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あなたの外付けHDD「寿命」になっていませんか?
HDDを“最新NAS”に変えたら、データがすぐにクラウド化した件

text by 清水理史

 データの保存先として昔から重宝されてきた外付けHDD。ノートPCなどとの組み合わせで長年愛用しているという人も多いことだろう。

 しかし、長期間使い続けると、気になり始めるのが、その寿命。容量も不足がちかもしれないが、そもそもHDDは消耗品。今は無事でも故障の危険性が次第に高くなる。大容量の外付けHDDを追加購入するのも1つの方法だが、どうせならもっといろいろな用途に活用できる多機能なストレージに乗り換えてみてはどうだろうか?

 自宅に設置するだけで、月額料金不要の「パーソナルクラウド」を構築できる新世代のストレージ、Western Digital「WD Cloud」を試してみた。

見た目とサイズは「外付けHDD」でも実態は「クラウドストレージ」

 見た目は今までの外付けHDDとほぼ一緒。でも、名前に「クラウド」と付けられたストレージ。それがWestern Digitalの「WD Cloud」だ。

 外付けHDDと同じようなサイズ(高さ170.6×幅49×奥行139.3mm)で、デザインも奇をてらったところがないため、思わずPCの横に置いてUSBケーブルをつなぎたくなるが、従来の外付けHDDは少し毛色が異なる製品。USBケーブルでPCに接続する今までの外付けHDDではなく、ネットワークに接続する、いわゆる「NAS(Network Attached Storageの略。”ナス”と読む)」と呼ばれる製品の一種となっている。

WD Cloud
ルーターなどの機器とネットワークケーブルで接続して利用する

 背面をよく見るとネットワークケーブルを接続するためのポートが搭載されていることからもわかる通り、このポートを使ってルーターやスイッチ(ハブ)などのネットワーク機器と接続する。ネットワーク経由で利用するため、ネットワークケーブルが届く場所なら設置場所を選ばないうえ、Wi-Fi経由でもアクセスできるので、PCとWD Cloudの間を直接ケーブルでつなぐ必要がないのが特徴。

 しかも、USB接続の外付けHDDは、基本的に接続したPCからしかデータを読み書きできないが、WD Cloudは、自分の部屋のPCやリビングのテレビ、Wi-Fiでつないだスマートフォン/タブレットなど、同じ家庭内や社内のネットワークにさえつながっていれば、複数の機器からアクセス可能となっている。

ネットワーク上のPCからブラウザで簡単に初期設定が可能。外出先からのアクセスなども初期設定で自動的に設定される

 このため、今までの外付けHDDと同様に、PCのデータを保存したり、バックアップ先として使うのはもちろんのこと、家庭内の他のパソコンとデータを共有したり、保存した写真や動画をリビングのテレビで再生したり、スマートフォンの写真をバックアップするなど、いろいろな機器から、さまざまな用途に使うことが可能になっている。

 同様のことは、一般的なNASでも可能だが、WD Cloudが既存の「NAS」と違うのは、その圧倒的な手軽さと、外出先からの使いやすさ。ネットワークケーブルをつないで電源オン。PCからブラウザで数ステップの操作をするだけで、すぐに使い始めることができるうえ、スマートフォンやタブレットからも専用のアプリをインストールするだけですぐに利用できる。

スマートフォンからも利用可能。自宅のWi-Fiではもちろんのこと、外出先からも利用可能

 外出先からアクセスするための特別な設定も一切不要だ。同社が用意したクラウド上のサービス経由で自宅にアクセスするしくみとなっており、そのための設定も初期設定で自動的に完了する。アプリをインストールしたスマートフォンさえあれば、外出先でも、自宅のWi-Fiにつながっているときと同じようにWD Cloudに保存された写真や動画にアクセスできる。あまりにも簡単かつ自然に使えるので、まるでスマートフォン本体に保存されているデータにアクセスしているような感覚さえある。

 そもそも「クラウド」と呼ばれるサービスは、リソースの場所などを意識せずに使えるサービスを指すが、どこからでも意識せずに自分のデータにアクセスできるWD Cloudは、まさに「パーソナルクラウドストレージ」という呼び方がピッタリ。にもかかわらず、iCouldやDropboxなどの一般的なクラウドストレージと異なり、どれだけ使っても月額料金は不要。容量買い切りで思う存分使える製品となっている。

 なお、今回は2TBのHDDを搭載したモデル(WDBAGX0020HWT)を利用したが、これ以外に3TB、4TB、6TBのHDDを搭載した全4モデルがラインナップ。かつて一般的だった1TBクラスの古い外付けHDDからの乗り換えなら2TBモデルで十分だが、動画や写真などを多く保存したい場合や家族など複数のユーザーで使いたいときは、さらに大容量のモデルを選ぶことをおすすめする。

 ちなみに搭載されるHDDは、もちろんWestern DigitalがNAS向けに開発した高信頼性モデル「WD Red」だ。個人向けのWD Cloudといえども、24時間365日の常用に耐えうるHDDが搭載されているのは大きなメリットだ。

WD Cloudシリーズが搭載しているのは、同社のNAS向けHDD「WD Red」(写真は4TB品)。「NAS向けHDD」として単体ドライブでも人気が高いシリーズだ。ラインナップは1~8TBの7モデル(3.5インチ)。このほかに、2.5インチの750GB/1TBモデルも用意されている。
WD Redと普通のHDDの違い。24時間365日の稼働を保証する高い信頼性はもちろん、「消費電力を低くおさえる」「動作温度が高温になりすぎないように制御する」といったチューニングもされているという。

外付けHDDとはこんなに違う! WD Cloudならではの便利機能

 それでは、WD Cloudを利用することで、実際にどのようなことができるのかを実際に試してみよう。

活用例1:外出先からアクセス

 USB接続の外付けHDDとの最大の違いは、何と言っても外出から、しかもスマートフォンやタブレットからも、自宅のデータにアクセスできることだ。前述した通り、外出先からWD Cloudにアクセスするための設定は特に必要ない。通常の初期設定を済ませれば、それだけで外出先からのアクセスが可能になる。

自宅以外のPCからもブラウザで簡単にデータにアクセス可能

 試しに、会社など自宅外のPCから使うことを想定してみよう。ブラウザを利用してクラウドサービスの「wdcloud.jp」にアクセスし、「サインイン」から初期設定時に登録したメールアドレスでサインインすると、安全な接続が確立され、WD Cloudにアクセスできる画面が表示される。出張先などからWD Cloudに保存されている文書を取り出したり、旅行先で撮影した写真を自宅のWD Cloudにアップロードしたりといった使い方が簡単にできるのは、単なる外付けHDDにはできない新しい活用スタイルだ。

 スマートフォンからの利用も簡単だ。iPhoneやAndroid端末に「WD Cloud」アプリをインストールし、初期設定時に登録したアカウント(メールアドレスとパスワード)でサインインすればいい(写真の自動バックアップ設定が可能だが後で設定することも可能)。これだけでスマートフォンからWD Cloudのデータにアクセスできる。標準では、自分しかアクセスできない専用のホームフォルダ(自分の名前のフォルダ)と、家族などWD Cloudのユーザーとして登録したほかのユーザーとデータを共有できる「Public」フォルダが表示される。

 いずれかにデータを保存しておけば、スマートフォンから参照可能で、外出先で写真を表示したり、動画を再生したりすることができる。

 試しに、ビデオカメラで撮影したMP4の動画をLTE回線経由で再生してみたが、再生操作後すぐに再生が開始されたうえ、動画の再生そのものもスムーズだった。もちろん、スマートフォンの場合は通信量に注意する必要があるが、アプリ側でキャッシュにデータを蓄えながら動画を再生できるため、速度の限られたLTE環境でもストレスなく動画の再生ができるのも大きな特徴だ。

スマートフォン向けのアプリ(WD Cloud)も無償で提供される
写真も簡単に参照可能
LTE経由で動画をストリーム再生可能。非常にスムーズで快適に再生できる

活用例2:誰とでも簡単にデータを共有可能

 続いて、データの共有機能についてみていこう。WD CloudはNASの一種なので、PCからエクスプローラーのネットワーク経由で共有フォルダにアクセスすることができる。家族でデータを共有するなら、この方法が簡単だ。

 写真や動画を共有フォルダに保存すれば、自分のパソコンだけでなく、家族のパソコンやスマートフォンでも同じデータを参照できる。写真などのデータの保存場所として家族みんながWD Cloudを活用すれば、「あの写真どこだっけ?」などと、PCや外付けHDDを探し回らずにも済む。

 もしも、外部の人とデータを共有したいなら、OneDriveやDropboxなどのクラウドストレージサービスと同じように、共有リンクを作ってファイルを共有するのが簡単だ。wdcloud.jpからサインインし、WD Cloud上のファイルの中から共有したいファイルを選択して「共有リンク」を作成すると、そのファイル専用のURLが作成され、メールで特定の相手に送信することができる。

 URLを知っている人なら誰でもダウンロードできるリンクだけでなく、招待した相手のみがダウンロードできるリンクの2種類を作成できるので(相手もWD Cloudへの登録が必要)、写真やビデオなどプライベートなデータを送信したい場合にも重宝するだろう。

共有リンクを作成して外部の人とデータを共有できる

 このほか、デバイス間でのデータ共有も可能だ。同社のWebページから無料でダウンロードできる「WD Sync」アプリをPCにインストールすると、PC上の特定のフォルダのデータをWD Cloudと自動的に同期することができる。

 自宅と会社、デスクトップとノートなど、複数のPCにWD Syncをインストールしておけば、すべてのPCで同期された同じデータを使えるというわけだ。同期は、必ずしも自宅ネットワークに接続したときだけに限らず、外出先でも利用できる。このため、たとえば、出張先で文書ファイルを編集した場合でも、それが自動的に自宅のWD Cloudと同期される。外出先でやりかけた仕事の続きを自宅や会社で続けたいときなどに便利だろう。

フォルダの同期を使えば複数機器でデータ共有ができる

活用例3:大切なデータは自動でバックアップ

スマートフォンの写真を自動的にWD Cloudにバックアップすることもできる

 もちろん、データのバックアップにWD Cloudを活用することもできる。バックアップは、PCも、スマートフォンも可能だが、どちらかというとニーズが高いのは後者のスマートフォンだろう。

 スマートフォンのバックアップは、前述したWD Cloudアプリを利用する。初期設定時に写真の自動バックアップを設定するか、後から設定画面で自動バックアップを有効にすると、スマートフォンで撮影した写真が自動的にWD Cloudに保存されるようになる(標準ではWi-Fi接続時のみ)。

 スマートフォンのストレージ容量は限られているため、たくさんの写真を保存したままにすると、スマートフォンの空き容量が足りなくなるが、こういったケースでもWD Cloudは役立つ。スマートフォンの写真をWD Cloudにバックアップ後、本体から写真を削除すれば、容量不足を解消できるというわけだ。

 一方、PCのバックアップには、「WD SmartWare」と呼ばれるバックアップ用のソフト(無料)を利用する。実際に使ってみると、このソフトはなかなか賢い。

 一般的なNASに添付されているバックアップソフトの場合、時間などを指定して指定したフォルダを定期的にバックアップするが、本製品ではフォルダ単位でのバックアップに加えてカテゴリごとのバックアップが可能。標準では写真や文書など一般的なデータを自動的に探してバックアップすることができる。このため、デスクトップなど一時的に保存したデータなども自動的にバックアップしてくれる。

 バックアップのタイミングも時間指定だけでなく、リアルタイム、つまりファイルを更新したタイミングで自動的に実行することが可能だ。これにより、万が一、大切なファイルが失われたとしても、最後にファイルを更新したタイミングに復元することができる。1日ごと、1週間ごとにしかバックアップを実行できない他の製品とは違って、最新のファイルが常にスタンバイしているというわけだ。

 また、Mac OS XのTimeMachineにも対応しており、Mac OS Xのバックアップ先としてWD Cloudを利用することもできる。

 こういったあたりのソフトウェアの完成度の高さや実用性の高さは、さすがストレージを長年扱ってきたWestern Digitalならではといったところだ。

WD SmartWare。その名の通り、とてもスマートなバックアップツール
Macからも利用できる。TimeMachineのバックアップ先として指定可能

 このように、WD Cloudを利用すれば、データを単に保存するだけでなく、さまざまな方法で活用可能だ。このほか、メディアの再生機能も豊富だ。DLNAサーバー機能によって、WD Cloudに保存した写真や動画をDLNA対応のテレビなどで再生できるのはもちろんのこと、iTunesサーバー機能を搭載しており、WD Cloudに保存した音楽をiTunesからネットワーク経由で再生することができる。

 WD Cloudアプリを利用すれば、スマートフォンでWD Cloud上の音楽ファイルをストリーミング再生することもできるため、WD Cloudをクラウド音楽配信サービス的に活用することもできるだろう。

0分でデータ移行可能!? 時間をかければ完全入れ替えも

 「確かに便利そうだけど、古いHDDに大量に保存されたデータはどうすればいいの?」

 そんな声が聞こえてきそうだが心配無用だ。もしも、古い外付けHDDの寿命がまだもう少し持ちそうなら、WD Cloudに、その外付けHDDを接続してしまえばいい。

今までUSB接続で使っていた外付けHDDはどうするか?(写真はWD My Book Essential 1.0TB)
古い外付けHDDはそのままWD Cloudに接続して利用できる

 背面のUSBポートに外付けHDDを接続すると、外付けHDDのデータもWD Cloudから管理できるようになるため、単なるUSB接続HDDを、いきなりクラウド化することができる。

 ブラウザからwdcloud.jpにアクセスすれば、「接続されているストレージ」として認識されるうえ、Windowsのエクスプローラーから共有フォルダにアクセスすれば外付けHDDのデータを読み書きできる。もちろん、スマートフォンのアプリなどからも同様だ。WD Cloudの内蔵HDDと同じように、さまざまな機器から、場所を問わず、いろいろなアプリを使ってデータにアクセスすることができる。

 このため、併用が可能であれば、PCからWD Cloudへと外付けHDDをつなぎかえるだけ。一瞬にして、データの移行が完了することになる。

外付けHDDをUSBポートに接続すれば、そのままWD Cloudから利用可能

 もちろん、外付けHDDの寿命が心配なら、そのままつないでおくのは危険なので、データを移行してしまえばいい。

 USBバックアップ機能を使って、USBでつないだ外付けHDDのデータをWD Cloudの特定のフォルダにコピーすれば、データを完全に移行することができる。実際に写真やビデオ、文書などを含めた931GBのデータが保存されたHDD(Western Digital My Book Essential 1.0TB)をUSB3.0で接続して、データをWD Cloudに移行してみたところ約4時間17分でコピーが完了した。

 さすがにTB近いコピーになるため時間はかかるが、基本的に放置しておけば移行は完了するので手間はかからないだろう。

 バックアップが完了したら、余った外付けHDDをWD Cloudのバックアップ用として活用することも可能だ。シングルドライブのWD Cloudは内蔵HDDが故障すると、データが失われることになる。複数台WD Cloudを利用してネットワーク経由でバックアップすることも可能だが、外付けHDDにデータを定期的にバックアップしておくのが手軽でいいだろう。

バックアップ機能を利用して外付けHDDのデータをWD Cloudにコピー。余った外付けHDDは、逆にWD Cloudのバックアップ用として活用できる

様々なデータの「活用」におすすめできるWD Cloud

 以上、WD Cloudを実際に試してみたが、古い外付けHDDの代わりとしてはもちろんのこと、データをクラウド化することで、場所や機器を問わず自分のデータにいつでもアクセスできるようになるメリットは大きい。

 データの保存も手動での保存先の選択やコピーといった作業から解放され、同期機能によって意識せずに行なうことができるうえ、PCやスマホのバックアップ先としても活用できる。従来の外付けHDDは、単なるデータの倉庫だったが、WD Cloudはデータを活用するためのプラットフォームといった感じで、写真や動画など眠っていたデータを活用することが可能になる。

 このほか、WordPressなどのアプリを追加することも可能で、使い方次第では無限の可能性を秘めた製品となっている。外付けHDDの置き換えをスタートに、徐々に用途を広げるといったように、買った後の「いじる」楽しみがあるのもWD Cloudのメリットと言えそうだ。

 ストレージというと、どうしても内蔵やUSB接続を思い浮かべがちだが、自宅のLANに接続するWD Cloudのような新しいストレージを、さまざまな機器で、さまざまな用途に活用することをおすすめしたいところだ。

[制作協力:Western Digital]

清水 理史