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「え!? ヤバッ!」と驚いた!! ノートPCをタッチ対応にしちゃう「AirBar」が面白い

空中操作に巨大タッチパッド化、ペン入力などいろいろを試してみた text by 日沼 諭史

ノートPCのディスプレイをタッチパネル化する「AirBar」を試してみた。
細長い棒状のAirBar本体。

 ノートPCでもタッチ操作できると便利だ。いつでも使いたい、とまでは思わないにしても、手書きメモや、写真・電子書籍の閲覧など、タッチ操作の方が都合の良いシーンは多々ある。

 以前は、PCでもタッチパネル操作が注目された時期もあったが、最近はそこまで目立たなくなってきたように思う。ディスプレイ部とキーボード部が分離する2in1タイプのPCはタッチパネル搭載機が多いものの、タッチ操作対応のPCはそれほど多くはない。

 とはいうものの、タッチ操作非対応のPCを購入した後に、タッチ操作を行いたくなることもあるだろう。そう思う人にベストかもしれないソリューションが「AirBar」だ。

 今回、「AirBar」は後付けタッチセンサーなのだけど、どのような製品なのか、活用すると可能性が広がるアイテムなのか、色々試してみた。

 なお、AirBarは、13.3/14.0/15.6インチのディスプレイを搭載したノートPCで、画面比率が16:9のモデルでの使用を前提とした製品だ。それ以外の環境での使用はメーカー保証/サポート対象外となる。今回いろいろテストしているが、サポート外の使用方もテストしているので、その点は注意して見てもらえれば幸いだ。

マグネットでカンタン取り付け・取り外しタッチ操作を後付けできるUSBセンサー

AirBarは13.3/14.0/15.6インチ用の3種類がラインアップ。

 AirBarは、スウェーデンのNeonode社が開発するUSBデバイスで、日本ではテックウインドが取り扱う。

 見た目は完全に1本の棒。そこからUSBケーブルが尻尾のように生えている。これをノートPCのディスプレイ枠に取り付けてUSBケーブルをPCに差し込むことで、センサーによって仮想的にディスプレイ上にタッチパネルを展開し、画面をタッチ操作できるという仕組みだ。

 ラインアップは13.3インチ用、14.0インチ用、15.6インチ用の3種類。対応OSはWindows 10のみ。昨今のビジネス向けモバイルPCから家庭向け据え置き型ノートPCまで、だいたいのところをカバーしている。

 最初に断っておくと、必ずこのサイズに合ったディスプレイで使わないことにはAirBarは正しく機能しない。ディスプレイが何インチなのかをしっかり確認したうえで購入してほしい。

 使い始める前に、まずはAirBarのノートPCへの取り付けが必要になる。取り付け場所はベゼルの下側。作業に多少の正確さは必要になるが、難しいというほどでもない。付属の2つの金属片を両面テープで貼り付けて、そこにマグネットを内蔵したAirBarをくっつける形となる。

AirBarの裏側。マグネットを内蔵している。両面テープ付きの金属片は予備も付属
金属片はかなり薄い。金属片をノートPCのベゼルに貼り付け、そこにAirBar本体をマグネットの力でくっつける

 当然、AirBarを装着した状態だとノートPCの開閉が不可能だけれど、マグネットの力でくっついているだけなのでカンタンに取り外せる。その後再び取り付けるときもマグネットの力で素早く元の正確な位置にピタッと張り付くので手間はない。

 問題は常にベゼルに残ることになる小さな金属片だが、これは十分に薄いので、今回試した限りではノートPCを閉じても干渉しているような雰囲気はなかった。

最初に取り付け位置を確認。白いラインをディスプレイの左右端に合わせ、ディスプレイ下端から3mm下にAirBarの上端が来るように取り付ける。この3mmというのはAirBarのUSBケーブルの太さと同じだ
金属片を貼り付けた。金属片は非常に薄い。
あとはAirBar本体をくっつけ、USBケーブルを接続するだけ。
金属片を貼り付けたままでも、ノートPCの開閉に支障はなかった。

 ただ、機種によっては開閉を繰り返すうちにノートPCのキーボード側に跡がついたりする可能性は捨てきれない。気になるならキーボード側に保護テープなどを貼っておくと良さそうだ。

 また、AirBar装着時はUSBケーブルが右側から出てくることになる都合上、基本的にはノートPCのUSBポートも本体右側に用意されている方が使いやすい。右側にUSBポートがないノートPCは少数派だとは思うが、今回試した15.6インチのノートPCは右側に光学ドライブがあったため、ドライブ開閉時にUSBケーブルが邪魔になることがあった。このあたりには使用する際に注意しよう。

15.6インチのノートPCは右側に光学ドライブがあった。開閉時にUSBケーブルが引っかかる可能性があるので、ここは気を付けよう。
取り外したAirBarは付属の収納ケースに入れて安全に持ち運べる。

パズルゲームからお絵描き、モバイルモニターまで、“あれこれ”試した

 そんなこんなでAirBarを取り付け、USBケーブルをノートPCに差し込めば、ほとんど瞬時に認識してあっという間にディスプレイがタッチパネル化した! 新たにドライバをインストールする必要はなく、すぐに使い始められる。

 最初は「誤検出しまくりで実用にはほど遠いのでは?」と疑ってかかっていたのが正直なところだが、想像以上のタッチパネルっぽさで、思わず「え!? ヤバ!」と口を突いて出た。

 まさかのダジャレはともかく、実際にどんな感じで使えるのか、いくつかのパターンで試してみた。

13.3インチ、14.0インチ、15.6インチのノートPCに取り付けてみたところ。
13.3インチのノートPCだとこんな感じ。
14.0インチ。USBケーブルは必要十分な長さでスタイリッシュにまとまっている。
15.6インチもちょうどぴったり。

マインスイーパが問題なくプレー可能、Web閲覧時のスクロールの反応もよし

 まずはAirBarを普通に使った時のインプレッションから紹介しよう。

 極薄のセンサーで指先の位置を検出するAirBarだが、画面の隅から隅まで、どの部分でもきちんとタッチ操作が可能。大きなボタンも小さなリンクも正しく反応してくれる。

 画像ビューワーや地図アプリなどでは、2本の指でピンチイン・ピンチアウトも可能だ。どれくらいの分解能があるか試そうと、定番ゲームの「Microsoft Minesweeper」を30×24マスでプレーしてみたところ、意図したマスを狙って開くことができた。

マインスイーパの小さなマスも狙って開くことが可能
Webブラウザーなどのスクロールもきびきびしている

 Webブラウザーなどのスクロールも、きびきびと反応良く追従してくれる。ただし、たとえばベゼルがディスプレイ面より少し手前に出ている機種だと、場合によっては画面に触れる数mm手前で反応することもある。これはこれで画面に触れることなくスクロールでき、ちょっとしたエスパー感があって便利だが、時には画面に触れる前にオブジェクトをクリックしたと判定されることもある。

 操作感としては「ちょっと敏感なタッチパネル」みたいな雰囲気になるので、そういうものだと意識しながら使う必要があるだろう。

AirBarをお絵描きに活用、スタイラスを使って本格的に描くのは厳しい!?

 タッチ操作といえば、お絵描き。タブレットのようにスムーズに絵が描けるのであればノートPCの新たな使い道も考えられる。

 「Fresh Paint」を試してみたところでは、指先で描く分にはほぼ違和感なし。ただ、細い線で描く場合は指に隠れて見えなくなるので、絵筆のように細かいところまで描くという使い方にはあまり向いていたいようだ。

指先で絵を描くのは問題なし。ただし細い線だとどこを描画しているのがわかりにくいのが難ではある。

 そこで、スマートフォンやタブレット向けのスタイラスを使ってみたのだが、これだとタッチの検出が甘くなるようだった。お絵かきソフトのキャンバスをなぞるように操作すると、指先の場合はきれいな線を描けるが、スタイラスだと途切れ途切れの点になったりする。指先の太さを前提に設計されているのだろうか。

スタイラスを使ってみた。線を引こうと思っても点になってしまうことがあるようだ。

 単純なタップ操作ならスタイラスでも問題ない。スタイラスのペン先は、ディスプレイガラスに対しては指先より優しい素材でできているので、ディスプレイを傷からできるだけ守るという意味でも、普段のタッチ操作をスタイラスにするのはアリだろう。

実はモバイルモニターと相性がめちゃめちゃ良いAirBar、本領を発揮!?

 ノートPCでできるだけデスクトップを広く使いたいときに便利なのが外部ディスプレイ。ノートPCの機動力を活かせる外部ディスプレイといえば、On-Lapなどのモバイルモニターだろう。このモバイルモニターでもAirBarは利用できるのだろうか。

モバイルモニター「On-Lap 1305H」でAirBarを試してみる。
取り付け方などはノートPCと全く一緒だ。
もちろん金属片を貼り付けたままでも専用カバーの使用は問題ない

 結論から言えば、13.3インチの「On-Lap 1305H」でもAirBarは問題なく動作した。ノートPCのディスプレイと同じように、サブモニター側でもタッチ・スワイプ・ピンチイン・ピンチアウト操作が可能になる。このとき、明確にメリットとして感じられるのが、マウスカーソルを移動しなくてもいい、というところだ。

 外部ディスプレイを追加するとデスクトップは広がるけれど、広がったデスクトップを操作しようと思うとその分マウスカーソルの移動が大変になる。ところがAirBarで外部ディスプレイをタッチパネル化すると、さっとそこに手を伸ばして指先で操作すればいいのでマウスカーソルのことを考える必要がない。これがかなり便利だ。

全く問題なく、サブモニターとしてOn-Lapを使うことができた。そして実はこれがめちゃ便利!

 クラムシェル型のノートPC単体だと、キーボードもタッチパッドもあるので、わざわざ手を伸ばしてまでタッチ操作したくなるシーンはやはり限られてしまう。しかしサブモニターも使うとなると別だ。マウスカーソルを両方の画面で行き来させるより、手を伸ばしてタッチ操作した方がずっと効率的。むしろモバイルモニターでこそAirBarは活躍するのではないか、と思うほどだ。

AirBarは縦置きも可!そして「デュアルタッチディスプレイ」もいける?

 Windowsのディスプレイ設定を変更すれば、モバイルモニターは縦置きにしても正しく動作する。近頃ではWebブラウザーの他にもチャットツールのような縦スクロールが基本のアプリも少なくない。こういう場面では縦長画面かつタッチ操作できるのはメリットが大きいのではないだろうか。

 そこで、AirBarを縦位置にしたモバイルディスプレイでも使えるのか試してみたが、縦位置にしても問題なく動作する。設置にちょっと工夫はいるものの、AirBar自身の汎用性は高いようだ。

縦置きでもAirBarはきちんと使える。
このようにモバイルモニターに下駄をはかせるようにして設置するなど、工夫は必要。

 さらに、ノートPC本体のディスプレイとモバイルモニターの両方で同時にAirBarを使う「デュアルタッチディスプレイ」にもチャレンジしてみた。……のだが、両方の画面それぞれでタッチ操作が反映されるのは画面を「複製」しているときだけだった。

ノートPC本体とモバイルモニターの両方にAirBarを装着!
マルチディスプレイの設定が「複製」の場合、両方の画面で正しくタッチ操作が可能。
マルチディスプレイの設定が「拡張」の場合、ノートPCの画面をタッチするとモバイルモニターが反応して正常には使えない。

 「拡張」して画面ごとに別の内容を表示しているときは、追加した画面(モバイルモニター)側のみが反応する。ノートPC本体側のディスプレイで表示している内容にはタッチできず、ノートPC側でタッチしてもモバイルモニター側が反応するという具合だ。

 なのでAirBarをデュアル化する意味はあまりなさそう。むしろこの現象を逆手に取って、すぐには手の届かないところにモバイルモニターを置いてあるようなとき、ノートPC側にのみAirBarを装着するという使い方はアリ。ノートPCの画面は本体のタッチパッドで、モバイルモニターはノートPCのディスプレイのタッチで操作する、というやり方だ。これならモバイルモニターのスクロールくらいなら手を伸ばさずサクサク操作できる。

 なお、モバイルモニターでAirBarを使うときに注意しておきたいのが、やはりAirBarのUSBケーブルが右側から出るところ。わりと短めのUSBケーブルなので、別途延長ケーブルやUSBハブでも使わない限りはモバイルモニターをノートPCの左側に置くことになるだろう。もちろん、USB給電するモバイルモニター用とAirBar用とで、ノートPCは2個以上のUSBポートを備えている必要もある(USBハブやUSB電源を使う手もあるが)。

AirBarとモバイルモニターをPCと接続するのに、USBポートは最低でも2つ必要
On-LapはUSB Type-Cであれば1ポートのみでOK(PCによっては画面出力も兼ねる)。HDMI出力の場合はUSBポートを2つ消費することもある

 また、On-Lap 1305Hの場合、On-Lapへの電源供給用コネクタの位置関係から、縦置きする際には画面右側を下にするしかない。そうするとAirBarのケーブルがデスク面に干渉してしまうことになるので、On-Lapのスタンドに下駄をはかせるような工夫が必要になる。

 とはいえ、AirBarを装着した縦置きモバイルモニターのWebブラウジングやチャットアプリの快適さは、その欠点を補って余りある!と声を大にしたい。

「空中操作デバイス」にして超能力者風に操作できる!?

 AirBarの実用的で便利な面をここまで紹介したが、ここからはAirBarの可能性を探ってみよう。

 AirBarの仕組みはすでに説明した通り、ディスプレイ面に仮想的なタッチパネルを展開して、かざされた指の位置をセンサーで読み取るというもの。この仮想的なタッチパネルは、必ずしもそこにディスプレイが存在している意味はない。何もない空中をディスプレイに見立ててもいいのだ。

AirBarを立てて空中に仮想のタッチパネル面を展開してみた

 たとえばAirBarをテーブル上に立てて置いた場合は、その上空に仮想のタッチパネルが展開されているとみなすこともできる。空中に指を差し込むようにして動かせば、Windowsの操作ができるに違いない。……と思ったのだが、実際に試してみると加減がかなり難しい。

ハッ!超能力でウィンドウを下に!(本当はスクロールしたい)
ハァッ!今度はウィンドウを上に!(本当はスクロールしたい)
うおりゃぁっ!地図を回転!(本当は拡大したい)
ぬおぉぉ!さらに回転!(本当は縮小したい)

 AirBarがタッチを認識するには、指先が本来ディスプレイ面のある位置で止まっていなければならない。空中だとどこで指を止めればいいのかはっきりしないので、誤検出が頻発してしまう。小さなボタンやリンクを狙ってクリックするのはまず不可能だ。

 「テレキネシス!」みたいなことを言いながら画面操作したかったのだが、超能力を獲得したばかりでうまく力を扱えない暴走気味のエスパー○美みたいになってしまう。使いこなせれば操作時の見た目もかなり面白いので、これは惜しい。何かしらのアイデアで解決できるとよいのだけど……

AirBarを超デカいタッチパッドとして使う!

14インチのノートPCの天板にAirBarを置いて、巨大タッチパッド化してみる

 基準面のない空中操作は難しい。しかし、指先が止まるべき面がディスプレイである必要もない。つまり、デスク上などの平滑な面をディスプレイに見立てればきちんと操作できるのではないだろうか。

 そこで、ちょうどいいサイズの、フラットでタッチの感触もいい14インチのノートPCの天板に13.3インチ用のAirBarを置き、天板全体をタッチパッド化してみた。これならディスプレイに設置したのと同じ操作感になるはずだ。

 この場合、想像していた通りにしっかり反応して動作してくれる。13.3インチサイズの巨大タッチパッドのできあがりだ! が、当然のことながら、どこをタップしたら画面上のどこがタップされるのかがわかりにくいので、便利かといわれると疑問は残る。

 ペンタブレットに近いといえば近いけれど、指先を近づけたポイントが画面上に表示されることもないので、実質的に空中操作のときと使い勝手はさほど変わらない……。

どこを操作することになるのかがわかりにくいが、ちゃんとタッチパッド化できている

対応サイズの違うディスプレイにAirBarを装着しても使える?

 すでに説明した通り、AirBarはディスプレイサイズに適切な大きさのものを取り付ける必要があるものの、タッチパッド化して使う分にはディスプレイサイズと同じである必要はない。タッチパッドにするならサイズの大小は問題にならないわけだ。

 なので、外部の大型ディスプレイにAirBarを取り付ける事自体は可能。しかし、対応サイズとディスプレイのサイズが異なる場合、タッチした場所と反応する場所が大きくずれたりと、様々な制約が発生するため普通に使うのは難しい。AirBarは対応サイズのディスプレイに取り付けて使うのが無難だろう。

25インチの普通の外部ディスプレイに15.6インチ用のAirBarを装着したところ。
反応している箇所が●でうっすら見えている通り、実際にタッチした位置からズレてしまう。
15.6インチの範囲なら操作はできるが、これを有効活用することは難しい。
対応サイズ以外の大画面ディスプレイで使いたい場合、ベゼルに取り付けず、AirBarをデスクなどに置いて仮想タッチパッド化して使うのはアリかも!?

ノートPCをタッチ操作対応にしたいならアリ!活用するならフィルムの貼り付けも検討を

 ノートPCをタッチパネル化できるAirBarは、タッチパネルと完全に同じとは言えないまでも、それに限りなく近い使い勝手を実現してくれる。モバイルモニターと連携させて使用するのもなかなか便利。マグネットのおかげで取り付け・取り外しが楽々で、必要に応じて素早くタッチパネル化できるのもうれしいところだろう。

 1つ気になるのは、タッチパネルではないディスプレイを指先で操作することによる画面へのダメージ。タッチに対応していないディスプレイは、耐傷性や皮脂などへの耐性が低いことも考えられる。もしAirBarを多用するなら、ディスプレイフィルムを併用するなど対策を取りつつ、タッチディスプレイ生活をエンジョイしたい。

[制作協力:テックウインド株式会社]