VIDEO CARD LABORATORY
【VIDEO CARD LABORATORY 新装第1回】Radeon環境のフレームレートを激増させる「AFMF」を深掘りする
ハマれば効果は絶大!そのメリットとデメリットを徹底検証 text by 加藤 勝明
2024年4月30日 09:05
これまで「DOS/V POWER REPORT」(2024年冬号をもって休刊)で連載してきました「VIDEO CARD LABORATORY」ですが、今回からAKIBA PC Hotline!にてお届けします。
今後は従来の話題のビデオカード製品のレビューに加え、最新のGPU/ビデオカードの技術や活用法などのレポートも実施。生配信でもおなじみのKTUこと加藤勝明氏がよりパワーアップして発信していきます!
ゲームにおいてフレームレートはユーザー体験を大きく左右する。高フレームレートが出ればその分素早い動きにも追従しやすくなるため、競技性の高いゲームではフレームレート向上は特に重要だ。そんなゲームのフレームレートが「Radeonを使っているなら“無料”で“2倍以上に”増える」というのが「AFMF」こと「AMD Fluid Motion Frames」の最大のウリだ。
これまでフレームレートを大幅に増加させるフレーム生成技術と言えば、NVIDIAのGeForce RTX 40シリーズとDLSS Frame Generation(DLSS FG)対応のゲームとのセットでしか味わえないものだった。しかしAFMFは、直近2世代のRadeonで幅広く動作し、ゲーム側の対応も不要(詳細は後述)。これはゲームのフレームレート向上における大革命であり、NVIDIA GeForceにはまだ類似の機能がない、というのがポイントだ。
そこで本稿では、Radeonを輝かせたAFMFについて、メリットとデメリットの両面から検証と解説を試みる。
AFMFの動作要件
まずはAFMFを利用する条件について確認しておこう。Radeonの世代がRDNA 2ないしRDNA 3であることだけが重要であり、CPUやビデオメモリなどのスペックはまったく関係ない。RDNA 2以降のRadeonを搭載したビデオカードを使うのであれば、別にCPUがIntel製であっても問題ないのだ。
なお、AFMFはモバイル向けRyzenでも動作する。ただ、モバイル向けRyzen(特に7000シリーズ)は型番の微妙な違いで内蔵GPUの世代が異なるなど少々複雑なので、本稿では解説を省かせていただく。
GPU | Radeon RX 6000シリーズ Radeon RX 7000シリーズ Radeon 700Mシリーズ |
CPU | Windows 10もしくは11が動作するもの |
ドライバー | AMD Software:Adrenalin Edition 24.1.1以降 |
ゲーム | DirectX 11もしくはDirectX 12 |
AFMFはゲーム起動後に表示されるToastメッセージで有効か無効かが分かるようになっているが、ゲーム内で[Shift]+[Alt]+[G]のホットキーを押下することで随時ON/OFFを切り換えることができる。その際ゲームは「(排他的)フルスクリーンモード」かつ「垂直同期(V-Sync)オフ」であることがAFMF利用時におけるカギだが、ボーダーレスでも動く“こともある”。ゲームと並列で別のウィンドウも操作したいという場合は工夫が必要だろう。
そしてもう一つ、ゲームがDirectX 11もしくはDirectX 12で動作していることもAFMFの動作要件となる。昨今のゲームは大抵この条件を満たすが、なかにはVulkanやDirectX 9/10で動くゲームもある。前者は「Valheim」や「Enshrouded」が、後者は「ドラゴンクエストX」などがある。また、筆者の経験では「VALORANT」はDirectX 11ベースだがAFMFは逆効果だった(フレームレートが下がる)。必ずしも効果があるとは限らないようだ。
AFMFの仕組はDLSS FGと同様に連続する2フレームから、中間のフレームを生成するというものだ。よって生成されたフレームの絵はボヤけたり崩れたりしがちだが、もとのフレームレートが極端に低い状況でなければ目に付くわけではない。目安としては元が60fpsを上回るように画質を調整したり、アップスケーラー(FSR 2やRSR)を併用して描画負荷を下げるという工夫が必要になる。
AFMFと対をなすフレーム生成技術が「FSR 3」だ。FSR 3はゲーム側の対応が必須であるかわりに、旧世代RadeonやGeForce、Arcなどでも利用できるという汎用性を備えている。AMDいわく「AFMFは画面表示を丸ごとフレーム生成機能に通すため状況によってはHUDの描画が荒れることもあるが、FSR 3はHUDはフレーム生成後に合成するため荒れない」などの違いがある。ベンチマーカー的には生成されたフレームレートの計測はAFMFはAMD Softwareのロギング機能しか使えないのに対し、FSR 3は外部ツール(「CapframeX」、「Afterburner」など)が使える。AFMFで得られるフレームレートを数値として画面上に出したいときはRadeonのオーバーレイを使うほかはないのだ。
RDNA 2世代とRDNA 3世代のRadeonを横並びで比較する
AFMFの効果を検証する前に、今回の検証環境を紹介しよう。GPUはRDNA 2およびRDNA 3世代のカードを可能な限り集めたが、RX 6650 XTやRX 6700の無印といった“隙間モデル”は時間と機材調達の都合から除外した。GPUドライバーは、AMD Software:Adrenalin Edition 24.3.1を使用している。Resizable BARやSecure Boot、メモリ整合性、HDR(Windows HD Color)はすべて有効とした。
CPU | AMD Ryzen 7 7800X3D(8コア16スレッド) |
マザーボード | ASUS ROG STRIX X670E-F GAMING WIFI (AMD X670E、BIOS 1905) |
メモリ | Micron Crucial Pro CP2K16G56C46U5 DDR5-5600 32GB(PC5-44800 DDR5 SDRAM16GB×2) |
ビデオカード | AMD Radeon RX 7900 XTX リファレンスカード、AMD Radeon RX 7900 XT リファレンスカード、ASRock AMD Radeon RX 7900 GRE Steel Legend 16GB OC、AMD Radeon RX 7800 XT リファレンスカード、ASRock AMD Radeon RX 7700 XT Challenger 12GB OC、ASRock AMD Radeon RX 7600 XT Steel Legend 16GB OC、AMD Radeon RX 7600 リファレンスカード、TUL PowerColor Red Devil AMD Radeon RX 6950 XT 16GB GDDR6、AMD「Radeon RX 6800 XT リファレンスカード、AMD Radeon RX 6800 リファレンスカード、AMD Radeon RX 6700 XT リファレンスカード、ASRock AMD Radeon RX 6600 XT Phantom Gaming D 8GB OC、Sapphire PULSE AMD RADEON RX 6500 XT GAMING OC 4GB GDDR6 HDMI/DP |
SSD | Micron Crucial T700 2TB [M.2(PCI Express 5.0 x4)、2TB] |
CPUクーラー | NZXT Kraken Elite 360(簡易水冷、36cmクラス) |
電源ユニット | Super Flower LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK (1000W、80PLUS Platinum) |
OS | Windows 11 Pro(23H2) |
今回用意したビデオカードがどの程度の描画性能を発揮するのか、定番「3DMark」を利用して検証しておく。
ラスタライズ系テストではRX 7000シリーズがRX 6000をやや上回る程度なのに対し、レイトレーシング系テストではRX 7000シリーズのスコアが全体に大きく伸びている。各GPUの立ち位置が分かったところで、本題であるAFMFの検証に入ろう。
AFMFのパフォーマンスを検証する
本稿では「サイバーパンク2077」および「F1 23」を利用してAFMFを利用した際のパフォーマンスを検証した。まずアップスケーラーもAFMFも使っていない設定でフレームレートを測定し、さらにそこからFSR 2とAFMFを併用し、負荷をさげつつフレーム生成を行った際のフレームレートを測定し比較するというものだ。フレームレートの計測にはAMD Software:Adrenalin Editionの測定機能を利用している。
まずサイバーパンク2077では画質“レイトレーシング:ウルトラ”をベースにFSR 2をOFFとした設定、およびFSR 2“バランス”にAFMFをONにした設定の二通りとした。解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)/WQHD(2,560×1,440ドット)/4K(3,840×2,160ドット)の3段階とし、内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
アップスケーラーもフレーム生成もない状態では、現状ハイエンドのRX 7900 XTXでもフルHDで平均60fpsを超えるのがやっと……というレベルだが、FSR 2で負荷を減らしAFMFでフレーム生成を加えてやれば、旧世代のRadeonでも十分プレイ可能なフレームレートに持ち込める。
ただ、最低フレームレートの出方を見る限り、快適プレイに耐えるのはWQHDまで、といったところだ。4Kでは平均フレームレートは高いが、ところどころ激しいカクつきが出るので、“観光用設定”とするのがよいだろう。サイバーパンク2077はFSR 3対応を表明しているが、4月初旬時点でまだ実装はされていない。AFMFよりもパフォーマンスがさらに上がることが期待できる。一日も早い実装を期待したい。
ネイティブ解像度のレンダリング時を基準にするとFSR 2+AFMFを併用することで3倍から4倍のフレームレートが出ていることが示されている。ところどころ上昇率が半端なく高い(RX 6600 XTなど)部分があるが、これは基準になる(FSR 2+AFMFなし)フレームレートが低過ぎるためだ。
F1 23でも同様のテストを実施した。画質は“超高”+異方性16X+TAA&FidelityFXの設定をベースに、TAA&FidelityFXをFSR 2“バランス”かつAFMFをONにしたときの設定を準備。内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。
F1 23もアップスケーラーやフレーム生成がないと平均60fpsを越えるためにはRX 7000シリーズの上位モデルが欲しくなってくる。RX 7900 XTXでも4Kで60fpsプレイは厳しい。しかしFSR 2とAFMFを併用することで、フレームレートは劇的に向上する。ややカクつきは出るもののRX 6600 XTでも平均60fps以上に持ち込める。画質“超高”設定で60fps以上をキープとなるとWQHDでRX 7700 XT以上が欲しい所だが、RX 6000シリーズでも快適動作の道筋が拓けている点は評価したい。
F1 23ではFSR 2とAFMFの利用により3倍前後のフレームレートになることが分かる。
最後にFSR 3対応のゲームでの検証もしておきたいので「Starfield」にご登場願おう。画質は“ウルトラ”+アップスケーラーなしの設定がベースとなる。これにFSR 3のフレーム生成機能を有効にし、レンダースケール(RS)を59%(FSR 2の“バランス”に相当する値)とした設定を準備。ニューアトランティスのMAST地区における一定のコースを移動した際のフレームレートを計測した。
FSR 3のフレーム生成機能はAFMFと同様に大幅なフレームレート向上が期待できる。RX 7600のようなエントリー寄りのGPUであっても、WQHDで60fps以上出せるのは素晴らしい。FSR 3を使わずに4KネイティブのレンダリングではRX 7900 XTXでもカクつきが出てしまうが、FSR 3のフレーム生成を加えることでRX 7600 XTでもなんとかプレイできそうなフレームレートが出ることは見逃せない。
Starfieldにおいてはネイティブ解像度のレンダリング時の2倍程度のフレームレートが出せるようになる。RX 6500 XTの伸び率が異常に大きいのはネイティブ解像度ではほぼ紙芝居状態だったためだ。
“後編"ではAFMFの弱点について掘り下げ
AFMFの効果の高さはここまでで一通りご理解いただけたことと思う。とはいえ、AFMFと言えどもやはり万能ではない。本稿に続く後編では、AFMFの弱点と言えるであろう「E-Eシステムレイテンシーの増大」について検証していく。