特集、その他
Core i9&GeForce GTX 1080搭載のMSI「GT75 Titan」はゲーマーにとって夢のノートPCだった!
6コア12スレッドCPU採用の最強ゲーミングノートPCの実力を試す text by 加藤勝明
2018年4月17日 07:05
“デスクトップPC並みの性能”と評されるノートPCはこれまでも山のように出てきた。とくにノートPC用にも強力なGPUが提供されるようになってから、ゲーミング用途でもノートPCは大きく飛躍してきた。
だが、最近のPCゲーム、とくに重量級の大作では、CPUでの処理に重きを置いたものが多い。AIやアニメーション処理など、その理由はさまざまだが、4コア8スレッドCPUでは窮屈になりつつあることは確かだ。
この状況を一変させたのが4月頭にIntelが正式発表したノートPC向け“Core i9”シリーズ。Coffee LakeをベースにしたCPUだが6コア12スレッド、Turbo Boost(TB)時最大4.5GHz(定格2.9GHz)でありながらTDPはわずか45Wというスペックが武器だ。
今回は、Core i9-8950HKとGeForce GTX 1080を組み合わせたハイエンドノートPCの第1弾として、MSIの「GT75 Titan GT75 8RG-009JP」を紹介しよう。17.3型フルHDながらもリフレッシュレート120Hz液晶や超高速NVMe SSDなど、CPU&GPU以外のスペックもガッチリと決まっている。実売価格は49万円前後と非常に高価だが、ノートPCで究極のゲーム体験がしたいゲーマーにとってはドリームマシンであることは間違いない。
濃厚なスペックは外観からでもにおい立つ
ではGT75 Titanの外観からチェックしていこう。
超ハイスペックハードと17.3型液晶の組み合わせだけに本体サイズは雑誌の“見開きサイズ”とほぼ同等という巨大なもの。重さは約4.56kgと重いので、家庭やオフィス内で好きな所に据え置いて使うスタイルになるだろう。
本体が大きいだけにインターフェース類も豊富だ。本体両サイドにUSB 3.0を合計5基、背面には有線LANやHDMI出力なども備える。Thunderbolt 3やMini DisplayPort出力もあるのでマルチディスプレイ環境やVRシステムの構築もやりやすい。
ハイエンドのハードウェアがこのサイズに収まっていると考えるだけでもテンションが上がってくるというものだ。
徹底した冷却システムにも注目
では内部のチェックに入ろう。ノートPC用に発熱を抑えた構成といっても、ハイエンドのパーツ構成を採用しているので冷却をおろそかにはできない。合計9本のヒートパイプを駆使した冷却システムは圧巻だ。
また、SSDはNVMeのM.2モジュールが使われているがこれにも大型のヒートシンクが取り付けられている。本機は最大3本のM.2モジュールが搭載可能だが、全部装着しても熱問題で悩む必要はなさそうだ。
メモリは標準でDDR4-2666の8GB SO-DIMMモジュールが2枚装着されているが、底面を開いただけではアクセスできない。増設用として空のメモリスロットが2基用意されているが、全4スロットを埋めてしまうとDDR4-2400動作となる点に注意が必要だ。とはいえ、内部にアクセスすると保証が切れてしまうので、自力での増設には覚悟が必要だ。
打鍵感のよいメカニカルキースイッチを採用
GT75 Titanはキーボードにも大きな特徴がある。ノートPC用のキーボードと言えば、メンブレン式の接点とパンタグラフ機構の組み合わせにしたものが大多数だ。Cherry MXなどの普通のメカニカルキースイッチを搭載した製品(MSIなら「GT83VR」など)もあったが、本体の大型化は避けられない。メンブレンよりもメカニカルキースイッチの触感が好きという人は外部キーボードを接続する必要があった。
だがこのGT75 Titanのキーボードは非常にめずらしいKalih製のLow Profileスイッチが採用されている。キースイッチの分類としてはCherry MX 青軸系、つまり“クリッキー”タイプ。荷重は50gfとやや重めだが、1.5mm押下で反応するので打鍵感は非常に良好だ。キー単位で仕込まれたRGB LEDの制御や、キーマクロ機能などは「SteelSeries Engine」を利用してカスタマイズすることもできる。
ただクリッキータイプのスイッチなのでゲームに熱が入るとかなり騒々しい。実況プレイなどを考えているなら、別途静音タイプのキーボードが必要になるかもしれない。リニアタイプの軸も選べるとよかったのだが……。
CPUのカンタンOC機能も用意
本格的な性能検証に入る前に、OC関係の話もしておこう。搭載されているCore i9-8950HKの型番から分かるとおり、K付きなので倍率変更によるOCに対応している(チップセットはCM246だ)。
BIOSで倍率を上げてOCすることもできるが、GT75 Titanではお手軽機能として“MSI Shift Technology”を採用している。Fn+F7キーを押すと性能が4段階に切り換わる。デフォルトは上から2番目の“Sport”だが、さらに性能を引き出したい場合は最上位の“Turbo”を選択することもできる。より静かに使いたいときは“Comfort”や“Eco”モードで運用するのがよいだろう
Turboモードは付属ユーティリティ「Dragon Center 2.0」で手動設定したOC値が適用される。参考までにMSIから提供されたSportとTurbo(全コア45倍、ファン速度アップ)設定時の「CINEBENCH R15」のスコアを掲載する。ノートPCでもOCの効果ははっきりと出るようだ。この後の筆者が実際に行った実ゲーム検証では、デフォルトの“Sport”モードで計測している。
ちなみに、BIOSで倍率を50倍に設定することで5GHzでの起動も確認できたが、CINEBENCHで処理を始めてすぐに4GHz台へクロックが落ちてしまった。まだ調整すべき項目がありそうだが、残念ながら今回のスケジュールではそこまで追い込めなかった。
実ゲームでのパフォーマンスをチェック
それでは実ゲームにおけるパフォーマンスをチェックしていきたい。
まずは定番の「PLAYERUNKNONW'S BATTLEGROUNDS」で試す。本体の液晶にあわせ解像度はフルHD、画質は一番上の“ウルトラ”とした。Erangel(島マップ)の軍事基地付近に降下し、島中央部に向かって移動したときのフレームレートを「OCAT」で測定した。
PUBGの特性からか、時折スパイクのようにフレームレートが下がることがあるが、屋外シーンではおおむね80fps台で安定している。もう少し画質を下げて120Hz液晶の特性をフル活用するよう調整するのもよいだろう。
続いては「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター」公式ベンチを利用する。画質は一番上の“最高品質”だ。
同じFFでも超重量級である「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION」のベンチマークも試してみた。画質は“高品質”とした。
だがFFXVのベンチはスタッターなどが頻発してベンチとしての有用性には疑問が残る。そこで現実のFFXVでのフレームレートも検証してみた。画質は“最高”に設定したが、フレームレートを著しく下げるHairWorksなどの設定はすべてOFFとした。ここでは車で一定のコースを移動したときのフレームレートを「OCAT」で測定した。
最後は「アサシン クリード オリジンズ」で検証した。画質は“最高”とし、ゲーム内のベンチマーク機能を用いて計測した。
最後にゲームではないが、ストレージの性能を「CrystalDiskMark」で計測してみた。
熱や騒音はどうか?
ここまでのベンチマークでGT75 TitanがデスクトップPCに比肩する性能を有していることは十分分かったが、ここまで性能が高いと熱が心配になる。爆熱のあまり連続運転ができない、ではゲーミングノートPC失格だ。
そこでここでは「アサシン クリード オリジンズ」をプレイ状態で放置したときのシステムの状態を「HWiNFO64」で追跡してみた。室温は24℃である。まずゲームをTurbo&Cooler Boost OFFの状態で約30分放置し、その後Cooler Boostを有効にして約15分放置した。Cooler Boostがどの程度温度に影響するのかもチェックしてみよう。
アサシン クリード オリジンズのCPU占有率は高く、6コア12スレッドでもCPU全体で65%前後となっている。それだけにCPUの温度も相対的に高い。Turboモードであるせいもあるだろうが、ゲーム中は90℃台後半をフラフラしている。サーマルスロットリングも結構な頻度で発生しているが、それでもCPUのクロックは最低3.8GHz、大抵のシーンで4.1GHzで動作している。また、GTX 1080のクロックが熱でほとんどダレていない点はすごいと言えるだろう。
また、Cooler Boostを有効にするとCPUの温度ではなくGPUの温度が10℃近く下がる点にも注目したい。CPUは下がらずにGPUだけが下がるのかは意図的なものかまではテストからははっきりしなかった。
さらにファンノイズも計測してみた。騒音計はtesto「AR-815」を使用し、マイクの先端部分を本体正面、液晶ヒンジから40cm離した場所に設置して計測した。暗騒音は約34dBAである。高負荷時とは上の温度計測時、ゲーム開始から約25分時点で測定している。
Cooler Boostを有効にするとファンが全力回転するのでノイズが出るのは当たり前だが、Cooler Boostを使わなくてもゲーム中はかなり騒騒しい。同じ部屋でドライヤーを使っているのと同じ程度のノイズになるので、ゲームプレイ時はヘッドホンの使用が欠かせないだろう。Nahimic 3を使ったサウンドシステムは本当に素晴らしいものだが、この騒音のおかげでそのよさが減じてしまっているのが残念だ。
やや取り扱いに難しい点もあるが、ゲームの性能はすさまじく高い
価格の高さや本体の大きさの点で万人にオススメできるゲーミングノートPCではない、という点はひとまず脇に置いておくとして、性能という面では、Core i9-8950HKとGTX 1080の組み合わせの破壊力は圧倒的だ。このシステムならどんな重量級ゲームでも快適に遊べることは間違いない。また、6コアCPUのパワーを活かし映像編集に挑戦したい人にとっても魅力的なノートPCと言える。
だがこのGT75 Titan最大のネックはノイズの大きさだ。ファンノイズの大きさはもとより、クリッキータイプのキースイッチのおかげで、ゲームを遊んでいるときの音はかなり大きい。家族の隣で使う、あるいは壁の薄い集合住宅で使うのはそれなりの勇気(覚悟!?)がいるだろう。パワーの対価と言えばそれまでだが、さまざまな意味で使う人を選ぶノートPCと言える、夢のハイパワーゲーミングPCなのだ。
[制作協力:MSI]