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128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで……

超多コアCPU+大容量メモリは、最強の「ながら作業PC」? text by 坂本はじめ


メモリをストレージとして利用する「RAMディスク」の構築法

128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… MSIのRAMディスク作成ソフト。同社のX299 GAMING PRO CARBON AC、X399 GAMING PRO CARBON ACともに利用可能だ。
MSIのRAMディスク作成ソフト。同社のX299 GAMING PRO CARBON AC、X399 GAMING PRO CARBON ACともに利用可能だ。
128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… 市販のRAMディスク作成ソフト「RAMDA」
市販のRAMディスク作成ソフト「RAMDA」

 大容量メモリの活用と言うと、やはりRAMディスクは外せないだろう。

 RAMディスクとは、メインメモリの一部領域をストレージデバイスとして利用するものだ。RAMディスクの作成・管理には専用のRAMディスク作成ソフトを用いる。今回使用しているMSIのマザーボードであれば「MSI RAM Disk」が無料で使用可能だ。また、有料ソフトでは「RAMDA」などが利用できる。

 RAMディスクの利点は、高速なDRAMを記憶領域として活用することで、SSDやHDDといった既存のストレージデバイスを凌ぐパフォーマンスが得られる点にある(実測値は下記ベンチマークを参照)。また、DRAMにはフラッシュメモリのように書き換え寿命の心配がないのも利点だ。

 こうしたRAMディスクの特性は、一時的なキャッシュや作業データの保管場所として適している。ブラウザのキャッシュファイル置き場や、アプリケーションの作業ドライブとしてRAMディスクを割り当てることで、ストレージ性能のボトルネックを大きく改善できる可能性がある。

128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… Intel環境で構築したRAMディスクのCrystalDiskMark実行結果。この時点でも十分に高速だが、これはストレージ性能の限界ではなくCPUのシングルスレッド性能がボトルネックとなった結果だ。
Intel環境で構築したRAMディスクのCrystalDiskMark実行結果。この時点でも十分に高速だが、これはストレージ性能の限界ではなくCPUのシングルスレッド性能がボトルネックとなった結果だ。
128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… テストするCPUのスレッド数を16に増やした場合のCrystalDiskMark実行結果。ピーク性能はリード34GB/sec、ライト58GB/secに達した。
テストするCPUのスレッド数を16に増やした場合のCrystalDiskMark実行結果。ピーク性能はリード34GB/sec、ライト58GB/secに達した。
128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… 128GBのメインメモリなら、100GBをRAMディスクに割り当てても20GB以上をメインメモリとして利用できる
128GBのメインメモリなら、100GBをRAMディスクに割り当てても20GB以上をメインメモリとして利用できる

 ただし、RAMディスクには、DRAMへの電源が遮断されるとデータを保持できない弱点がある。このため、RAMディスク上のデータはPCのシャットダウン前にバックアップしておかなければ消失する。現行のRAMディスク作成ソフトの多くは自動バックアップ機能を備えているが、突然の電源遮断が生じればディスク内のデータが消失するリスクがある点には注意が必要だ。

 また、メインメモリの一部領域をストレージとして利用するため、RAMディスクの記憶容量はPCに搭載したメインメモリの容量を超えることは出来ない。また、RAMディスクとして使用中の容量分、利用できるメインメモリの容量が減少してしまう。つまり、RAMディスクの容量を大きくとりたいなら、今回のようにメモリを大量に搭載するのが効果的というわけだ。


写真用途でも活用できるRAMディスク、RAW編集ソフトのレスポンスを改善

128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… RAW編集は使い方次第で大量のメモリを使用するが、128GBのメモリがあれば相当な余裕がある。
RAW編集は使い方次第で大量のメモリを使用するが、128GBのメモリがあれば相当な余裕がある。

 デジタル一眼カメラで撮影した高解像度のRAWファイルをJPEGなどの画像ファイルに変換する過程で編集作業を行うRAW編集は、大容量のメモリを必要とする作業だ。とはいえ、128GBのメインメモリがあれば、複数のRAWファイルを開いて編集作業を実施していてもメモリを使いきることは無い。

 そこで、せっかくの128GBメモリを生かす手段として、RAWファイルをいったんRAMディスク上に保存してから編集を行うという作業を提案する。

 RAWファイルを置く場所をRAMディスクにした場合、データロードに関連したRAWソフトの挙動はSSDと同程度となる。HDDとの差も小さなものに見えるかもしれないが、操作に対するレスポンスが良くなるため、体感的には明らかにRAMディスクやSSDの方が快適に編集作業を行える。

 また、SSDとRAMディスクのパフォーマンスは同等だったが、書き換え寿命の心配がないRAMディスクはRAWファイルを一時的に置いておくストレージとして好適だ。編集作業完了後はHDDに保管するという形をとれば、SSDの寿命を消耗することなく快適な作業環境を実現できるだろう。

128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… ストレージの違いによるRAW編集ソフトの挙動(AMD環境でテスト)
ストレージの違いによるRAW編集ソフトの挙動(AMD環境でテスト)

 クリエイティブな用途では、一時的な作業スペースと、最終的な保存先に別々のストレージが要求されることがあるが、一時的な作業スペースにRAMディスクを割り当てることで快適な環境を構築できる。

 写真のRAW編集に限らず、ディスクに書き出してみないとわからないようなトライアンドエラーが多い用途であればあるほど効果は大きいので、是非RAMディスクを活用してみて欲しい。


RAMディスクでゲームのロード時間を大幅短縮記録を狙うゲーマーやロードが多発するゲームには効果的

 超高速なストレージであるRAMディスクにゲームをインストールすれば、ロード時間を短縮することができる。大作ゲームは数十GBのインストール容量を必要とすることもあるが、128GBのメインメモリならそれを賄える大容量RAMディスクを作成可能だ。

128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… RAMディスクとSSDのロード時間比較(Intel環境でテスト)
RAMディスクとSSDのロード時間比較(Intel環境でテスト)

 上の表はRAMディスクによるロード時間短縮効果だが、ニーア オートマタやFallout 4では「ロード画面の表示時間」がそれぞれSSDより1秒ほど短縮された。

 1回のロードでの差は小さなものだが、6つのシーンを切り替えて実行するFinal Fantasy XIVベンチマークのローディングタイムが、SSDの半分近くまで短縮されていることを見れば、積もり積もれば大きな差となることが分かる。

128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… ニーア オートマタのロード画面、こうした待ち時間をRAMディスクはある程度減らすことができる。
ニーア オートマタのロード画面、こうした待ち時間をRAMディスクはある程度減らすことができる。
128GBもメモリを載せたら、PCはどこまで快適になるのか? 動画や写真編集、VMにゲームまで…… TASやRTAといったトライアンドエラーが多い用途であればRAMディスクの恩恵が受けられるだろう
TASやRTAといったトライアンドエラーが多い用途であればRAMディスクの恩恵が受けられるだろう

 実際にゲームに効果があるRAMディスクだが、PCの電源を落とすとRAMディスク内のデータが消えるという、ゲームとは非常に相性の悪い特性がある。

 RAMディスクの多くは、PCシャットダウンに合わせ自動でデータを保存し、次回起動時に復元する機能などを備えていたりするが、バックアップ先をSSDにしたとしても保存/復元には膨大な時間が必要となため、大容量のゲームなどはあまり現実的でない。

 ただし、TAS(Tool-Assisted Speedrun)やRTA(Real Time Attack)などを楽しむプレイヤーなどであれば、数え切れないほどのトライアンドエラーを繰り返すことになるので、ロード時間短縮のためにRAMディスクを活用するのはアリだ。これらの用途でロード時間は無いに越したことはないので、RAMディスクの恩恵を受けることができるだろう。