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Core i9&GeForce GTX 1080搭載のMSI「GT75 Titan」はゲーマーにとって夢のノートPCだった!

6コア12スレッドCPU採用の最強ゲーミングノートPCの実力を試す text by 加藤勝明

ノートPC用初の6コアCPUを採用した最強のゲーミングノートPCがこのMSI製「GT75 Titan」だ。4K液晶モデル(SSDの構成違いで2モデル)と、フルHD/120Hz G-SYNC液晶モデルの2ライン・3モデル構成で提供されているが、今回はよりゲーミングに特化している後者の構成でレビューする

 “デスクトップPC並みの性能”と評されるノートPCはこれまでも山のように出てきた。とくにノートPC用にも強力なGPUが提供されるようになってから、ゲーミング用途でもノートPCは大きく飛躍してきた。

 だが、最近のPCゲーム、とくに重量級の大作では、CPUでの処理に重きを置いたものが多い。AIやアニメーション処理など、その理由はさまざまだが、4コア8スレッドCPUでは窮屈になりつつあることは確かだ。

 この状況を一変させたのが4月頭にIntelが正式発表したノートPC向け“Core i9”シリーズ。Coffee LakeをベースにしたCPUだが6コア12スレッド、Turbo Boost(TB)時最大4.5GHz(定格2.9GHz)でありながらTDPはわずか45Wというスペックが武器だ。

 今回は、Core i9-8950HKとGeForce GTX 1080を組み合わせたハイエンドノートPCの第1弾として、MSIの「GT75 Titan GT75 8RG-009JP」を紹介しよう。17.3型フルHDながらもリフレッシュレート120Hz液晶や超高速NVMe SSDなど、CPU&GPU以外のスペックもガッチリと決まっている。実売価格は49万円前後と非常に高価だが、ノートPCで究極のゲーム体験がしたいゲーマーにとってはドリームマシンであることは間違いない。

「CPU-Z」で搭載CPUのスペックを拾ってみた。定格2.9GHzと抑え気味のスペックだが、スレッド数の少ない処理なら4GHz台で回る印象だ
「GPU-Z」で搭載GPUのスペックもチェック。後述するTurboモードであっても、とくにOCされている様子はない。発熱量はCPUより多そうなので(ヒートパイプの数より推測)、仕方ないところではある

濃厚なスペックは外観からでもにおい立つ

A4変形版の雑誌「DOS/V POWER REPORT」と大きさを比較してみた。GT75 Titanのフットプリントは雑誌の見開きサイズと同じ大きさだ。17.3型液晶搭載のデスクノートなので当然というべきか

 ではGT75 Titanの外観からチェックしていこう。

 超ハイスペックハードと17.3型液晶の組み合わせだけに本体サイズは雑誌の“見開きサイズ”とほぼ同等という巨大なもの。重さは約4.56kgと重いので、家庭やオフィス内で好きな所に据え置いて使うスタイルになるだろう。

天板はMSIのゲーミング製品ではおなじみのレッドドラゴンのエンブレムがあしらわれている。ヘアライン仕上げの天板は美しい
背面にはThunderbolt 3を筆頭に外部ディスプレイ出力が合計3系統、そして有線LANのポートを配置。ACアダプタをはじめ太いケーブル類は全部背面に集中するので、配線はスッキリさせやすい
左側面。本体後部の排気口からは動作時に熱風が吹き出すが、キーボードの上に手を載せている限り熱気の存在を感じることはない。手前側のアナログオーディオ入出力は金メッキ仕様
右側面。SDメモリーカードリーダーが配置されている
本体手前中央にはアクセスランプ類が配置されている

 本体が大きいだけにインターフェース類も豊富だ。本体両サイドにUSB 3.0を合計5基、背面には有線LANやHDMI出力なども備える。Thunderbolt 3やMini DisplayPort出力もあるのでマルチディスプレイ環境やVRシステムの構築もやりやすい。

 ハイエンドのハードウェアがこのサイズに収まっていると考えるだけでもテンションが上がってくるというものだ。

ハイスペックハードゆえにACアダプタもデカい。230W出力のACアダプタを2基並列に接続する。片方だけ通電しても動作はするが、CPUの動作モードが強制的に節電モードになるためトップスピードは大幅に下がる
ACアダプタはこのようなアダプタで本体と接続する。2基のACアダプタはコネクタ部分で接続されているため、片方だけ紛失するという心配はないのだ
内蔵バッテリの容量は5,225mAh。ゲームをしない状態で短時間移動するときに電源を確保できる程度の容量が確保されている

徹底した冷却システムにも注目

 では内部のチェックに入ろう。ノートPC用に発熱を抑えた構成といっても、ハイエンドのパーツ構成を採用しているので冷却をおろそかにはできない。合計9本のヒートパイプを駆使した冷却システムは圧巻だ。

底面は大部分がメッシュになっている。SSDの冷却などはこのメッシュ経由の外気に頼っているので、ふわっとした絨毯やソファーの上で運用するのは避けたほうがよいだろう
GT75 Titanの内部。ヒートシンクの集中している部分がCPUとGPUだが、写真左側の大きなほうがGTX 1080(MXMモジュールになっている)、右の小さなほうがCore i9-8950HKだ
ヒートパイプは本体両側と背面にある排気口付近に伸びる。そこからブロアーファンを使って熱を外に吹き飛ばす、という仕組だ

 また、SSDはNVMeのM.2モジュールが使われているがこれにも大型のヒートシンクが取り付けられている。本機は最大3本のM.2モジュールが搭載可能だが、全部装着しても熱問題で悩む必要はなさそうだ。

パームレスト下辺りにクレジットカードよりやや大きいサイズのヒートシンクが設置されている。ヒートパイプとは連結していないので外してみると……
そこにはNVMe接続のM.2モジュールが鎮座。この手のSSDは発熱で性能が大きく低下することがあるが、このヒートシンクのおかげで発熱を気にせず使うことができるだろう。このSSDとタッチパッドの間には7,200rpmのHDDが配置されている
「CrystalDiskInfo」でSSD(左)とHDD(右)の情報を拾ってみた。SSDの容量も512GBと十分な量があるので、最近の大作ゲームでも安心してインストールできるだろう

 メモリは標準でDDR4-2666の8GB SO-DIMMモジュールが2枚装着されているが、底面を開いただけではアクセスできない。増設用として空のメモリスロットが2基用意されているが、全4スロットを埋めてしまうとDDR4-2400動作となる点に注意が必要だ。とはいえ、内部にアクセスすると保証が切れてしまうので、自力での増設には覚悟が必要だ。

メモリは空のSO-DIMMスロットが2基残されているが、このスロットも埋める場合は、メモリのクロックはDDR4-2666からDDR4-2400に落ちる
無線LANモジュール。モジュールはIntel製「Wireless-AC 9260」であり、無線LAN機能はゲーマー向けとされる「Killer 1550」となっている。IEEE 802.11acの2x2通信のほか、Bluetooth 5に対応
本体が大きいだけあってサウンドまわりも贅沢。左右に1基ずつスピーカー(3W×2)を搭載しているほか、左手側にはウーファー(写真中奥のもの、5W)が配置されている

打鍵感のよいメカニカルキースイッチを採用

 GT75 Titanはキーボードにも大きな特徴がある。ノートPC用のキーボードと言えば、メンブレン式の接点とパンタグラフ機構の組み合わせにしたものが大多数だ。Cherry MXなどの普通のメカニカルキースイッチを搭載した製品(MSIなら「GT83VR」など)もあったが、本体の大型化は避けられない。メンブレンよりもメカニカルキースイッチの触感が好きという人は外部キーボードを接続する必要があった。

 だがこのGT75 Titanのキーボードは非常にめずらしいKalih製のLow Profileスイッチが採用されている。キースイッチの分類としてはCherry MX 青軸系、つまり“クリッキー”タイプ。荷重は50gfとやや重めだが、1.5mm押下で反応するので打鍵感は非常に良好だ。キー単位で仕込まれたRGB LEDの制御や、キーマクロ機能などは「SteelSeries Engine」を利用してカスタマイズすることもできる。

 ただクリッキータイプのスイッチなのでゲームに熱が入るとかなり騒々しい。実況プレイなどを考えているなら、別途静音タイプのキーボードが必要になるかもしれない。リニアタイプの軸も選べるとよかったのだが……。

大型ノートPCなのでテンキーありの5段構成。キーのそれぞれにRGB LEDが仕込まれており、通電時は鮮やかに発光する。パッドのボタンにも発光部がある点にも注目だ
キーマクロの設定やRGB LEDの発光制御はおなじみ「SteelSeries Engine」で行なう
キーボード右手にあるスイッチ群。上から2番目のLEDが点灯しているスイッチは、冷却ファンをフル回転させる“Cooler Boost”を発動させるためのもの
遠くからでは普通のノートPCとしか見えないが、キートップを外すとKalih Low Profileスイッチが顔をだす。ノートPCでの採用は非常にめずらしい
通常のメカニカルキースイッチ(左)とKalih Low Profileスイッチ(右)の比較。パンタグラフ式に比べるとまだ厚いが、キレのある打鍵感を堪能することができる
主要なキーのピッチは実測19mm(左)だが、テンキー部分は実測17mm程度に抑えられている
パームレストの高さは実測47mm程度とかなり厚い。パームレストに手首を預けてしまえば快適にタイプできるだろう

CPUのカンタンOC機能も用意

 本格的な性能検証に入る前に、OC関係の話もしておこう。搭載されているCore i9-8950HKの型番から分かるとおり、K付きなので倍率変更によるOCに対応している(チップセットはCM246だ)。

 BIOSで倍率を上げてOCすることもできるが、GT75 Titanではお手軽機能として“MSI Shift Technology”を採用している。Fn+F7キーを押すと性能が4段階に切り換わる。デフォルトは上から2番目の“Sport”だが、さらに性能を引き出したい場合は最上位の“Turbo”を選択することもできる。より静かに使いたいときは“Comfort”や“Eco”モードで運用するのがよいだろう

Fnを押しながらF7キーを押すと、CPUの動作モードが順次切り換わる
電源スイッチすぐ下のスイッチを押すと、GT75 Titanのシステムまわりの設定を行なう「Dragon Center」が起動する。この画面では各動作モード時に画面の発色やファンの回転数をカスタマイズすることができる
Dragon CenterではCPUやメモリなどの占有率などをチェックできる

 Turboモードは付属ユーティリティ「Dragon Center 2.0」で手動設定したOC値が適用される。参考までにMSIから提供されたSportとTurbo(全コア45倍、ファン速度アップ)設定時の「CINEBENCH R15」のスコアを掲載する。ノートPCでもOCの効果ははっきりと出るようだ。この後の筆者が実際に行った実ゲーム検証では、デフォルトの“Sport”モードで計測している。

「CINEBENCH R15」のスコア。ノートPCでマルチ1300オーバーは驚異的だが、CPUをOCしたTurbo設定時は1,400を大きく超える

 ちなみに、BIOSで倍率を50倍に設定することで5GHzでの起動も確認できたが、CINEBENCHで処理を始めてすぐに4GHz台へクロックが落ちてしまった。まだ調整すべき項目がありそうだが、残念ながら今回のスケジュールではそこまで追い込めなかった。

BIOS上でCPUの倍率を50に設定すれば、5GHzでの起動は確認できた。だが負荷をかけるとクロックが下がってしまう。まだ見落としている設定がありそうだ。もちろんOCは自己責任なので注意されたい

実ゲームでのパフォーマンスをチェック

 それでは実ゲームにおけるパフォーマンスをチェックしていきたい。

 まずは定番の「PLAYERUNKNONW'S BATTLEGROUNDS」で試す。本体の液晶にあわせ解像度はフルHD、画質は一番上の“ウルトラ”とした。Erangel(島マップ)の軍事基地付近に降下し、島中央部に向かって移動したときのフレームレートを「OCAT」で測定した。

PUBGのフレームレート。Min 1%とはフレームレートの下から1%の位置にある値。言い換えれば99%のフレームはMin 1%以上のフレームレートが出ている
測定時のフレームタイム推移。短いほどフレームレートが高いことを示す。横軸(左から右)は時間軸

 PUBGの特性からか、時折スパイクのようにフレームレートが下がることがあるが、屋外シーンではおおむね80fps台で安定している。もう少し画質を下げて120Hz液晶の特性をフル活用するよう調整するのもよいだろう。

T75 Titanの液晶のリフレッシュレートは120Hz固定。動きのあるゲームには最高の映像を提供してくれる
90fps前後に落ち込むこともあるが、軍事基地のど真ん中でも100fps前後で安定している。なお、フレームレート表示はMSI「Afterburner」を利用している

 続いては「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチを利用する。画質は一番上の“最高品質”だ。

FFXIVベンチのスコアは余裕の17,000ポイントオーバー
FFXIVベンチで一番キツい、F.A.T.E.のシーンでも60fpsで踏ん張ってくれる。それ以外はキャラの多いシーンでも100fps近くまで出せている

 同じFFでも超重量級である「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」のベンチマークも試してみた。画質は“高品質”とした。

FFXVベンチのスコア
シヴァを召喚するシーンでは60fpsを割り込むが、オブジェの少ないシーンでは80fps台となる

 だがFFXVのベンチはスタッターなどが頻発してベンチとしての有用性には疑問が残る。そこで現実のFFXVでのフレームレートも検証してみた。画質は“最高”に設定したが、フレームレートを著しく下げるHairWorksなどの設定はすべてOFFとした。ここでは車で一定のコースを移動したときのフレームレートを「OCAT」で測定した。

FFXV(実ゲーム)のフレームレート
上の結果を測定したときのフレームタイムの推移。所々で45fps以下に落ち込む所があるものの、おおむね安定している
HairWorksなど“NVIDIA”が頭に付く設定をすべてOFFにすれば、“最高”設定でもフレームレートは十分確保できる

 最後は「アサシン クリード オリジンズ」で検証した。画質は“最高”とし、ゲーム内のベンチマーク機能を用いて計測した。

「アサシン クリード オリジンズ」の結果。平均81fpsと十分高いフレームレートが得られた
混み合った街中のような場所では70fps台になることもあるが、砂漠のようなシーンでは100fpsを超えることもある

 最後にゲームではないが、ストレージの性能を「CrystalDiskMark」で計測してみた。

「CrystalDiskMark」でのストレージ性能。Samsung製のNVMe SSDを使っているだけあって、SSDの読み書き性能(左)は最高レベルと言える

熱や騒音はどうか?

 ここまでのベンチマークでGT75 TitanがデスクトップPCに比肩する性能を有していることは十分分かったが、ここまで性能が高いと熱が心配になる。爆熱のあまり連続運転ができない、ではゲーミングノートPC失格だ。

 そこでここでは「アサシン クリード オリジンズ」をプレイ状態で放置したときのシステムの状態を「HWiNFO64」で追跡してみた。室温は24℃である。まずゲームをTurbo&Cooler Boost OFFの状態で約30分放置し、その後Cooler Boostを有効にして約15分放置した。Cooler Boostがどの程度温度に影響するのかもチェックしてみよう。

CPUおよびGPU温度の推移
CPUクロック(物理コアのみ)とGPUクロックの推移

 アサシン クリード オリジンズのCPU占有率は高く、6コア12スレッドでもCPU全体で65%前後となっている。それだけにCPUの温度も相対的に高い。Turboモードであるせいもあるだろうが、ゲーム中は90℃台後半をフラフラしている。サーマルスロットリングも結構な頻度で発生しているが、それでもCPUのクロックは最低3.8GHz、大抵のシーンで4.1GHzで動作している。また、GTX 1080のクロックが熱でほとんどダレていない点はすごいと言えるだろう。

 また、Cooler Boostを有効にするとCPUの温度ではなくGPUの温度が10℃近く下がる点にも注目したい。CPUは下がらずにGPUだけが下がるのかは意図的なものかまではテストからははっきりしなかった。

 さらにファンノイズも計測してみた。騒音計はtesto「AR-815」を使用し、マイクの先端部分を本体正面、液晶ヒンジから40cm離した場所に設置して計測した。暗騒音は約34dBAである。高負荷時とは上の温度計測時、ゲーム開始から約25分時点で測定している。

GT75 Titanの動作音

 Cooler Boostを有効にするとファンが全力回転するのでノイズが出るのは当たり前だが、Cooler Boostを使わなくてもゲーム中はかなり騒騒しい。同じ部屋でドライヤーを使っているのと同じ程度のノイズになるので、ゲームプレイ時はヘッドホンの使用が欠かせないだろう。Nahimic 3を使ったサウンドシステムは本当に素晴らしいものだが、この騒音のおかげでそのよさが減じてしまっているのが残念だ。

サウンドのミドルウェアはMSIノートではおなじみの「Nahimic 3」を採用。ヴァーチャルサラウンド機能はかなり良好で、音の定位感はすさまじく高い。ただし、本体の騒音のせいでゲーム中にこれを味わうのは難しい
某社マザーのようにゲーム中に発生した音の方向を画面にオーバーレイ表示する機能もある。ただどのゲームでも効くわけではないので、主戦力にはならないだろう

やや取り扱いに難しい点もあるが、ゲームの性能はすさまじく高い

 価格の高さや本体の大きさの点で万人にオススメできるゲーミングノートPCではない、という点はひとまず脇に置いておくとして、性能という面では、Core i9-8950HKとGTX 1080の組み合わせの破壊力は圧倒的だ。このシステムならどんな重量級ゲームでも快適に遊べることは間違いない。また、6コアCPUのパワーを活かし映像編集に挑戦したい人にとっても魅力的なノートPCと言える。

CG作成用途に使いたい人のために「V-ray Benchmark v1.0.8」でもチェックしてみた。ノートPCとしてはかなり速い部類ではなかろうか

 だがこのGT75 Titan最大のネックはノイズの大きさだ。ファンノイズの大きさはもとより、クリッキータイプのキースイッチのおかげで、ゲームを遊んでいるときの音はかなり大きい。家族の隣で使う、あるいは壁の薄い集合住宅で使うのはそれなりの勇気(覚悟!?)がいるだろう。パワーの対価と言えばそれまでだが、さまざまな意味で使う人を選ぶノートPCと言える、夢のハイパワーゲーミングPCなのだ。

[制作協力:MSI]