特集、その他

前モデル比約2倍の高速化を実現!最強の座に一気に迫るWD_BLACK SN850を試す

PCIe 4.0対応のゲーマー向けM.2 NVMe対応SSDを徹底検証 by 北川 達也

 PCI Express 4.0対応のNVMe SSDの最新モデルが続々と登場し、多くのユーザーの関心を集めている。そんな状況の中、ストレージメーカーの大手、Western Digitalのフラグシップモデル「WD_BLACK SN850 NVMe SSD」(以下SN850)の販売が始まった。

WD_BLACK SN850 NVMe SSD

 SN850は、大ヒットした「WD_BLACK SN750 NVMe SSD」(以下SN750)の上位モデルとしてラインナップに加わった新モデル。SN750はPCI Express 3.0 x4のNVMe SSDだったが、SN850は約倍の帯域となる最大転送速度8,000MB/sのPCI Express 4.0 x4対応のNVMe SSDへと進化。これにより大幅な高速化を実現している。

 本稿では、WD_BLACK SN850 NVMe SSDの1TBモデルを中心にWestern Digital初となるコンシューマ向けPCI Express 4.0対応NVMe SSDの実力をレポートする。

訂正(12月17日) 記事初出時、SN850について「SN750の後継製品」と記載していましたが、正しくは「SN750の上位モデル」としてラインナップに追加された製品で、SN750は今後も継続して販売されるモデルになります。関係者ならびに読者に皆様にはお詫び申し上げます。

最大速度7,000MB/s、従来比約2倍の性能を実現したハイエンドモデル

 SN850は、既存モデルのSN750と同様にゲーマーなどのハイエンドユーザーをターゲットとした製品である。500GB、1TBに加えて2TBモデルがラインナップされており、試用したヒートシンクなしのモデルとヒートシンク標準搭載モデルがラインナップされる。ヒートシンク搭載モデルは、2021年第1四半期発売予定で、専用ツール「WD_BLACK Dashboard」から制御できるRGBライティング機能を備えているとのことだ。

WD_BLACK SN850の表面および裏面。裏面には一切チップ類がない設計

 SN850の最大の特徴は、最大転送速度8,000MB/sのPCI Experess 4.0 x4に対応することで、前作SN750と比較して約2倍という高い性能を実現していることである。公称最大読み出し速度は、全容量共通で7,000MB/s、書き込み速度は2TBモデルが5,100MB/s、1TBモデルが5,300MB/s、500GBモデルが4,100MB/sとなっている。

 採用コントローラは、自社開発のインハウスコントローラ「WD_Black G2コントローラ」、NANDも自社製の3D NANDを採用する。NANDの世代は非公開だが、1,066MT/s以上のNANDのインターフェース速度に対応した96層または112層のいずれかを採用しているものと推測される。そのほか、外部メモリとして使用されるDRAMも備えている。

SN850に搭載されているコントローラ「WD_Black G2コントローラ」。自社設計のインハウスコントローラで詳細仕様は未公開
自社製造の3D NANDメモリを採用。NANDメモリの世代は非公開。テスト結果などから、3D TLC NANDと思われる
専用ツール「WD_BLACK Dashboard」の画面。ゲームモードのON/OFFはこのツールで切り換えることができる

 また、前作SN750にも搭載されていた「ゲームモード」も引き続き搭載されている。ゲームモードは、ゲームプレイ時のディスクアセス性能を高め、応答性の高い、パワフルなゲーム体験を実現するとされる機能だ。

 SN850の耐久性(TBW)は、2TBモデルで1200TB、1TBモデルで600TB、500GBモデルで300TBで、5年間の製品保証も付帯。ハイエンドモデルにふさわしい耐久性も実現している。

WD_BLACK SN850の主なスペック
型番WDS500G1X0E-00AFY0WDS100T1X0E-00AFY0WDS200T1X0E-00AFY0
容量500GB1TB2TB
フォームファクターM.2-2280
インターフェースPCI Express 4.0 (x4)
プロトコルNVMe 1.4
コントローラーWD Black G2
NANDフラッシュWestern Digital 3D NAND
キャッシュメモリDDR4 512MBDDR4 1GBDDR4 2GB
Sequential Read (Max)7,000 MB/s
Sequential Write (Max)4,100 MB/s5,300 MB/s5,100 MB/s
TBW300TB600TB1,200TB
保証期間5 年

公称値どおりの最大性能を発揮!体感性能も大幅アップ

 ここからは、各種ベンチマーク結果からSN850の性能をチェックしていく。ベンチマークソフトには、最大速度を計測できる「CrystalDiskMark 7.0.0」とアプリケーションの起動や操作などをシュミレートすることによってストレージの体感性能を計測する「PCMark 10 Full System Drive Benchmark」を使用した(未使用時と50%ほどデータを書き込んだ状態の2パターンの性能を計測)。また、ゲームのロード時間のチェックとして「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」も行なっている。

 テストに使用したのは、SN850の1TBモデルと2TBモデルで、いずれもゲームモード ON/OFFの両方を計測している。また、比較対象としてはSN750の1TBモデルを用意した(ゲームモード OFFのみテスト)。このほかのテスト環境は、以下のとおり。テストの際はシステムは別途起動用SSD(Serial ATA 3.0、256GB)にセットアップし、バラック状態で実施。マザーボード付属のヒートシンクも未装着の状態で行なっている。

テスト環境
CPUAMD Ryzen 7 3700X(8コア16スレッド)
マザーボードASUSTeK ROG STRIX B550-F Gaming (wi-fi)(AMD B550)
GPUNVIDIA GeForce GTX 1650搭載カード
電源玄人志向 KRPW-PT600W/92+(600W、80PLUS Platinum)
OSWindows 10 Pro 64bit版

 まずは、最大速度を確認できるCrytal Disk Markの結果だが、SN850はほぼ公称どおりの最大の性能を発揮した。1TB、2TBモデルともにシーケンシャル(SEQ1MQ8T1)の最大読み出し速度は7,000MB/sを超え、書き込み速度は1TBモデルの場合で5,237.9MB/s、2TBモデルの場合で5160.6MB/sを記録した。最大読み出し速度は全モデルのSN750の約2倍、書き込み速度は約1.7倍と大幅な性能向上が見て取れる結果だ。

Crystal Disk Markの計測結果。各製品ともにシーケンシャルリード/ライトはほぼ公称値どおりの結果。SN850はGame ModeをONにするとランダムリード/ライトがわずかに上昇した

 ランダム読み出し/書き込み速度も高速化されている。ランダムの4KQ32T16は読み出しが約1,500MB/s、書き込みが約600MB/sも高速化されている。体感性能に影響すると言われるランダムの4KB Q1T1の性能も読み出し/書き込みともに30MB/s前後も速くなった。SN850は、SN750と比較してストレージとして基本性能が大幅に向上していることがこの結果から分かる。

 また、ゲームモード有効時は、シーケンシャル読み出し/書き込みは、目立った速度アップはみられていないが、ランダムの4KB Q1T1の読み出し/書き込み性能が若干アップしている。具体的には、1TB/2TBモデルともに読み出しが約4MB、書き込みが約45MBほどの向上だ。ランダムの4KB Q1T1の性能向上は小さなファイルへのアクセスの高速化が図られることを指すため、ゲームなどで少しでもレスポンスを上げたいといった場合に有効な機能であることは間違いないだろう。

 次に、実際の体感性能が分かるPCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果だが、SN850の1TBモデルは3,140、2TBモデルは3,021という驚きのスコアをマークした。このスコアは、SN750の2倍以上のスコアであるばかりか、筆者がこれまで数多くのSSDのベンチマークテストを行なってきた中でも初めて見る「3,000オーバー」というスコアである。SN850のこのスコアは、現在発売されているコンシューマ向け製品の中で、間違いなくトップに君臨するものだ。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの結果。SN850は3,000オーバーのスコアをマーク。SN750と比較すると倍以上のスコアとなっている

 また、ゲームモードを有効にするとスコアはさらにアップし、1TBモデルは3,398、2TBモデルは3,233をマークした。CrystalDiskMarkの結果からも分かるようにゲームモードを有効にすると、ランダム読み出し/書き込み性能がアップする。これがさらなるスコアアップの要因となっていることは間違いないだろう。

 SN850は、総容量の50%ほどのデータを記録した状態でも3,000オーバーのスコアをマークしただけでなく、わずかな性能低下にとどまっている点にも注目しておきたい。SN750では50%データを記録した状態では性能が初期時の3分の2ぐらいに低下している。SN850ではこれが数%に抑えられている。SN850では、新しいキャッシュ技術を採用し性能をアップしているとされるが、この新しいキャッシュ技術が効力を発揮しているものと推測できる。

 なお、SN850の2TBモデルで50%記録した状態でも性能低下が起きていないのは、単純に記憶容量が多いことが理由だろう。2TBモデルは、50%データを埋めた状態でも空き容量が約900GBほどあるが、1TBモデルの空き容量は460GBほどしかない。2TBモデルの空き容量を1TBモデル同様に460GBほどにしてテストを行なうと違った結果が出てくると思われる。

 参考までに、PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの計測結果から、用途別に処理時間の詳細を下記にまとめた。単位はマイクロ秒という小さなものではあるが、確実な進化が見られる。

PCMark 10 Full System Drive Benchmarkの詳細スコアから、(1)ゲームプレイ開始、(2)Office系アプリの使用、(3)Adobeのクリエイティブアプリの使用、の3テーマの処理時間を抽出した結果

 さらに具体的な基本性能や体感性能のアップの成果は、実際のゲームのロード時間からも見て取れる。ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズベンチマークのゲームデータのロード時間は、SN750よりも1秒以上速く、性能アップがここにもきちんと反映されている。

ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズベンチマークのゲームデータのロード時間。SN850はSN750よりも1秒以上もロード時間が短い

SLCキャッシュの挙動を見る

 次にSN850のSLCキャッシュについて見ていきたい。SN850では、前述したように新しいキャッシュ技術を採用したとされている。はたしてそれはどのようなものなのなのだろうか。

 まずは、SLCキャッシュ回りについて見てみよう。SLCキャッシュの容量はもちろん可変で、記録済みの容量によってSLCキャッシュの容量は変動していく。たとえば、1TBモデルの場合、未使用時は最大280GB程度(本機は3D TLC NANDを搭載していると思われるので、実際には約840GB分の領域を使用)のSLCキャッシュが利用できるが、800GBのデータを記録した状態のSLCキャッシュは約19GBだった。SLCキャッシュ容量は最大で記憶容量のおよそ85%程度までSLCキャッシュに割り当てるようだ。

SN850 1TBモデルのSLCキャッシュの容量。TxBENCH Ver0.97bを使用して、RAWでシーケンシャルライトを実施することで容量を計測した

 また、SLCキャッシュが切れた後の書き込み速度は、1TBモデルの場合で平均1,321.1MB/s。1,100MB/sを下限の速度として最大2,000MB/sまで上振れする挙動を見せていた。この速度は、SLCキャッシュを記憶容量の80%またはそれ以上利用するような製品の中ではかなり速い。

SN850 1TBモデルのヒートシンク装着時の書き込み速度と温度の推移。SLCキャッシュ切れ後の平均書き込み速度は1,321.1MB/sだった

 というのは、SLCキャッシュを記憶容量ギリギリまで割り当てると、SLCキャッシュが切れたとたんにTLC領域にデータを移しながら、SLCキャッシュを開放してくという作業がひっきりなしに発生する。加えて、NANDでは、データ移動済みのエリアを作ってもそれだけでは、次のデータを記録することはできない。NANDはデータの上書きができないため、次のデータを記録するために一旦“消去”を行なう必要があるからだ。しかも、消去は、書き込みよりも一桁大きい時間を要する。

 このため、SLCキャッシュを記憶容量ギリギリまで使用するような製品の中には、SLCキャッシュが切れると極端に書き込み速度が低下する製品も見られる。そういった製品と比較するとSN850は、大容量のSLCキャッシュを利用しながらも、SLCキャッシュ切れの後の書き込み速度低下も抑えられているように見える。少なくとも筆者がこれまでみてきたSLCキャッシュを記憶容量ギリギリまで使用するような製品の中では、トップクラスの書き込み速度であることは間違いない。

 SLCキャッシュは、大きくすればよいというものではない。前述したようなSLCキャッシュ切れ後のペナルティを考慮し、SLCキャッシュが切れた後の速度もできるだけ高く維持できるようにすることも重要だ。SN850は、このさじ加減がかなり上手くできていると言えそうだ。

特徴的なSLCキャッシュの使い方で性能をアップ!?

 SN850はSLCキャッシュの使い方にも特徴がある。一つは、SLCキャッシュとして確保される最大領域が約280GB程度である点。もう一つの特徴は、データを記録後の消費電力推移から推測するに、SLCキャッシュに書き込まれたデータをすぐにTLC領域に移動しない仕様と思われる点だ。

 データ記録後の消費電力推移を見ると、220GBまではデータの記録が完了すると同時に消費電力がすぐに下がっていくが、230GB以上は、書き込み終了後も消費電力は下がらず、いかにもバックグラウンドでデータをTLC領域に移動させているという挙動を示している。

書き込み終了時点からの消費電力推移。220GB以下の書き込みでは、書き込み終了後即座に消費電力が低下していく。この消費電力ではデータを移動していたとしても書き込んだすべてではなく、かなり少ないことが推測される。TxBENCH Ver.097bで先頭から100/150/200/220/230/250/300GBの容量をRAWで記録。さらにIOMeter1.1.0で書き込み済みのものと同容量を続きの位置からシーケンシャルライトし、消費電力をWattsUp PROで計測した。なお、SN850は、測定環境の制限のためPCI Express 3.0 x4のM.2スロットに接続している。このため、消費電力はPCI Experess 4.0接続時よりも少ない

 200GBのデータの記録完了後に1時間ほど、何も操作せずにそのまま放置してみたが、アイドル時の消費電力に落ちた後は、0.1~0.2W前後の消費電力の変動はあったものの、バックグラウンドでSLCキャッシュからTLC領域へとデータを移動させているような大きな消費電力の変化がない状態が続いていた。このことからSN850では、SLCキャッシュに書き込まれたデータが一定容量以下の場合、少なくとも1時間程度のアイドル時間では、バックグラウンドでデータの移動をほとんど行なわない仕様であることが推測できる。

 また、230GBのデータを書き込んだときの消費電力推移を見る限り、書き込み終了後に高い消費電力を維持していた時間はわずか19秒と短い。この時間では、どうみてもSLCキャッシュ内のデータをすべてTLC領域に移動することはできない。このことから、SN850はSLCキャッシュ内のデータをTLC領域に移動する場合もすべてを一気に移動するのではなく、最低限必要なSLCキャッシュを確保できるだけのデータをTLC領域に移動していると見るのが自然だろう。

 SN850のようにSLCキャッシュに記録したデータをすぐにTLC領域に移動させない製品は以前から存在している。SLCキャッシュからTLC領域などにデータを移す作業は“ムダ"な書き込みとみることもできるからだ。たとえば、アプリを使用した際に一時的に作成され、アプリを終了すると削除されるような作業ファイルのTLC領域などへの移動は、無駄な書き込み以外の何物でもない。SLCキャッシュに記録されたデータをすぐに移動させなければ、これらの無駄なデータを移動させるリスクは減る。つまり、製品の耐久性向上に寄与することになる。大容量のSLCキャッシュを利用する場合、すぐにデータを移動させないことはこのようなメリットもある。

性能の高さは発熱とのトレードオフ、ヒートシンク装着を推奨

 最後にSN850の発熱について見ていくが、結果から最初に言っておくと、SN850は、非常に高い性能の製品だが、その分、発熱も大きい。ただし、これはSN850に限った話ではなく、PCI Experess 4.0対応NVMe SSDは総じて性能が高くなった分、発熱も増えている。そういう意味では、NVMe SSD登場当初からある性能の高さと発熱の大きさはトレードオフの関係にあるということは今をもって変わっていない。

 実際にSN850に負荷をかけてみると、ヒートシンクなしでシーケンシャル書き込みを300秒間行なった場合、最大温度は91℃に達した。ただし、速度推移と温度をグラフ化してみても、明確なサーマルスロットリング発動という挙動はぱっと見た目では目立たない。ヒートシンクありで同じテストを行なったときのグラフと比較して、ようやく分かるようなものだ。

SN850 1TBモデルのヒートシンク未装着時の書き込み速度と温度推移。最大温度は91℃に達しているが、グラフで見るとサーマルスロットリングの影響は大きくないように見える

 そこで、シーケンシャル読み出しを300秒間実施してみたところ、開始から約50秒で最大温度が92℃となり、以降は、読み出し速度が乱高下を繰り返すという明確なサーマルスロットリングによる挙動が見て取れた。これから考えると、SN850を使用する場合は、ヒートシンクは必須といってもよい。とはいえ、最近のマザーボードに標準装備されているヒートシンクであれば、多くの場合安心して運用できるだろう。

SN850 1TBモデルのヒートシンク未装着時の読み出し速度と温度推移。最大温度は92℃に達し、読み出し速度が乱高下していることから、サーマルスロットリングが発動していることがよく分かる。なお、途中から速度低下が短くなり、アグレッシブな温度調整が行なわれているようだ。アグレッシブな調整後は平均温度が83.4℃、81~86℃の間の温度がキープされている

 なお、SN850は、温度管理機能にも実は特色がある。最近のNVMe SSDは、ホスト(CPU)コントロールによる温度管理機能に対応し、その機能を積極的に使用している製品が増えている。このタイプの製品は、コントローラ自身による温度管理機能も備えており、ホストコントロールとコントローラ自身による温度管理の両方を行なう仕様となっているケースが多い。

 一方、SN850がどうなっているかと言うと、ホストコントロール機能に対応しているもののしきい値の温度が未設定となっており、コントローラのみで温度管理を行なう仕様となっていた。最近のNVMe SSDの中では、少なくなってきた温度管理の仕様だ。なお、ホストコントロールを行なう場合の温度は、最低0度、最大84度の間で設定可能となっている。ヒートシンクなしでシーケンシャル読み出しを300秒間実施した場合、サーマルスロットリング発動後は、温度が81度~86度の間で管理されており、平均温度は83.4度であった。SN850の温度管理を行なう場合は、84度を最大温度とし、これを超えないように調整するとよいだろう。

性能の高さでは現役随一、使い方しだいではほぼSLC SSDとして使える!?

 WD_BLACK SN850は、発熱こそ高めではあるものの、その性能の高さは現世代で随一といってもよいものだ。ベンチマーク結果から分かるように、とくにゲームなどのできるだけ高速なレスポンスで使いたいといった用途には最適な製品であることは間違いない。最近のマザーボードは、当初からM.2 SSD用のヒートシンクを備えている製品が主流。とくにPCI Express 4.0対応のマザーボードでは、最安クラスの製品を除けばM.2 SSD用のヒートシンクを装備していることが多いため、SN850の最大性能を発揮できる環境は追加投資不要で用意できる。

 また、SN850はかなり特徴的なSLCキャッシュの使い方をしているため、使い方しだいでは“ほぼSLCのSSD”として使うこともできそうなところもおもしろい。たとえば、1TBモデルの場合は220GB、2TBモデルの場合は440GBのデータを書き込むまではSLCキャッシュからTLC領域にデータを移動していない。つまり、SN850をシステムドライブやゲームのインストール先として使用する場合、ドライブに一つだけ、1TBモデルなら220GB以下、2TBモデルなら440GB以下のパーティションを作り(もしくはドライブ内に作成された全パーティションの合計容量をこの値にする)、残りを未使用状態としておくことで、ほぼSLCのSSDとして常に使えることになる。

 耐久性の高さやTLCやQLCなどでは味わえない高速な書き込み性能など、SLC SSDに対する魅力を感じているハイエンドユーザーは現在でも多い。SN850の特徴的なSLCキャッシュを活用すれば、マニアックなユーザーの要望を満たすスペシャルな使い方も可能となる。全体の2割強しか常用できなくなるためコスパは悪くなるが、最速性能を目指し、SLC SSDライクに使ってみるのもおもしろいチャレンジではないだろうか。その際は、ゲームモードを有効にして、ヒートシンクによる発熱対策も忘れずに行なってほしい。素の状態でも非常に速い上に、チューンに取り組む楽しさもある製品だ。

[制作協力:テックウインド]