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32コアのRyzen Threadripperも余裕な電源回路、クリエイター向けマザー「MSI Creator TRX40」をテスト

M.2 SSD×7本や256GBメモリも搭載可能なハイエンドマザー text by 坂本はじめ

MSI Creator TRX40

 AMD最新のハイエンドデスクトップ(HEDT)向けプラットフォーム「AMD TRX40」は、第3世代Ryzen Threadripperの驚異的なマルチスレッド性能に加え、最大72レーンのPCI Express 4.0や、256GBのメモリを搭載できるパワフルなプラットフォームだ。

 今回紹介する「MSI Creator TRX40」は、AMD TRX40プラットフォームの優れた拡張性を生かしたワークステーションPCを構築できるSocket sTRX4マザーボード。

 Creator TRX40の基本的な仕様をチェックしつつ、256GBメモリ搭載環境でのパフォーマンスや、高負荷テストでのVRM温度測定を通して、TDP 280WクラスのCPUを安心して使えるマザーボードなのかを確認してみよう。

個人向けワークステーションを構築したいクリエイターに好適な一枚Socket sTRX4対応のE-ATXマザーボード「MSI Creator TRX40」

 MSIのCreator TRX40は、第3世代Ryzen Threadripperに対応したSocket sTRX4マザーボード。搭載チップセットはAMD TRX40で、フォームファクターはE-ATX。基板サイズは304×277mm。

 Creator TRX40は、MSIのクリエイター向けマザーボードブランド「Content Creation」に属する製品で、実売価格は税込84,500~88,000円前後。Socket sTRX40マザーボードの中でもハイエンドに位置する製品だ。

基板表面。
基板裏面。

 マザーボード全体のデザインは黒を基調としており、ゲーミングマザーボードより派手さを抑えている。IOカバーのクリアパーツ部分にのみRGB LEDを搭載しているが、発光部分以外のカバーは金属製で、放熱用のヒートシンクとしての役割も兼ねており、装飾よりも実用性を重視しているようだ。

 一方、オンボード機能には10GbE対応有線LANやUSB 3.2 Gen2x2(20Gbps)を搭載。これらの高速インターフェイスは、大容量データを外部機器とやりとりする機会の多いクリエイティブシーンでの利用で威力を発揮するだろう。

IOカバーのクリアパーツ部分にRGB LEDを搭載。Creator TRX40のイルミネーション用LEDはこれのみ。
バックパネルインターフェイス。Wi-Fi 6、10GbE、USB 3.2 Gen2x2と言った高速インターフェイスを備えている。

 CPUソケットの両サイドに4本ずつ配置されたメモリスロットは、独自の回路設計と金属補強スロットを採用したDDR4 Boost with Steel Armor仕様。32GBメモリモジュールを用いることで256GBのメモリ容量を実現できる他、シングルランクメモリの1DPC(1 DIMM per Channel)構成では最大DDR4-4666のオーバークロック動作への対応がうたわれている。

 4本のPCI Expressスロットは全てx16形状で、PCI_E1スロットとPCI_E3スロットがPCIe 4.0 x16、PCI_E2とPCI_E4がPCIe 4.0 x8での接続に対応している。いずれも金属補強スロットである「PCIe Steel Armor」仕様で、PCIe 4.0 レーンはCPUから提供されている。

 そのほか、ストレージ接続用に6Gbps SATAを6本、USB 3.2 Gen1ヘッダピン2系統、USB 3.2 Gen2ヘッダピン(Type-C)を1系統備えている。

金属補強仕様のメモリスロットを8本搭載。対応する最大クロックと容量は、それぞれDDR4-4666と256GB。
拡張スロット。全て金属補強仕様のPCI Express x16スロットで、対応レーンはPCI_E1/E3がPCIe 4.0 x16で、PCI_E2/E4がPCIe 4.0 x8。
6Gbps SATAを6ポート搭載。全ポートAMD TRX40チップセットの機能よるもの。
USB 3.2系内部ヘッダピン。旧来のGen1タイプを2系統と、Gen2対応のType-Cポートを1系統搭載。

16フェーズの強力なCPU用VRM、ヒートパイプ付きクーラーでマザー全体を冷却

 Creator TRX40は、TDP 280Wの第3世代Ryzen Threadripperに安定して電力を供給するため、CPU用に16フェーズの強力なVRMを搭載。電源ユニットとの接続にはEPS12V用の8ピンコネクタを2系統用意している。

 後節でもこの部分は別途とりあげるが、32コア、64コアといったハイエンドCPUを安定動作させるため電源回路はしっかりと作り込まれており、高性能なものとなっている。

冷却用ヒートシンクを装備したCreator TRX40のVRM。
ヒートシンクを取り外したCPU用のVRM。
InfineonのDrMOS「TDA21472」。
Infineonの16フェーズPWMコントローラ「XDPE132G5C」。
電力供給には、EPS12V用8ピンコネクタを2系統装備。
AMD TRX40チップセット。

 CPUソケット上部に配置されたVRM冷却用ヒートシンクをはじめ、Creator TRX40の各部に配置されたヒートシンクはヒートパイプによって接続されており、各発熱源を基板全体に配置されたヒートシンクが一体となって冷却する仕様となっている。

 チップセット冷却用のヒートシンクには冷却ファンが搭載されているが、セミファンレス機能の「Zero Frozr テクノロジー」によって、動作温度に応じて冷却ファンの制御を実現。冷却ファンが必要ない温度であれば回転を停止してファンレス動作に移行する。

ヒートパイプによって接続された一体型冷却ユニット。VRM、チップセット、10GbEの冷却を基板全体で行う。
チップセット用ヒートシンクには、「Zero Frozr テクノロジー」対応の冷却ファンを搭載。動作温度が低ければファンは停止する。
VRMヒートシンク裏面、熱伝導シートでしっかりと接着することで放熱性を高めている。
IOカバー部分の銅プレート付きヒートシンクは10GbE冷却用。

PCIe 4.0対応M.2 SSDを最大7台搭載可能マザーボード上のスロットには両面冷却対応のヒートシンクを搭載

 Creator TRX40は、同梱の拡張カード「M.2 XPANDER-AERO GEN4」と組み合わせることで、PCIe 4.0 x4接続のM.2 SSDを最大7台まで搭載することができる。

 M.2 XPANDER-AERO GEN4は、ビデオカードのような見た目をしたM.2スロット拡張カードで、最大M.2 22110までのM.2 SSDを4台まで搭載できる。M.2 XPANDER-AERO GEN4カードを利用できるのはCreator TRX40のPCI_E3スロットで、カードの動作にはPCI-E 6ピンの電源供給が必要。

PCIe 4.0 x4対応M.2スロットを4基増設する「M.2 XPANDER-AERO GEN4」。
4本のM.2スロットはPCIe 4.0 x4接続に対応。搭載できるM.2 SSDの最大サイズは22110。
2スロットを占有する大型ヒートシンクと冷却ファンでM.2 SSDを冷却する。
M.2 XPANDER-AERO GEN4の動作にはPCI-E 6ピンコネクタによる電力供給が必要。

 Creator TRX40がオンボード搭載するM.2スロットは3本で、PCI_E3とPCI_E4スロットの間に配置されたM2_1とM2_2はCPUに直結で、メモリスロット横に配置されたM2_3はAMD TRX40に接続されている。いずれもPCIe 4.0 x4または6Gbps SATAでの接続に対応する。

 オンボードのM.2スロットは、MSI独自のSSD用ヒートシンク「M.2 Shield Frozr」を搭載しているのだが、Creator TRX40のM.2 Shield Frozrは両面冷却に対応しており、M.2スロットとマザーボードの基板の間にもヒートシンクを搭載。これによりSSD裏面からの放熱が可能となっている。

 現在までに発売されたPCIe 4.0 x4対応SSDは、カード裏面にもNANDフラッシュやDRAMを搭載しており、Creator TRX40のM.2 Shield Frozrなら、これらカード裏面の実装部品もしっかり冷却することができる。

CPUに直結されたM2_1/M2_2は拡張スロット付近に配置されており、表面側を1枚の大型ヒートシンクでまとめて冷却し、裏面側は各スロット個別のヒートシンクで冷却する。搭載可能なM.2 SSDの最大サイズは、M2_1がM.2 2280、M_2はM.2 22110。
メモリスロット付近に配置されたM2_3は、AMD TRX40チップセットに接続されたM.2スロット。搭載可能なM.2 SSDの最大サイズはM.2 2280で、こちらも裏面冷却が可能なM.2 Shield Frozrを備えている。

32コアCPU「Ryzen Threadripper 3970X」を搭載して性能テストコンシューマー向けでも256GBメモリ環境が手軽に構築可能

 今回のレビューでは、Creator TRX40の動作テストとして、32コア64スレッドCPU「Ryzen Threadripper 3970X」と、DDR4-2666動作の32GBメモリモジュールを8枚搭載して、256GBメモリ環境を構築してみた。

 従来の自作PCの常識を超えるハイエンド構成だが、Creator TRX40は当然のように安定して起動し、何ら問題なくOSのセットアップを完了することができた。メインストリームPCを自作した経験があれば、それと変わらない感覚でCreator TRX40を使ったモンスターPCの自作が可能だ。

32コア64スレッドCPU「Ryzen Threadripper 3970X」。
32コア64スレッドCPUでは、タスクマネージャーの論理プロセッサ表示がヒートマップになる。従来のCPUコア数の常識を超えた実感が得られる表示だ。
CrucialのDDR4-2666対応32GBモジュール2枚組「CT2K32G4DFD8266」を4セット使って32GB×8枚の256GBメモリを構築。
GeForce RTX 2080 Tiを搭載したハイエンドカードMSI GeForce RTX 2080 TI GAMING X RRIO。
Ryzen Threadripper専用の水冷クーラーENERMAZ ELC-LTTRTO280-TBP。

 今回、この32コア64スレッドCPUと256GBメモリを搭載したテストPCで、CINEBENCH R20とBlender Benchmarkを実行してみた。

 どちらも無料で利用できるベンチマークテストなので、購入を検討しているユーザーはもちろん、AMD TRX40プラットフォームの実力に興味のあるユーザーなら、ぜひ手持ちのPCとスコアを比較してみてもらいたい。今回の環境がかなり高性能であることがわかるはずだ。

CINEBENCH R20の実行結果。
Blender Benchmarkの実行結果。

超大容量メモリ環境を手軽に組めるAMD TRX40プラットフォーム

 AMD TRX40プラットフォームの魅力は32コアや64コアといったモンスター級のCPUをコンシューマー向けで利用できるだけではない。メモリもこれまで不可能だった容量が手軽に構築できる。

 大容量メモリ環境を構築するには、レジスタードメモリやECC付きメモリが必要となるプラットフォームが多いが、AMD TRX40プラットフォームであれば一般的に流通しているスタンダードメモリで256GBメモリ環境を構築可能だ。

256GBメモリといった超大容量を手軽に組めるのもAMD TRX40プラットフォームの魅力。
スタンダードメモリも32GBモジュールが流通するようになり、超大容量環境を構築しやすくなっている。
タスクマネージャーのメモリ表示。特に設定などは必要なく、しっかり256GBのメモリを認識。動作も安定していた。なお、Windows 10 Home 64bit版はメモリを最大128GBまでしか利用できないので注意したい。

 メモリ枚数が増えたり、容量が大きくなると動作がシビアになることもあるが、今回使用したMSI Creator TRX40とCrucialの32GBメモリモジュールの組み合わせの場合、特に設定なども不要で安定動作した。

 MSI Creator TRX40であれば、多コアCPUに、メモリ256GB + M.2 SSD×7本といったようなモンスターPCも構築可能なので、クリエイター用途でメモリやストレージを大幅強化したPCを構築したい場合はお勧めのモデルだ。

TDP 280WのCPUでも長時間安心して使えるVRM性能室温28℃の無風環境でCPUを30分連続フル稼働させてテスト

CPU付近に風を作り出すファンの無い無風状態でVRMの動作温度をチェック。

 Creator TRX40で構築したPCのパフォーマンスは素晴らしいものだが、その性能に期待するユーザーにとって不安の種となるのが、TDP 280WのCPUを長時間フル稼働させた場合、マザーボードのVRMは耐えられるのかという点だ。

 その疑念を解消すべく、今回は水冷クーラーを使用してVRM用ヒートシンクに冷却ファンの風が当たらないシチュエーションを用意。この条件で約30分間にわたってCPUのRyzen Threadripper 3970Xをフル稼働させた場合、VRMの温度がどこまで上昇するのかを確認してみた。

 VRM温度をはじめとする各データの測定はモニタリングソフト「HWiNFO」を利用し、CPUへの100%負荷は、動画エンコードソフト「TMPGEnc Video Mastering Works 7」のバッチエンコードツールで、4K動画のエンコードを4本同時実行することで確保した。

 以上の条件で実行した結果をまとめたものが以下のグラフだ。測定したのは、CPUの電力リミッターの基準値となる消費電力値「CPU PPT」と、CPU使用率、そしてVRM温度だ。

CINEBENCH R20の実行結果。

 CPU使用率が100%になっている間、CPUの消費電力であるCPU PPTは常にリミットいっぱいの280Wに張り付いており、約30分に渡ってCPUは消費できる最大の電力を使い続けていることが分かる。

 そして、VRM温度は徐々に上昇しているものの、最終的なピーク温度は68℃だった。ケースファンが作り出すエアフローの影響すらない実環境以上に厳しいとさえいえるこの条件で、280Wの電力を消費するCPUへの電力供給を行いながら70℃以下の温度を維持したことは驚くべきものだ。

 VRMをはじめとする基板上の熱源を一体型の冷却ユニットで冷却するCreator TRX40の冷却システムの優秀さもさることながら、高効率な部品を使用したVRMの発熱自体が少ないことが、今回のテストで70℃以下を維持できた要因だろう。

高性能VRMとM.2 SSD搭載能力が光るSocket sTRX4マザーボード

 Creator TRX40は、安心してTDP 280WクラスのCPUを使える強力なVRMと、最大7基ものPCIe 4.0対応M.2 SSDを搭載可能な拡張性を備えた、高品質で高機能なSocket sTRX4マザーボードだ。

 長時間に渡ってCPUでレンダリングを行う用途での利用はもちろん、非圧縮動画の利用に大容量の高速ストレージを必要とする動画編集用PCなどを構築には、Creator TRX40の優れたVRMとSSD搭載能力が威力を発揮するだろう。

 AMD TRX40プラットフォームの性能や拡張性を必要としているのであれば、Creator TRX40の検討をおすすめしたい。

[制作協力:MSI]

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