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ポーランドから日本初上陸!新顔SSDブランド“GOODRAM”の実力と狙い
欧州で実績を積み上げるメモリ/SSDメーカー、Wilk Elektronikに聞く text by 鈴木雅暢
2018年3月26日 06:05
東欧ポーランドを本拠にメモリ/ストレージ関連事業を展開するWilk Elektronikが、日本市場へ進出。「GOODRAM」と「IRDM」の2ブランドでSSDを展開する(国内代理店はソルナック株式会社)。
欧州に加え、ロシア圏でも高く支持されているという同社はどんな企業なのか。創業者であり、現在もCEOを務めるWieslaw Wilk氏と、SSD製品のプロダクトマネージャーのAda Kaźmierczak氏に聞いた。(聞き手・文:鈴木雅暢)
自社開発テストプログラムと全数検査による高信頼性で東欧を制覇
――:御社の実績について、簡単に紹介していただけますか?
[Kaźmierczak氏]:当社は1991年の創業以来、メモリ関連事業をコアに据えて活動してきました。2003年より自社ブランド「GOODRAM」を立ち上げ、SSD、メモリカード、USBメモリ、メモリモジュールなどを展開しています。GOODRAMブランドのメモリ関連製品は、ポーランドと隣国ウクライナでは全量販店の95%、中央・東ヨーロッパ全体でも40%の量販店で販売されているほか、自国ポーランドではGOODRAMのSSDがトップシェア(40%)を獲得しています。
2017年より、高品質・高信頼性のゲーマー向け、パワーユーザー向けSSDのブランド「IRDM」を立ち上げており、こちらも好評です。高品質、高信頼性、価格競争力を維持するために継続的に技術、設備への投資を続けています。パナソニック製の最新のSMT(表面実装機械)の導入もその一例です。
――:欧州でシェアを広げてこられた理由はどんなところにあるのでしょうか?
[Wilk氏]:初期のビジネスにおいては、学生時代に学んだドイツ語とロシア語を活かせたことが大きかったと思います。そして、当社が最初に成長するきっかけとなったのがDRAM製品のテストプログラムです。単純にエラーを検出するだけでなく、ユーザーの運用を再現して専用に開発しているため、汎用のプログラムに対して効率、有効性の両面において大きなアドバンテージがあります。
NAND型フラッシュ製品についても同様に自社独自のテストプログラムを開発し、不良率をきわめて低い水準に抑えています。
[Kaźmierczak氏]:当社の強みは、信頼性と価格競争力の両立です。自社開発のテストプログラム、自社工場での生産、全数検査体制が信頼性の裏付けとしてあります。高度な信頼性が求められる産業用でも実績を挙げているように、信頼性が高く評価されています。
東芝とのパートナーシップで事業を拡大
――:東欧では東芝(Toshiba Electronics Europe Gmbh)の代理店もされているようですね。
[Kaźmierczak氏]:2008年から東芝ブランド製品(現在はOCZブランドも含む)の代理店事業を欧州で展開しています。欧州でも評価が高い東芝ブランドの製品と、価格競争力がある自社ブランド製品を提供できるようになり、事業規模の拡大の大きなきっかけになりました。
[Wilk氏]:東芝はNAND型フラッシュメモリのリーダー企業です。東芝とのパートナーシップはきわめて重要で、長年のお付き合いがあり、深い関係があります。実は明後日も東芝とのミーティングの予定があります。
――:日本とはご縁がありますね。日本の印象はどうですか?
[Wilk氏]:日本へは何度も来ていますが、よい印象ばかりです。東京と(東芝の半導体工場のある)四日市以外にもいろんなところへ行っていますよ。とくに京都は非常に美しくて素晴らしいですね。大都市だけでなく、地方も好きです。温泉も大好きなところです(笑)。
メインストリームの「GOODRAM」 ハイエンドゲーマー/クリエイター向けの「IRDM」
――:ブランドについて紹介いただけますか。
[Kaźmierczak氏]:GOODRAMブランドは、信頼性と価格競争力の両立がテーマです。ビジネスからエントリーゲーマーまで幅広いユーザーがターゲットです。IRDMブランドは、より高いパフォーマンスと信頼性を備えたシリーズです。ハイエンドゲーマー、カメラ愛好家などクリエイター、パワーユーザーをターゲットにしています。
――:今回発売された「GOODRAM CX300」、「IRDM PRO」どちらもコントローラはPhison製を搭載しています。
[Wilk氏]:Phison製コントローラを採用している理由は、確かな技術力があること、東芝製NAND型フラッシュメモリとの相性がよいことが理由です。東芝と同様、Phisonとも長年のお付き合いがあり、当社にも(Phisonのコントローラを利用する際の)ノウハウの蓄積があり、今はこの組み合わせがもっともよい製品を作ることができると考えています。
ただし「必ずこの組み合わせ」と決めているわけではありません。状況が変わって、よりよいものが出てくれば、ほかのNAND、あるいはコントローラを使う可能性もあります。
クオリティファーストが信条「コントローラ、NANDの中途変更はしない」
――:そして今回いよいよ日本市場進出です。きっかけを教えてください
[Kaźmierczak氏]:2017年9月に行なわれたIFA(国際コンシューマ・エレクトロニクス展、Internationale Funkausstellung)でIRDMブランドのSSDを出展したところ、国内外で大きな反響をいただきました。それをきっかけにビジネスが進みました。
――:日本のSSD市場についてはどんな印象をお持ちですか?
[Kaźmierczak氏]:メジャーブランド含め、多数のメーカーが進出していて、厳しい市場であると認識しています。また、日本のユーザーは非常に製品に詳しく、見る目が厳しいという認識を持っています。
――:日本のユーザーにアピールしたい部分は?
[Wilk氏]:われわれの特徴である高信頼性と価格競争力は、品質に厳しい日本のユーザーならば、好意的に評価していただけるのではないかと期待しています。われわれの製品は決して激安ではありません。安価というだけであればほかにも多くの選択肢があると思いますが、われわれはあくまでも「クオリティファースト」。その中で価格競争力を高める努力をしています。きわめて高い信頼性が求められる産業向けでも実績があり、そこでの技術や開発経験も活かされています。
また、当社の姿勢として、一つの製品のコントローラやNAND型フラッシュを途中で変更しないということがあります。ですので、同じモデルであれば、すべて同じパフォーマンス、エクスペリエンスを提供することを心掛けています。
――:今後の展開についてお聞かせください。日本以外に、新たな国へ進出する予定などはありますか。
[Wilk氏]:まずは日本で成功することを目指します。今回、2製品を投入しましたが、これからラインナップを拡充しつつ、徐々に実績を積んでブランドイメージを確立していきたいと考えています。われわれの製品のよさを日本のユーザーに認めていただければ、また次のステップを考えることができるかもしれません。
GOODRAMの日本市場投入第1弾モデル「GOODRAM CX300」と「IRDM PRO」をテスト
今回は、Wilkから日本市場へ初投入される二つのブランドのSSD「GOODRAM CX300」と「IRDM PRO」を借用できたので簡単にレビューしよう。日本市場進出第1弾だが、すでに母国や周辺国で実績がある既存製品であり、ハデなうたい文句で注目を集めるというスタンスの製品ではない。この辺りは信頼性を重視するブランドらしい慎重な姿勢がうかがえる。
両者のスペックは表にまとめたとおりだ。どちらもコントローラはPhison製、NAND型フラッシュメモリは東芝製を採用している。
GOODRAM CX300は、TLC NAND型フラッシュメモリを搭載したコストパフォーマンス重視のメインストリームモデル。スペック的には標準的なSerial ATA対応SSDだ。
IRDM PROは、ゲーマー/クリエイター向けの上位製品。東芝製の19nm MLC NAND型フラッシュを採用しており、5年の長期保証が付く。Serial ATA 6Gb/sインターフェースだけに公称スペックは突出したものはないが、MLCということで安定してよい性能が期待できる。
【検証環境】
CPU:Intel Core i5-8600K(3.6GHz)
マザーボード:ASUS ROG STRIX Z370-F GAMING(Intel Z370)
メモリ:Micron Ballistix Tactical BLT2K8G4D26AFTA(PC4-21300 DDR4 SDRAM 8GB×2)
ビデオカード:ASUS ROG STRIX-GTX1070-O8G-GAMING(NVIDIA GeForce GTX 1070)
ストレージ(OS):Samsung SM961[M.2(PCI Express 3.0 x4)、512GB]
電源:Corsair RX1000x(1000W、ATX、80 PLUS Platinum)
OS:Microsoft Windows 10 Pro 64bit版
CPUクーラー:Corsair H115i(簡易水冷、14cm角×2)
ブランドの存在感を感じさせるビジュアル
両製品ともに共通するのはフレッシュなビジュアルだ。特別凝っているわけではないが、梨地仕上げのカバーにシンプルなデザインのラベルが全面に貼られたビジュアルは新鮮で、ブランドの存在感、(部品ではなく)商品としての魅力をしっかりと感じさせる。
公称スペックどおりの性能を発揮
まず定番のCrystalDiskMarkでテストした。公称スペックにも最大と非圧縮データのスコアが併記されているので、テストデータはデフォルトの「ランダム」のほか、「0fill」でも行なった。
結果はご覧のとおり、シーケンシャルリード/ライトについては、どちらもほぼ公称値どおり、またはそれ以上のスコアが出ている。データ圧縮によって性能の最適化を図るタイプのようだが、圧縮しにくいランダムでもそれほど性能は落ちていない。とくにIRDM PROのほうはランダムと0fillでほとんど変わりがない。
CX300、IRDM PROとも、Q1T1の4Kリード/ライトのスコアは、ランダムと0fillの差が大きかった。もっとも、0fillのスコアが圧倒的によいだけで、最新の3D NAND搭載モデルなどと比べれば今一歩ではあるが、ランダムデータのスコアも悪いわけではない。
Iometer 1.1.0では、4Kランダムアクセスのデストを行なった。データはPseudo Random(疑似ランダム)を使っている。QD1T1は一般PCの使用感に、QD32T4はサーバー向けの性能に直結しやすい内容だ。
IRDM PROはQD32T4でもSerial ATA SSDとしてはよいスコアを出しているほか、QD1T1のスコアもよく、MLC搭載の上位製品らしい素性のよさを感じられる。CX300はQD32T4のリードで見劣りがあるが、QD1T1のスコアは悪くなく、製品の位置付けを考えれば気にすることはないと思われる。
5年、3年の保証や全数検査で安心
今回発売された2製品については、性能面などで特筆する部分はないが、スペックからイメージできるとおりの性能を発揮できていると言える。IRDM PROの5年、GOODRAM CX300は3年の保証期間は、日本でも同様に代理店によってサポートされる。全数検査体制の裏付けもあるため、信頼性に関しての不安は少ない。
ポーランドのブランドというのはPCパーツとしては新鮮だし、ビジュアル的にもその点が反映されている。自作PCに変化を付けたいユーザーにとってはおもしろい存在だろう。M.2製品など、これからの製品展開にも期待したい。
[制作協力:Wilk Elektronik]