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最新SSDの効果はどう出る?Sandy Bridge世代のPCと最新鋭PCで速度を比較してみた

Windows 7時代のPCから乗り換えるとOfficeもゲームも快適に text by 坂本はじめ

 不揮発性メモリを記憶媒体に用いるSSDは、近年で最も大きな進化を遂げたPCパーツのひとつだ。コントローラや通信プロトコルの進化によって性能が飛躍的に向上し、メモリセルの多値化や3D NAND技術が大容量化と低価格化も大きく進んでいる。

 今回は、ストレージの効果に注目し、現在の高性能SSDを搭載した最新のWindows 10 PCに乗り換えることでどれだけ快適になるのかを、Sandy Bridge世代のPCと比較しながら確かめてみた。

SATAからNVMeに移行しつつあるSSD、速度は3GB/sオーバー、容量は1TBモデルが標準に

Sandy Bridge世代で人気を集めたCrucialのC300(左)。右は現在のSSDだが、速度や容量、用途など目的に合わせ様々な方向にSSDは進化している。なお、NVMe SSDを制約なく使用するならWindows 10環境が必要だ。

 SSDは不揮発性メモリを記憶媒体に使用するストレージデバイスであり、HDDを大きく上回る性能を武器に普及してきた。

 SSDの性能向上は現在でも続いており、コントローラ性能の向上やSSD向け通信プロトコルのNVMeの普及により、最高速度が3GB/sを超えるモデルも増えつつある。

 また、SSD黎明期には、HDDに比べ著しく高い容量単価と少なすぎる記憶容量がSSDの弱点だったが、積層構造の3D NANDフラッシュが実用化されたことで大容量化が進み、メモリセルの多値化技術により低コストかつ大容量を実現するTLC(3bit)/QLC(4bit) NANDフラッシュ搭載モデルも登場している。

 Sandy Bridge世代のSSDと比較すると、NVMe採用によるインターフェイスの大幅な高速化、TLCやQLC、3D NANDの実用化による大容量化と低価格化といったあたりが大きな変化ポイントといえる。

PCIe 3.0 x4接続のNVMe SSD「Intel SSD 760p」。低容量の256GBモデルでもリード性能は3GB/sを超え、ライト性能も1GB/s以上に達している。
3D TLC NANDを採用する6Gbps SATA対応SSD「Crucial MX500」。1TBモデルの実売価格は1.8万円前後で、テラバイトクラスのSSDも入手しやすくなった。
メモリセルへの4bit記録を実現した「QLC」の3D NANDを採用するCrucial P1 SSD。QLC NAND採用モデルはMLC NANDやTLC NAND採用モデルよりも安価に投入されている。
次世代メモリ3D XPointを採用する「Intel Optane SSD 900P」の280GBモデル。実売価格は4.7万円前後と高価だが、ランダムアクセス性能は既存のNANDフラッシュメモリ採用SSDを圧倒する。

 また、エンタープライズ的な用途やハイエンド向けでは、Intelから不揮発性メモリ「3D XPoint」を採用したSSDも市場に投入されている。

 既存のNANDフラッシュメモリを大きく上回る書き換え寿命とランダムアクセス性能を持つとされる3D XPointメモリ。Intelは3D XPointを採用したSSD製品に「Optane」ブランドを与えて製品化しており、一般ユーザー向けにも「Optane SSD 800P」や「Optane SSD 900P/905P」が投入されている。Sandy Bridgeの時代と比べると、用途に合わせ様々なモデルから好みのモデルを選べるようになっている。

 なお、NVMe SSDを旧型のPCで使用する場合、チップセットの世代によってはブートドライブに使用できなかったり、性能が引き出しきれない場合が多々ある。また、OSもNVMe SSDをネイティブでサポートするWindows 10でなければ使用できなかったり、性能が出ない場合もある。最新SSDを使用するなら最新環境のPC/OSを使用した方が良いだろう。

Intel Optane SSD搭載の最新鋭PCの実力をSandy Bridge世代のPCと比較

 かつて一世を風靡したSandy Bridgeが発売された2011年当時、SSDはインターフェイスが3Gbps SATAから6Gbps SATAへと移行する過渡期であり、初の6Gbps SATA対応SSDとして登場した「Crucial RealSSD C300」が人気を博していた。

 今回はそのCrucial RealSSD C300を搭載したSandy Bridge世代のPCと、3D XPointを採用するSSD「Optane SSD 900P」を搭載した最新鋭PCを用意。新旧PCでの比較というかたちにはなるが、約8年の間にSSDがどれだけ進化しているのかの参考にしてもらいたい。

2010年に発売された6Gbps SATA対応SSD「Crucial RealSSD C300」。初の6Gbps SATA対応SSDとして人気を博した。用意したのは128GBモデル。
初の6Gbps SATA対応SSDということで、「3Gbps SATAの限界を超える」300MB/sを超えるリード性能を実現。
現行SSDとして今回使用した3D XPoint採用の「Intel Optane SSD 900P」の280GBモデル。
ベンチマークスコアの中でも、4KiB Q1T1のリード性能が抜きんでて高い。この特性がOSやゲームのインストール用ディスクに使用した際の高いパフォーマンスにつながっている。

 Optane SSDを搭載するPCには、CPUにCore i9-9900K、GPUにGeForce RTX 2080という最新パーツを使用。OSにもWindows 10の最新バージョンである「October 2018 Update (ver1809)」を採用しており、まさに最新鋭のPCといった構成だ。

 一方、Sandy Bridge世代のPCには、大ヒットCPUとして名高いCore i7-2600Kと、当時のハイエンドGPUのひとつGeForce GTX 480を搭載。OSにはWindows 7 SP1(2011年時点でのバージョン)をインストールした。Sandy Bridgeが登場した2011年初頭のPCとしてはかなりハイパフォーマンスな構成だ。

最新鋭PC
Sandy Bridge世代PC

最新SSD + Windows 10環境は起動が爆速、最高で半分以下に短縮

 まずはOSの起動時間から見てみよう。Windows 7環境とWindows 10環境での比較になるので、最新SSD + 最新PC/OS環境の性能がどの程度のものなのかといった視点で見てもらいたい。

 電源を投入してからOSが立ち上がるまでの起動時間だが、ストレージ性能の差が現れやすい場面の一つだ。PCをシャットダウンした状態からWindowsのデスクトップが表示されるまでの時間を比較した結果が以下のグラフだ。

 Sandy Bridge世代のPCが起動完了までに28.63秒を要したのに対し、最新鋭PCの起動時間は17秒以上早い11.43秒を記録。半分以下の時間で起動を完了した。

 Optane SSDが持つ実力が発揮されたことはもちろん、CPU性能の差や、Windows 10の「高速スタートアップ」、Secure BootやFast BootといったUEFIのブート関連機能の効果も大きい。

 続いて、Windows上で再起動を開始した瞬間から、再起動が完了してデスクトップが表示されるまでの時間を比較した。

 最新鋭PCの再起動時間は22.20秒で、Sandy Bridge世代のPCが記録した31.52秒より9秒以上早く再起動を完了している。

 Windows 10の「高速スタートアップ」が再起動では機能しないこともあって、シャットダウン状態からの起動よりも差は縮んでいるが、それでも9秒以上の差をつけられていることから、ストレージの実力差が少なからず反映されていることが伺える。

デスクワークも快適になる最新SSD環境、Office 365の起動時間を比較

 続いては、オフィススイート「Microsoft Office 365」の中から、特にポピュラーなツールである「Excel」「Word」「PowerPoint」の起動時間を比較してみた。

 アプリケーションの起動は、ランダムリード性能が高く低レイテンシを特徴とする3D XPointが得意とするシーンである一方、最新鋭PCにはディスクアクセス性能の低下を伴うCPUの脆弱性(Meltdown・Spectre)対策によって、ランダムリード性能が大きく低下している。

 これに対して、今回用意したSandy Bridge世代のPCは、脆弱性対策が不完全であるが故にディスクアクセス性能の低下は少ない。この脆弱性対策の有無がどの程度影響するのか、影響を受けたとしても最新SSDが高速なのかといったあたりにも注目してもらいたい。

Excel
Word
PowerPoint

 表計算ソフト「Excel」の起動時間を比較した結果では、最新鋭PCの起動時間は1秒を切る0.97秒で、1.5秒だったSandy Bridge世代のPCより約55%秒高速だった。

 文書作成ソフト「Word」の起動時間を比較した結果では、最新鋭PCが1.03秒、Sandy Bridge世代PCが1.37秒を記録。最新鋭PCの方が約33%高速という結果だ。

 プレゼンテーションソフト「PowerPoint」の起動時間比較では、0.70秒を記録した最新鋭PCが、1.12秒だったSandy Bridge世代PCを約60%上回った。

 脆弱性対策によるランダムリード性能の低下を危惧していたが、結果としてはOptane SSDと最新鋭PCの実力は不利を跳ね返し、Sandy Bridge世代のPCを3~6割も上回って見せた。

 アプリケーションの起動時間のような短時間のロードは、PCを使っていると様々な場面で発生しており、操作に対するレスポンスの良し悪しとして体感しやすい。実際に使ってみれば、数字以上に大きな差として感じることができるだろう。

着実にゲームも高速化する最新SSD、「DARK SOULS III」でゲームのロード時間を比較

 シーケンシャルリードとランダムリードのどちらも高速なSSDは、大小様々なデータを読み出す必要があるゲーム中のロードを短縮するのに適している。

 今回はアクションRPGの「DARK SOULS III」にて、タイトル画面からセーブデータをロードする「コンティニュー」と、ファストトラベル機能である篝火の「転送」を利用した際に発生するロード時間を比較してみた。なお、実行時のグラフィック設定は、画面解像度をフルHD(1,920×1,080ドット)、描画品質を「最高」に設定している。

 結果の方は、「コンティニュー」では最新世代PCが7.43秒を記録し、Sandy Bridge世代PCの10.50秒より約41%高速にロードを完了。「転送」でもSandy Bridge世代PCの13.55秒より3秒以上早い10.42秒を記録している。

 CPUやGPUの性能差も影響した結果ではあるが、最大2.5GB/s以上のシーケンシャルリード性能と、高いランダムリード性能を併せ持つOptane SSDの特性が最大限に発揮された結果でもある。

高性能SSDを搭載した最新鋭PCは日常的な操作も快適

 今回はWindowsやアプリの起動時間といった、日常的なPC操作で遭遇する機会の多いロード時間を中心に新旧PCの比較を行った。

 こうしたテスト内容でSandy Bridge世代のPCを確実に上回る最新鋭PCは、操作に対する応答性に優れた快適なPCであることを示している。Officeなど事務系の作業でも快適性を向上させるという部分も注目すべきポイントだといえる。最新鋭のPCは、クリエイティブなことやゲーム以外の用途でも快適さを向上させるという点は知っておいてもらいたい。

 PCのレスポンスを高めてくれる最新のSSDだが、今回テストしたSandy Bridge世代PCのような古いPCでは、大半のNVMe SSDが起動ディスクに設定できなかったり、PCIeバスの世代差によりフル性能を発揮できないなど、制約が発生する。

 大容量で安価なSSDや、次世代メモリを採用した超高性能SSDが登場してきた今こそ、新しいSSDの性能をいかせる環境に乗り換える好機と考えてみてはいかがだろう。