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欧州No.1「GOODRAM」のハイエンドSSDを検証、3GB/sを狙うNVMe SSDの実力
実パフォーマンス重視の「MLC」モデル「SSD IRDM ULTIMATE」 text by 石川ひさよし
2018年8月24日 06:05
先日、SATA SSDの「GOODRAM CX300」を日本市場に投入したWilk Elektronikから、今度はPCI Exprssカード(HHHL)型のNVMe SSD「SSD IRDM ULTIMATE」が登場した。
2018年2月末に発表された製品で、同社のSSD製品では最新モデルとなる。欧州No.1を引っさげ日本市場に参入する同社のフラグシップのパフォーマンスはどれほどか、検証してみよう。
欧州No.1ブランドのハイエンドモデル、PCIeカード/M.2接続両対応
GOODRAMのSSDは、現在SATA接続モデルを中心にランナップしており、先日、日本市場にも投入されたGOODRAM CX300は、TLC NANDを採用し1TB(960GB)までの容量をラインナップするコストパフォーマンス重視のモデルとなっている。
一方、国内第2弾となるSSD IRDM ULTIMATEは、最上位モデルでパフォーマンスを重視した製品。ミドルレンジがまだ不在であるが、まずはこの2製品で日本市場での定着を狙う。
そのSSD IRDM ULTIMATEだが、ハイエンドだけあってパッケージも高級感が漂っている。HHHL型であるため、M.2カードのSSDよりも大きく、エントリークラスのビデオカードと同じくらいのサイズがあり、内部も緩衝材のスポンジをパーツ毎に切り抜き梱包されていた。付属品は、SSD本体と専用ヒートシンク、LowProfileブラケットだ。
写真のとおり、HHHL型ではあるが、M.2→PCI Exprss 3.0 x4変換カード上にM.2カードが装着された構成だ。つまり、拡張スロットに挿して使うこともでき、取り外せばM.2カードとして利用することもできる。マニュアルにもその旨が記載されており、2Wayタイプの製品として設計されている。
M.2カードとして利用したいユーザーにしてみれば、変換カードは要らないよと思うかもしれない。ただまあ、それほどコストがかかるものでもないし、一つ確保しておいても損はない。例えば、M.2 SSDからM.2 SSDへシステムドライブを移行したい時、すでにM.2スロットが埋まっていたとしても、拡張スロットに変換カードを挿せばシステムドライブのクローニングが行なえる。
それに、M.2スロットの多くはチップセット側のPCI Expressレーンを利用しているが、本製品をビデオカード用のPCI Express 3.0 x16スロットに挿して利用すればCPU直結のPCI Expressレーンで運用できる。実際のところレイテンシに大した違いはないと思われるが、より広い帯域で運用できるという気分はよい。
さて、SSD IRDM ULTIMATEには、120GB、240GB、480GBがラインナップされている。今回テストするのは最大容量の480GBモデル「IRU-SSDPR-P34A-480-80A」だ。
公開されているスペックを確認していこう。まず接続に関しては、繰り返し述べてきたがPCI Express 3.0 x4でNVMe対応。形状としてはHHHLが標準状態となり、M.2 2280としても利用できる。
転送速度は、480GBモデルでシーケンシャルリードが2.9GB/s、同ライトが2.2GB/s。NVMe最速とはいかないが、ハイエンドクラスであることは間違いないだろう。ランダム性能は、4Kのリードで235,000iops、ライトで270,000iopsだ。
コントローラチップは、Phisonの「PS5007」。2015年夏に発表されたPCI Express 3.0 x4、NVMe対応チップで、すでに3年が経過し、どちらかと言えば枯れて設計製造もこなれた製品だ。採用例も多いので、とくに不安はないだろう。
M.2カード上のNANDチップは4枚。コントローラチップのほかキャッシュメモリと見られるチップと、その裏には空きパターンも確認できる。両面実装になっているので、ノートPCなどには搭載できな場合もある点には注意したい。
NANDチップは最近のモデルとしては珍しくMLCタイプを採用している。昨今では高速なNVMe SSDでもTLCを採用する流れが出てきているが、本製品はどちらかと言えば慎重な姿勢に見える。NANDセルレベルで比べれば、TLCよりもMLCのほうが書き換え可能回数が多い。
ただし、そうした信頼性の面ではアドバンテージがあるものの、MLCはチップあたりの容量はTLCよりも小さい。このため、最大容量モデルが480GB止まりなのはMLCチップを採用する故の制約といえる。
●GOODRAMは日本市場参入に本気、「Japan IT Week 春」にも出展
Wilk Elektronikはポーランドに本拠地を置くメーカーだが、先日、東京ビックサイトで開催された最新IT技術・ソリューションの展示会「Japan IT Week 春」にもブースを出展していた。
GOODRAMブランドのSSDで日本市場へ参入した同社。3月に行ったインタビューでも語られたが、現在、日本市場でのブランド定着化に力を入れており、今回の出展もその活動の一環となる。
日本での手応えを同社のBartosz Górecki氏に聞いてみたところ、「日本市場での反響はとても良いですね。品質の高さ、競争力のある価格、そして日本ではヨーロッパ製が珍しいということもあり、好意的に受け入れられています。」という。
また、今後の展開としては、「メモリーカードやDDR4メモリなども反響を見て投入を検討したいですね。」(同氏)とのことだ。
実測値はシーケンシャルリード2.9GB/s・2.2GB/s、ベンチマークで速度を計測
使い勝手なども重要だが、ハイエンドSSDとして肝心なのはパフォーマンス。ここからはベンチマークを用いてIRDM ULTIMATEが「買い」なのかどうか調べていきたい。
検証環境については、Core i7-8700KとIntel Z370チップセット搭載マザーボードを用い、最初はHHHLカードのまま、マザーボード上のビデオカード用PCI Express 3.0 x16スロットに挿して、理論上最大パフォーマンスとなる環境で検証を行なった。
まずはCrystalDiskMark 6.0.0のテストサイズ1GiB時の結果から見ていこう。
シーケンシャルリードは2.75GB/s、同ライトは1.47GB/sといったあたりになった。公称スペックよりもやや低いデータが出ているが、これはPhison PS5007コントローラの特徴である。データ圧縮の効く0Fillでテストをしてみると、今度はシーケンシャルリードが2.90GB/s、同ライトが2.29GB/sとなった。こちらは公称スペックどおりである。
4Kのテストはかなり特徴的で、まず全体ではQ32T1やQ1T1の(0Fill時の)リードがとくに速い。このあたり、実用速度で速いSSDであると言えるかもしれない。
また、ここもランダムデータと0Fillデータで速度差が出た。4KiB Q8T8については0Fillデータの方がよいスコアで、その場合でリードが1.28GB/s、ライトが1.28GB/s。4KiB Q32T1については、リードはランダムデータの方がスコアがよく754.4MB/s、ライトは0Fillデータの方がよく652.3MB/s。4KiB Q1T1については、リードが0Fillデータの方がよく146.3MB/s、ライトはどちらもほぼ同じで132MB/sである。実際のところはこの間の圧縮率になると思われるので、ここで提示したスコアはベストスコアという意味合いになる。
Phison PS5007コントローラがデータ圧縮の効くということで、AS SSD BenchmarkのCompression-Benchmarkのグラフも見ておきたい。
下のグラフを見れば一目瞭然で、赤いライトのグラフは右肩上がりを示している。また、リードの緑のグラフも、最大と最小でやや大きな、250MB/s程度の差が出ている。データ圧縮は、とくにライト時に顕著であるが、リード時にも効いていることが分かる。
AS SSD Benchmarkは、コピーコマンドの特性でたとえシーケンシャルでもスペック通りのパフォーマンスが得られないが、アクセスタイムが測れるのでこれも結果を紹介しておこう。結果は、リードが0.031ms、ライトが0.034msだった。ここも悪くない結果と言えるだろう。ただ、速い製品では0.02ms台のものもあるので、最速には及ばない。
ATTO Disk Benchmarkにおける転送サイズ512B~64MBまでの結果も見てみよう。
こちらはデータ圧縮機能の影響か、テスト毎に結果が変わってしまい落ち着かなかったので、2つご紹介しよう。良い方の結果は、12~24MBのリードでやや落ち込みが見られたが、256KB以降、概ねリード3GB/s前後、ライト2.3GB/s前後で推移していた。
一方、バタついたほうのデータは、48MB時のリードが1.3GB/sまでガクッと落ちた。落ちたといっても1.3GB/sだから十分に速いのだが、このように扱うデータによって性能にバラつきが出るフシがあることは気に留めておきたい。
最後に、実アプリケーションの性能として、PCMark 8のStorage Testの結果を見てみたい。スコアは5084ポイントで十分に高かった。転送速度も566.84MB/sと、実効速度としてはまずまず速い。最新SSDだけはあるだろう。
ヒートシンクがあれば動作温度の心配は無し、エアフローがあれば高負荷時でも60℃以下に
動作温度も見ておこう。HWiNFO64によるログデータをグラフ化すると、SSD上の温度センサーの値は下のようになった。
HHHLのままSSD上にはヒートシンクを装着せず基板に直接ファンの風を当てた場合は60℃以下で推移しており安心だ。
HHHLでヒートシンクなしかつファンなしの場合は、今回の計測中では2番目に温度が高めで推移しているが、70℃には達していなかった。ただし、FLIR Oneを用いてみたところ、表面温度では80℃を超えていた可能性はあるようだ。センサー、FLIR双方の精度がどのくらいかは計りかねるが、ヒートシンクなしファンなしというまったくの無防備はあまり推奨できない。
ではヒートシンクを装着した状態となるとどうなるか。全体的に見ればヒートシンクなしの時よりも温度を低く維持できているようだ。ファンなしのためじんわり放熱されるようで、部分的にはヒートシンクなしの時よりも上昇したところもあるが、効果は確実なのでスペースに余裕があれば装着することを推奨したい。
M.2カードとして利用した際だが、ヒートシンクを装着した場合はHHHL時のヒートシンクあり状態よりも低い温度で推移している印象だ。装着したM.2スロットがCPUソケットの下隣で、使用したトップフロー型GPUクーラーのエアフローによって冷却できているように見える。
なお、M.2でヒートシンクなしの状態の温度は計測中もっとも高かった。80℃には達していないが、70℃台に足を突っ込む時間は多い。なお、今回テストに使用したマザーボードはM.2スロットの周囲にコンデンサなどがあるため、エアフローがやや遮られる格好といえる状態だった。M.2スロット周辺のデザインはマザーボード毎に異なるので、各自で試していただきたい。
基本的に風さえ当たれば本製品のヒートシンクはしっかりと冷却効果が現れているので、使用時はエアフローを意識したい。
温度計測中の転送速度の推移も合わせて見ておこう。転送速度(リード/ライト)の数値を見る限りは極端に落ち込むようなことはなく、サーマルスロットリングが生じている印象はなかった。
それでも冷却を怠ってはならない。SSDは半導体からできており、半導体の寿命が周辺温度に大きく左右されることを考えれば、転送速度に問題がなくても十分に冷却してあげることが、長期安定のポイントだ。
実用域での性能に加えて高耐久なMLC、こだわるユーザーにオススメのシステム用SSD
Wilk ElektronikのGOODRAMは、これまで国内でほとんど流通していなかったので、多くの方が初めて耳にするメーカー・ブランドとなるだろう。とはいえ、欧州No.1ブランドをうたうだけあって、品質としてはしっかりしているようで、今回試したハイエンドのIRDM ULTIMATEでは、そうした点を実感することができた。
IRDM ULTIMATEは、Phison PS5007コントローラのデータ圧縮率でパフォーマンスが変化するというところに気を留める必要はあるものの、高パフォーマンスであることには間違いない。
シーケンシャルリードが3GB/sを超えるといったような派手さは無いものの、実測値は3GB/s目前まで出ており、ライトも2.2GB/sと高速なうえ、4Kランダムリード/ライトのパフォーマンスがとくによい。
書き込み耐性が高いMLCチップを採用していることと合わせて、実用性重視で玄人好みなNVMe SSDと言えるだろう。
[制作協力:Wilk Elektronik]