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【ウエスタンデジタル50年史】80社のバトルロイヤルを勝ち抜きストレージ総合メーカーへ

ウエスタンデジタルとストレージの歴史を見てきた国内流通関係者が見るこれまでとこれから

生き残り、成長を続けるウエスタンデジタル。その強みを業界人に聞いた

 設立から50年、ストレージメーカーとして、HDDやSSD、各種フラッシュメモリを、家庭用からデータセンター向けまで、総合的に幅広く展開するウエスタンデジタル。過去2回にわたって、その主力製品であるHDDとSSDの歩みを振り返ってきた。今回は、デバイスの歴史から少し視点を変え、業界の裏側を知る流通や販売の方々、そしてウエスタンデジタルの営業部門のみなさんに、過去、現在、未来のストレージ市場やウエスタンデジタルの取り組みについて語っていただいた。

 まずは、ウエスタンデジタル製品の日本国内代理店を長年務めるテックウインド株式会社の営業本部・本部長の仲谷淳氏に、「流通」という立場から見たウエスタンデジタルとストレージの歩みや展望についてうかがった。

テックウインド株式会社の営業本部・本部長、仲谷淳氏

――まずは御社のストレージ製品の取り扱いについて教えてください。

テックウインド:弊社の役割は“コンピュータ製品の専門商社”というものになります。ウエスタンデジタル製品の場合、主な取引先としては、PCパーツ専門店、家電量販店、通販サイトなどです。最近では、ウエスタンデジタル製品の強みを活かした法人向けのキッティング事業も行なっています。

――ウエスタンデジタル製品の取り扱いはいつからでしょうか?

テックウインド:弊社の設立が1995年(当時は株式会社シネックス)ですが、ウエスタンデジタルさんの販売代理店となったのが1997年です。ウエスタンデジタルさんの代理店としては国内最古参です。現在は広く販売店で売っていますが、当時は販売チャネル中心(PCなどへの組み込み用としてメーカーやショップに販売する)という印象が強かったですね。

――長年ストレージを流通させている立場から、容量や仕様、需要の変化は感じますか?

テックウインド:ストレージに記憶するデータの量は年々増えており、とくに近年のIoT化の進展で、2020年の世界の総データ容量は59ゼタバイト(ZB。1ZBは100万ペタバイト)になるとも言われています。弊社の取り扱うストレージの容量も増加しており、たとえばコンシューマ向けのHDDの場合、10年前には500GBが主流だったところが、現在では6~8TBが人気です。中小規模事業者向けのNASだと、100TBクラスの引き合いも増えました。

また、当社の場合、台数ベースにおいてはHDDよりSSDが増えています。

――これまでのストレージの取り扱いの中で、記憶に残っている出来事はありますか?

テックウインド:OSの切り換わり時期は、この機会にストレージも更新しよう、大容量にしよう、という動きが毎回活発になります。Windows 95/98/Vista/7といった各OSの延長サポート終了も大きな動きでした。

また、業界全体で大きなピンチとなったのが、2011年のタイの大洪水ですね。HDD製造の一大拠点が被災したということで、製品の調達は難航し、流通価格も高騰して大変な苦労をしました。

製品の面では、大きな流れとして「いろんな機器にHDDが搭載されるようになった」というのが一つ大きなインパクトです。単にPCやサーバーのためのストレージではなく、家電分野でも広く利用されるようになったことは非常に印象的な出来事です。

“NAS向け”というポジションながら自作PC派にも大人気のWD Red。色分け戦略は用途の分かりやすさで大ヒットの要因に

個別の製品としては「24時間/365日稼働」をうたう製品の登場は、連続稼働とそれを実現する高い信頼性という面で大きなインパクトがありました。古くはRAID利用を前提としたWD Reシリーズ、現在ではNAS向けのWD Red、監視業務向けのWD Purple、エンタープライズ向けのUltrastarですね。

WD Redについては、NASの将来性や市場規模を考えればある程度成功するとは思っていましたが、(個人向けでも大ヒットするなど)期待以上に大きな動きです。ウエスタンデジタルの“カラー戦略”の分かりやすさが大ヒットの要因だったと思います。

過去のマニアックなところとしては、Raptorシリーズは意外と言っては何ですが熱心なユーザーにかなり売れましたよ(笑)。

10,000rpmの超高速HDD、WD Raptorシリーズのうち、Serial ATA 3.0世代のVelociRaptor

SSDにおいてはSanDiskの統合ですね。“HDDのウエスタンデジタル”が今後SSDを出すというのは、(新カテゴリーへの参入ではあったが)安心感が大きかったです。

テレワーク需要の増加に伴い、中小規模事業者でもさらにNAS導入が広がっているという

――直近の動きはどうですか?

テックウインド:Windows 7のサポート終了という大きな節目に、消費税の増税という大きな動きが重なったため、非常に市場が大きく動きました。これまでにも、新OS特需や、減税/増税特需というのはありましたが、この二つが重なることは過去になかったと思います。

また、コロナ禍の影響でPC需要全体が高まりましたが、ストレージ事業では、テレワーク関連の助成金(働き方改革推進支援助成金など)を活用した中小企業の方々を中心にNASの引き合いを多くいただいています。

――今後の展望などを教えてください。

テックウインド:直近のキーワードは、IoTの多様化、テレワーク、5Gなどが挙げられますが、これらに関連して取引先企業様も多様化しています。それとともに、われわれの役割も“PCパーツの総合商社”にとどまらず、とくにストレージ製品に関しては、多様化するニーズに応える“ソリューションプロバイダ”を目指してまいります。

現場はこう見た! 販売店スタッフの生の声を聞く

 われわれ一般ユーザーに直接ストレージを販売している窓口としてもっともなじみ深いのは、全国各地およびインターネットの販売店だ。製品のリセラーであり、熱心なPCパーツ市場のウォッチャーでもある各販売店にも、ウエスタンデジタル50周年ということでアンケート形式でウエスタンデジタル製品を中心としたストレージ製品の歴史について聞いた。

 ご協力いただいたのは、パソコンショップ アーク スタッフS氏、N氏、T氏(文中の“ARK S氏”、“ARK N氏”、“ARK T氏”)、TSUKUMO eX. 渡辺氏(同“TSUKUMO eX.”)、ツクモパソコン本店 奥村氏(同“ツクモ本店”)、パソコン工房 秋葉原BUYMORE店 店長(同“BUYMORE”)の各氏。

ご協力いただいた、パソコンショップ アーク、TSUKUMO eX.、ツクモパソコン本店、パソコン工房 秋葉原BUYMORE店

 まずうかがったのが、実際に店頭で売っていてインパクトがあった製品。過去の製品では、パフォーマンスをウリにしていたWD Black2(BUYMORE、ARK S氏)やVelociRaptor(BUYMORE、ARK T氏)、取扱店が限られていたがAV-GP(BUYMORE)といった“とがった製品”を推す声が多い。一方、最近の製品では、各店ともに大ヒット中との声があがるWD Blue SN550、ヒートシンクの有無が選べたウエスタンデジタルのSSDのハイエンドであるWD_BLACK SN750(ツクモ本店)が鮮烈だったようだ。

各店ともに絶好調だと言うWD Blue SN550。手を出しやすい価格のNVMe SSDとして人気
2013年に発売された1台の2.5インチドライブ内にSSDとHDDを内蔵したデュアルドライブ、WD Black2

 次に、予想を上回るヒット製品の思い出を聞いたところ、各店から名前が挙がったのは現在も強い人気を誇るHDD、WD Redの名前が挙がった。色分けによって各製品の用途を明確に伝えるという戦略の分かりやすさ、NAS需要の増大やNAS自体の認知拡大にWD Redが果たした役割が大きい(BUYMORE、ARK T氏)と言う。このほか、一般PC向けの製品であるWD Blue、WD Blue SN550は予想以上の人気とのことだ。

 さて、PC向けストレージを長らく取り扱っているPCパーツショップのみなさんが現場で感じた“市場のニーズの大きな変化”のトリガーにはどんなものがあったのだろうか。

 BigDrive対応や2TBの壁の解消(BUYMORE)、M.2スロットを搭載したマザーの普及(TSUKUMO eX.)、M.2 NVMe SSDの主流化(ARK N氏)といった仕様の進化、1TBのSSDが2万円を切ったあたり(TSUKUMO eX.)、250GBのSSDが1万円前後の手ごろな価格になった頃(ARK S氏)といった価格×容量で見たお買い得感の変化の二つを挙げる声が多い。

 さらにこれに加えて、Windows 10の普及に伴ってシステムドライブはSSDが完全に定着し、SSD+静音・大容量HDDのセット購入がほとんど(ツクモ本店)、ドライブはSSD1台だけという方が多い(ARK S氏)、2.5インチSSDをデータドライブにする人の増加(ARK N氏)とのことで、技術の進歩・大容量化・低価格化による使い方、組み合わせ方のニーズの変化も顕著に表われているようだ。

 売れ筋の容量についても合わせて質問してみたが、HDDは6~8TB、SSDは500GBが中心と答えるショップが大多数。NVMe SSDが主流になりつつあるが、データドライブ用やNVMe SSDとのセットで1TBの2.5インチSSDを購入する人も多い(BUYMORE、ARK N氏)とのことだ。

HDDもコスパに優れるWD Blueが引き続き人気。容量の中心は6TB超にシフトしつつあるそうだ
ウエスタンデジタルの大容量HDDには、ヘリウム充填タイプの製品もラインナップされている

 最後に、来店するユーザーがストレージをどんなところに注目しているか、というリアルな声を聞いてみた。各店の個性も影響していると思われるが、傾向としては大きく二つで、平均故障間隔を重要なファクターと見ていない人が増えた(BUYMORE)、容量とスピード、価格のバランス(ツクモ本店)、容量単価(ARK T氏)といった“分かりやすいコスパ重視”派と、HDDならプラッタ枚数やヘリウム充填の有無、SSDならコントローラやキャッシュ、NANDの両面/片面実装といった細かい仕様(TSUKUMO eX.)、キャッシュの種類や耐久性、保証などの詳細を見る方は多い(ARK S氏)といった“細部まで徹底的にチェック”派があるようだ。

 ユーザーの知識レベルから見どころが違うのかもしれないが、選び方が分からないという方でも、シリーズの違いによるメリット/デメリット(詳細なスペックの差異など)を説明すると納得して上位モデルを選んでいく(ARK T氏)という声もあるので、初心者だから、上級者だからどちらかの傾向というわけではなさそうだ。いずれにしても、「どれがよい」、「どこが安心」というポイントには敏感で、ユーザーとしては“損をしたくない”という気持ちが根強い(BUYMORE)というのが真理と言えそうだ。

 以上のように、HDDやSSDをはじめとするPCパーツの販売を通じて自作PC市場を見てきた各ショップのみなさんの声は、技術的なトレンド、容量のニーズ、何を求め、何を必要としているかといったユーザーの思いが凝縮された、リアルな声に近いもの。大容量化は大事、高速化も大事。そして何よりも、大切なデータを失ってしまうことがない安心できる製品が欲しい、という点がストレージというパーツの特別さを物語っている。

ストレージのことならワンストップでソリューションを提供できる、ウエスタンデジタルの歴史とその強さ

 ストレージメーカーとして、そんな市場の声を常に感じ取っているであろうウエスタンデジタル。彼らは今、ストレージの過去と現在と未来にどういった思いを抱いているのだろうか。歴史や現状の分析、そして将来への展望について、ウエスタンデジタルジャパン 代表取締役、ジャパンセールス バイスプレジデントのラリー・スウィージー氏と、同じくウエスタンデジタルジャパン セールス シニアマネージャーの西尾公彦氏にお話をうかがった。

ウエスタンデジタルジャパン 代表取締役、ジャパンセールス バイスプレジデントのラリー・スウィージー氏
ウエスタンデジタルジャパン セールス シニアマネージャーの西尾公彦氏

――ウエスタンデジタルは50周年ということですが、振り返ってみてどのようなことが印象的ですか?

WD:50年という時間は長いような短いようなものですが、HDDのメーカーは一時期、80社もあったのですが、現在は3社しか残っておらず、それだけ大変なビジネス、すごく変化のあるビジネスだったんだなと感じています。PCにしろ、ほかの製品にしろ、ここまで変化が大きいものは、CPU以外ではなかなかないと思います。

もう一つ、ストレージが入っている製品は、この歴史の中で大きく変わりました。当初は(大型の)コンピュータがメインで、90年代に入ってPCが出てきて、というように、何十年にもわたって“HDD=コンピュータ”という世界でした。今は、クラウドにしても、テレビ録画にしても、さまざまな種類のコンシューマの生活にストレージが用いられていて、ユーザーが随分変わったなと感じています。

店頭で購入できる製品だけでも、HDDやNAND型ストレージ、内蔵に外付けとさまざまな製品をラインナップするウエスタンデジタル。PCだけでなく家電分野も含めて多くのプラットフォームがカバー範囲だ

この流れの中で大きく変わったのが、品質の重要さです。コンピュータ中心の頃は、先端の追求、より高速なもの、より大容量なものの追求が最優先でしたが、今は私たちの生活に欠かせない“家電”にも多く入っており、より品質の高さが求められています。それに応えられたのが、今の3社だけだったということではないでしょうか。

市場も変わった、お客様も変わったら、そして製品も、容量が増えた、速くなっただけではないものに変わった、と感じています。

――日本市場においてとくにインパクトのあった製品はどのあたりでしょうか。他国との違いはありますか?

WD:インパクトのあった製品はやはり、いわゆるカラー戦略の製品(WD Blue/Green/Black/Red)ですね。それまでのHDDは、Raptorのようにブランド色が特別に強いものもありましたが、並行輸入のバルク製品が中心で、そこまでブランドというものが意識されてはいませんでした。

定番HDDだったWD Green。現在はWD Blueに統合されているが、統合当時は一部で驚きの声も

ユーザーの用途も多様化してきた中で、用途とカラーを結び付けたラインナップ展開を行なった結果、用途提案や分かりやすさという面で、予想を上回る反響をいただきました。この成功を受け、現在のSSDでも同じカラー戦略を進めていくことになります。

日本と海外での一番大きな違いですが、日本は(他国と比べ)高容量帯が売れる市場だという点です。大きな要因は“テレビ録画”という用途が根強いことですね。海外では2~4TBの製品が人気ですが、日本では4TBも売れていますが、6~8TBが非常に売れています。

カラーで見ると、WD Blueが一番人気で、続いてはWD Redです。発売当初は(NAS向けの)WD Redはそこまでは売れないんじゃないかと思っていましたが、実際には非常に人気となり、ニーズの多さにわれわれ自身も驚きました。

SSDの売れ筋シリーズは、アジア太平洋地域全体を見るとGreenが非常に強いのですが、日本市場ではBlue以上のシリーズが人気です。

――ウエスタンデジタルはHGST、SanDiskと立て続けに統合をしていますが、製品投入においてどのような効果がありましたか?

WD:お取引のあるみなさんに提供できる“メニュー”が増えたことにより、お客様との“会話”が大きく変わりました。たとえばPCの場合、PCメーカーのお客様とストレージ全般のことを正直ベースで総合的にお話しできるので、この製品はパフォーマンス重視で高速なSSDにしたいとか、この製品はコスト重視なのでこの時期のNANDの価格はどうなりそうなのかとかHDDでがんばったほうがよいのかとか、ロードマップを一緒に作っていくことができるようになりました。

“Extreme Pro”や“Ultrastar”といったブランドの製品は統合後も継続中。PC DIYファン、カメラ愛好家、サーバー向け製品など、広く根付いている各ブランド名の意味、特色が活かされている

お客様のご意向がそれまで以上によく見えるようになったことで、われわれ自身も、製品計画や製品設計にしても価格戦略にしても、コンプリートな情報で検討できるようになった点は、ビジネスという視点では大きくプラスになりました。一緒になってすぐにできたわけではありませんが、ここ数年、その効果が発揮されるようになり、お客様にも評価していただいていますね。

エンタープライズのお客様、とくにクラウドサービス関連のお客様は、「この商品が欲しい」ではなく「こんな問題を抱えているのだけど、どのように解決できますか?」とおっしゃります。エンタープライズだけでなく、PCや車載機器などもこのような方向に変わってきました。単に、製品のロードマップを見せて「どの製品が欲しいですか?」ではなく「お客様が解決しようとしているビジネスの問題点は何ですか?」という切り口から始まるようになったのは大きな成果だと思います。

――統合後もそのままブランド名を残している製品も数多くあります。このようなケースでは統合後にブランド名を降ろす企業も多いのですが、御社が展開するブランドの数はかなり多いと思います。今後もこのような方針で進めていくのでしょうか?

WD:ブランドが多ければ、ラベルの違いや宣伝手法の違いなど、コストが別途かかるところはもちろんありますが、そのブランドに意味がある、たとえばユーザーさんの愛着があるとか、信頼してくださっているとか、ユーザーのみなさんがついてきていただけているのであれば、そのブランドを止めてしまう必要はないと考えています。

ただ、気をつけなければいけないのが、市場も変わる、用途も変わる、気が付いたらあるブランドが得意としているものの価値が変わってしまうこともありえます。そうなったら、今度は逆に(これまでのブランド名、ブランド色が)市場を混乱させてしまうかもしれません。そうなれば、ブランド自体を見直していくことになります。

――SSDの伸長、クラウドの拡大、モバイル端末との連携など、周辺動向の影響はありますか?

WD:(PC以外の)モバイル端末も大変普及しましたが、仕事や生活で一番利用される端末がPCベースであることはあまり変わりはありません。クラウドの普及により、外付けストレージがこれに置き換わるかとも思われていましたが、実際にはそうでもありませんでした。

たとえば外付けストレージの場合、日本国内を見ると、ポータブル型の2.5インチ、デスクトップ型の3.5インチともにまだまだ売れています。SSDの登場により、ポータブル型についてはSSD搭載製品がじわじわと増えてはいます。デスクトップ型の3.5インチについては、テレビ関連の需要が依然として強いです。

外付けドライブは引き続き需要が続く見込み。3.5インチHDDは日本市場ではテレビ向けとしての用途が強く、2.5インチタイプはHDDからSSDにシフト中とのことだ

今後の動向ですが、PCはこれからも続いていく、クラウドストレージと外付けストレージはユーザーの考え方(クラウドに置くもの、手元に残しておきたいものの選択)がはっきりしているので共存するものとして変わらない、と考えています。

一方でまだ読めないのが5Gです。5Gが登場してもコンシューマ側はガラッと変わるような変化はないと思いますが、クラウド側は大きな影響があり、エンタープライズSSD/HDDのパフォーマンスが強化されないとおそらく処理が間に合わないでしょう。その影響が強く出るのがデータセンターなのかエッジサーバーなのかは今後の動きを見きわめる必要があります。

――SSDとHDD、出荷台数や比率の推移、今後の見込みはいかがでしょうか?

WD:具体的な台数は申し上げられませんが、HDDの出荷台数は安定しており、容量ベースでは増えると考えています。SSDは今後もますます増加していくと思いますが、NVMeタイプの比率が増えていく見込みです。コンシューマ市場のデータですが、SSDに全体に占めるNVMeの割合は半年前では15%程度でしたが、現在はすでに30%前後にまで増えています。

現在のWDの内蔵用SSDの最上位となるWD_BLACK SN750。ヒートシンク装着済みモデルも用意されている

われわれの製品の中では、現在WD Blue SN550が大ヒットしています。これまで“NVMe SSDは非常に高い”というイメージが強かったのですが、SN550は“リーズナブルな価格のNVMe SSD”ということで人気を集められました。今後、この市場はどんどん大きくなっていくでしょう。また、ゲーミングPC、eスポーツという市場も盛り上がっているので、WD_BLACK SN750のハイパフォーマンス市場もさらに伸びると考えています。

おもしろいところは、ゲーミング製品においては、ただコストの勝負だけではなく、私たちが大好きな「誰が一番速いものを作れるのか」という、技術が好きな人も楽しめるような話にもなってくる点ですね(笑)。

――技術動向、今後の計画などをお聞かせください

データセンター向けHDDは18TBが量産に。この7月、Ultrastar DC HC550の18TBモデルが秋葉原のショップ店頭にも並んだ

WD:まずHDDについては、一番大きな市場はデータセンター、クラウドになっています。この市場に求められるのは容量単価、品質ありきの容量単価です。現在すでに18TB製品の量産に入っていますが、引き続きさらに大容量なものを開発、量産していきます。

マイクロ波アシスト磁気記録方式をはじめとして有力な技術はすでに見えています。プラッタを何枚入れられるかというところはチャレンジになりますが、まだまだいけると考えています。

もちろん、PCやテレビで利用するお客様もいらっしゃり、すべてのお客様が最高容量のものを必要としているわけではありませんから、コストと容量、品質のバランスを見ながら展開していきます。

一方SSDについては、スピードが何よりも大事なものです。HDDと同様に、技術的にはまだまだ今後の展開が見込め、速度性能も伸ばせますし、容量も増やせます。SSDについては、もう一つのポイントとしてインターフェースの差もあります。コンシューマ、エンタープライズともに多くの方にNVMeのよさをご理解いただいているので、今後はさらにNVMe SSDの開発に尽力していく必要があります。

一般コンシューマ向けのSSD(=コストとのバランス重視)、ゲーミングPC向けのSSD(=速度重視)、エンタープライズ向けのSSD(=さらに速度を重視)で、同じSSDと言っても求められるものは大きく違っていますから、ラインナップ的には幅広くご用意していかなければいけませんので、フォームファクター、パフォーマンス、耐久性のバランスを取りながら展開していきます。

そしていずれのジャンルにおいても、コアな技術はすべて日本から来ていることは弊社の強みです。最新のNANDは四日市と北上、高容量のHDDについては藤沢から送り出しています。日本は品質に非常に厳しい市場ですが、そんな日本で育った基礎開発にもとづく製品である、という点は心強いです。

NAND製品の開発製造拠点である四日市(写真左)と北上(同中央)、HDDの拠点である藤沢(同右)

品質というのは一見地味な要素ですが、弊社の製品がこれだけ受け入れられてきたのはその品質が最大の理由です。ストレージがますますご家庭に入っていく時代に、品質は欠かせないものです。長らく品質にこだわって展開してきていますので、日本のチームとしては、自信を持ってご提供していけると考えています。

直近の新製品については「ご期待ください!」としか言えませんが、楽しみにしていただきたいと思います(笑)。

[制作協力:ウエスタンデジタル]