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ASRockがこだわる“高コスパなハイエンドマザー”、台湾本社で「Taichi」のポイントを聞いてきた

数々の変態マザーを生み出してきた開発ラボも見学 text by 石川ひさよし

ASRock本社にてインタビューを行った。
Taichiシリーズ
一般には公開されていない開発ラボも見学させてもらった。

 ASRockと言えば、マザーボードメーカーとしては比較的新しく、かつ昨今着実にPC DIYユーザーの支持を拡大しているメーカーだ。古くは、他社にないユニークな製品で玄人に好まれ、愛すべき“変態”と賛えられてきた。

 CPUメーカーの仕様を大きく逸脱することが許されない最近においても、時にトガッたユニークさが伝わる製品をリリースする一方、メインストリームのExtremeの上のシリーズとしてゲーマー向けのFatal1tyやハイエンドのTaichiといったシリーズがそれぞれのユーザー層を確実に掴んでいる。

 今回、そんなASRockの本社を訪れた。国内外の発表会やユーザーイベントでおなじみのクリス氏が、とくに最近絶好調の「Taichi」についてじっくりと特徴をやコンセプトを解説してくれたので、その模様をお届けしよう。

 ちなみに、ASRockの本社は、台北市の北投(ベイトウ)にある。北投はMRTの北投駅を降りればすぐ温泉という台湾観光ではぜひ訪れたい場所だ。ASRock本社の最寄り駅は、その北投駅の一つ手前の奇岩站駅となっている。


高いコストパフォーマンスとハイエンドの性能を追求した「Taichi」ASRock本来のコンセプト「手が届きやすいハイエンド」を体現したモデル

グローバル・マーケティング・アソシエート副社長 Chris Lee氏。
R&D部門副社長のJason Chou氏。

――X99搭載モデルからスタートしたTaichiですが、以来、各世代のチップセット、各CPU向けに展開され、広く認知されるようになってきたと思います。まずはTaichiとはどのようなシリーズなのか、改めてお聞かせください。

[ASRock]現在、ASRockではユーザーのニーズが多様化する中、メインストリームのニーズにはExtremeを、ゲーミングのニーズにはFatal1tyを、リーズナブルな製品を求めるニーズにはPROシリーズをご用意しています。

Taichiは、ASRockの製品ラインナップの中ではハイエンドシリーズという位置付けです。ASRockは2002年の創業以来、「手が届きやすい」、「安くて選びやすい」という製品イメージでPC DIYユーザーの支持を得てきました。ここはハイエンドでも大事なところです。手が届くハイエンドでなければ意味がありません。

Taichiも「ASRock本来のコンセプトを受け継いだ」シリーズです。高品質を追求するシリーズですので、直球的な訳し方の「安い」=「チープ」ではなく、「プライスパフォーマンスに優れた製品」という意味の「安さ」が、ユーザーの期待するところです。

ただし、高品質とプライスパフォーマンスは相反するものです。ハイエンドを求めるユーザーにとって何が必要なのかを十分に吟味し、削るところは削っていかなければなりません。


ASRockのマザーボードは5シリーズで展開されている。Taichiシリーズはその中でもハイエンドかつ高コストパフォーマンスという位置づけだ。


SocketTR4対応マザーボードでは最も売れた製品という「X399 Taichi」。Taichiシリーズは「価格を抑えたハイエンド」を実現するために、ユーザーの用途を想定して機能を厳選していくとのことだ。

最近の製品で「X399 Taichi」(AMD Ryzen Threadripper向けマザーボード)がありますが、この製品は、AMDの公表する資料によれば、SocketTR4プラットフォーム対応のマザーボードでもっとも売れた製品であるとのことです。

市場を見渡せば、Taichiよりも多機能で華やかな製品はたくさんあります。一方でTaichiは、ただ多機能なものを追うのではなく、今の自分にとってどのような機能が本当に必要なのかを熟知した、スマート(賢い)なPC DIY上級者に好まれています。

――Taichiのユーザーが多い地域など、そうしたお話は聞いておりますか

[ASRock]欧米はもちろん、日本も、そうしたPC DIY上級者の多い地域として、Taichiの売れ行きも好調と聞いています。

ハイエンドプラットフォームの小型化は実は高難易度技術力が無ければ設計できないmicroATXのX399マザーを他社に先行して市場投入

X399M Taichi(左)とX399 Taichi(右)。ギリギリの設計だったX399 Taichiをベースに、microATXのX399M Taichiに発展。

――次は設計面についてお聞かせください。

[ASRock]まずは先ほども話題にあがったX399 Taichiですが、これも設計に大変苦労した製品です。ご存じのとおりSocketTR4はサイズが大きく、さらにメモリもクアッドチャンネルかつ基板上にスロットが8本用意されているので、これをATX標準規格に収めるのはなかなか高い難易度でした。

 Extended ATXであれば設計は難しくありませんが、ATXとそれよりも一回り大きなExtended ATXでは、搭載できるケースの数がだいぶ違います。われわれとしては、多くのユーザーが利用できるATX標準サイズでどうしても作りたかったのです。

一方で、SocketTR4、Ryzen Threadripperを選ぶだろうユーザーの用途を想定しますと、ハイエンドゲーマーはもちろん、ワークステーション的にご利用なさる方も多いと思われました。そうしたニーズを想定して設計を進め、M.2やU.2ポート、4-way SLI、そして安定性の高い11フェーズVRM……などと厳選して実装していきました。その上で、他社のメインストリームモデルに近い価格帯に収めています。

Taichiと言えば、ギア(歯車)がトレードマーク。たとえばボード上のネジ穴とギアの軸を合わせるなど、こだわり抜いたデザインも特徴だ。

先ほどお話したとおり、こうした努力もありまして、X399 Taichiは非常に好調なセールスを記録しました。一方で、X399 Taichiで得られたフィードバックの中に、「さらに小さく強力なTR4環境を作りたい」といったものがありまして、そのニーズに応えるために開発したのが今年のCESで発表した「X399M Taichi」です。


X399M Taichi
言われてみれば、ATXモデルと比較するとソケットが全体的にやや左、バックパネル側に寄っており、右に生まれたスペースに2本のM.2スロットを設けている。

――「X399M Taichi」には驚かされました。Ryzen ThreadripperをmicroATXで組むなんてことが実現できるとは

[ASRock]本音を言えば、本来Extended ATXでもおかしくない構成をATX標準規格に収めたX399 Taichiの時点でかなりの苦労をしました。回路設計はギリギリだったのです。もちろん、エンジニアは「SocketTR4をmicroATXで実現するのはキビシイ」という反応だったのですが、みながんばってくれて実現することができました。

おそらく、現在他社もmicroATXのSocketTR4マザーボードを開発している最中ではないかと思います。そのような中、他社に先行して発表することができたことは誇らしいと思います。われわれの設計開発力の高さを示すことができました。

もうしばらくすれば、他社からもmicroATXのSocketTR4マザーボードが登場してくるでしょう。その時、ASRockのオンボード機能・端子とその製品を比べて見てください。違いが分かるかもしれませんよ(笑)

――ATXでギリギリだった回路を、具体的に、どのような手法でmicroATXに収めたのでしょうか

[ASRock]まず設計上仕方のないところで、メモリスロットは8本から4本へと、クアッドチャンネルの最小限まで削減しました。そこで生まれたスペースに、本来、ATXマザーボードの拡張スロット5本目以降に実装されている回路を配置しています。

ここでまず注目していただきたいのがVRMです。X399M Taichiはコンパクトですが、ATX版のX399 Taichiと同じ11フェーズVRMを搭載しています。電源品質についてはまったく同じまま小型化しています。

また、SATAポートも八つ、M.2スロットは三つでうち一つは長さ規格の「22110」に対応させています。現在は2280が主流ですが、今後SSDや次世代フラッシュメモリのサイズが拡大していく中で、22110製品の登場も予想されます。そのとき、対応できないようでは困りますよね。われわれはそうした未来も見越して、22110にこだわっています。

ASRockがCESで発表したM.2 SSDを4基搭載できる拡張カード「Ultra Quad M.2 Card」。これも4基のM.2スロットそれぞれ22110に対応させている。アルミニウム外装とM.2 SSDを熱伝導シートで接触させる構造と、5cm角ファンを搭載して冷却も十分。かつ動作音も「静か」とのこと。