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1,000Wで奥行13cmのATX電源が2万円って信じられる?しかもオール国産コンデンサ

Super Flower「LEADEX V G130X 1000W」を徹底チェック、詳細テストの結果に驚け!text by 藤山 哲人

ケースはコンパクトが人気、でもCPU/GPUのTDPは上昇中――そんな世相に応える1台

Super Flowerの最新シリーズ、LEADEX V Goldの「LEADEX V G130X 1000W」

 ついにSuper Flowerがやってくれた! 時代が望むATX電源が登場したのである。Super Flowerの新製品「LEADEX V G130X 1000W」は、フルプラグインで出力1,000Wなのに奥行き13cm、しかも準ファンレス運転まで可能と、やり過ぎ感すら覚えるほどのてんこ盛りスペックというのが本機だ。かなりとがっている! 放熱や性能については後述するが、これまで16cm以上が当たり前だったものが3cmも小さくなるのだから、「使いやすい」としか言いようがない。

次世代超ハイエンドGPUでも安心!? PCI Expressは12V 83.3A(999.6W)のシングルレール。3.3Vと5Vはともに24A(合計120W)で、12VからDC-DCコンバータによるもの。したがって12Vにまわせるのは800W程度という感じだ。5Vスタンバイが3Aある点も特徴的で、電源OFFでもタブレットの充電が余裕
本体背面の「ECOスイッチ」をONにすると準ファンレス運転が可能になる。ファンは温度に応じた回転数制御付き。だが、高出力で高密度な部品配置なので、ビビリの筆者としては安全・安心をより重視してOFF運用も考えたい

 ドライブベイなどのPCケース内部の構造物とスペースを奪い合っていた1,000W電源だが、このサイズなら多くのPCケースでの利用に問題なし。とくに、近年人気の5インチベイレスのコンパクトATXケースやMini-ITXケースのユーザーには喜ばれるはずだ。大型電源を使ったことがある読者なら多くの人が経験しているであろう、配線している最中に手の甲がキズだらけになる、なんてことももちろんない。

 この電源が1,000Wであることを外観から感じられる唯一の点は、EPSやPCI Expressのケーブルが70cmほどあり、フルタワーでも取り回しが利くところ。昨今人気のコンパクトケースで使いやすいと前述したが、大型ケースでの利用でも不都合は当然ない。

ストレージ系のみフラットケーブル、ほかはメッシュケーブル。ケーブル長はデカいPCケースも想定しているようで、ATXが60cm、EPSとPCI Expressが70cmと長め。ストレージ系のSerial ATAとペリフェラルはフラットで引き回しが楽。こちらもケーブル長は若干長め
内蔵ファンは12cm角。最高回転数は1,700rpm前後

 奥行き13cmということもあり、内蔵ファンは12cm角を採用。最高回転数は1,700rpm前後で、アイドル時は暗騒音以下になるが、高負荷時は風切り音がする目立つ動作音になるのはコンパクト設計とのトレードオフ。とはいえ、本機を使うようなシステムが高負荷になるときはCPUやビデオカードのファンも高回転する可能性が高いので、気になるシチュエーションは少ないはずだ。

 そして、何よりうれしいのはその価格。贅沢仕様の1,000W/80PLUS Gold認証製品が、なんと実売2万円前後で買えてしまうのだ。ここまで読んで、即買いじゃん! と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。内部はこれまた注目点がたっぷり詰め込まれているのだ。

【LEADEX V G130X 1000Wの基本スペック】
規格ATX
定格出力1,000W
ファン12cm角(底面)
80LUS認証Gold
ケーブルフルプラグイン
電源コネクタATX20/24ピン×1、ATX/EPS12V×2、Serial ATA×12、ペリフェラル×4、PCI Express 6+2ピン×5、ペリフェラル→FDD変換ケーブル×1
サイズ(W×D×H)150×130×86mm
【システム全体の消費電力および動作音の計測結果】
本機使用時のシステム全体の消費電力と動作音の計測結果。通常時はほぼ暗騒音なのでファン音は聞こえないが、高負荷になると動作音が目立ってくる。それだけしっかりと冷却していると好意的に解釈したい。なにしろ1,000Wで13cmなのだ!
【テスト環境】
CPUAMD Ryzen 7 2700X(8コア16スレッド)
マザーボードASUSTeK Computer ROG STRIX X470-F GAMING(AMD X470)
メモリキングストン HX430C15SBK2/16 (DDR4-3000)×2
ビデオカードASUSTeK Computer ROG-STRIX-RTX2080-O8G-GAMING
CPUクーラーサイズ 虎徹 Mark II
SSDCFD CSSD-S6T240NMGL(250GB)
OSWindows 10 Pro 64bit版
暗騒音33.8dB
動作音測定距離電源ユニットのファンから約15cm
アイドル時ベンチマーク後10分後の値

いよいよユニット内部へ! あり得ないほど国産コンデンサ、念には念を入れる安定性への執念!

LEADEX V G130X 1000Wの内部。奥行き13cmのコンパクトボディにこだわり抜いた構成の部品類が詰め込まれている。とくに注目は最新設計のメイントランス!
高密度まき線の最新設計でトランス二つ分を1個に統合!
本機のトランス(写真左)と一般的なトランス(右)を比較してみた。本機のトランスは、2本の鉄心があり、小型ながらコイル二つ分で1,000Wを出力。その分ちょっと重めだ。一般的なトランスはコイツ1巻きなので低出力

 内部を細かく見てみると、部品構成や構造には、とにかく平滑と安定への強いこだわりを感じる。その一つがプラグインコネクタ裏のバイパスコンデンサ(通称パスコン)。最終段でも念のためパスコンをかまして安定化するという徹底ぶりだ。

 コンデンサは徹底して国産。場所によっては価格重視で海外製の安いコンデンサでも――という考えもできなくはないが、それでもあえて国内メーカー製にこだわっている。DC-DCコンバータは通常ドーターボードのユニットに乗っているコンデンサですませるところを、わざわざメインボードに電解コンデンサ2本+アルミ固体コンデンサを乗せ補強し、さらなる安定化を図るという念の入れようで、安全・安定を重視する志向がモロに出ている。

 さらに、超小型化された同期整流回路と、従来のトランス2個分を1個に統合した最新設計のトランスを組み合わせたという特許技術により、コンパクト化と高出力化を実現。SuperFlowerの技術力の高さだからこそ実現できる13cm、ということなのだ。

1次側コンデンサは日本ケミコン製で、耐熱105℃、容量は560μFと390μFのものを並列にした大容量構成で、瞬電をものともしない設計。PC用電源ではKMRシリーズが使われる例が多いが、本機はワンランク上の小型品であるKMWシリーズを採用。ヒートシンクに近いものは、コンデンサ冷却用の放熱板も備える
2次側は日本ケミコンの耐熱105℃の電解コン+アルミ固体コンデンサのハイブリッド。集積密度が高いので、積極的に放熱するほうがよさそうだ。
このサイズで1,000Wを出力できる超小型トランスを端寄せ配置。1次側のノイズリダクション回路をインレット裏に実装、熱源のMOSFETを1カ所にまとめるなど、さまざまな工夫を凝らしてケース内に回路を詰め込む、執念の奥行き13cmだ

 そんなこだわりを反映して、性能面で見ても各系統安定した出力で、高負荷にも耐える余裕を持つ。また、ノイズはパターンこそあるものの非常に小さく、サウンドなどに与える影響は少ないだろう。「高性能で高安定、低ノイズでかつ使いやすい電源を、手に入りやすい価格で実現するんだ!」という目標が実を結んだ成果と言えるのではないだろうか。

基準電圧はATX,EPS、PCI Expressともに12.1Vと理想に近い。ATXの安定性はとくに高く、高負荷でも0.2Vの降下でピタリと下げ止まり。PCI Expressは最大0.3Vの降下があるも、それ以上落ちず安定。EPSは最大0.4V降下したが基準を12.1Vにとっているので、まだ余裕を残している。全体的にに余裕を持った安定感のある電源と言えそうだ
ノイズ計測のグラフにはスイッチングのパターンがそのまま現われているものの、最高でも±20mV程度と低いレベルなのでまったく問題ない。1,000Wという大電力を安定して供給しながら、この程度のノイズであれば「非常に優秀な電源」の部類に入る
長周期ノイズのグラフにも問題は皆無。大きなうねりも見られず、瞬間的に見られる大きなノイズもない

 とにかくSuper Flowerのチャレンジ精神がむき出しで、よいモノを安く作りたいという願いが込められた電源。第1のチャレンジは1,000Wの80PLUS Gold認証が2万円を切っているという点。さらに2万円なのに、コンデンサはオール国産品の耐熱105℃。しかもプラグインコネクタ裏にもルビコンのパスコンを入れ安定化を図っている点。さらなるチャレンジは1,000Wのフルプラグインを13cmの筐体い押し込めた点だ。何もそこまで……と思ったが、PCケースに実装してみるとありがたさを感じずにはいられない。

 少しほめすぎかもしれないが、この価格でこの性能、そしてこの安定性を叩き出せる電源はそうそうリリースされるものじゃない。高負荷時のファン動作音は確かに大きいが、それを相殺するだけのコストパフォーマンスだ。とくに高出力の850W以上はハイエンドユーザー即買いの予感も。小さい1,000Wはイイ! めちゃくちゃ便利!

【LEADEX V Goldシリーズのラインナップ】
製品名出力奥行き80PLUS認証実売価格
LEADEX V G130X 650W650W13cmGold16,000円前後
LEADEX V G130X 750W750W13cmGold17,000円前後
LEADEX V G130X 850W850W13cmGold18,000円前後
LEADEX V G130X 1000W1,000W13cmGold20,000円前後

[制作協力:ディラック]