターハンターワイルズとサイバーパンク2077は1フレームから最大3フレームをAIで生成するマルチフレーム生成が可能なDLSS 4に対応していることもあって、フレームレートの差はかなり大きくなっている。特にサイバーパンク2077は顕著で、フルHDで約2.5倍、WQHDで約2.8倍も高いフレームレートを記録した。
CPUを10コアのCore i5-14400Fに変更してみる
今回のプランから、CPUをCore i5-14400Fに変更すると性能はどこまで変わるかも試したい。実売価格2万円前後でPコア6基、Eコア4基で10コア16スレッド仕様とかなりお得感のあるCPUで、プラス7,000円でコア数が2倍以上になる。動作クロックも最大4.7GHzとCore i3-14100Fと変わらない。ゲームのフレームレートに与える影響も気になるところだ。
まずは「Cinebench 2024」でCPUパワーを測定しておこう。

Multi Coreの結果はコア数が異なることもあってCore i5-14400Fが1.65倍も高いスコアになった。CPUパワー差は歴然だ。Single Coreは最大動作クロックが同じこともあってほぼ同じ。
では、実ゲームではどうだろうか。Apex Legends、オーバーウォッチ2、サイバーパンク2077で比較する。それぞれのベンチ条件は前述と同様だ。



Apex Legendsとオーバーウォッチ2はあまり変わらない。Radeon RX 7600はエントリークラスということもあって、CPUパワーの差が出る前にビデオカードの性能限界に到達していると見られる。
サイバーパンク2077はCPUパワーも求めるゲームなので多少フレームレートが向上した。ゲームしながら配信するなど、ほかのアプリも同時に動かしたいという用途を考えるならコア数が多いほうがよいが、ゲームだけに限定するならRadeon RX 7600と組み合わせるのは、Core i3-14100Fで十分だ。
CPUクーラーを交換すると温度や動作音は大幅改善!?
続いては、CPUクーラーを、CPU付属のものからサイドフロー/シングルファンタイプのものに交換してみよう。今回のPCケース「T4 PLUS」は組み込み可能なCPUクーラーの高さが最大157mmと余裕がある。人気空冷クーラーのDeepCool AK400は155mm、サイズ 虎徹 MARK3は154mmなので、かなり選択肢の幅は広い。
今回は、12cm角ファンを搭載しながら低価格のCPS「RT400-BK」をチョイスした。実売価格が2,800円前後と手頃な上、高さ148mmと余裕で組み込めるのがポイントだ。ファンをヒートシンクに取り付けたままCPUソケットに固定できる扱いやすさも評価したい。
Cinebench 2024(Multi Core)を10分間動作させたときの温度と動作音をチェックしよう。温度と動作音の測定方法は前述と同様だ。


CPUファンの音はかなり小さくなった点が素晴らしい。PCケースに近付いてちょっとファンの音が聞こえるかな、というレベルだ。平均温度は16℃も下がっており、冷却力も大幅に強化できている。静音性や冷却力を高めたいなら、最優先で導入するべきだろう。
予算8万円でも人気ゲームがガッツリ楽しめるPCに
予算8万円以内という厳しい条件なので、CPUは4コアのCore i3-14100F、マザーボードはエントリーのH610チップセット搭載モデルと低価格重視でのパーツ選択でゲーミング性能は大丈夫なのかと思うところだが、Radeon RX 7600は3.6万円前後でもフルHDゲーミングなら十分な性能を持っており、今回のCPUやマザーボードでも問題なく性能を発揮できている。PCケースも4,000円台で購入できるものはそれなりに種類があり、今回のようにゲーミングPCらしいものも十分選択可能だ。
OSにWindows 11 Homeを追加しても10万円以内。これからゲーミングPC自作にチャレンジしてみたいと考えている人に参考になれば幸いだ。低予算でもあきらめるな! お楽しみはこれからだ!