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4K有機ELとGeForce RTX 2070の強烈ノート「GIGABYTE AERO 15 OLED」に動画編集のプロも驚いた!

~旧型MacBook Proからの乗り換え候補にも~ text by 鈴木雅暢&DOS/V POWER REPORT編集部

プロでもアマでもクリエイティブアプリを使う時代
とがった仕様のWindowsノートで攻めろ

GIGABYTEのAERO 15 OLEDは、スリムなボディに15.6型の4K有機ELディスプレイとハイスペックを搭載したクリエイター向けの薄型ハイパフォーマンスノートPCだ

 クリエイティブ用途でのPCの活用が広がりを見せている。とくに動画、写真編集での利用はSNSやゲーム実況の普及に伴って、プロクリエイターではない一般層でもニーズが高まりつつある。とはいえ、動画編集や写真のRAW現像はPCで行なう処理の中でも重い部類に入る。少し力を入れて写真や動画を楽しむために、PCの買い換えを検討している方は多いことだろう。

 こうしたニーズに応えるため、近年では各社がクリエイティブ用途を意識したPCを続々と投入している。ここではその中でもかなりアグレッシブな仕様のGIGABYTEのノートPC、「AERO 15 OLED」についてレポートしたい。テクニカルライターである筆者が行なった各種ベンチマークテストに加えて、実際に業務で動画編集を行なっているプロクリエイターにも同機を試用していただいてどの程度使えるレベルなのか意見を聞いてみた。プロ、アマ問わずクリエイティブ用途で使われるパソコンの代表格は“Mac”だが、すでにMacを使っている方が、同じアプリが動くのだから次はWindowsも検討すべきか?と悩んでいる場合もあるだろう。こうした“旧式Mac→最新Windows PCへの乗り換え”という視点からも評価してもらっている。

 GIGABYTEのAERO 15 OLEDは、クリエイティブユースを強く意識した薄型のハイパフォーマンスノートPCだ。6コア12スレッドのパワフルなCPU、NVIDIAの高性能外部GPU(NVIDIA Studio/RTX Studio準拠)、4K/HDR対応の色再現性に優れた15.6型のOLED(有機EL)ディスプレイ、高速インターフェースの装備など、クリエイターにとって魅力的な仕様を備えている。その魅力をこれからじっくり見ていこう。

AERO 15 OLEDのスペック。スペックの異なる8種類のモデルが発売されているが、今回の評価機は、中位クラスのモデル(XA-7JP5130SP)だ


洗練されたモダンなデザイン、秀逸なビルドクオリティ

 AERO 15 OLEDの大きな特徴の一つが、洗練されたモダンなデザインのボディだ。アルミニウム合金をCNC切削加工で成形。シンプルに見せながらディテールに凝った意匠で、さりげない上質感を演出している。

 ハイパフォーマンスをうたうノートPCとしては意外なほどコンパクトでスリムなフォルム。バッグにも収まりがよいため、カフェなどに持ち出すくらいならば苦にならない。撮影現場でヘビーに使うプロフェッショナルなら、なおのこと問題にならないだろう。具体的なサイズは、356×250×20mmで、重量は約2kgだ。ビルドクオリティも優秀で、カッチリとタイトに組まれており、剛性感は十分。ヒンジもスッとスムーズに開閉する。

 ベゼル幅約3mmのスリムベゼルデザインを採用し、従来の14型クラスの底面積で15.6型の大きな画面を搭載している。このスリムベゼルはビジュアル的なインパクトも大きく、美しい液晶ディスプレイの効果もあって、よりモダンな印象を与えることに貢献している。

ボディはアルミニウム合金で、CNC切削加工で成形。ナノインプリントでパターンをプリントし、質感高く仕上げている。電源ON時に光る近未来的なロゴも印象的だ
ボディのサイズは、356×250×20mmで、重量は約2kgだ
冷却の最適化のため、裏面には11カ所もの吸気口があけられている
ベゼル幅3mm、非表示領域約5mm(実測)のスリムベゼルデザインを採用。よりモダンな印象を与えることに貢献している


6コア12スレッドのパワフルな第9世代Coreプロセッサー

 CPUには第9世代CoreシリーズのCore i7-9750Hを搭載する。現行のクリエイティブノートPCやゲーミングノートPCで定番的に搭載されているCore i7-8750Hの後継にあたる最新の6コア12スレッドのCPUだ。

 Core i7-9750Hは、Intelの分類で言うところの「Hプロセッサー」。モバイルノートPCで使われているTDP 15Wの「Uプロセッサー」に対し、こちらはTDP 45W。強力な冷却機構を必要とするが、その分コア/スレッド数は多く、パワフルな処理性能を持つ。

 6コア12スレッドと言えば、2、3年前まではウルトラハイエンドクラスのデスクトップPCの領域。クリエイティブはもちろん、ビジネスやゲーム含め、さまざまな用途を快適にこなせる。とくにこの最新世代では従来より動作周波数が向上し、シングルスレッド性能、マルチスレッド性能ともに高速化されている。

CPUにはCore i7-9750Hを搭載。現行のクリエイティブノートPCやゲーミングノートPCで定番的に搭載されているCore i7-8750Hの後継となる最新モデルをいち早く搭載している
HWiNFO64の情報表示画面。6コアアクティブ時最大4GHz、4コアアクティブ時最大4.2GHzで動作する仕様だと分かる。PL1は58W、PL2は80Wとなっている


GeForce RTX 2070 with Max-Q Designを搭載

 外部GPUとしては、NVIDIA GeForce RTX 2070 with Max-Q Design(8GB)を搭載している。最新RTXシリーズのアッパーミドルモデルで、従来のゲームをより快適にプレイできる描画性能に加えて、リアルタイムレイトレーシングやAIを活用した高画質技術「DLSS(Deep Learning Super-Sampling)」など最新のグラフィックス表現において大きなアドバンテージがある。

GPUにはGeForce RTX 2070 with Max-Q Designを搭載。ノーマルのGeForce RTX 2070より周波数は低いが、電力効率を最適化しており、スリムなボディでも高い描画性能を発揮できる

 NVIDIAの高性能GPUを搭載している点は、写真編集や動画編集、3Dモデラー/レンダラーなどのクリエイティブツールの利用においても強みがある。たとえば、Adobe Photoshopでは、各種ズーム/パン機能、キャンバス上でのブラシサイズ変更、3D化機能などはGPUの機能を使って行なっている。スマートシャープやぼかしギャラリーフィルタなど、GPUを使って処理性能を高速化する機能が多数ある。

 なお、Max-Q Designは、GPUの周波数に対する消費電力とパフォーマンスの上昇率に着目し、パフォーマンス上昇率が高い範囲内の周波数でのみ利用することで、高性能と省電力、低発熱を両立する技術だ。薄型軽量ボディでも、動作音や表面温度を抑えつつ、高性能GPUを搭載できる大きな要因となっている。

Photoshop CCでは、ズーム/パン、回転などの描画処理などにGPUを活用。フィルタ処理などをGPUで高速化できる
Adobe Lightroom Classic CC/Photoshop CC(Camera RAW)に新たに導入された「ディテールの強化」機能。センサーのカラーフィルタ情報を処理して画像を再構築する「デモザイク処理」にAI処理を活用してディテールを明瞭にする。高性能GPUの利用が推奨されている
Adobe Premiere Pro CCでは、レンダリングや再生をGPUで高速処理できる
冷却とパフォーマンスの最適化にMicrosoft Azure AI Machine Learningを活用。ローカルの解析とクラウドのデータベースを照合し、アプリケーションごとに最適な電力モードで動作させる


安心して高速なクリエイティブパフォーマンスを得られる「RTX Studio」認定PC

 AERO 15 OLEDは、NVIDIAが展開するクリエイター向けロゴプログラム「RTX Studio」認定PCでもある。これは、将来的に有望なRTXシリーズGPUならではの機能も含め、NVIDIA GPUを活用した高速で安定したクリエイティブ環境が手に入るPCであることを示すものだ。

 NVIDIAは、クリエイティブツールでのGPU活用を支援する「NVIDIA Studio」プラットフォームを展開しており、クリエイティブアプリ向けの開発キットの提供、およびクリエイティブツールへの最適化と動作検証を行なった「NVIDIA Studio Driver」の提供を開始している。

 つまり、ソフトウェアベンダーは、これまで以上にNVIDIA GPUの機能を活用したソフトウェアを開発しやすくなり、ユーザーはNVIDIA Studio Driverを利用することで、より安定して高速なクリエイティブ環境が手に入るようになるというわけだ。

 とくにRTXシリーズGPUに対しては、専用の開発キットを提供し、RTX独自機能の活用を促している。たとえば、RTXシリーズのRTコアを使ってレイトレーシングを高速化したり、AI処理をTensorコアで高速化したりといったことが可能になる。

 RTX Studio認証PCは、NVIDIA Studioのメリットに加えて、RTXならではの機能も含めた高速化の恩恵を得られることを示すもの。現在もNVIDIA GPUによる高速化の恩恵が得られるアプリ/機能はたくさんあるが、これからさらに増え、より効果的に活用されていくことが予想されるだけに、今後このRTX StudioがクリエイターPCにとっての重要なブランドとなり得る可能性は大いにある。

NVIDIA Studioの展開により、ソフトウェアベンダーは、これまで以上にNVIDIA GPUの機能を活用したソフトウェアを開発しやすくなり、ユーザーはNVIDIA Studio Driverを利用することで、より安定して高速なクリエイティブ環境が手に入る
AERO 15 OLEDは、NVIDIA Studioのメリットに加えて、RTXならではの機能も含めた高速化の恩恵を得られることを示すRTX Studio認証PCだ


色再現性に優れた有機ELディスプレイ

有機ELディスプレイを採用しており、サイズは15.6型、表示解像度は3,840×2,160ドットに対応する。ドットが見えない精細さに加えて、有機ELならではの鮮やかな発色、メリハリの効いた美しい表示が印象的だ

 AERO 15 OLEDのもっとも注目したい特徴が、15.6型の有機EL(OLED=Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイの搭載だ。液晶ディスプレイの液晶分子がバックライトのシャッターとして機能するのに対し、有機ELは素子自体が発光するため、画質、パフォーマンス面で大きな優位がある。

 本製品はSamsung製のAMOLED(Active Matrix OLED)を採用しており、VESAのDisplayHDR 400の基準も満たす。最大輝度が400nitと高いだけでなく、最低輝度は0.0005nitまで可能。黒をより黒く、階調もしっかりと表現できる。コントラスト比は100,000:1と、通常の液晶ディスプレイの約100倍にも上る。応答速度も1msと高速なため映像再生やゲームにも向いており、HDR対応タイトルでは極上のビジュアル体験ができる。

一般的な液晶ディスプレイ(IPS、sRGB70%程度)を搭載したPCと並べてみた。輝度、コントラストの違いは明らかだろう

 クリエイター向けとしては、色域、色再現性が重要となるが、これも優秀。映像業界の標準であるDCI-P3の色域を100%カバー。X-Rite PantoneのPANTONE認証システムで全品を工場で色校正を行なってから出荷することで、色差(色の微妙な違い)を示す指標である「デルタE」も「1以下」というきわめて正確な色再現性を誇る。

X-Riteのカラーキャリブレーションセンサー「i1 Display Pro」を用いて作成したICCプロファイルをPhonon氏制作の色度図作成ソフト「Color AC」で表示した。実線が本製品の色域で、点線で示したDCI-P3の色域を大きく上回っている(面積比116%)。なお、AdobeRGBカバー率は97.9%だった
「GIGABYTE Control Center」に含まれるユーティリティで色温度を選択可能だ。「Pantone」アイコンをクリックすると工場出荷状態に戻せる


異例のブランド明記は品質へのこだわりの現われ

 メモリはSamsung製のPC4-21300S(DDR4-2666)を採用しており、標準容量は16GB(8GB×2)だ。ストレージはIntelの760p(PCI Express 3.0 x4/NVMe)を採用しており、容量は512GBだ。現在では性能面は最速クラスとは言えなくなったものの、十分に高性能で、実績のあるIntel製ならではの信頼性は大きな魅力だ。

 メモリ、ストレージともゲームや一般用途には十分な容量だが、本格的なクリエイティブ用途ならメモリは32GB以上に増強したいところだ。最大では64GBに対応可能だ。なお、M.2スロットは2基あり、標準状態では1基が空いており、ストレージを拡張する余地がある。

メモリはPC4-21300S SO-DIMMを採用する。スペックとしてSamsung製であることを明記している
ストレージも信頼性を重視した選択。Intel SSD 760pであることをスペックとして明記している。PCI Express 3.0 x4(NVMe)に対応した高性能SSDだ
CrystalDiskMark 6.0.2(ひよひよ氏・作)のスコア

 なお、通常のメーカー製PCでは、本製品のように基本部品のブランドや型番が明記されることはない。と言うのも、このように公表してしまうと、調達コストや入手性などの事情が変わっても部品を変更することができなくなってしまう。そうしたリスクを回避するため、複数のベンダーから調達するマルチベンダー調達が基本であるためだ。

 それでもGIGABYTEがこのようにブランドを明記するのは、メモリやストレージなどはブランドによって、(性能、発熱、長期耐久性なども含めた)品質が大きく変わってくるためだ。メジャーブランドの部品を採用することで高レベルの信頼性を担保し、それをユーザーに対しても効果的にアピールする狙いがあるのだろう。容量やインターフェースだけでなく、ブランドまで明記されている点は、購入する側にとっても安心感が高い。


Thunderbolt 3、UHS-II対応カードリーダーを装備

 通信機能は1000BASE-T対応有線LAN(Killer E2600)を標準装備。無線LANモジュールにKiller AX1650を搭載し、Wi-Fi 6対応無線LAN(最大2,400Mbps)、Bluetooth 5に対応する。Wi-Fi 6は電波の混雑した環境下で高速かつ安定した通信ができるのが特徴で、多数の通信機器を使用している環境なら、従来に比べて理論値の差以上のメリットが期待できる。

 インターフェースも、最大40Gbpsの高速転送ができるThunderbolt 3とDisplayPort 1.4での出力にも対応したUSB 3.1 Type-C、HDMI 2.0、SDXC(UHS-II)対応のSDメモリーカードスロットを装備するなど非常に先進的な内容だ。本格的なクリエイティブユースでは内蔵ストレージの容量では足りなくなるのは自明であり、外付けSSDやNASなどを活用することが多いだけに、高速無線LAN、Thunderbolt 3などの高速インターフェースを装備している点は評価したい。

左側面。手前から有線LAN、ヘッドホン/マイク兼用端子、USB 3.0、USB 3.1(Type-C、DisplayPort 1.4対応)、HDMI 2.0
右側面。2基のUSB 3.0、Thunderbolt 3(USB 3.1 Type-C)、SDメモリーカードスロット(SDXC/UHS-II対応)、DC入力(ACアダプタ)
前面。とくに端子類はない。トップカバーの端に指がかかりやすく開きやすいデザインとなっている
背面。排気口がある。中央の飾りプレートの上にLEDがあり、電源ON時には光る
SDメモリーカードスロットは、SDXCの高速規格「UHS-II」に対応している。ハイエンドデジタルカメラの多くが対応している一方、対応しているPCは意外に少ないだけに貴重だ
テンキー付きのキーボードを搭載。キートップにはくぼみがあって指が置きやすく、スイッチも絶妙に調整されており打ちやすい
1キーごとにRGB LEDの発光色を制御できる「Fusion RGB Per-Key」仕様
キーボードの発光パターン/発光色はユーティリティで変更できる
Webカメラは画面の下に搭載している
Windows Helloの生体認証ログインに対応した指紋センサーをタッチパッドに装備する


定番ベンチマークテストでスキのない高性能を実証

 ベンチマークテストの結果を見よう。評価機のスペックは、CPUがCore i7-9750H、メモリが16GB、グラフィックス機能がNVIDIA GeForce RTX 2070 with Max-Q Design(8GB)、データストレージがIntel SSD 760p 512GB (PCI Express 3.0 x4/NVMe)、OSがWindows 10 Pro(1903)という内容だ。

 比較対象として、筆者が2017年末に購入したGIGABYTEのSabre 15(2017年モデル、筆者自身でSSD換装)で計測したスコアも掲載する。GPUはそれなりながら、CPUにCore i7-7700HQ(4コア8スレッド)を搭載しており、当時のノートPCとしてはかなりハイスペックな部類に入る仕様だ。

【比較用に使用したGIGABYTE Sabre 15のスペック
(2017年末に購入、筆者がSSDに換装している)】

CPU: Intel Core i7-7700HQ(4コア/8スレッド、定格2.8GHz/TB時最大3.8GHz)
メモリ: PC4-19200 16GB×1
SSD: 512GB(Intel SSD 600pmPCI Express 3.0 x4/NVMe)
グラフィックス機能: GeForce GTX 1050(2GB)
OS: Windows 10 Pro 64bit(1903)

今回利用したベンチマークテスト
CINEBENCH R20
PCMark 10
3DMark

 CINEBENCH R20のスコアは2,405。Core i7-7700HQ搭載の比較対象より64%高速。CPU(シングルコア)でも約22%よいスコアであり、マルチスレッド性能だけでなくシングルスレッド性能も優秀であることが分かる。

CINEBENCH R20のスコア。Core i7-9750Hを搭載するAERO 15 OLEDはCore i7-7700HQを搭載するSabre 15に対してシングルコアの性能でも大幅に優位に立った。これに加えて6コアと4コアの違いがあるマルチスレッドテストの「CPU」ではさらにスコアの差が大きくなる

 PCMark 10の総合スコアは比較用PCの1.4倍、3DMark/Fire Strikeでは約2.9倍。CPU性能だけでなく、ストレージ、グラフィックス性能も含めた総合的なパフォーマンスが優れていることも確認できる。NVIDIA GeForce RTX 2070 with Max-Q Designの性能もしっかりと引き出している。

PCMark 10のスコア。総合評価である「PCMark 10」ではAERO 15 OLEDのほうが約1.4倍も速かった。各項目ごとに見ても大きな差が開いていることが分かる。とくにクリエイティブ作業の性能を測定するDigital Content CreationでのAERO 15 OLEDの優秀さが光る
3DMarkのスコア。3Dゲーム性能の目安になる。ゲーミングノートでの採用例が多数ある定番GPU、GeForce GTX 1050を搭載するSabre 15に対して、ハイエンド寄りのスペックを持つGeForce RTX 2070を搭載したAERO 15 OLEDは格の違いを見せた。CPU性能と相まってモンスターぶりを見せ付けた格好だ


Adobe Creative Cloudでもメリットを実感

 クリエイター向けPCということで、Adobe Creative Cloudを使っていくつか実践的なテストも行なっている。

Adobe Creative Cloudに含まれるLightroom Classic CCとPhotoshop CC

 Lightroom Classic CCでは、ソニー α7RIIIのRAWデータ(4,240万画素)100枚を使用。カタログに読み込んでプレビューを取得するまでの時間と、そのデータに現像パラメータのプリセットを適用して長辺2,048ピクセルのJPEGファイルを書き出す時間を計測した。とくに後者は比較対象の約半分の時間で終了と、大きな優位を示した。また、10枚のRAWデータを「ディテールの強化」機能で強化DNGファイルへ変換する作業も試してみた。この作業はGPU性能が直結すると言われているが、やはり優位は大きく、3倍以上も速く作業を終えた。

Lightroom Classic CCでは、AERO 15 OLEDはカタログファイルの読み出し、JPEG変換も比較対象をはっきり上回った。とくに後者は比較対象の半分近い時間で終えた

 Photoshop CCでは、α7RIIIのRAWデータ10枚をスマートオブジェクト(16bit)として読み出し、スマートシャープや虹彩ぼかしフィルタなど、GPUアクセラレーションが効くフィルタ6種類をかけてJPGE出力するバッチ処理を実行した。こちらも比較対象に比べて3倍近く速い結果だ。

Photoshop CCでのGPUアクセラレーションが効くフィルタのテストでも、AERO 15 OLEDは比較対象に対してはっきり優位を示した

 Premiere Pro CCでは7枚の4Kビデオクリップをトランジションエフェクトでつなぎ、BGMを追加したプロジェクトをH.264、H.265でそれぞれMP4ファイルに書き出した時間を計測した。これもいずれも比較対象よりも大幅に速く終えている。

Premiere Pro ccでの動画出力時間を測定。CPU性能が高いAERO 15 OLEDはH.264、H.265ともに高速だ

 ファイル管理ツールのAdobe Bridgeでは、64GBのSDXCメモリーカードから全データ(約60GB)の読み出しにかかった時間を計測した。2年前のPCだけにこういう製品も少なくない。メモリカードリーダーの性能というのは結構な盲点だけに、メモリカードを使うクリエイターにとっては重要なポイントとして認識しておきたい。

Bridgeを使っての、メモリカード読み出し速度を計測。メモリカードリーダーの性能差は意外と気付きにくいポイントだ


プロの動画編集者はAERO 15 OLEDをどう見る?
旧型MacBookからの買い換え対象としても検討

 今回は、業務で動画編集を行なっているワックスグラフィックスの大下幸治氏に、AERO 15 OLEDを使っていただき、動画編集のプロの視点から感想を聞いてみた。

大下幸治:株式会社ワックスグラフィックス代表。同社では、雑誌、書籍をはじめとしたDTPデザイン、動画編集を主な業務としている。業務の依頼、問い合わせは「ohshita89@gmail.com」へ
動画編集業務を行なっているワックスグラフィックスの大下氏に、普段サブ機として使用しているMacBook Pro 13インチの2013年モデルとAERO 15 OLEDを比較してもらった

 ワックスグラフィックスではメインの動画編集環境はiMacを使用しているが、サブマシンとしてMacBook Pro 13インチの2013年モデルが稼働しており、そのリプレースを検討していると言う。リプレースの候補としては当然MacBookが挙がるところだが、Windows機も機会があれば試してみたかったとのこと。PremiereをはじめとするAdobeのクリエイティブアプリは、Creative Cloudを契約していればMac、Windowsを問わず1ユーザーのライセンスで2台まで使用できるので、基本的にはハードウェアを買い換えるだけでMac→Windowsの移行はできてしまう。

 大下氏がAERO 15 OLEDを使ってまず感じたのは、4K有機ELディスプレイの表現力。もっとも印象的だったのは「暗部の階調」だと言う。大下氏が検証のため再生した雲海の映像では、MacBookでは再現し切れなかった雲の影の部分が、4Kの高解像度と相まってしっかり描写されており、そのシーンが放つインパクトが大きく変わった。また、逆光に浮かぶ被写体の暗部もつぶれることがなかったので、映像が持つメッセージ性が一気に強くなったように感じられた。

[大下氏] ここまでのクオリティで見ることができる視聴者はまだ多くないはずですが、映像素材はカメラの進化に伴って平均的に画質が上がっています。その内容を正確に把握できることが重要だと思います。ノートPCであれば撮影現場で撮った映像をすぐに確認することもできるので、仕事はやりやすくなりますね。

大下氏が自らエベレスト街道におもむいて撮影した動画をもとに4K有機ELディスプレイの効果を検証した。4K解像度+有機EL環境では雲の表情が一気に豊かになるので、制作時のインスピレーションも刺激される

 Premiereでプロジェクトを開くときの速度も目に見えて速くなったと言う。シーン数500のフルHD映像のプロジェクトの展開時間(Premiere自体の起動時間含む)を比較したところ、古いMacBookでは5分6秒かかっていたところが、AERO 15 OLEDでは何と1分10秒に。いずれもキャッシュが作られている状態での測定だ。

[大下氏] 動画編集は一手順ごとに時間がかかる作業が多いので、これだけ短縮できると助かります。試しただけでもPremiereでのプロジェクト展開だけでなく、4K映像などの大型ファイルの操作は目に見えて速くなる場面がたくさんありました。古いMacBookもSSDを搭載していますが、ストレージの速度にははっきりと違いを感じました。

4K動画ソースを4本使ったプロジェクトを開いた。4K動画の制作依頼は近年増加しているとのこと
エンコード時間はPCの性能差が分かりやすく現われるポイント。AERO 15 OLEDの強力なCPUが活きる

 編集したファイルをエンコードしている間は単純な待ち時間。AERO 15 OLEDのCPU、GPU性能を活用すれば、ここも短縮できる。大下氏が用意した1分の4K解像度のプロジェクトをH.264で出力したところ、旧式のMacBookでは7分40秒だったところが、3分23秒で終了した。

[大下氏] 4K動画のように重いコンテンツはもちろん、最近増えているYouTubeにアップする短い動画は納期に余裕がないことが多いのでフルHDでも短時間で出力できるに越したことはありません。

Thunderbolt 3の搭載もメリット。「自社内での映像編集時にはマルチディスプレイが必須です。出先から持って帰ったノートPCを外部ディスプレイや外付けHDDにつなぐ際にはケーブル1本で接続できるThunderbolt 3はとても便利です。MacBookと比較するなら、ここは外せないポイント」(大下氏)
重さに関しては「出先に持ち運ぶことを考えると軽いに越したことはありませんが、出先では極力待ち時間を減らしてスムーズに作業する必要があるので、パフォーマンスを優先します。約2kgのAERO 15 OLEDなら持ち運びの許容範囲内で高いパフォーマンスが手に入りますね」(大下氏)
大下氏のメイン作業環境。iMacを中心としたマルチディスプレイ環境を使用している。Premiereによる動画編集だけでなく、ちょっとしたBGMならDAWソフトを使って制作することもある。動画編集業務を始める前から行なっているInDesignによるDTP作業もこのマシンで行なう。こうしたマルチな業務を実現できた背景には複数のクリエイティブアプリを低ランニングコストで一括導入できるCreative Cloudの存在があったことは確か。これを出先でも活用できる高性能ノートPCがあればさらに可能性が広がりそうだ


クリエイティブに求められる高付加価値を備えたプレミアムノートPC

 AERO 15 OLEDは、美しく色再現性に優れた有機ELディスプレイ、パワフルなパフォーマンス、先進の通信機能/インターフェース、モダンで洗練されたデザインなど、魅力たっぷりの付加価値を備えた製品だ。

 とくにディスプレイの色域/色再現性やSDメモリーカードスロットのUHS-II対応など「一般的なハイエンドPC/ゲーミングPCではあまり重視されていないがクリエイターにとっては重要な条件」もしっかりと満たす点はクリエイターにとって大きな魅力。クリエイティブユースに力を入れるNVIDIAが高速かつ安定して利用できることを示す「RTX Studio」認定PCであることも心強いことだろう。

 AERO 15 OLEDの付加価値はハイパフォーマンスなノートPCが欲しいユーザー全般にとって大いに魅力的だが、とくにクリエイターにとっては本製品を選ぶべき理由が多くあり、要注目の存在だろう。


緊急告知! 8コア/5GHz/RTX 2080+4K有機ELの上位モデル「AERO 15 OLED」を生配信で解説
【本ナマ!改造バカ 第54回 8月30日(金)20時より】

 本稿の締め切り後、8コア/16スレッドのCore i9-9980HKとGeForce RTX 2080を搭載した上位モデル、AERO 15 OLED YA-9JP5750SPを入手。本ナマ!改造バカにて鈴木雅暢氏と高橋敏也氏がこの超スペックノートPCを実際に動作させてテストします。

【8コア/5GHz/RTX 2080+4K有機ELのモンスターノートPC「GIGABYTE AERO 15 OLED」の超性能を試す!】
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[制作協力:GIGABYTE Technology]