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4K/HDR液晶を使うならWindows 10、Sandy Bridgeの時には難しかった高解像度環境が身近に

スケーリング機能の進化でより扱いやすく、HDR対応のゲームも増加 text by 坂本はじめ

 近年、自作PC向けディスプレイの接続インターフェイスと表示性能が大きな進化を遂げており、これによってPCゲームのグラフィック表現もより一層の高品質化が可能だ。

 今回は最新ディスプレイのトレンドとなっている「4K」や「HDR」と、これを支えるPCパーツとOSの進化についても確認してみよう。

 Sandy Bridge時代には「4K」環境は一般的では無く、「HDR」などは対応機器自体が無い状態だったが、これらを正式サポートするWindows 10の普及で、現在では身近なものとなっている。

フルHD×4面分の「4K」、高精細かつ多くの情報量を表示可能に

 ディスプレイにおける「4K」とは、横方向の画素数が約4千個のディスプレイを指す言葉であり、PC向けディスプレイでは画面解像度が「3,840×2,160ドット」の製品を4Kディスプレイと呼んでいる。

4Kディスプレイの表示領域はフルHDの4画面分に相当。表示可能な情報量も4倍となる。

 4Kディスプレイの画面解像度は、広く普及している画面解像度1,920×1,080ドットのフルHDディスプレイ4面分に相当する。PC用ディスプレイとして使用すれば、広大な表示領域に驚異的な情報量を表示可能であり、フルHDをはるかに凌ぐ高精細な映像表現が可能だ。

フルHD(左)と4Kで表示できる情報量の違い。

 現在、4K対応の液晶ディスプレイは安価なモデルであれば3万円台から入手可能だ。Sandy Bridgeの時代には店頭で見かける事は無く、一般ユーザーが入手することは難しかったが、時代も変わり身近な物となっている。

Windows 10なら柔軟性の高いスケーリング機能によって高精細と可読性の両立が可能

 高解像度な4Kディスプレイは広大な表示領域を実現する一方、同じインチサイズの液晶で比べた場合、同じ情報の表示面積は4分の1になるため、そのままでは文字などが非常に小さく表示される。

 もちろん、可読可能であれば情報をより多く表示できるのでそのまま使用するのが良いが、ディスプレイのインチサイズによっては文字の視認がかなり困難なレベルになることもある。

 これに対応するため、Windows 10では表示スケールの調整機能が強化されている。これは設定されたスケーリングサイズに応じて画面を拡大描画する機能で、表示領域は狭くなるもののテキストの可読性を改善される。スケーリングで描画に不具合の生じるアプリへの対策として、個別にスケーリングを無効にする機能も備えている。

 4Kディスプレイを使うのであれば、柔軟性の高いスケーリング機能で可読性と高精細の両立を目指せるWindows 10を利用したい。

ディスプレイ設定の「拡大縮小とレイアウト」で表示スケールを変更できる。
表示スケールの詳細設定では、アプリ表示の修正処理や、カスタムスケーリングの設定が可能。
アプリケーションのプロパティにて「互換性」タブから「高DPI設定の変更にアクセス」できる。ここでは、表示スケールの設定を適用するか否かの設定を行うことができる。

輝度の諧調表現を拡張、より自然に明暗を詳細に描き分ける「HDR」

 HDRとはハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range)の略称だ。ディスプレイにおけるHDRは、従来のSDR(Standard Dynamic Range)よりも輝度の階調表現を拡張する規格であり、HDR10やDisplayHDRといった規格に準拠した製品が販売されている。

HDR対応ディスプレイを接続していれば「Windows HD Color 設定」で「HDRのゲームとアプリを使用する」をオンにできる。

 従来のSDRで表現できる輝度の範囲は、人間の目が感じ取れる明暗の差よりもはるかに狭い。このため、画面内に明暗の差が大きい場所があると白とびや黒つぶれが生じていた。HDRでは、最新鋭ディスプレイの表示能力を最大限に利用して、より人間の知覚に近い明暗の表現を行う。

 WindowsではWindows 10 Creators Update以降でHDRのサポートが開始されており、対応ディスプレイと適切なインターフェイスで接続することでHDRが利用可能だ。

HDR無効時。色空間が「標準ダイナミックレンジ (SDR)」と表記されている。
HDR有効時。色空間の表記が「ハイダイナミックレンジ (HDR)」に変わっている。

ゲームは身近なHDRコンテンツ、最新ゲームの多くがHDRをサポート

 HDRが真価を発揮するには、HDRに対応したディスプレイだけでなく「HDRコンテンツ」が必要だ。そして自作PCユーザーにとって最も身近なHDRコンテンツのひとつがゲームだ。

 「Forza Horizon 4」「バトルフィールド V」「アサシン クリード オデッセイ」「シャドウ オブ ザ トゥームレイダー」「モンスターハンター:ワールド」「FINALFANTASY XV」など、2018年に発売された名だたるビッグタイトルの多くがHDRに対応している。PCゲーマーにとって、HDRは既に身近な技術となっているのである。

Forza Horizon 4
バトルフィールド V
アサシン クリード オデッセイ
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー
モンスターハンター:ワールド
FINALFANTASY XV

進化したディスプレイをフル活用するには最新の画面出力端子が必要

 圧倒的な高解像度で高精細な映像表現を実現する「4K」と、明暗の表現をより自然なものに拡張する「HDR」。これらをPCで活用するには、最新の画面出力端子と優れた性能を持ったビデオカードが必要だ。

 一般的なRGB形式の出力で4K解像度かつ60Hzでの画面出力が可能になったのはDisplayPort 1.2とHDMI 2.0の登場以降で、それ以前の画面出力端子では最大リフレッシュレートが30Hzに制限されたり、そもそも4K解像度での出力が不可能であった。本連載で最新鋭PCの比較機材として使ってきたSandy Bridge世代PCのGeForce GTX 480も4K出力が不可能なビデオカードだ。

GeForce GTX 480の画面出力端子。2系統のDual-Link DVIとミニHDMIそ備えている。最大解像度は2,560×1,600ドット
ミニHDMIで4Kディスプレイに接続した際、選択可能な最大画面解像度は2,048×1,152ドットだった。

 HDRに関しては、正式にサポートされたのがDisplayPort 1.4、HDMI 2.0a以降であり、4K/HDR表示を行うにはこれらの画面出力端子を備えている必要がある。

 こうした4KとHDRの要件を満たせるのが最新鋭のビデオカードだ。本連載で最新鋭PCの搭載GPUとして利用してきたGeForce RTX 2080の画面出力端子はDisplayPort 1.4とHDMI 2.0bに準拠しており、4KとHDRの両方を問題なく利用できる。

ZOTAC GAMING GeForce RTX 2080 AMPの画面出力端子。3系統のDisplayPort 1.4とHDMI 2.0bを備えており、いずれも4K HDR出力に対応する。
最新ビデオカードはDisplayPort 1.4 / HDMI 2.0bポートともに4K解像度の3,840×2,160ドットが選択可能。

「4K/HDR」でのゲーミングを可能とする最新鋭PCの実力

 4KとHDRに対応したディスプレイが普及しはじめたことで、数々のゲームが4KとHDRのサポートを開始している。

 ゲームを「4K/HDR」で描画することで得られる精緻で美しいグラフィック表現は、ゲーム体験をより良いものに押し上げてくれるものではあるのだが、フルHDの4倍の高解像度でゲーム画面をレンダリングする負荷は極めて大きい。

 4K/HDRに対応していても、快適に動作しないのでは意味が無い。そこで、以下に記載したスペックの最新鋭PCを用意し、4K/HDR環境でゲームがどの程度楽しめるのか性能を計測してみた。使用したソフトは2018年10月に発売された4K/HDR対応ゲーム「Forza Horizon 4」だ。

Forza Horizon 4
GeForce RTX 2080とCore i9-9900Kを組み合わせた最新鋭PC。

 画面解像度を4Kである3,840×2,160ドット、描画品質プリセットを最高の「ウルトラ」、さらにHDRを有効に設定した状態で実行したベンチマークの結果が以下のスクリーンショットだ。

 ベンチマーク中の平均フレームレートは73.8fps。最小フレームレートも70fpsを超えており、GeForce RTX 2080とCore i9-9900Kを組み合わせた最新鋭PCは、Forza Horizon 4を4K/HDRで存分に楽しめる実力を備えていると言って良いだろう。

現在の最新鋭PCであれば、4K/HDR画質のゲームも存分に遊べるスペックがある。

高精細かつハイダイナミックレンジな映像表現でより良いゲーム体験を楽しもう

 GeForce RTX 2080クラスのGPUを搭載したWindows 10 PCであれば、ゲームにおいて4Kの高精細さとHDRによる明暗表現を同時に楽しめる。4K/HDRでプレイするゲームは、PCとディスプレイ双方の進化を実感できるハイクオリティなゲーム体験だ。

 よりよいグラフィックでゲームを楽しみたいと望んでPCを新調するのであれば、ぜひとも4K/HDR対応ディスプレイの購入も検討したい。