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最新PCゲームを遊びまくれ!「Crucial P5/P2」でAAAタイトルの起動/ロード時間を一斉チェック
ゲームのロード時間を短くしたいなら、やっぱりNVMe SSD! by 芹澤 正芳
2020年12月21日 00:01
240GB SSDにサヨナラを言うべき時期がとうとう来てしまった!?
PCゲームのロード時間はストレス以外の何者でもない。1秒でも早くゲームを起動したいし、セーブデータやマップを読み込んですぐに次の行動を起こしたい。そんな場合にカギとなるのがゲームのデータを保存するストレージ。HDDよりSSDが格段に速いのだが、SSDにも規格ごとに速度差がある。なかでも250GBクラスのSerial ATA対応SSDはユーザーが多い。
最近では、このSerial ATA対応SSDを大きく上回る速度を持つNVMe対応SSDがかなり手頃になってきている。ゲームのロード時間をちょっとでも改善したいなら非常に気になる存在だ。本企画では、Serial ATA SSDと最新のNVMe SSD2機種で、実際のゲームの起動やロード時間を計測してその効果を見てみたい。
速度計測の前に、SSDの容量についても考えてみよう。前述した250GBという容量で運用しているゲーマーは、“容量不足”でストレスを感じているのではないだろうか? 実際にPC版の「コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア」(CoD:MW)のサイズは256GBに迫っており、これ一発で容量を使い切ってしまいそうな勢い(その後若干改善された)。さらに、この2020年末は、「ウォッチドッグス レギオン」に「アサシン クリード ヴァルハラ」、「コール オブ デューティ ブラックオプス コールド・ウォー」、「サイバーパンク2077」などなど、ここ数年間で最大のAAAタイトル発売ラッシュ。各タイトルのインストールサイズが大きいので、並行して遊ぼうものなら容量不足は避けられない。
その意味で、容量不足にあえいでいるゲーマー諸氏も、ストレージ容量アップのためのSSD交換、増設のついでに、より高速なNVMe SSDの導入を検討すべきタイミングなのである。
高速なデータ転送速度に加え、複数のゲームをインストールできる余裕を考えると1TBクラスのNVMe SSDの導入をオススメしたい。M.2接続のNVMe SSDは高価なイメージもあるが、エントリークラスの製品(転送速度はおおむねシーケンシャルリード2,000~2,400MB/s前後)ならばSerial ATAのSSDと価格差はなくなっている。エントリークラスのNVMe SSDでもSerial ATA SSDよりもシーケンシャルリードは3倍から4倍も高速。M.2スロットに空きがあるならば、NVMe SSDを選ばない理由はなくなったと言ってよいだろう。
もうちょっと予算があるということであれば、超高速のデータ転送速度(おおむねシーケンシャルリード3,400MB/s以上)を叩き出すハイエンドクラスの製品も視野に入ってくる。ゲーマーにとっては、実ゲームの起動速度やロード時間において、ハイエンドクラスとエントリークラスのNVMe SSDで果たして差はあるのか気になるところ。
そこで、今回はMicronのコンシューマ向けブランドで、SSDやメモリでおなじみ「Crucial」のNVMe SSDから、ハイエンドクラスの「Crucial P5」、エントリークラスの「Crucial P2」、それぞれの1TB版を用意。旧世代のSerial ATA SSDも交え、ゲームにおける実力をチェックしていく。
速度重視とコスト重視、どっちがゲーム向きかをベンチで確認
まずは基本スペックを紹介しておこう。
Crucial P5は、Crucialブランド初のハイエンドNVMe SSDとして登場した。公称シーケンシャルリード3,400MB/sはPCI Express 3.0 x4接続のNVMe SSDとしては最速クラス。コントローラも3D NAND(メーカー非公表だが仕様やテスト結果などから3D TLC NANDと推測される)もMicron製と、自社製品でガッチリと固めた安心感も強みと言える。容量は250GB/500GB/1TB/2TBをランナップ。詳しいスペックは以下にまとめた。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB |
実売価格 | 6,500円前後 | 9,500円前後 | 18,000円前後 | 40,000円前後 |
フォームファクタ | M.2 2280 | |||
インターフェース | PCI Express 3.0 x4 | |||
NANDフラッシュメモリ | Micron 3D NAND | |||
コントローラ | Micron製 | |||
シーケンシャルリード | 3,400MB/s | |||
シーケンシャルライト | 1,400MB/s | 3,000MB/s | ||
総書き込み容量(TBW) | 150TB | 300TB | 600TB | 1,200TB |
保証期間 | 5年 |
Crucial P2は、公称シーケンシャルリード2,400MB/s/シーケンシャルライト1,800MB/s(1TBモデル)のエントリークラスのNVMe SSDだ。メーカーはNANDの種類を公表していないが、今回テストした1TBモデルについては、スペックや各種テスト結果などから、QLC NANDを搭載しているものと思われる。Crucial P5に比べるとピーク性能は控えめだが、実売価格は1万2,500円前後と同容量のSerial ATA SSDとほぼ同価格というコストパフォーマンスの高さを持つ。
容量 | 250GB | 500GB | 1TB | 2TB |
実売価格 | 6,300円前後 | 7,500円前後 | 12,500円前後 | 28,000円前後 |
フォームファクタ | M.2 2280 | |||
インターフェース | PCI Express 3.0 x4 | |||
NANDフラッシュメモリ | Micron 3D NAND | |||
コントローラ | 非公開 | |||
シーケンシャルリード | 2,100MB/s | 2,300MB/s | 2,400MB/s | 2,400MB/s |
シーケンシャルライト | 1,150MB/s | 940MB/s | 1,800MB/s | 1,900MB/s |
総書き込み容量(TBW) | 150TB | 150TB | 300TB | 600TB |
保証期間 | 5年 |
QLC NANDは連続した書き込みなどによってSLCキャッシュが切れると大幅に速度低下するが、ゲームでは大容量の書き込みが発生するのはインストール時のみ。プレイ時は基本読み出しのみなので、QLC NANDでも心配は不要と言える。注目はハイエンドクラスに対して、どこまでゲームにおいて速度差があるか、という点だろう。
QLC NANDのSSDについては、キャッシュ切れの際にライト性能が大幅に落ち込むことを気にする人が多いが、MLCやTLCよりも信頼性が落ちるのでは、という不安を指摘する声も少なくない。しかし、Micronは、エンタープライズ向けの大容量SSD「5210 ION」シリーズにおいて、QLC NANDを搭載した製品を発売している。エンタープライズSSDでのQLC NANDの採用例はまだまだ少なく、現状ではMicronと長年のパートナーであるIntelのみ。つまり、MicronとIntelは、自社のQLC NANDを「エンタープライズ用途にも対応できる信頼性」と評価していることを意味しているわけである。現在のMicron、すなわちコンシューマ向けブランドのCrucialのQLC NAND採用製品の信頼性はこの延長線上にあるものと考えてよいだろう。
速度性能は順当にP5がトップ、P2もSATA製品を大幅に上回る性能
まずは基本性能から見てみよう。最大性能を見る「CrystalDiskMark 7.0.0h」、実アプリベースのテストを行なう「PCMark 10」のStorageテスト(Full System Drive Benchmark)を実行する。なお、テスト環境は以下のとおりだ。なお、システム起動用SSD(PCI Express 3.0接続のM.2 SSD)を別途用意して各製品のテストを実施している。
CPU | Intel Core i7-10700K(8コア16スレッド) |
マザーボード | MSI MPG Z490 GAMING CARBON WIFI(Intel Z490) |
メモリ | Micron Crucial Ballistix RGB BL2K8G36C16U4BL (DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2933で動作) |
ビデオカード | NVIDIA GeForce RTX 2080 SUPER Founders Edition |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
Crucial P5のシーケンシャルリードは3,505.02MB/sと公称を超える速度を見せた。PCI Express 3.0 x4接続の限界値近くまで出しており、さすがハイエンドNVMe SSDだ。Crucial P2も旧世代のSerial ATA SSDに比べて、シーケンシャルリードは約4.3倍、ランダムリードでも約4.8倍もの速度を出している。ちなみに、最新世代のSerial ATA SSDであっても、リード、ライトともに最大600MB/sを上回ることはない。Serial ATA規格自体がすでに古く、ボトルネックとなるのだ。価格の安いエントリークラスと言えどもNVMe SSDなので十分高速と言える。
PCMark 10 Storage(Full System Drive Benchmark)は、実アプリでの性能を測るものだが、さすがにCrucial P5は圧倒的なスコアを出している。とはいえ、Crucial P2もSerial ATA SSDと比べれば2倍以上のスコア。Serial ATA接続とは圧倒的な差がある。
効果の大小はゲーム次第だが起動やロードは全体に高速化
それでは、実際のゲームの起動とロード時間をチェックしていく。ストップウォッチを使った手動での測定になるため、すべて3回試行し、その平均値を掲載している。
まずは、10月29日に発売されたオープンワールドアクションの「ウォッチドッグス レギオン」から。UBISOFT CONNECTのプレイボタンを押してからタイトル画面が表示されるまでを“起動”、キャンペーンの「続ける」を押してからプレイ画面になるまでを“ロード”、ゲーム内のロンドン・ブリッジからセーフハウスへの高速移動を“ファストトラベル”とした。起動時間を見ると順当な結果だ。Crucial P5はSerial ATA SSDに比べ6.8秒も短縮、Crucial P2でも4.8秒の短縮となった。ロード時間やファストトラベルは誤差範囲と言える。
11月10日発売の同じくオープンワールドアクションの「アサシン クリード ヴァルハラ」は、UBISOFT CONNECTのプレイボタンを押してからタイトル画面が表示されるまでを“起動”、タイトル画面で「続ける」を押してからプレイ画面になるまでを“ロード”、ゲーム内のロンディニウム円形劇場のシンクロポイントからレイヴンソープの野営地への高速移動を“ファストトラベル”とした。起動とロード時間はCrucial P5、Crucial P2がSerial ATA SSDよりも高速。ファストトラベルは誤差範囲だ。
次は11月13日発売のFPS「コール オブ デューティ ブラックオプス コールド・ウォー」を試す。こちらは、Battle.netのプレイボタンを押してからタイトル画面が出るまでを“起動”、キャンペーンモードの再開を押してプレイ画面になるまでを“ロード”とした。インストールサイズはかなり大きいタイトルなのだが、今回のテストではどれも誤差範囲と程度の差となった。現状では、スピード重視で選ぶよりも将来を考えて容量重視で選んだほうがメリットが大きいと判断できる。
フライトシミュレータ「Microsoft Flight Simulator」でも試す。Steamのプレイボタンをおしてからメニュー画面が出るまでを“起動”、羽田空港から千歳空港までを設定し、FLYボタンを押してからプレイ画面になるまでを“フライト開始”とした。ここでは、Crucial P5がハイエンドクラスらしい性能を発揮し、起動でもフライト開始でもほかのSSDに比べて約5%高速だった。その一方で、Crucial P2はSerial ATA SSDとの差はほとんどなかった。
最後に、「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」のローディングタイムも見ておこう。このテストはスペックどおりの差が出やすく、Crucial P5、Crucial P2、Serial ATA SSDの順に高速と順当な結果になった。
総じて見ると、ゲームのロード時間においては、Serial ATA SSDに対してエントリークラスのNVMe SSDであるCrucial P2でも明確な優位を確認できた。ハイエンドクラスのCrucial P5とP2の差は小さいものの、P5ほうが確実に速い。コストパフォーマンスを考えると、ゲームのインストール先としてCrucial P2は十分優秀だ。ゲームプレイに加えて動画編集やRAW現像など大容量ファイルを大量に扱うなら、最大速度に優れるCrucial P5を導入したほうが快適と言える。
フォートナイトやCoD:MW(とはいえまだまだ巨大だが)のように、アップデートにより総容量を下げるゲームもあるものの、3Dグラフィックスの進化やゲーム自体のボリュームアップによって、今後もゲームのインストール容量が巨大化していく傾向には変わりはないだろう。巨大化するゲームを快適に楽しむなら、手軽にインストールするための大容量、読み出すための高速性、どちらも必要だ。その解答はNVMe SSDと言える。
[制作協力:Micron]