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ThinkPad X1 Carbon(2016年版)を1TB SSDに換装、別物の快適さに!

SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説 text by 浅倉吉行

 ノートPCはストレージを換装することで大きく快適性が変わることが知られている。

 HDDが搭載されているPCであれば、SSDに換装することで体感速度が圧倒的に速くなり、低容量SSDを搭載しているPCであれば、大容量のSSDに換装することで使い勝手を大きく向上させることが可能だ。そこで、「SSD換装大全、ノートPCの分解からデータ移行まで徹底解説」と題し、ノートPCのSSD換装の手順とその効果を連載形式でお届けしよう。

 第1回目となる今回は、Lenovoの「ThinkPad X1 Carbon(2016モデル)」のストレージを1TB SSDに換装してみたい。使用したThinkPad X1 Carbonには128GBのM.2 SATA SSDが搭載されており、これを1TBのM.2 NVMe SSDに換装し、大容量化と合わせ高速化も狙ってみた。

 換装の手順と合わせ、換装の前後でどれだけの変化があるのかを紹介しよう。

※ノートPCの分解行為やパーツの換装はメーカー保証外の行為となります。この記事を読んで行った行為によって、仮に損害が発生しても弊誌および、メーカー、販売ショップはその責を負いません。

LenovoのThinkPad X1 Carbon 2016年モデルを快適に、SSDを増強

 今回使用するLenovo ThinkPad X1 Carbonは、2016年に発売された型番「20FCS05800」のモデルだ。

 中古品として入手しているので、新品の時から若干の変更があるかもしれないが、CPUに2コア4スレッドのCore i5-6300U(ベース2.4GHz/ブースト時3.00GHz)、メモリにLPDDR3-1866 4GB(オンボード/増設不可)、ストレージにM.2 SATA SSD 128GBを備えるモデルで、ディスプレイは14インチ/1,920×1,080ドット。

 DisplayPortやHDMI、IEEE802.11ac無線LAN/Bluetooth、Webカメラなどの機能も搭載している。OSはWindows 10 Pro 64bit。

 スペック的にはまだまだ使えるモデルで、ストレージを増強すれば常用PCにできる性能をもっていると言えるだろう。

搭載されていたのはM.2 SATA SSDのSamsung MZNTY128HDHP-000L1

 ThinkPad X1 Carbonに搭載されていたSSDだが、今回の個体には128GBのSamsung MZNTY128HDHP-000L1が装着されていた。M.2型のSATA SSDで、容量は128GB。

PCに搭載されていたSamsung MZNTY128HDHP-000L1。
CrystalDiskInfoによるステータス。SATA接続のSSDであることがわかる。

換装に使うのは1TB/NVMeのSamsung SSD 970 EVO Plus

 今回換装に使用するSSDは、Samsung SSD 970 EVO Plusの1TBモデル「MZ-V7S1T0B/IT」。最大速度リード3,500MB/s・ライト3,300MB/sのNVMe接続モデルで、インターフェイスはPCIe 3.0 x4レーン。

Samsung SSD 970 EVO Plus 1TB(MZ-V7S1T0B/IT)。
CrystalDiskInfoによるステータス。

 Samsung SSD 970 EVO Plusは250GB~2TBまでの4製品がラインナップされているので、SSD換装に使用する際は予算や使用する容量に合わせて選ぶと良いだろう。

注意点その1

 ノートPCでM.2 SATA SSDからM.2 NVMe SSDへ換装を行う際に相性が出ることがある。このため、SSD換装の際には事前に下調べを行い、動作実績のあるモデルから選ぶことをお勧めしたい。

 また、ノートPC側のM.2スロットは製品により仕様が異なり、大きく分けると、SATA接続のみ、SATA接続とNVMe接続両対応、NVMe接続のみ対応といった3パターンが存在する。SATA SSDからNVMe SSDに換装する場合、ノートPC側がSATA/NVMe両対応である必要があるので注意しよう。

 このほか、ノートPC側のNVMe対応のM.2スロットにはx2レーン接続とx4レーン接続のモデルが存在し、ノートPC側がx2レーンまでのサポートの場合、x4レーン接続のNVMe SSDを搭載すると公称値の半分程度の速度までしか出ない。故障では無いのでこの点も覚えておこう。

古いSSDから新しいSSDに引っ越し、データの移行からPCの分解まで一式紹介

 ここからは実際にSSD換装を行う際の手順を紹介しよう。換装する際はSSD外付けケースとデータ移行ソフトを用意すると簡単だ。

 NVMe SSD用の外付けケースは税込4千円前後で入手可能、データ移行ソフトは大手メーカーのSSDであれば付属していることが多い。両方事前に準備しておこう。

換装するSSDをUSB外付けケースに搭載、データコピーの準備をしよう

 PCのデータを丸ごと引っ越し先のSSDにコピーするため、換装用SSDを外付けケースに搭載しよう。

 今回使用しているSSD外付けケースはAOTECHのAOK-M2NVME-U31G2。NVMe SSDに対応したUSB 3.2 Gen2接続のケースで、SSDの取り付けも比較的簡単だ。

●1 SSD外付けケース「AOK-M2NVME-U31G2」と換装するSSDを準備。
●2 SSD外付けケースのネジを外し中の基板を取り出す。
●3 SSDを基板のM.2スロットに装着する。
●4 基板にSSDをネジで固定する。「AOK-M2NVME-U31G2」は裏側からネジで固定する仕組みになっている。
●5 基板にSSDを装着したらケースの中に収納し、ネジでふたを閉める。
●6 PCに接続すれば準備完了。

注意点その2

 M.2 SSD用の外付ケースはNVMe対応モデルはNVMe SSDのみ、SATA対応モデルはSATA SSDのみに対応となっているので、購入時に注意しよう。

データの移行はSSD付属ソフトが便利、Samsung Data Migration 4.0なら簡単

 今回データ移行ソフトには「Samsung Data Migration 4.0」を使用した。Samsung製SSDで利用できる専用のユーティリティで、操作もかなり簡単だ。

 Samsungのサポートページからダウンロード可能で、項目を選択していくだけで作業は簡単に終わる。

●1 Samsung公式サイトのSSDツールとソフトウェアのページから「Samsung Data Migration 4.0」をダウンロードする。
●2 Samsung Data Migration 4.0をセットアップし、起動させる。
●3 画面下側にあるターゲットドライブの項目を指定する。移行先のSSD(今回はSamsung SSD 970 EVO Plus 1TB)を選択しよう。
●4 移行先のドライブのデータが全て消去される旨のダイアログが表示されるのでOKを選択。なお、安全にデータ移行を行うため、他のアプリケーションを起動したり、ながら作業をするのはやめよう。
●5 進行状況はプログレスバーで表示される。ちなみに、移行前のSSDの使用容量は20GBほどだったが、データのコピーには10分前後かかった。
●6 データのコピーが完了すると自動的にPCはシャットダウンされる。

注意点その3

 USB接続の外付けケースを用いたSSD換装の注意点になるが、移行ソフトとの相性などによりデータのコピーが正常に行えないときがある。そうした際は、大概外付けケース側のUSBコントローラとの相性がある可能性が高いので、ケースを変えるか、デスクトップPC上でデータのコピーを行うなどテストしてみてもらいたい。

 「Samsung Data Migration 4.0」を利用した際の外付けケースとの相性に関しては別記事で紹介しているので、そちらも参照してもらいたい。

ドライバーとヘラでノートPCを分解、ThinkPad X1 Carbonの分解難易度は低め

 ここからはThinkPad X1 Carbon(2016モデル)の分解になるが、工具はドライバーとヘラが必要になるので準備しておこう。

 SSD換装時はPCを必ずシャットダウンした状態で行う必要があるので注意しよう。バッテリーが外せるモデルの場合は外し、取り外せないモデルもBIOS上からバッテリーを無効化できるモデルは念のため作業中のみ無効化しておこう。ThinkPad X1 Carbonは後者の方だ。

●1 BIOSメニュー内の「Config」の「Power」を選択。
●2 「Power」項目内の「Disable Built-in Battery」の項目に合わせ「Enter」を選択すると内部バッテリーがオフになる。ACアダプタを接続していないとバッテリーがオフになった瞬間に電源が落ちるので注意。

 ThinkPad X1 Carbon背面パネルはネジとツメで固定されており、ネジを外した後に隙間にヘラを入れて少しずつ隙間を広げればパネルが外れる。無理に広げると爪が折れてしまうので、慎重にゆっくり行おう。また、ネジを緩めきっても背面パネルからネジが外れない仕組みになっている。ネジをなくすことがないのでこの構造は便利だ。

●3 ThinkPad X1 Carbonの背面パネル側、隠れたネジ穴は無い。
●4 ドライバでネジを緩めよう。ネジはパネルから外れない構造になっている。
●5 ネジを全て緩めたら隙間にヘラを入れてこじ開ける。この手の工具はケースオープナーや分解用ヘラとして安価に販売されている物でかまわない。
●6 パネルを外したところ。分解の難易度自体は高くない。

 ThinkPad X1 CarbonはSSDの上に保護用のシートが貼り付けられている。これも破らないように慎重に外そう。シートをめくるとM.2スロットに簡単にアクセスできるようになっており、SSDの換装も簡単だ。

 なお、SSDは斜めに挿してネジで固定するタイプではなく、スロットに対して水平に挿して固定するタイプだった。

●7 ThinkPad X1 Carbonの内部、SSDはシートで保護されている。
●8 シートをめくるとSSDにアクセスできる。取り外しも簡単。
●9 データをコピーした換装用のSSDに入れ替える。
●10 SSDの装着が済んだらシートを元に戻そう。
●11 背面パネルのネジを締めれば作業は完了。
●12 無事PCが起動すれば成功だ。換装後にOSを再起動するとドライバなどが組み込まれるので、再起動と合わせてBIOSの初期化も行おう。

 冒頭にも記載しているが、基本的にノートPCの分解行為はメーカー保証外の行為となるため、これにより故障した場合は保証が受けられない。今から新品のノートPCを購入する場合は元々ストレージ容量の多いモデルを選択するのが無難だ。

 保証が切れている使い込んだノートPCなどであれば、SSDの換装は投資に見合った効果が得られやすいので、PCを買い換える前に試してみる価値はある。

SSD換装で空き容量は約9倍、速度は最大約3倍に快適に使えるノートPCにリフレッシュ

 実際にSSD換装を行い得られたメリットも紹介しておこう。今回は容量と速度の2点を紹介する。

1TB SSDで空き容量を気にせず利用可能に、普段使いの快適性は一気に向上

 まずは容量の面だが、128GB SSDでWindows 10を利用した場合、普段使いでも意外と空き容量のなさに困ることがある。画像や動画、写真など、ちょっとしたファイルを置いているだけでゆとりはなくなり、ファイルデータは整理しながら利用する必要がある。Windowsの大型アップデート時は10GB前後の空き容量が必要になるので、これも考慮して運用しなければならない。

 これが1TB SSDになると、空き容量を気にしながら使う必要はほぼ消える。多くのアプリケーションをインストールしてもかなりのゆとりがあり、スマートフォンのバックアップをとってもまだまだ空き容量は残る。わずらわしさから解放されるという面でも、空き容量の増加は利便性向上にかなりの効果がある。

換装前の128GB SSD「Samsung MZNTY128HDHP-000L1」。
空き容量は100GBを切ったあたりで、必要なアプリケーションをインストールし、プライベートなファイルなども置いているとゆとりはない。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus(MZ-V7S1T0B/IT)」
空き容量は900GBほどあり、大容量ファイルなどを置いても空き容量は十分。さまざまなデータを入れっぱなしにできるゆとりがある。

SATAからNVMeへの換装で速度は最大3倍高速に

ThinkPad X1 Carbon(2016モデル/20FCS05800)のM.2スロットはPCIe 3.0 x2レーン接続のようだ。接続レーン数はCrystalDiskInfoの対応転送モードから確認可能で、左が現在接続されている状態、右がSSDが接続可能な最大レーン数になっている。

 速度の方だが、全項目で換装後の方が高速となり、シーケンシャルアクセスは約3倍ほど高速になった。

 ThinkPad X1 Carbon(2016モデル/20FCS05800)のM.2スロットはPCIe 3.0 x2レーンのようで、BIOSなどから接続レーン数を設定することはできないようだ。Samsung SSD 970 EVO Plus 1TBの公称値であるリード3,500MB/s・ライト3,300MB/sは、x4レーン接続時のものなので、x2レーン接続時はこの半分になる。速度的には公称値の半分がきっちり出ているので、動作には問題は無い。

換装前の128GB SSD「Samsung MZNTY128HDHP-000L1」。
SATA接続SSDとしてはまずまずな速度がでている。
換装後の1TB SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus(MZ-V7S1T0B/IT)」
ThinkPad X1 Carbon(2016モデル/20FCS05800)の仕様でx2レーンまでの速度に制限がかかるが、それでも十分な速度が引き出せている。

 ノートPCのSSD換装はメーカー保証外の行為となることが多くリスクはあるものの、換装によって得られるメリットは大きい。

 今回とりあげたThinkPad X1 Carbon(2016モデル)などは、メモリが若干少ないとは言え、ストレージにゆとりがあればまだまだ使える性能をもったモデルだ。ある意味、買い換えるか微妙に悩むあたりのモデルほどSSD換装の恩恵があると言えるかもしれない。

 PCを買い換えるほどではないといった場合や、予算を抑えて環境を快適にしたいというユーザーは、ノートPCのSSD換装もPCを快適にする選択肢の一つとして考えてみてはいかがだろうか。

[制作協力:Samsung]