特集、その他

SSD換装でゲーミングノートPCを大幅高速化、1TB SSDで大作ゲームも快適に

ノートPCでゲームなら断然SSD、速度が倍になる例も

 ゲーミングノートPCの多くのモデルは、コストを抑えるため、小容量SSD + HDD、あるいはHDDのみというストレージ構成の製品が主流だ。

 近年、PCゲームはグラフィックスの高品質化に伴い大容量化が著しく、ゲーミングノートPCに複数のゲームをインストールしておくためには、多くの場合HDDを利用せざるを得ない。2.5インチHDDは高速ではないため、ロード時間にかなりの時間を要することもあり、不満を持つユーザーもいるだろう。

 そこで、こうした問題を改善する手段として、今回のレビューでは内蔵HDDのSSD換装する方法を紹介する。実際の換装手順と、実ゲームでどれだけパフォーマンスが向上するのかをお届けしよう。

MSI製ゲーミングノートPC「GS40 6QE-024JP」をSSDにアップグレード

 今回、ストレージの交換に使用するゲーミングノートPCは、MSI製のゲーミングノートPC「GS40 6QE-024JP」。

 14インチサイズのコンパクトな筐体にSkylakeベースの4コア8スレッドCPU「Core i7-6700HQ」と、MaxwellベースのハイエンドGPU「GeForce GTX 970M」を搭載した「GS40 6QE PHANTOM」シリーズの一つだ。

 2015年末に発売された製品だが、CPUとGPUの持つ性能は今でも十分に通用する。だが、このモデルのストレージ構成は1TBのHDDのみであり、ストレージの性能面では本体の性能を発揮し切れているとは言えない。これをSSDへの換装で改善しようというのが今回の趣旨だ。

MSI GS40 6QE-024JP。14インチの小型筐体に高性能なCPUとGPUを搭載した高性能ゲーミングノートPC。
1TB HDDは、OSインストール用のCドライブと、データ用のDドライブにパーティションが分けられている。

 1TB HDDの交換先として用意したのは、6Gbps SATA対応SSD「Crucial MX500」の1TBモデル「CT1000MX500SSD1」。

 6Gbps SATA対応SSDとして最高クラスの性能を持っていることも選択理由の一つだが、Crucial MX500シリーズを購入したユーザーはデータ移行ソフトである「Acronis True Image for Crucial」を無料で利用できる点もポイントだ。

 Acronis True Image for Crucialは、OSがインストールされているシステムディスクの複製を作成可能なので、GS40 6QE-024JPのようにHDDしか搭載していないPCでも、OSの再インストールなどをすることなくSSDに換装できる。

Crucial CT1000MX500SSD1。1TBの容量を持つ2.5インチSSD。
Crucial MX500シリーズのユーザーは「Acronis True Image for Crucial」が無料で利用できる。

 SSD換装の手順を紹介する前に注意しておくべきなのが、SSDへの換装が「改造」扱いとして保証対象外となる場合が多いことだ。

 PCの保証規約はメーカーやモデルによって様々だが、メーカーの製品保証期間内にSSDへの換装を行ってしまうと、保証を失う可能性がある。このため、これから新品のゲーミングノートPCを購入する場合は、HDDをSSDにカスタムして購入する方が無難だろう。

 ただ、本製品のように保証期間が既に経過したものや、保証期間が終了しそうなケースであれば、あまり気にする必要は無いだろう。性能に不満を持って使うよりは換装して快適な環境を手に入れた方がベターだ。

 なお、MSIのゲーミングノートPCであれば、MSI認定サポート店がアップグレードサービスを受け付けているので、不安なユーザーはこちらを利用するのも良いだろう。代表的な例では、パソコンショップ アークPCワンズパソコンショップドームなどがサービスを受け付けている。

データ移行ソフトを使い簡単に移行、HDDからSSDへの換装手順

 それでは、SSDへの換装手順を確認していこう。

 今回はデータ移行ソフトのAcronis True Image for Crucialを用い、HDDの内容をSSDに丸ごとバックアップすることを前提として作業を行っていく。

 なお、データ移行ソフトで内蔵HDDからSSDにデータを移行するためには、一度SSDをUSBドライブとして外付け化する必要がある。このため、玄人志向の外付けドライブケース「GW2.5CR-U3」を用意した。

 性能をウリとしたモデルではないが、USB 3.0対応かつ1,000円以下で購入できるコストパフォーマンスの高さが魅力だ。SSDへの換装後は、取り外したHDDを外付けHDDとして運用する際にも利用できるので、ゲーミングノートPCユーザーなら持っていて損はしないだろう。

USB3.0対応の2.5インチドライブケース「玄人志向 GW2.5CR-U3」。1,000円以下で購入できる安価なUSB3.0対応ドライブケース。今回の用途には必要十分であり、取り外したHDDを入れて外付けHDDとしての利用も可能だ。

 今回のSSD換装手順では、まず外付けドライブケースにSSDを搭載し、これをゲーミングノートPCのUSBポートに接続する。これは、データ移行ソフトのAcronis True Image for Crucialの使用条件が「Crucial製のSSDが1台以上PCに接続されていること」となっているためだ。

外付けドライブケースにSSDを入れてPCのUSBポートに接続する。

 続いて、データ移行ソフトのAcronis True Image for CrucialのインストーラをCrucialのウェブサイトからダウンロードする。インストール完了後、使用許諾契約に同意すればソフトウェアが利用可能となる。

「Click here to start downloading the Acronis Software.」をクリックするとAcronis True Image for Crucialのインストーラがダウンロードできる。
インストーラのUIはシンプルなものであり、簡単にインストールを実行できる。
インストール完了後、起動時にCrucial製SSDがPCに接続されていないと、このような警告が表示されて起動できない。
使用許諾契約に同意すれば、Acronis True Image for Crucialが利用可能となる。

 Acronis True Image for Crucialを起動したら、ツールの「ディスクのクローン作成」を選択して実行する。クローン作成モードは「自動」と「手動」が選択できるが、今回のようにコピー元とコピー先が一台ずつしかない条件では、自動を選んで問題ない。

 今回はSSDの方がHDDより若干ながら記憶容量が大きかったため、コピー元のデータをそのまま複製する設定が適用された。これで「実行」をクリックすると、クローンの作成が開始される。

 HDDの内容を全てSSDに複製するクローンの作成には時間がかかる。試しにCドライブをデータで320GBほど埋めた状態で実行しみたが、クローン作製には約1時間ほどを要した。1TBがフルに使用されている場合は3時間程度が目安になるだろう。

 なお、CドライブがSSD、DドライブがHDDのゲーミングPCの場合は、Dドライブの内容のみを新しいSSDにコピーし、HDDから換装すれば良い。基本的な手順はHDDのみ搭載しているモデルと変わりは無い。

OSの入ったディスクの移行を行う場合、ツールから「ディスクのクローン作成」を選択する。
クローン作成モードの選択画面。コピー元とコピー先が1台ずつの場合、基本的には自動を選択しておけば問題ない。
自動を選択すると、しばらくソフト側で処理を実行したのち、クローン作成の概要確認画面が表示される。
クローンの作成には長時間を必要とする。今回も約1時間が必要だった。

 SSDへのクローン作成が完了したら、PCをシャットダウンして、物理的にHDDとSSDを換装する作業に入るのだが、Windows 10では「高速スタートアップ」が有効になっている場合、スタートメニューからのシャットダウンでは完全なシャットダウンにはならない。

 あらかじめ高速スタートアップを無効にしておくか、設定メニューの「回復」から「PCの起動をカスタマイズする」の「今すぐ再起動」を実行し、「オプションの選択」から「PCの電源を切る」を選択してシャットダウンしておくと良いだろう。

1 Windows 10では、「高速スタートアップ」は基本的に有効になっている。
2 「高速スタートアップを有効にする(推奨)」のチェックを外しておけば、スタートメニューからシャットダウンを実行するとPCの電源は完全にオフになる。
3 設定の回復メニューから「PCの起動をカスタマイズする」の項目で今すぐ再起動を選択すると、起動オプションが表示される。
4 項目から「PCの電源を切る」を選択すれば、PCの電源が完全にオフになる。

 PCの電源を落としたら電源ケーブルを本体から抜き、バッテリーを取り外してPCへの電力供給を完全に遮断する。分解を行う場合、基本的に電源遮断が最優先だが、今回のPCはバッテリー内蔵型であるため、背面パネル取り外し後にバッテリーを外している。

 電源遮断後、HDDを取り外し、同じ箇所にSSDを取り付ける。今回、もともと搭載されていたHDDは9.5mm厚の2.5インチHDDだったため、SSDにはCrucial MX500シリーズの付属品であるスペーサーを取り付けて搭載した。

 交換作業完了後、今回のPCではバッテリーとマザーボードを再接続して、背面カバーを取り付けて作業を完了した。電源を入れればPCはSSDに複製されたOSから起動する。

1 ACアダプタの電源ケーブルを抜いて、背面パネルを取り外す。
2 背面パネルを取り外したところ。左下に2.5インチHDDが見える。
3 GS40 6QE-024JPのバッテリーはケーブルでマザーボードに接続されているので、これを取り外す。
4 交換対象の2.5インチHDD。
5 HDDから取り外したディスクトレイに、スペーサーを取り付けたSSDを取り付ける。
6 HDDが収まっていたスペースにSSDを取り付けて交換完了。

 なお、CrucialではSSDの交換手順を動画と画像で紹介する「SSD簡単取り付けツール」や、PDF形式の「取り付けガイド」も公開している。

 手順を追って細かく解説してあるので、HDDからSSDへ換装を行う際などは参考にしてみると良いだろう。

2.5インチHDDからSSDへの換装は効果絶大、ゲームは当然OS動作も快適に

 さて、無事SSDへの換装を果たしたGS40 6QE-024JP。CrystalDiskMarkの実行結果では、特にランダムアクセスでHDDを圧倒し、PCの再起動を実行した際の時間も大幅に短縮されている。

 実際に操作していても操作へのレスポンスが改善していることを体感できるレベルであり、今回の目的であるゲームでのパフォーマンス改善以外の部分でもSSD換装の恩恵は大きい。

標準搭載HDDのCrystalDiskMark実行結果。
Crucial CT1000MX500SSD1のCrystalDiskMark実行結果。
ゲーミングノートPCの再起動に要した時間の比較

 SSD換装のゲームへの恩恵をチェックするべく、今回は「FINAL FANTASY XV」「Destiny 2」「Fallout 4」の3タイトルでロード時間の比較を行った。

 いずれも数十GBのインストール容量を必要とする重量級のゲームであり、こうしたゲームを複数インストールしようとすると、128GBや256GBのSSDでは容量が不足してしまう。最近の大作ゲームは50~100GBほど容量を必要とするものが多いので、1TBくらいの容量があると長期間の利用も安心だ。

テストに使用したゲーム
FINAL FANTASY XV
Destiny 2
Fallout 4
FINAL FANTASY XV。高解像度パックなしでのインストール容量は約83.2GB。
Destiny 2。インストール容量は比較的少ない41.9GB。
Fallout 4 (高解像度テクスチャパック適用)。インストール容量は約84.6GB。

 2.5インチHDDからSSDへ換装した効果だが、結果は一目瞭然であり、SSD換装後は1.5~2.2倍の速度でロードを完了している。特に2分近いロード時間を必要としたFINAL FANTASY XVのロード時間を1分弱にまで短縮したインパクトは大きい。

 データの読み込み量が大きい大作ゲームほど恩恵を受けやすいと言えるので、RPGなどを遊ぶユーザーは特に気にしてもらいたい部分だ。

ゲームのロード時間比較

ゲーミングノートPCの性能をフルに引き出すなら断然SSD

 ゲーミングノートPCにとってHDDからSSDへの換装は、ゲームのロード時間を大きく短縮し、快適性を大きく向上させるアップグレード手段だ。特に速度がそれほど高速ではない2.5インチHDDからの換装は効果が大きい。

 今回SSD換装を試したGS40 6QE-024JPのように、OSをインストールするシステムディスクもHDDでまかなっているゲーミングノートPCなら、PCとしての基本的な快適性も劇的に改善できる。

 最新のゲーミングノートPCの多くはシステム用に128~256GB程度のSSDを搭載しているので、1本程度ならゲームをインストールしても問題ないが、最近の大作ゲームや話題作をSSD側にインストールしたいとなると容量的に難しい。ゲームを複数遊ぶのであれば、データ用HDDをSSDに換装するメリットはかなり大きなものとなるだろう。

[制作協力:Crucial]