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今NASを組むなら8TB HDD×2.5GbE NAS、内蔵HDD感覚で使用できる速度に
WD Red PlusとQNAP TS-231P3で今時のNASの性能をテスト text by 坂本はじめ
2021年3月30日 00:01
今回のレビューでは売れ筋容量の8TB HDDと導入しやすくなった2.5GbE対応NASを使い、今時のNAS環境がどの程度のパフォーマンスを発揮するのか検証してみた。HDDはWestern Digitalの「WD Red Plus」の8TBモデル、NASはQNAPの2ベイ/2,5GbE対応モデル「TS-231P3」を用意した。
これからNASの導入やリプレースを考えているユーザーは、2.5GbE環境のパフォーマンスを是非確認してもらいたい。また、WD RedシリーズはラインナップがRed/Red Plus/Red Proと3ラインに再整理されたので、何が異なるのかも簡単に紹介する。NAS/データ保管用HDD選びの際の参考にしてもらえれば幸いだ。
CMR方式オンリーのNAS向けHDD「WD Red Plus」8ベイまでのNAS向けで性能重視のラインナップに
今回使用しているWestern Digitalの「WD Red Plus」は、同社のNAS向けHDDシリーズの再編によって誕生したシリーズだ。ここ1年で変わったので紹介しておこう。
「WD Red Plus」シリーズのHDDは、記録方式に従来通りのCMR(Conventional Magnetic Recording)方式を採用したモデルのみとなっており、従来の「WD Red」シリーズからCMR方式のモデルを分離して新シリーズとしたといえる製品だ。
この再編により、SMR(Shingled Magnetic Recording)方式の安価なNAS向けHDDブランドとなった「WD Red」、今回使用している最大8ベイNAS対応の「WD Red Plus」、最大24ベイNASでの利用と高耐久&長期保証を実現する「WD Red Pro」の3シリーズが現在のWD Red系のHDDの分類となっている。
「WD Red Plus」の容量は1~14TBで、最大8ベイNASでの利用と年間180TBのワークロードに対応。ディスク回転数はモデルによって異なるが、容量8TB以上の製品は7,200rpmとなっている。保証期間は3年間。
単体のHDDとして使用する際は記録方式をあまり気にする必要はないが、RAID環境など複数HDDが同期する環境では、CMRとSMRでは特性が異なるため、混載して使用しないようにしたい。HDDとしては故障していないが、挙動の違いからNASなどからは異常とみなされ、RAIDアレイが崩れてしまうことなどがあるためだ。RAIDで使用する際は記録方式を揃えよう。
また、CMR方式の方が書き込みに関してのレスポンスは良いので、複数人が同時にアクセスするような環境でNASを使用する場合は、HDDはCMR方式ものを選んだ方が良いだろう。
売れ筋の8TB HDDから「WD80EFBX」を用意実測200MB/s超えで2万円割れの定番モデル
今回のテストで使用するHDDは、WD Red Plusの8TBモデル「WD80EFBX」。256MBのキャッシュを備えており、回転数で7,200rpmで、最大210MB/sの転送速度を実現する。今回はこれを2台用意。
秋葉原での店頭価格は19,980円前後で、NAS向けHDDとしては2万円割れで導入できる大容量モデルとなっている。
NASに搭載してテストする前に、PCに接続して単体でのパフォーマンスをチェックしてみたので、その結果を紹介しておこう。ストレージベンチマークの「CrystalDiskMark 8.0.1」では、テストサイズ「1GiB」と「64GiB」の2通りでテストしたが、いずれのテストでもシーケンシャルアクセスでは210MB/s前後というスペック通りの速度を記録している。
ディスク外周と内周の速度差を測定できるHD Tune Pro 5.75の「Benchmark」の結果では、外周部で200MB/s以上、中間で150MB/s以上、内周部でも100MB/s近い転送速度を記録している。
200GB分のデータ転送を連続実行した「File Benchmark」では、リードとライトのどちらも一貫して200MB/s近い速度を維持していた。扱いやすくクセが無いタイプのHDDといった印象だ。
QNAPの2.5GbE対応NASなら内蔵SATA HDDと遜色ない速度が実現可能これからNASを導入するなら2.5GbE以上を狙いたい
それでは、NASに搭載した際のパフォーマンスをチェックしてみよう。今回のテストでは、2.5GbEに対応するNAS「QNAP TS-231P3」にWD80EFBXを2台搭載。RAID 1を構築した状態の転送速度をチェックしてみた。
TS-231P3のスペックを簡単に紹介しておくと、CPUにAnnapurna Labs AL-314クアッドコア1.7GHzプロセッサを採用し、ドライブは3.5インチ×2台または2.5インチ×2台を搭載可能、RAID 0/1のほかJBODやシングルディスクでの動作にも対応している。LANポートは2.5GbE×1、1GbE×1で、今回のモデルはDRAMキャッシュを4GB搭載していた。
実際の速度だが、テストサイズ1GiBで実行したCrystalDiskMarkでは、リード300MB/s弱、ライト200MB/s前後を記録。テストサイズを64GiBに変更した場合、ランダムアクセス性能は低下しているものの、シーケンシャルアクセスについては1GiBと変わらない速度を維持している。
次のグラフは、実際のファイルを転送したさいの時間と速度を計測した結果だ。転送に用いたのは「写真データ(約50GiB/1,650ファイル)」と「動画データ(約50GiB/5ファイル)」で、PCからNASにデータをコピーした際の時間と、NASからPCにデータをコピーした際の「読み出し時間」を測定。その結果から平均転送速度を算出した。
データコピー中の速度だが、写真データの転送速度は、PCからNASにデータを転送した際は約158MB/sで、NASからPCにデータを転送した際は203MB/s。動画データは、PCからNASにデータを転送した際が201MB/sで、NASからPCへのデータ転送が209MB/s。いずれも1GbEでは出すことのできない、2.5GbE接続ならではの速度。これだけ速度がでていれば、内蔵のSATA HDDと同じ感覚で使用することができるだろう。
2.5GbE対応機器はネットワークハブなども含め導入しやすい価格帯の製品が増えているので、これからNASを導入するのであれば、2.5GbE以上の速度に対応したモデルを使いたいところだ。
今からNASを導入するなら2.5GbE対応を、8TB HDDで大容量かつ快適な環境を構築
8TB HDD×2.5GbE対応NASの環境は、データ転送の実測値でも200MB/sを実現する。内蔵HDD並みの速度が欲しかったり、1GbE対応NASを使っていてもう少し速いモデルが欲しいといったニーズには好適な構成だ。
また、パフォーマンスを気にするのであれば、内蔵するHDDはCMR方式を採用したHDDが望ましい。特に複数人でデータを書き込むような環境であれば、そうした用途でのパフォーマンスに優れるCMR方式が有利だ。WD Red Plusのように記録方式が確認できるモデルから選ぶと良いだろう。
今回のように、HDDの台数が少ない環境でも、2.5GbE対応とある程度の速度が出るCMR方式のHDDというポイントを抑えれば快適なNAS環境を構築できる。仕事のデータやバックアップアもちろん、写真や動画の保管庫としてNASの導入を検討しているクリエイターにとっても魅力的な環境といえるだろう。
[制作協力:テックウインド]